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Sting(スティング)


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2010年
開発会社:YNK games

2010年2月をもってスティングはサービスを終了しました。

公式ウェブサイト

ベータテスト時の感想も以下に用意している。
こちら

レビュー脱稿日2010年12月 最終更新日2011年3月

デモの紹介・感想

紹介

『Sting(スティング)』はYNK開発、WeMade Online運営のオンラインFPSである。
WeMade OnlineはYNKが名前を変えただけの企業なので、運営会社は変わっていない。
サービス開始までの複雑な経緯はベータテスト時の感想を読んでほしい。
本稿ではサービス開始以後の混乱(?)を記載する。

『カウンターストライク:ソース』でも使われている「Source Engine」が『Sting』では使われている。
したがって操作の感覚は似ている。
一回作り直されたとは言っても、やはり「Source Engine」のゲームである。
やや慣性がかかった移動や上に高く飛び上がるジャンプなどが面影を残している。

と言っても、『カウンターストライク』のようなシビアさはなくなっている。
銃弾がまっすぐに飛びやすくて、反動もずいぶんと押さえられている。
割とマイルドな味付けになった『カウンターストライク』と言っても良いだろう。
キャラ
なぜか下着姿の女性キャラ
何とも言えない外見で奇抜なゲームのように思えるかもしれないが、中身はオーソドックスな対戦型FPSである。
チームデスマッチや爆破といった基本的なルールが用意されている。
そしてプレイ中にためたポイントを使って新しい武器やアバターを購入する。
もちろんお金を払って買うこともできる。

プレイ中にはCPUを入れることができるので、デスマッチのようなルールでは人不足に悩まされることはない。
ただ、人自体が殆どいなくなっている。

ゲームの根本的なバランスを変えられる「ユーザーセッティング」や、MODマップの試みもなされている。
しかし、これが『Sting』を破滅させる要因の一つとなってしまったのは皮肉だ。
2010年11月をもってクライアントダウンロードは中止され、2011年2月にサービスが中止されるとアナウンスされたのだ。
新生『Sting』は結局一年しか続かなかった。
スナイポ
カウンターストライクソースで使われたAIと同じものが使われているようだ

レビュー

グチャグチャにいじったらダメになるのは当たり前

旧『Sting』からして見通しが甘い

『Sting』の元のゲームは、『カウンターストライク:ソース』である。
『Code Name Sting』ではない。
ここをきちんと押さえておかないと話が混乱する。

『カウンターストライク:ソース』は賛否こそあれど、非常に素晴らしい対戦ツールである。
気軽に楽しむことよりも自分の持てる限りの力を出し切って戦うようなゲームだ。
そのようなゲームを元に、幅広く遊べるオンラインゲームへと調整したのが旧来の『Code Name Sting』だった。
ところが、『Code Name Sting』に敢えて厳しい言葉を投げかけると「少し調整を施しただけのMOD」である。
どのように考えても元のゲームをやっていた方が面白く、そして少額の出費で済んでしまう。
オンラインFPSにしてはシビアで競技性はあっても、『Code Name Sting』をやる理由がさほど見いだせなかった。
よく考えれば分かると思うが、『Code Name Sting』が動くPCを持っている人ならば『カウンターストライク:ソース』をやるのである。
つまり『Code Name Sting』の開発にゴーサインを出した経営判断からして適切ではなかったと言える。
dust
カウンターストライクで使われているde_dustと全く同じ構造のマップがある。他にはdust2やaztecも

志は認めるが、ゲームは商品そのものを評価しなければならない

よって新生『Sting』で、『Sting』ならではのゲームを作ろうとしたことは大いに評価できる。
独自性を出せばそれだけ人が寄りつく可能性はあるからだ。
旧世代のゲームエンジンを用いたゲームが生き残る方法はそれしかない。
しかし生まれ変わったゲームは、運営陣の志こそ高けれども、ただ単に「遊びやすく」作り替えただけであった。
そうなれば『サドンアタック』の後塵を拝し、『STING』に先駆けて終了する『ブラックショット』の二の舞になってしまう。

以前から運営陣は「良いこと」を言っていた。
何というかゲームの現実が見えていて、それでいてやる気があり、非常に信頼感を得ようとしていた。
ところが出来上がったゲームは予想とは遙かに違うものだった。
「どのようなゲームにしたいか」という目的が見えにくく、「面白くなる要素」を具体的につかめていないのである。
これはゲームの運営と開発は全く別の技術が要り、営業する人と制作する人が違うことを浮かび上がらせる。
いくら口うるさく指図をしても、開発陣が首肯して作らない限り、運営陣の思い描くゲームが生まれることはない。
信頼関係の構築など、マネジメントを上手くできなければ良いゲームが生まれることはないのだ。
『Sting』から見えてくるのは、会社経営陣・ゲームの運営陣・ゲームの開発陣の軋轢によって、変な方向へ暴走していく課程だ。
「課金要素で差を付けない」と運営は宣言したのにもかかわらず、経営陣はベータテストの頃から課金アイテムを備え付けた。
また開発陣は運営陣との仲が悪かったと言うこともインタビューから読み取れる。
元プロゲーマーで、StingプロデューサーのHacはこれに懲りたのか経営学修士を取りに大学院へ行っているようだ。

黄金銃
購入には大量のポイントが必要になる黄金銃。当然性能も高い

見るべきところがないゲーム

こうして筋道が見えないまま作られた『Sting』は、まったく見るべきところのないゲームへと変貌した。
以前の「カウンターストライクMOD」の方が遙かにマシだと思われるぐらいである。

くすんでいて見栄えが悪いグラフィックによって第一印象はとてつもなく悪い。
人物モデリングは後にマシになったが、サービス開始当初はとても見られたものではなかった。
不必要に重いクライアントは多くの人が遊ぶことをシャットアウトした。
そして、なぜか『カウンターストライク』と同じパクリマップを実装している。
あからさまな剽窃であって、印象は悪い。
またグレネードなどの仕様をいじりまくっているため、『カウンターストライク』と同じマップを遊んでも、奥深さなどがまったくないゲームになってしまった(いくらでも壁越しグレネードが投げられる)。
これから追加予定の様々なモードやシステムは、運営と開発の齟齬によって実装されないまま、サービスは終わってしまう。
ついでに言うとバグも多かった。

元のゲームの改造を繰り返していれば、それだけバランスというものがあやふやになってくる。
とりわけ方針が定まっていない『Sting』は、武器ごとの強さやマップの構成について何も考えていない。
なぜ前作にあったマップの一部を「そっくりそのまま」流用し、他ゲームそのままの盗作マップを導入したのか。
何も考えていないからそのようなことをやっているのだ。
『Sting』にあわせてマップを作り直していない。
コスタデルソル
このマップは比較的「遊べる」

ユーザーセッティングの理想と現実

バランスの崩壊についてはユーザーセッティングにも触れなければならない。
『Sting』で画期的な取り組みの一つが、ユーザーにゲームのバランスを決めてもらうというものであった。
ルームマスターは武器の威力や体力といった基本的な要素を、自由に設定できるのだ。

「最適なバランス」をユーザーが見つけ出してくれるのではないか、という期待があったに違いない。
ところが実際に遊ばれ、選ばれるセッティングは「お祭りゲーム」ばかりだった。
プレイヤー数を30人に設定し、武器の威力を上げて体力を下げて一発でも銃弾が当たれば死亡、そしてジャンプ力最大というものである。
確かに一発当てただけで敵を倒せて裏取りに成功すれば無双状態になるという面白さはあることは認めよう。
しかし底が非常に浅くて駆け引きも何も無くなってしまったのだ。
これでは一つのゲームを長く続ける意味がない。
たまに接続して憂さ晴らしをするのには適している。

結局、ユーザーにまかせっきりになってしまうと、面白くないバランスが定着するということがありうるのである。
一部の人にとっては面白いかもしれないが、逆に他の人にとってはつまらないこともあるだろう。
だからセッティングをする際の限度というのを定めておく必要がある。
そして、一つのゲームをやっているのに色々なセッティングがあってユーザーはさぞかし混乱したかもしれない。
要らぬ混乱だ。

また『Sting』では変更できるパラメータが思いのほか少なかったことも追記しておく。
移動スピードや武器の反動はいじることができない。
事前の宣伝にあるような、自由勝手に設定できるわけではなかった。
色々設定できたら酷いカオス状態になるかもしれないが。
4キル
確かに連続キルはやりやすくなっているのだけどね、それで面白くなるとは限らない

MOD導入は絵に描いた餅

最後はMODの話をして『Sting』のレビューは終わりとさせていただく。
MOD導入は非常に勇気の要る判断だったといえる。
というのもMOD導入によってゲームやクライアントに不具合が出る可能性が高まり、運営に余計な手間がかかるからだ。
運営陣が「ユーザーまかせ」にしていたという面はあるものの、これはだけは評価したい。

しかしMODに過大な期待を抱いていたのではなかろうか。
なぜならばMODの製作は難しくて時間がかかる。
製作をしようとする人は、自分の作った努力の結晶が埋もれてしまうのは悲しいと感じるため、末永く遊ばれるゲームでMODの製作に取り掛かる。
つまり、人気があるゲームだからMODが生まれるのであり、MODがあるから人気になるわけではない。
そもそも『カウンターストライク』や『オブリビオン』のようなMOD文化が栄えるゲームは、あれが当然の姿だと思ってはいけない。
今では「MODがあるから」と上記二つのゲームをやりはじめる人が多いと聞くが、本来の流れとは逆転している。
影にはMODすら作られずに忘れ去られていったゲームが数百とある。

あと、『Sting』はMOD製作のツールを自前で提供できていない。
カウンターストライク:ソースなどの他のゲームを購入している人が、他のゲームに付属しているツールを使わなければならない。
この時点でお分かりのように、『Sting』でMODを提供するという試み自体が非常に見通しの甘いものだったと言える。

どこをどうみても見通しの甘さや不手際が目立つゲームだ。
サービス再開から一年未満でサービスを中止するのは、至極必然のことである。
MOD
ゲームマスターが作ったマップもあります。ただしバランスのバの字もありません

まとめ

いじくりまわして何がなんだか分からなくなったゲームの典型。
GM失踪など内部のゴタゴタも聞こえてくる、最低のオンラインFPSだった。
わずかな期待すら吹き飛ばしてくれる低空飛行っぷりに乾杯。

24点

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