レビュー
人がいない
個人戦主体のゲーム
『Quake Live』には人がいない。
これが紛れもない事実である。
また『Quake Live』の現状は世間での『Quake Live』への評価をも示している。
つまり多くの人にとってQuake Liveは長い間遊ぶに値しないゲームなのだ。
せっかくだからなぜ人がいなくなったのか考察する。
『Quake Live』の惨状は運営が失敗したからと言うよりもゲームの側に大きな要因があるので、間接的に『Quake Live』のレビューともなり得る。
確かに『Quake Live』は名作『Quake III』の血を受けつぐゲームである。
しかし『Quake III』の時点で「上手くないプレイヤー」にとっては非常に厳しいという問題点が浮き彫りになっていた。
個人戦中心の『Quake III』は、いつしかチーム戦が主体の『カウンターストライク』『エネミーテリトリー』『バトルフィールド』に人気ゲームの座を奪われていく。
チーム戦ならば下手なプレイヤーであっても「自分ができること」を探してチームに貢献できるからだ。
『バトルフィールド』のような大規模ゲームでは、支援専用の役職(例えばBFなら工兵とか)も用意されている。
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ジャンプの練習ステージの様子
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マッチメイキング以前の問題
ではQuake Liveがこうした欠点について施した対策はというと、マッチメイキングや豊富なコンフィグ・チュートリアルの追加である。
だがチュートリアルの追加や豊富なコンフィグ設定は元のゲーム(Quake III)と比べると格段に親切になったとはいえ、現在日本で最も人を集めている韓国製オンラインFPSにはごく普通に備わっている。
しかもどのオンラインFPSもこのような誘導を行った上で、サドンアタックのように毎夜一万人集めるゲームと、サービス一年で終了するSOW(セブンイヤーズオブウォー)という差ができてしまっている。
昨今のオンラインゲームでは搭載して当たり前の機能だと言える。
当然の機能なので人を惹きつける目玉とはなり得ない。
そしてマッチメイキングはある程度人がいなければ有効に作用しない。
もちろんQuake Liveのマッチメイキングがダメだった可能性はある。
しかし私がやっている限りは大きな欠点はなかった。
ということは、マッチメイキングに至る前に問題があったと考えられる。
ある程度の人数で、ある程度の数の試合をこなしてからマッチメイキングは有効に機能する。
つまり『Quake Live』は最低限の人数すら集まらなかったと考えられる。
マッチメイキングが機能するための人数が集まらなければ、マッチメイキングの存在は無意味になってしまう。
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練習モードといえども難易度は高い。ほとんどの人がここで挫折してしまうだろう。実際はクリアできなくともゲームを楽しめるのだが、私たちにとって練習はクリアして当たり前だという意識が働く。
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初心者を突き放す三つの壁
なぜマッチメイキング以前の問題になったのかは、初心者が『Quake Live』を始める過程を通してみてみるとよく分かる。
とある初心者が『Quake Live』興味を持ったとき、まともにプレイできるまでには大きな壁が立ちはだかる。
一つ目の壁は操作の壁だ。
『Quake Live』はとにかく操作が難しく、専用の練習マップが用意されているくらいだ。
ごく基本的なチュートリアルを終えて、さらに練習マップをある程度練習していないとゲーム中では思うように動けない。
Quake系FPSが未経験の私は、何とか動けるようになるまでにけっこうな練習が必要だった。
他のオンラインFPSと比較しても、『Quake Live』の壁は分厚い。
それほどまでに操作がややこしくて難しい。
二つ目の壁は知識の壁だ。
マップの構造を頭に入れるだけでなく、どこにどのような武器があるのか、アイテムがあるのかを一々暗記しなければ一生カモのままである。
武器の使い方にも一種のコツが必要だ。
まともに当てられるようになるためには、これにも多くの修練がいる。
Quake Liveは数多くの武器を使いこなす必要があるため、それに応じて覚えなければならないマップの仕組みが多い。
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アイテムの位置をしっかりと記憶しよう
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三つ目の壁は、他プレイヤーとの実力差である。
操作を覚え、マップの構造を蓄えただけではまだまだ満足に戦うことはできない。
オンラインマッチ中は、練習用のCPU戦では見られない「動き」をするプレイヤーが殆どなので、自分一人で練習することには限界がある。
また、Quake Liveは実力差がでやすいゲーム、言い換えれば知識量や経験の差によって上手い下手がハッキリと出るゲームだ。
始めたばかりだと周りにいるプレイヤーすべてが上級者に見えてしまう。
一見すると「コアゲーマー」ばかりの世界にいるのである。
あまりにも実力の差がありすぎて愕然とするかもしれない。
それでも苦労して何時間かゲームをプレイすると、初心者であっても経験値がたまっていき、自分の実力が一定の水準に安定化する。
実はこのとき初めてマッチメイキングが正常に作用する。
マッチメイキングは初心者のためにあると言うよりも、ある程度慣れたプレイヤーの便宜を図るためのツールであると言い換えるべきである。
これは実力の有無に関係はない。
上級プレイヤーが上級同士で対戦するためにも、初級者が初級者同士で集まるためにも使えるからだ。
他のオンラインゲームでも多かれ少なかれ以上で述べたような壁は存在する。
しかし『Quake Live』の壁は非常に分厚く高い。
要求される知識量は多く、ゲーム中に使うテクニックを練習する必要もあり、個人戦なので誤魔化しも効かない。
一旦、こうして上手いプレイヤーばかりが残るようになれば、第三の壁(プレイヤー間の実力差)が更に高くなる。
言い換えるなら、現状の『Quake Live』のように上手いプレイヤーばかりになると初級プレイヤーはまだしも、他FPSの経験が多い人であっても、オンラインでは『Quake Live』古参に為す術もなくやられる羽目になってしまうために、新規ユーザーがまったく寄りつかなないのだ。
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この武器は敵の動きを読まなければまったく当たらない。うまい人は当てることができる
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古参によって腐っていくゲーム
上級者が初級者を蹂躙する光景はかつての『QuakeIII』でも見られた光景であった。
『Quake Live』運営のid softwareはそのことを苦々しく見つめ、『Quake Live』では「すそ野」を広げることによって解決しようとした。
ところがいくらすそ野を広げても山へ登ること自体は変わらなかったため、せっかくつかみかけたユーザーを逃してしまった。
そして残った人たちも、いつも同じ人とプレイしていてはマンネリ化して飽きてしまうので、徐々に去っていく。
つかみかけたユーザーを逃さないようにする方法はあった。
それは『Quake Live』をもっともっと実力差がつかないようなゲームへと作り替える方法である。
技巧的な要素を減らし、初心者でも扱えるような武器を増やし、いっそのことプレイ時間はあっても実力が備わっていないプレイヤーには強制的にハンデをつけてもいいかもしれない。
このとき、要らぬ好意は初級者に不快感をもたらすかもしれない。
しかしそれよりもこのようなことに大きな憎悪ともいうべき感情を持つ人たちを忘れてはならない。
長らく『QuakeIII』をプレイしてきたコアユーザー、そして賞金を稼ぐことに余念がないプロゲーマー(とそれに類する人々)である。
前作とまったく違うゲームに作り替えてしまったとき、コアユーザーは一斉に離れていく。
コアユーザーというものは「昔はよかった」といいながら愛想を尽かす。
最初からコアユーザーだのプロゲーマーだの賞金稼ぎだの何なのをバッサリと切り捨てて作っていたならば、人を集められた可能性は高い。
もちろんかなりリスキーな選択であり、id softwareの経営や「しがらみ」を鑑みたときに難しかったのかもしれない。
というよりも最初から『Quake Live』は「将来のコアゲーマー」を育成するために作られていた可能性もある。
実績はあるもののサーバーの運営などがユーザー任せだった『QuakeIII』を、大会で採用されるようなゲームとしてid software運営の『Quake Live』に一本化するという試みと考えられなくもない。
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レールガン。これも当てづらい
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実力差がでやすい理由
『Quake Live』が上級者偏重になっている理由は実力差をひっくり返す運要素がまったくないからだ。
実力の差が顕著に出すぎる。
これは一対一のDuelモードをやると嫌と言うほど理解できる。
他のルールでは殆ど変わらないスコアを取るプレイヤー同士でさえ、酷い点数差がついてしまう。
確かにDuelのルールが勝者優勢になっていることも理由にあるのだが、それよりも実力がある程度開くとまったく相手にならないことが重大である。
次に『Quake Live』は攻撃を敵に当てることからして難しい。
初心者でも扱えるような使いやすい武器は往々にして威力が低く設定されている。
上級者向けの武器は使い方が非常に難しく、そして攻撃を当てにくい仕様のおかげで初級者が上級者を「まぐれ」倒せるようなことがない。
もちろんあまりにもマグレが起こっていてはゲームとして成立しないので、ある程度の線引きは必要である。
『Quake Live』で言えば強力なロケットランチャー・レールガンあたりが全まったく持って使いにくく、使いやすいマシンガン・ショットガンは弱すぎる。
これでは大人数が入り乱れるデスマッチの乱戦であっても、初級者は上級者を倒せない。
また、武器の扱いは高度に慣れる必要があるため、自分が上手くなっていく過程がなかなか感じにくいのも『Quake Live』の欠点だろう。
上手くなったかどうか分からないのではモチベーションも続かない。
練習しても練習しても、いつまで経ってもカモになり続けるゲームで誰が継続的にプレイするだろうか。
上手い上級者だけがやり続けるのだ。
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敵に当てやすい武器がまったく使い物にならないのがQL
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ポテンシャルは高いが、明らかに時代に合っていない
もし今でも上級プレイヤーがたくさんいて日夜しのぎを削っているのであれば、向上心に燃える人たちへもお勧めできた。
数ヶ月前なら『ストリートファイターIV』のキャッチフレーズのように「俺より強い奴に会いに行く」という人には、『Quake Live』は一つの選択肢になり得た。
しかし今は思う存分遊べるほどの人がいない。
人が集まるのは週末だけだ。
また、人がいてもCA(クランアリーナ)という戦略性もなにもないバカルールにしか人がいなくなっている。
CAは2チームがすべての武器と防具を身につけた状態で戦いあうルールである。
『Quake Live』のおもしろさは「アイテムを奪い合うこと」にあるので、アイテムを奪い合う必要がないCAはルール自ら長所をないがしろにしている。
もちろん何も考えずにやるのなら悪くはない。
『Quake Live』が人を集められなかった理由は、その難しさにあった。
操作が難しい、覚えることが多い、よって熟達したプレイヤーには大きな差をつけられる。
また個人戦が多いのでチームのためになる行動というのも取りにくい。
マッチシステムも、実は上級者だけを選別するシステムとして作用した。
初心者はFFA(デスマッチ)といった、乱戦に潜り込むこともできない。
未だに英語が共通語で課金方式がクレジットカードのみと言うのも、日本人を寄せ付けない。
これでは人が集まるわけがないのだ。
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ブラウザ内で起動するとこんな感じ。正直画面が小さくて大変だと思う
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