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Quake Live (クエイクライブ) 


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2010年
開発会社:is software

公式ウェブサイト

ベータテスト時の感想もあるので、そちらも参照してほしい。
リンク

初稿2010年9月 最終更新日2011年3月

紹介

『Quake Live(クエイクライブ)』はis softwareが開発・運営をしているブラウザベースの対戦FPSである。
長らくオープンベータテストを行っていたが、遂に2010年8月からは有料サービスを含めた正式運営へと移行した。
有料サービスに申し込めば、無料メンバーよりも多くのマップで遊べたり、自分だけのルームを作成できる。

『QuakeIII Arena』というFPSゲームをベースに、ブラウザゲームへと作りなおしたのが『Quake Live』である。
したがって中身はほぼ同じと考えていい。
運営がサーバーを提供し、各プレイヤーのスコアや成績を記録したり、チート使用者を排除することなどに対する対価として、プレイヤーは利用料金を支払う。
『QuakeIII Arena』は世に出てから10年以上現役のゲームである。
かつてはプロゲーマーの試合にも使われたことがあった。
今からは『Quake Live』がその役目を担おうとしている。
戦闘
みて分かるとおりグラフィックスは10年前(2000年前後)の水準だ
有料サービスを受けるための課金方式はクレジットカードのみである。
アメリカはまだしも、クレジットカードが根付いていない日本では中高生のユーザーを引きつけることは難しいだろう。

実力差がハッキリと出てしまう『QuakeIII Arena』の欠点を補うために、『Quake Live』はマッチメイキング機能を導入している。
これはゲーム側でプレイヤーの戦績を元に実力を自動的に判断して、近い実力を持つプレイヤー同士が戦えるような仕組みである。
システム自体は良くできている。

自分より上手い人が集う部屋では確かに厳しい戦いを強いられるが、反対に実力がほぼ同じか下であると楽な戦いになりやすい。
だが、現在の日本やアジアの『Quake Live』界隈を見ると、マッチメイキングの仕組みは形骸化している。
遊ぶ人たちが極端に減ってしまっているので、必然的に少ないメンバーで試合をしなくてはならないからだ。
ライトニングガン
人がいる時間帯はかなり限られてしまうため、画像はCPUとの練習モードからとっている
他にも幅広いユーザーを獲得しようといくつかの試みがなされている。
まず、ゴア表現を取っ払ってアメリカのゲームレーティングを「T(13以上対象)」にしている。
古いゲームだからゲーム用PCを持っていない中高生でも安心して遊べる。
細かな設定もゲーム中のセッティング画面から直接変更できるようになっている。
もちろん初心者向けのチュートリアルや練習マップも完備してある。
ほか、全てがブラウザゲーム上と運営のサービスで完結するように作られている。
余計な知識はいらないというわけだ。

『Quake Live』は最近流行の韓国系オンラインFPSと違い、実力差が端的にでるシビアなゲームだ。
マップの構造を熟知しなければまともに戦うことも難しい。
また武器の扱いはクセのあるものばかりなので、使い方にも習熟しなければならない。
移動する際も単に走って飛ぶだけでなく、特殊な操作が必要な場面も数多い。
このような特徴が特定の人を惹きつけ、多くの人を拒絶する。
キル
実力差が出過ぎるのがQLの問題である

レビュー

人がいない

個人戦主体のゲーム

『Quake Live』には人がいない。
これが紛れもない事実である。
また『Quake Live』の現状は世間での『Quake Live』への評価をも示している。
つまり多くの人にとってQuake Liveは長い間遊ぶに値しないゲームなのだ。

せっかくだからなぜ人がいなくなったのか考察する。
『Quake Live』の惨状は運営が失敗したからと言うよりもゲームの側に大きな要因があるので、間接的に『Quake Live』のレビューともなり得る。

確かに『Quake Live』は名作『Quake III』の血を受けつぐゲームである。
しかし『Quake III』の時点で「上手くないプレイヤー」にとっては非常に厳しいという問題点が浮き彫りになっていた。
個人戦中心の『Quake III』は、いつしかチーム戦が主体の『カウンターストライク』『エネミーテリトリー』『バトルフィールド』に人気ゲームの座を奪われていく。
チーム戦ならば下手なプレイヤーであっても「自分ができること」を探してチームに貢献できるからだ。
『バトルフィールド』のような大規模ゲームでは、支援専用の役職(例えばBFなら工兵とか)も用意されている。
練習モード1
ジャンプの練習ステージの様子

マッチメイキング以前の問題

ではQuake Liveがこうした欠点について施した対策はというと、マッチメイキングや豊富なコンフィグ・チュートリアルの追加である。
だがチュートリアルの追加や豊富なコンフィグ設定は元のゲーム(Quake III)と比べると格段に親切になったとはいえ、現在日本で最も人を集めている韓国製オンラインFPSにはごく普通に備わっている。
しかもどのオンラインFPSもこのような誘導を行った上で、サドンアタックのように毎夜一万人集めるゲームと、サービス一年で終了するSOW(セブンイヤーズオブウォー)という差ができてしまっている。
昨今のオンラインゲームでは搭載して当たり前の機能だと言える。
当然の機能なので人を惹きつける目玉とはなり得ない。

そしてマッチメイキングはある程度人がいなければ有効に作用しない。
もちろんQuake Liveのマッチメイキングがダメだった可能性はある。
しかし私がやっている限りは大きな欠点はなかった。
ということは、マッチメイキングに至る前に問題があったと考えられる。
ある程度の人数で、ある程度の数の試合をこなしてからマッチメイキングは有効に機能する。
つまり『Quake Live』は最低限の人数すら集まらなかったと考えられる。
マッチメイキングが機能するための人数が集まらなければ、マッチメイキングの存在は無意味になってしまう。

難しい練習
練習モードといえども難易度は高い。ほとんどの人がここで挫折してしまうだろう。実際はクリアできなくともゲームを楽しめるのだが、私たちにとって練習はクリアして当たり前だという意識が働く。

初心者を突き放す三つの壁

なぜマッチメイキング以前の問題になったのかは、初心者が『Quake Live』を始める過程を通してみてみるとよく分かる。
とある初心者が『Quake Live』興味を持ったとき、まともにプレイできるまでには大きな壁が立ちはだかる。

一つ目の壁は操作の壁だ。
『Quake Live』はとにかく操作が難しく、専用の練習マップが用意されているくらいだ。
ごく基本的なチュートリアルを終えて、さらに練習マップをある程度練習していないとゲーム中では思うように動けない。
Quake系FPSが未経験の私は、何とか動けるようになるまでにけっこうな練習が必要だった。
他のオンラインFPSと比較しても、『Quake Live』の壁は分厚い。
それほどまでに操作がややこしくて難しい。

二つ目の壁は知識の壁だ。
マップの構造を頭に入れるだけでなく、どこにどのような武器があるのか、アイテムがあるのかを一々暗記しなければ一生カモのままである。
武器の使い方にも一種のコツが必要だ。
まともに当てられるようになるためには、これにも多くの修練がいる。
Quake Liveは数多くの武器を使いこなす必要があるため、それに応じて覚えなければならないマップの仕組みが多い。
アイテム
アイテムの位置をしっかりと記憶しよう
三つ目の壁は、他プレイヤーとの実力差である。
操作を覚え、マップの構造を蓄えただけではまだまだ満足に戦うことはできない。
オンラインマッチ中は、練習用のCPU戦では見られない「動き」をするプレイヤーが殆どなので、自分一人で練習することには限界がある。
また、Quake Liveは実力差がでやすいゲーム、言い換えれば知識量や経験の差によって上手い下手がハッキリと出るゲームだ。
始めたばかりだと周りにいるプレイヤーすべてが上級者に見えてしまう。
一見すると「コアゲーマー」ばかりの世界にいるのである。
あまりにも実力の差がありすぎて愕然とするかもしれない。

それでも苦労して何時間かゲームをプレイすると、初心者であっても経験値がたまっていき、自分の実力が一定の水準に安定化する。
実はこのとき初めてマッチメイキングが正常に作用する。
マッチメイキングは初心者のためにあると言うよりも、ある程度慣れたプレイヤーの便宜を図るためのツールであると言い換えるべきである。
これは実力の有無に関係はない。
上級プレイヤーが上級同士で対戦するためにも、初級者が初級者同士で集まるためにも使えるからだ。

他のオンラインゲームでも多かれ少なかれ以上で述べたような壁は存在する。
しかし『Quake Live』の壁は非常に分厚く高い。
要求される知識量は多く、ゲーム中に使うテクニックを練習する必要もあり、個人戦なので誤魔化しも効かない。
一旦、こうして上手いプレイヤーばかりが残るようになれば、第三の壁(プレイヤー間の実力差)が更に高くなる。
言い換えるなら、現状の『Quake Live』のように上手いプレイヤーばかりになると初級プレイヤーはまだしも、他FPSの経験が多い人であっても、オンラインでは『Quake Live』古参に為す術もなくやられる羽目になってしまうために、新規ユーザーがまったく寄りつかなないのだ。

ぷらずま
この武器は敵の動きを読まなければまったく当たらない。うまい人は当てることができる

古参によって腐っていくゲーム

上級者が初級者を蹂躙する光景はかつての『QuakeIII』でも見られた光景であった。
『Quake Live』運営のid softwareはそのことを苦々しく見つめ、『Quake Live』では「すそ野」を広げることによって解決しようとした。
ところがいくらすそ野を広げても山へ登ること自体は変わらなかったため、せっかくつかみかけたユーザーを逃してしまった。
そして残った人たちも、いつも同じ人とプレイしていてはマンネリ化して飽きてしまうので、徐々に去っていく。

つかみかけたユーザーを逃さないようにする方法はあった。
それは『Quake Live』をもっともっと実力差がつかないようなゲームへと作り替える方法である。
技巧的な要素を減らし、初心者でも扱えるような武器を増やし、いっそのことプレイ時間はあっても実力が備わっていないプレイヤーには強制的にハンデをつけてもいいかもしれない。
このとき、要らぬ好意は初級者に不快感をもたらすかもしれない。
しかしそれよりもこのようなことに大きな憎悪ともいうべき感情を持つ人たちを忘れてはならない。
長らく『QuakeIII』をプレイしてきたコアユーザー、そして賞金を稼ぐことに余念がないプロゲーマー(とそれに類する人々)である。
前作とまったく違うゲームに作り替えてしまったとき、コアユーザーは一斉に離れていく。
コアユーザーというものは「昔はよかった」といいながら愛想を尽かす。


最初からコアユーザーだのプロゲーマーだの賞金稼ぎだの何なのをバッサリと切り捨てて作っていたならば、人を集められた可能性は高い。
もちろんかなりリスキーな選択であり、id softwareの経営や「しがらみ」を鑑みたときに難しかったのかもしれない。
というよりも最初から『Quake Live』は「将来のコアゲーマー」を育成するために作られていた可能性もある。
実績はあるもののサーバーの運営などがユーザー任せだった『QuakeIII』を、大会で採用されるようなゲームとしてid software運営の『Quake Live』に一本化するという試みと考えられなくもない。
レールガン
レールガン。これも当てづらい

実力差がでやすい理由

『Quake Live』が上級者偏重になっている理由は実力差をひっくり返す運要素がまったくないからだ。
実力の差が顕著に出すぎる。
これは一対一のDuelモードをやると嫌と言うほど理解できる。
他のルールでは殆ど変わらないスコアを取るプレイヤー同士でさえ、酷い点数差がついてしまう。
確かにDuelのルールが勝者優勢になっていることも理由にあるのだが、それよりも実力がある程度開くとまったく相手にならないことが重大である。

次に『Quake Live』は攻撃を敵に当てることからして難しい。
初心者でも扱えるような使いやすい武器は往々にして威力が低く設定されている。
上級者向けの武器は使い方が非常に難しく、そして攻撃を当てにくい仕様のおかげで初級者が上級者を「まぐれ」倒せるようなことがない。
もちろんあまりにもマグレが起こっていてはゲームとして成立しないので、ある程度の線引きは必要である。
『Quake Live』で言えば強力なロケットランチャー・レールガンあたりが全まったく持って使いにくく、使いやすいマシンガン・ショットガンは弱すぎる。
これでは大人数が入り乱れるデスマッチの乱戦であっても、初級者は上級者を倒せない。

また、武器の扱いは高度に慣れる必要があるため、自分が上手くなっていく過程がなかなか感じにくいのも『Quake Live』の欠点だろう。
上手くなったかどうか分からないのではモチベーションも続かない。
練習しても練習しても、いつまで経ってもカモになり続けるゲームで誰が継続的にプレイするだろうか。
上手い上級者だけがやり続けるのだ。
つかいやすいぶき
敵に当てやすい武器がまったく使い物にならないのがQL

ポテンシャルは高いが、明らかに時代に合っていない

もし今でも上級プレイヤーがたくさんいて日夜しのぎを削っているのであれば、向上心に燃える人たちへもお勧めできた。
数ヶ月前なら『ストリートファイターIV』のキャッチフレーズのように「俺より強い奴に会いに行く」という人には、『Quake Live』は一つの選択肢になり得た。
しかし今は思う存分遊べるほどの人がいない。
人が集まるのは週末だけだ。

また、人がいてもCA(クランアリーナ)という戦略性もなにもないバカルールにしか人がいなくなっている。
CAは2チームがすべての武器と防具を身につけた状態で戦いあうルールである。
『Quake Live』のおもしろさは「アイテムを奪い合うこと」にあるので、アイテムを奪い合う必要がないCAはルール自ら長所をないがしろにしている。
もちろん何も考えずにやるのなら悪くはない。

『Quake Live』が人を集められなかった理由は、その難しさにあった。
操作が難しい、覚えることが多い、よって熟達したプレイヤーには大きな差をつけられる。
また個人戦が多いのでチームのためになる行動というのも取りにくい。
マッチシステムも、実は上級者だけを選別するシステムとして作用した。
初心者はFFA(デスマッチ)といった、乱戦に潜り込むこともできない。
未だに英語が共通語で課金方式がクレジットカードのみと言うのも、日本人を寄せ付けない。
これでは人が集まるわけがないのだ。
ブラウザ
ブラウザ内で起動するとこんな感じ。正直画面が小さくて大変だと思う


まとめ

名作ゲームそのままをブラウザゲーム化したので、一部無料で遊べるゲームとしては異質なほど質が高かった。
しかし初心者を顧みない作りは新規ユーザーをことごとく排除した。
本来なら初心者保護として作られたマッチシステムも、時間が経つにつれ上級者のみを選別するような仕組みへと変わっていく。
そして多くの人がいなくなった。

65点

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