レビュー
理論上は良いゲームなんだと思う
P2Pを採用するのは愚作である
『ブラックショット』は既存のオンラインFPSを良く研究し、しっかりと考えて作られている。
ところが、いざサービスを開始してみると事前に予想できたこととは違う展開が待っていた。
開発の認識が甘かったとか、リプレイ不足だとか言うこともできるだろう。
まずゲーム自体をダメにしているP2Pについて。
P2PはFPSのようなアクションゲームには向かない通信方式である。
韓国は国土が狭いためにP2Pを使用してもさほど大きな問題はでないが、韓国よりも広い日本では問題が出てくる。
それはラグの問題だ。
日本でもプレイヤー同士の回線やスペックがかなり高品質でパソコン同士の位置が近ければラグが発生することはいないが、そんなことはあり得ないので、
ラグは確実に発生する。
それでもシーアンドシーメディアがP2Pを採用している理由は、おそらくコストが関係している。
サーバーを用意して遊ばせる「サーバークライアント方式」と違い、運営は大規模なサーバーを設置する必要がないので、コストは低く抑えられるのである。
運営が手を抜いた結果、プレイヤー同士が不必要にラグを感じるゲームとなってしまった。
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基本、ラグっている人ほど弱い
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しかもP2Pで感じるラグというのは、自身が海外サーバーへ遠征して感じるものとはまったく異質なものである。
P2Pでは回線か何かの調子が良いときはあまりラグっぽくないが、運が悪いとラグ地獄に陥ってワープしたり攻撃が全く当たらないなんて事になる。
逆に自分が神になったかのような強さを発揮できる場合もあり得る。
要する
に安定性が全くないのである。
ただ、回線が良い人ほどラグが少ないと言われている。(しかし光でもダメな人はいるのだからよくわからん)
言い換えれば回線がいい人ほど強い。
回線状態が悪いと、相手の姿が見える前に殺されたなんてことにもなりやすい。
私は回線状態がかなり悪いせいか、何もできずに死ぬことが多かった。
こういったラグは、ゲームとして楽しむ楽しまない以前の問題だ。
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日本のマップも用意されている
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多彩な遊び方
『ブラックショット』の最も良いところはオンラインFPSの問題点の一つ、ゲーム内容のマンネリについてある程度対策をしていることだ。
それは多彩なゲームルールである。
一つのマップがあるとして、そのマップはTDMだけでなくSDやTDFにも利用されたりしている。
ルールによって要求される立ち回りがまったく違ってくるので、一粒で何回も美味しいのだ。
特定のルールに向かないマップや、専門に用意されたマップもあり、ゲームバランスについて開発時点では割と考えていたと思われる。
多くのルールの中でも、TDFやSDi(チームデスフラッグや爆破デスマッチ)というルールはあまり類のないゲームモードでもあり、FPSに慣れている私であってもかなり新鮮に遊ぶことができる。
そして一人で遊べるCoopモードの存在も無視することはできない。
かなり単調なモードなので何回かやると暇つぶしにもなりにくいのだが、ウォーミングアップや自分の使ったことのない武器の試し撃ちには有用だ。
あとゲームに慣れていない初心者が射撃感覚をつかむのにも使えるだろう。
無いよりはマシだが、あったほうが良いゲームモードである。
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Coopモードの様子
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カジュアル指向の『ブラックショット』
オンラインFPSはカジュアル指向ではないと過疎化すると言われている。
韓国では日本において正式サービスを行っていないゲームがたくさんあるのだが、多くの不人気作と人気作を見比べると、カジュアル指向であるほど人が集まっているという。
Black Shotはかなりカジュアル指向である。
複雑なルールも、難しい扱い方の銃も存在しない。
発砲音や銃撃エフェクトもど派手でキャラクターの操作が軽快なため、万人向けの仕様になっている。
個人的には大げさなぐらいの発砲感覚やキビキビとした動きは、『サドンアタック』の良いところをよく研究していると感じる。
ゲームとしては割と良くできているAVAはこの二つが欠点でもあったので、Black Shotは際だっている。
ところが、『ブラックショット』は長く続けていくほど欠点がたくさん出てくる。
ゲームを始めて間もない頃は気づかなかった不満点がジワジワと出てくるのだ。
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見た目はしっかりしてるんだけどね
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やればやるほど物足りない
『ブラックショット』にはたくさんのゲームモードが用意されていて、それはよいのだがマップが粗悪だ。
全体的に狭くてルートが多いために、爆破(SD)ルールでは相手の裏の取り合いや突撃勝負になりがちだ。
こうなっては守りや攻めの駆け引きが生まれにくい。
いくらたくさんのゲームルールを用意しても、やはりメインで遊ばれるのは爆破だ。
爆破ルールは一撃死の緊張感や駆け引きが他のモードよりも強く、臨機応変に動く必要性がおもしろ味を生んでいる。
その爆破に向かないマップばかりなのである。
独自のルール・・というか、
私がベータテストのプレイレポートでおすすめしていたTDF(チームデスフラッグモード)は、研究し尽くされた結果面白くもないモードへと変貌してしまった。
TDFでは敵を倒したり敵陣の旗を自軍陣地に持っていくことでポイントが入る。
当たり前だが旗を自軍へ持っていったほうがポイントは高い。
しかし、
旗を持ち帰ったときのポイントが少ないために、無闇に持ち帰らない方が勝てるようなバランスだというのが判明してしまった。
こうなってはTDFの皮を被ったTDMモードである。
本当に押してるときに隙を見て、敵の旗を奪うぐらいしか楽しみが無くなってしまった。
ゲームになれていない内はガンガン旗を取り合っていて面白かったのに、残念だ。
ということで『ブラックショット』で一番面白いのはTDMになっている。
ただ、現時点ではTDMを開催する部屋がないし、自分で作っても人が来ない。
たとえあったとしても、だだっ広い場所に箱が数個おかれただけのクソマップばかり遊ばれているのが現状だ。
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これがダメマップだ
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目玉が機能しないので、平凡なオンラインFPSになった
『ブラックショット』の目玉であるパートナーシステムは、斬新ではあるものの機能していない。
面倒な割に恩恵が少なく、無闇に連携しようとするよりも自分の身を守った方がよいからである。
例えばパートナーの視点をオンにできるのだが、一度に自分の視点とパートナーの視点を見ることは普通の人間には不可能だ。
マップが狭いためにラジオチャットを利用した連携の意味も少ない。
ゲームを開発しているときは、私が指摘した全ての事柄が上手くいくと思われていたに違いない。
しかしサービスを開始してみると全然機能しなかった。
結局、「普通のオンラインFPS」として爆破ばかりが遊ばれている。
銃撃戦自体は悪くない出来なので、そこそこ人は居着いているようだ。
『ブラックショット』は何が優れているのかを指摘しにくい。
本来長所となるはずの要素が可もなく不可もなくて、存在感がないのだ。
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期待のTDFモードも廃れてしまった
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