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Black Shot(ブラックショット)


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2009年
開発会社:Vertigo Games

公式ウェブサイト

ベータテスト時の感想もあるので、そちらも参照して欲しい。
リンク

2010年12月15日をもってブラックショットはサービスを終了しました。
サービス終了についての雑感は最下部に書いてあります。

レビュー脱稿日2009年10月/改稿 2010年12月 /最終更新日2011年3月

紹介

『Black Shot(ブラックショット)』は韓国のVertigo Gamesという会社が開発、日本ではシーアンドシーメディアが運営をしていたオンラインFPSだ。
オンラインFPSは色々と乱立されすぎていて特徴を出すのが難しくなっている。
その中でもミリタリー要素のあるゲームは王道中の王道であって、競争が激しい。

『ブラックショット』がもつ他のゲームにはない特徴はパートナーシステムだ。
これによって同じチームの一人とパートナーを組み、様々な要素を扱える。
パートナーの視点を表示したり、細かなラジオチャットをすることができる。
しかし強制されるものではないので、他のゲームと同じように遊ぶことも可能だ。
パートナービュー
左に見えるのがパートナーの視点だ
に目を引くのは様々なカスタマイズ要素だ。
同じ種類の武器(スナイパーライフルなど)を使い続けることで微量ながら能力が上昇し、専用の武器を扱えるようになったりする。
頭や胴体につけるヘルメットや、特定の能力を上昇させるアイテムも用意されており、キャラクターを自分の好きなように成長させることができる。
アバター要素も豊富に用意されている。

課金要素は成績初期化や名前変更が中心なのだが、高性能のレア武器が一定の確率であたるアイテムボックスも販売されている。
当たる確率は低いとはいえかなり強いので、ゲーム中にレア武器を装備している人を見つけたらある程度諦めるしかないだろう。
一応、レア武器を持っている人を倒して奪うことはできる。
こういった「課金つえー」が嫌いな人にはおすすめできない。
金UZI
黄金に輝く武器
ゲームルールは一般的なTDMや爆破(SD)だけではなく、一風変わったものが用意されている。
まずは一人プレイもできるCOOPモードだ。
大量のNPCを相手に一定時間防衛するという内容なので、時間待ちや練習に使える。
TDMにCTF(キャプチャーザフラッグ、敵陣地の旗を自分陣地に持ち帰ることで点数を得られるモード)の要素を付け加えたTDFモードも面白い。
敵を倒しても旗を奪ってもポイントを得られるため、立ち回りが重要になってくる。
爆破(SD)と言えば死んだプレイヤーは次のラウンドまで復活できないのが普通の仕様ではあるが、何度でも復活できるモードへと変更もできる。
そして固定リスポーンになりがちなTDMも、ある程度のランダムリスポーンにすることができる。
同じ事をやっていればいつかは飽きてしまうので、様々なルールはマンネリ化防止のためにも魅力的だ。

『ブラックショット』の特徴とも言えないが、通信方式にはP2P(ピアツーピア)を利用している。
これは多くの人を悩ませる問題となっている。
戦闘
やたらと派手な戦闘

レビュー

理論上は良いゲームなんだと思う

P2Pを採用するのは愚作である

『ブラックショット』は既存のオンラインFPSを良く研究し、しっかりと考えて作られている。
ところが、いざサービスを開始してみると事前に予想できたこととは違う展開が待っていた。
開発の認識が甘かったとか、リプレイ不足だとか言うこともできるだろう。

まずゲーム自体をダメにしているP2Pについて。
P2PはFPSのようなアクションゲームには向かない通信方式である。
韓国は国土が狭いためにP2Pを使用してもさほど大きな問題はでないが、韓国よりも広い日本では問題が出てくる。
それはラグの問題だ。
日本でもプレイヤー同士の回線やスペックがかなり高品質でパソコン同士の位置が近ければラグが発生することはいないが、そんなことはあり得ないので、ラグは確実に発生する
それでもシーアンドシーメディアがP2Pを採用している理由は、おそらくコストが関係している。
サーバーを用意して遊ばせる「サーバークライアント方式」と違い、運営は大規模なサーバーを設置する必要がないので、コストは低く抑えられるのである。
運営が手を抜いた結果、プレイヤー同士が不必要にラグを感じるゲームとなってしまった。
やられた瞬間
基本、ラグっている人ほど弱い
しかもP2Pで感じるラグというのは、自身が海外サーバーへ遠征して感じるものとはまったく異質なものである。
P2Pでは回線か何かの調子が良いときはあまりラグっぽくないが、運が悪いとラグ地獄に陥ってワープしたり攻撃が全く当たらないなんて事になる。
逆に自分が神になったかのような強さを発揮できる場合もあり得る。
要するに安定性が全くないのである。

ただ、回線が良い人ほどラグが少ないと言われている。(しかし光でもダメな人はいるのだからよくわからん)
言い換えれば回線がいい人ほど強い。
回線状態が悪いと、相手の姿が見える前に殺されたなんてことにもなりやすい。
私は回線状態がかなり悪いせいか、何もできずに死ぬことが多かった。
こういったラグは、ゲームとして楽しむ楽しまない以前の問題だ。
日本のマップ
日本のマップも用意されている

多彩な遊び方

『ブラックショット』の最も良いところはオンラインFPSの問題点の一つ、ゲーム内容のマンネリについてある程度対策をしていることだ。
それは多彩なゲームルールである。
一つのマップがあるとして、そのマップはTDMだけでなくSDやTDFにも利用されたりしている。
ルールによって要求される立ち回りがまったく違ってくるので、一粒で何回も美味しいのだ。
特定のルールに向かないマップや、専門に用意されたマップもあり、ゲームバランスについて開発時点では割と考えていたと思われる。
多くのルールの中でも、TDFやSDi(チームデスフラッグや爆破デスマッチ)というルールはあまり類のないゲームモードでもあり、FPSに慣れている私であってもかなり新鮮に遊ぶことができる。

そして一人で遊べるCoopモードの存在も無視することはできない。
かなり単調なモードなので何回かやると暇つぶしにもなりにくいのだが、ウォーミングアップや自分の使ったことのない武器の試し撃ちには有用だ。
あとゲームに慣れていない初心者が射撃感覚をつかむのにも使えるだろう。
無いよりはマシだが、あったほうが良いゲームモードである。
coop
Coopモードの様子

カジュアル指向の『ブラックショット』

オンラインFPSはカジュアル指向ではないと過疎化すると言われている。
韓国では日本において正式サービスを行っていないゲームがたくさんあるのだが、多くの不人気作と人気作を見比べると、カジュアル指向であるほど人が集まっているという。
Black Shotはかなりカジュアル指向である。
複雑なルールも、難しい扱い方の銃も存在しない。
発砲音や銃撃エフェクトもど派手でキャラクターの操作が軽快なため、万人向けの仕様になっている。
個人的には大げさなぐらいの発砲感覚やキビキビとした動きは、『サドンアタック』の良いところをよく研究していると感じる。
ゲームとしては割と良くできているAVAはこの二つが欠点でもあったので、Black Shotは際だっている。

ところが、『ブラックショット』は長く続けていくほど欠点がたくさん出てくる。
ゲームを始めて間もない頃は気づかなかった不満点がジワジワと出てくるのだ。
見た目は良い
見た目はしっかりしてるんだけどね

やればやるほど物足りない

『ブラックショット』にはたくさんのゲームモードが用意されていて、それはよいのだがマップが粗悪だ。
全体的に狭くてルートが多いために、爆破(SD)ルールでは相手の裏の取り合いや突撃勝負になりがちだ。
こうなっては守りや攻めの駆け引きが生まれにくい。
いくらたくさんのゲームルールを用意しても、やはりメインで遊ばれるのは爆破だ。
爆破ルールは一撃死の緊張感や駆け引きが他のモードよりも強く、臨機応変に動く必要性がおもしろ味を生んでいる。
その爆破に向かないマップばかりなのである。

独自のルール・・というか、私がベータテストのプレイレポートでおすすめしていたTDF(チームデスフラッグモード)は、研究し尽くされた結果面白くもないモードへと変貌してしまった。
TDFでは敵を倒したり敵陣の旗を自軍陣地に持っていくことでポイントが入る。
当たり前だが旗を自軍へ持っていったほうがポイントは高い。
しかし、旗を持ち帰ったときのポイントが少ないために、無闇に持ち帰らない方が勝てるようなバランスだというのが判明してしまった。
こうなってはTDFの皮を被ったTDMモードである。
本当に押してるときに隙を見て、敵の旗を奪うぐらいしか
楽しみが無くなってしまった。
ゲームになれていない内はガンガン旗を取り合っていて面白かったのに、残念だ。

ということで『ブラックショット』で一番面白いのはTDMになっている。
ただ、現時点ではTDMを開催する部屋がないし、自分で作っても人が来ない。
たとえあったとしても、だだっ広い場所に箱が数個おかれただけのクソマップばかり遊ばれているのが現状だ。
ダメマップ
これがダメマップだ

目玉が機能しないので、平凡なオンラインFPSになった

『ブラックショット』の目玉であるパートナーシステムは、斬新ではあるものの機能していない。
面倒な割に恩恵が少なく、無闇に連携しようとするよりも自分の身を守った方がよいからである。
例えばパートナーの視点をオンにできるのだが、一度に自分の視点とパートナーの視点を見ることは普通の人間には不可能だ。
マップが狭いためにラジオチャットを利用した連携の意味も少ない。

ゲームを開発しているときは、私が指摘した全ての事柄が上手くいくと思われていたに違いない。
しかしサービスを開始してみると全然機能しなかった。
結局、「普通のオンラインFPS」として爆破ばかりが遊ばれている。
銃撃戦自体は悪くない出来なので、そこそこ人は居着いているようだ。

『ブラックショット』は何が優れているのかを指摘しにくい。
本来長所となるはずの要素が可もなく不可もなくて、存在感がないのだ。
TDF
期待のTDFモードも廃れてしまった

まとめ

目玉要素がたいしたものではなかったので、凡庸に感じられるゲーム。
通信方式の問題や、現時点で遊ばれているゲームモードが大して面白くないことは大きな問題点だ。
戦闘自体はカジュアルよりでしっかりしているのが唯一評価できる点だと思う。
そのあたりは割としっかりしているので、初見の印象はかなり良い。
ところが長い間やっていると欠点が浮かび上がってくる。

47点

サービス終了によせて

『ブラックショット』は2010年12月で一年半続いたサービスを閉じる。
オンラインゲームの運営をするにあたっては、収益がでなければアッサリと切ってしまう方が人件費や設備費用の節約になる。
そのため、ユーザー増加が望めないゲームはさっさと切ってしまうのも一つの手である。
同じポータルを共有するゲーム全体での相乗効果もあることにはあるのだが、実際はFPSを遊ぶ人がMMORPGなどのゲームを同時に遊ぶのかは謎である。
同様に、MMORPGからFPSのように、重いゲーム同士を遊び分けることもあまり想像できない。
あるとすればライトなゲームをいくつも遊び分けることぐらいだろう。

そういう観点を持ってブラックショットを見てみると、運営のシーアンドシーメディアはどれもが重めのゲームを扱っている。
ということは相乗効果は望めないと言える。
したがって、振るわなかったブラックショットを切り捨てるのは企業として当然の判断である。

どうしてブラックショットが人気がなかったのか、にはいくつか理由が考えられる。
三つに絞って紹介してみよう。

一つ目はP2Pの使用である。
P2Pを使用したゲームは通信環境が悪くなってしまう。
なぜかというと、P2Pというのは喩えればゲーム機につなげたコントローラーの配線をのばすようなものだからである。
またホストプレイヤーが非常に強くなってしまう。
実際ブラックショットでは「ホストが無双状態」になることが多い。
少しでもホストプレイヤーが調子良いと、ゲームルームの通信状態が良くても投票でキックされてしまうぐらいの嫌われようである。

二つ目は安っぽさである。
銃を敵に当てた感触がわかりにくく、また命中したかどうかわかりにくい。
最近のアップデートで通信はだいぶマシになったのにもかかわらずヒット感覚は劣悪だった。
ということは、かつてのラグ地獄のときは「当たったのか当たってないのか分からない」ゲームだったと言える。
死んだときの軽い音や重さを感じないジャンプの存在など、ガラクタをいじっているような感触すら覚える。
サービス開始当初は非常に劣悪なゲームであった。

三つ目は『サドンアタック』や『スペシャルフォース』などとの差別化ができなかったことである。
埋もれてしまったことが最も重大な原因だと考えている。
『ブラックショット』は決してバランスが崩壊しているゲームではない。
今年行われたアップデートでどの武器でもそこそこ戦えるようにもなっている。
『ブラックショット』は『サドンアタック』などを非常に研究していて、「しっかりとした」ゲームとだった言える。
しかし、ユーザーにとっての『ブラックショット』は『サドンアタック』などの亜流にしか見られていなかった。
『スペシャルフォース』などを遊んでいる人が、わざわざ『ブラックショット』へ移動するほどの差異や魅力がない。
あまりにも似すぎているために「他ゲームからの移民」が根付くことはなかったのである。
入れ込んでいるゲームを捨てて未知のゲームに行く筋合いはない。

『ブラックショット』のサービス終了から見えてくるのは、量産型のゲームは人気が出ないという当たり前の話である。
オンラインFPSは「パイの奪い合い」に近いような状態が続いている。
新規プレイヤーをドカドカ流入させられるような新規タイトルが出ていないのが現状だ。

余談。『ブラックショット』を遊びたければ海外版に接続して遊ぶという方法がある。
これは海外のユーザーに迷惑をかけるので、本来はやってほしくない行為ではあるが、どうしても遊んでみたい人は各自で調べて見るのも良いだろう。

最後
魅力に乏しい

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