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オンラインFPSとアイテム課金 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介

オンラインFPSとアイテム課金
2010年10月
現在、PCでのFPSにおけるオンラインの枠組みには大きく分けて2つの流れがある。

一つは従来からのPCゲームそのままの売り方である。
メーカーがゲームを売り、ユーザーがサーバーを立ててそこで遊ぶ。

二つ目は私が『オンラインFPS』と呼び続けている種類のサービスである。
これは主に韓国の企業が日本で行っているオンラインゲームの一種だ。
ゲーム自体は無料で配布して多くのユーザーを引きつけるが、有料アイテムを販売して利益をあげる。
そのかわり企業側で様々なサービスを随時行っていく。

『オンラインFPS』は長所もあれば短所もある。
今日はアイテム課金と『オンラインFPS』について少しだけ考えてみようと思う。

車と自転車。
どちらも長短ある。

旧来からの手法であるPCゲームの売り方には、ひとつ大きな問題が隠れている。
それは最終的には「誰かがゲームサーバーを立てなくてはならない」という、ユーザーの自助や努力の必要性である。
言い換えれば自己自立・自己責任の原則に近く、ゲームメーカーは自分たちでコミュニティを盛り上げていく必要性というものがあまりなかった。
もちろんメーカーは公式サーバーを立てたり、フォーラム(ネット掲示板)を運営することもあったが、大々的にゲームへ介入することは通常考えられなかったと言えるだろう。
ゲームバランスを大きく変える大規模なアップデートは、むしろ有志のユーザーによるMODがやるべき役割と認識されていたのである。
であるから昔のFPSになればなるほどMOD制作は推奨されていた。

以上のような仕組みになっていたのは、パッケージゲームを売ってオシマイというビジネスモデルが大いに関係していたと推察される。
このようなモデルの場合「既に売ってしまったゲームからお金を追加的に徴収すること」は極めて難しい。
したがって昔のゲームでは「拡張パック・ミッションパック」といったカタチで、完成されたゲームの資源を有効活用しながら小遣い稼ぎが行われていた。

『オンラインFPS』は以上のような成り立ちをすべて個人と企業との金銭的取引に転化したものである。
企業を母体とする運営がサーバーを稼働させ、フォーラムを公式サイトで提供し、イベントを定期的に開催する。
儲けたお金は運営費用に使われるばかりか、今後のアップデートへも使われる。
『オンラインFPS』は継続的にユーザーからお金を吸い上げなければ利益が出ない仕組みになっている。
だからユーザーをつなぎ止める措置が利益を上げるために必要なのだ。

ハロウィンを盛り上げるには、軒先にこのようなものを置くだけでも良い。
お店なら人形などをそれとなく飾っても、ハロウィンを楽しむことには変わらない。

これだけならば何も厄介事は起こらない。
しかし『オンラインFPS』がアイテム課金を選択したことによって、歪みが生じてしまっている。

少し補足にするとアイテム課金にはメリットも多い。
詳しくは各自調べて欲しいのだが、ここでは「ユーザーのメリット」について一つだけ述べておく。
多くのアイテム課金ゲームは初期プレイ無料をうたい文句にしている。
つまりお試しプレイが約束されている。
ここで私は「ユーザーが無料で遊んで単に自分に合うか合わないを判断することだけがメリットではない」と指摘したい。
というのも、アイテム課金ゲームで販売される有料アイテムの「真の価値」は、実際にプレイした人でなければ判断できないからだ。
有料アイテムを購入すればどのような意味・価値がゲームの中で生まれるのかはやってみなければわからない。
それゆえにアイテム課金ゲームで有料アイテムを購入したユーザーは、大きな不満を抱えることは少ない。
買う前から効果や価値が明らかになっているため、文句を言う人は初めから購入しないことを選択しているはずだ。
こうして企業にとっての「お得意様」は、顧客満足度が高くなる。

ついでに体験版と初期無料ゲームの違いというのも浮き上がってくるだろう。
あくまでも体験版は製品を「買う価値」があるかどうかを評価するものであって、初期無料ゲームのアイテム課金は「ゲームの中で新たに生み出される価値」を見極めるものなのだ。

『オンラインFPS』は対戦ゲームである。
よって対戦をするにあたっては公平性・平等性が極めて大切となる。
例えば、装備する武器・防具の均一性や使用できるアイテムのバラツキは「ゲームのルール」を脅かさない程度にとどめるべきである。
スポーツで言うと水泳競技で使用禁止の水着があったり、野球でコルク入りのバットが禁止されているなど、色々と規則が用意されているのは皆さんもご存じの通りだろう。
ところが「アイテム課金」というのは、その成り立ちからして公平性・平等性を元にしているわけではない。
「アイテム課金」というのはいわば差異を売り物にしているのである。

このアバターアイテムを買えば買っていない人よりも格好良く着飾れる、かわいくなれる。
体力回復アイテムを買うと、他の人よりも効率よく狩りを行える。
そして同じ文脈で次のようなものが『オンラインFPS』で販売されるのだ。
「このアイテムを買えば、他の人よりも強力な武器を使えますよ」。

アイテム課金がつまるところ羨望を生み出すニンジンである限り、『オンラインFPS』がゲームとしての公平性を維持するのは至難の業だと言える。

ルールは大切。

平等感を堅持したままの『オンラインFPS』は極論すれば、サドンアタックだけである。
FPSは自分のキャラクターが見えない。
ユーザーはアバターアイテムを購入する動機をなかなか抱きにくいという問題がある。
しかしながらサドンアタックは頭一つ二つ飛び抜けて人気があるFPSなので、ゲームの公平性を損なわない程度の有料アイテム販売で収益が望めるのだ。
それだけの人数が集まっていると言い換えられる。
一方、他の『オンラインFPS』は緩やかなアイテム販売だけでは利益が出ないことは明白だ。
絶対的なユーザーの数に直面した零細ゲームの運営が行う判断は決まっている。
「比較的重い有料アイテムでも購入してくれるユーザーから、出来るだけお金を寄せ集める」。

『オンラインFPS』には大きな歪みが二つ存在している。
一つは以前のコラムでも触れたように、「殆どのゲームがカウンターストライクの亜流で武器の多様性や爆破ルールの多様性を生かし切れていない」ことであった。
もう一つはこのコラムで書いたような、課金方式の問題である。
ユーザーごとに行われていたこと金銭的に可視化した行為はメリットもあるが、アイテム課金を行うことで、ゲームの根幹を揺るがしかねない爆弾を抱えてしまっている。
これからの『オンラインFPS』はどうなるのであろうか。
その行方には丹念に注目していきたいと考えている。


他にも問題点はあるだろうし、公平性についての話も煮詰まっていないが、たたき台として書きました。