レビュー
レインボーシックスというお手本がありながら、ことごとく劣化。アクションシューティングとしてもつまらない
中途半端な作り
『ロックダウン』は何を目指して作られたのかが非常にわかりにくいゲームである。
リアル系にするのか、それをスッパリ排除してアクションよりにするのか。
どちらでもないことが『ロックダウン』である。
どっちつかずで中途半端なのはいただけない。
まず紹介でもちょこっと触れているとおり、システムはリアル系とは程遠い。
元々シミュレーターよりに作られていたシリーズだったが、その要素をかなり排除している。
かなり削られたといわれている『3』よりも、さらに、だ。
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簡単な指示はできる。
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とうか『ロックダウン』は明らかにアクションゲームっぽい感覚でプレイすることを前提に作られている。
敵の耐久力が低かったり物陰から首だけ出して攻撃したりするリアル的な要素を持ちながら、こちらは歩きながら撃っても当たる。
そのこと自体は悪くはないのだが、実際は『レインボーシックス3』やその続編『ブラックアロー』で絶妙な調整がされている。
『ロックダウン』は『レインボーシックス3』というお手本があるわけである。
小説などと違って、お手本があるのだから続編は変な要素を付け加えない限り悪くはならないというのが普通の考えだと思う。
『ロックダウン』の場合、ゲームシステム根幹にかかわる要素は付け加えられていないにもかかわらず、中身は劣化している。
人物モデリングも悪くなっている。
屋外描写については3を上回るほどの細かさだと思うが、「動き」を含めた人物の動作はかなり悪い。
音関係では、武器の射撃音が薄っぺらくなった。
特徴のある音を出せばそれだけ射撃感というのが出てくる。
『ロックダウン』の音には面白みもなにもない。
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交戦
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おばかな敵と味方
そして敵も味方もAIがダメになっている。
レインボーシックス3自体味方のAIはほめられたものではなかったが、
以前にもまして味方は役に立たない。
ミッション後に銃の命中率などが表示される。
ところがARを担いでいる味方の命中率が一桁なんてのはごく当たり前のことである。
壁や障害物を利用したフォーメーションをとる動作は機敏でかっこよくとも、敵に銃はあたらないし、それまでの移動はカックカク。
敵側のAIはもっとダメである。
隣にいる仲間が狙撃されても知らん振りとか、延々と壁に向かって立っているとか、こちらが真横にいるのに銃を撃とうとしないとか。
総じて敵も味方も弱く設定されているようだ。
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敵さんこちらに気づいてません。
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敵のAIがどうしてこのように弱く設定されたのかというのは、自分なりの意見だと、難易度のバランスをとるための措置だったのだと思っている。
AIに限らず、敵の銃の命中率はかなり低く設定されている。
『ロックダウン』はいつでもセーブが出来る代わりに、前作と比べてもマップが長く、敵の数も多い。
そしてレインボーシックスお決まりの要素ではあるが、ミッション中に体力を回復する手段がない。
したがってマップが長く敵が多く出現することを考えれば、仮に敵が強ければ難易度が急上昇する。
大抵のアクションゲームやFPSは、一体一体の敵を強くする代わりにプレイヤーに体力回復の措置を与えることが多い。
(もちろん難易度最大モードとか、特殊なモードは除く)
だから敵が強くても難易度のバランスが取れている。
『ロックダウン』は体力を回復できないので必然的に敵を弱くしないとバランスが崩壊する、と製作者たちは考えたのだろう。
そう考えればお粗末な敵AI、命中率が低すぎる敵の攻撃を説明できる。
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敵の反応は鈍い。
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じゃあ味方はどうなんだということになる。
これは味方が強すぎれば敵に負けることはなくなってしまうので弱くした、と考えられる。
もっとも、開発側にAIを作れる人材がいなかったのでこのようなバランスに仕上げざるを得なかったのかもしれないが。
このバランス調整は成功したか失敗したかと問われれば、私は失敗したと答える。
なんつーか、よわっちいテロリストを血祭りに上げているだけの印象しか残らない。
味方も頼りにならないので、後方で制圧射撃だけさせて自分ひとりで敵を片付けたほうが楽になる。
これはただの「テロリストハント」だと評する人がいるのもうなずける。
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自分が先にいきすぎると、味方がついてこなくなる。
ところどころで待ってあげないといけない。
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下手な難易度調整
後半になってくると、難易度の練りこみが足りなくなってくる。
敵の攻撃に当たるか当たらないかというのは確率的に決まっているようで、超遠距離からヘッドッショットを食らって死ぬときもあれば、ガンガン近づいても弾にかすりもしないときもある。
後半は敵の命中率が上がっているので、理不尽な死に方をすることも少なくない。
翻訳にも不適切なものがある。
特におかしいのがミッション11「触媒」のスナイパーパートである。
ここでは、上官からの指示やミッション目標には「監視システムを無効化するまで味方を援護しろ」と書いてある。
ということは、味方が監視システムを無効化するまで援護すると考えるのが普通だと思う。
だが、このミッションをクリアするためには、スナイパー自らが監視システム(監視カメラ)を遠距離から狙撃して壊す必要がある。
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真ん中のライトが監視カメラ。
銃撃で壊せるのだが、気づかないと苦労する。
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レインボーシックスの持ち味は扉を介した室内戦闘の緊張感だった。
『ロックダウン』でも室内戦闘はあるにはるのだが、敵の反応が遅い上にマップのつくりが下手なので緊張感はない。
ヒットアンドアウェイと小刻みに左右に動ければ、敵が反応する前に殺せてしまう。
また敵は遠距離になればなるほど攻撃が当たらない半面、こちらの攻撃はかなり当たる。
まあ要するに敵を倒しまくれということなのだろう。
そしてマップの作りこみが甘い。
言葉で表現しにくいのだが、
単に出てくる敵を倒すだけという感じが最初から最後まである。
敵配置の妙、マップ構成の妙が足りていないので、非常に単調になっている。
マップごとにロケーションが変わり、かなり多彩な場面を味わうことが出来ることについては素直に評価したい。
戦闘は単調でも、ロケーションの多彩で飽きさせないようにしている。
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目の前にロケットランチャーが着弾する様子。
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比較的面白いが長すぎるスナイパーパート
『ロックダウン』で追加されたスナイパーパートは、単調になりがちなプレイに変化をつけるという意味では良い考えだった。
ところが面白くない。
それはそうで、延々と敵をスナイプすることに面白さはない。
FPS(特にスナイパー)っていうのは極端な話、もぐら叩きである。
長時間もぐら叩きをやっていれば飽きない人間などいない。
スナイプゲームが悪いと言っているのではなく、
『ロックダウン』では長すぎるのが問題だった。
あとこれは自分の感性の話になるが、コンシューマFPSにおいてスコープを覗いたときの揺れはないほうが良い。
やってみないとわかりにくいがスティックで揺れを制御するのは難しいので、揺れがあるとアホみたいに当てにくい。
まあその分敵AIの反応度が遅く設定されているのだろうけど。
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スナイプ。
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総評
悪い点ばかりが目立つゲームだというのが総評である。
個々の要素に潜むわずかな悪さが全体をさらに悪くさせているので、色々と改善すれば良作になり得たかもしれない。
プレイヤーを含めた特殊隊員の人格や人間関係についてきちんと作られているのに、短いムービーパートでしか語られないのは残念である。
とにもかくにも消化不良のゲームだ。
コンシューマでは敵に照準を合わせにくいから敵の反応を遅くした。
敵の反応を遅くした分だけ敵を増やしてマップを長くした。
ボリュームが少ないとユーザーは文句を言うからボリュームを増やそう。
ところが、こんな調整をしたせいで非常に緊張感のないゲームに仕上がってしまった。
結論はこういうのに行き着くとおもう。
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敵はそっぽを向いている。
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