レビュー
お手軽スポーツ系にリアルタイムな戦況変化を盛り込んだ秀逸なゲーム。だが、実力差がつきすぎる。
スポーツ系FPSをよみがえらせた『タイタンフォール』
『Quake』シリーズや『Unreal Tournament』シリーズはスポーツ系FPSと呼ばれている。
何がスポーツ系なのかというと定義しにくいとはいえども、どちらもマップの移動に技術がものをいうゲームである点が共通する。
技術を駆使すれば素早くて相手の意表を突く動きができるようになり、戦闘で有利になる。
FPSは敵を銃で撃つゲームではあると同時にマップを移動するゲームでもある。
スポーツ系FPSはマップ移動の技術水準が高く、勝敗を左右しやすいゲームであるとも言えるだろう。
『タイタンフォール』はここまで述べたようなスポーツ系FPSの特徴を備えている。
ただし、移動するための技術は極力簡略化されているため、ストイックな練習や訓練は必要ない。
すなわち
『タイタンフォール』は特別な技術なしで誰でも遊べるようになったスポーツ系FPSなのである。
誰でも遊べるのだからマップ構造は複雑に、立体的になっていく。
従来のFPSでは見られないような多層的な構造のマップが『タイタンフォール』には多い。
横移動中心だったFPSに縦の移動をゲームの根幹から組み込み、本当の意味で三次元のビデオゲームへと生まれ変わったのである。
|
タイタンに乗って攻撃するとこんな感じです
|
戦況を目まぐるしく動かすタイタンの存在
『タイタンフォール』で最もきになるのは巨大ロボット「タイタン」の存在であろう。
タイタンによって二つの利点がひとつの試合にもたらされている。
一つ目は、生身の戦闘とは目先を変えるタイタンの操縦感覚である。
ふわふわとして壁や縁をものともせずに動くことができる人間と違って、ロボットのタイタンは大きな道しか通ることができない。
移動は軽快だが動く度にガシャンガシャンと音がするので、生身と比べたら重みがある。
また、タイタンの攻撃力があれば相手を問答無用で粉砕できる。
ずっと同じ戦闘をしていると飽きてくる。そんなときにタイタンが時間経過で扱えるようになり、プレイヤーへの刺激になっている。
二つ目の利点は、少し高度な意味での戦術の変化である。
人間対人間、人間対タイタン、タイタン対タイタンでは、立ち回り方が当然異なってくる。
タイタンを降下して利用するかどうかはプレイヤーの判断に任されており、各個人それぞれが任意に戦局をかき回すことができるようになっているのだ。
コールオブデューティーシリーズにあったキルストリークが全てのプレイヤーに平等に分配されていると思えば良かろう。
タイタンは対人間には圧倒的な強さをみせるため、人間対タイタン戦において人間側は慎重にタイタンの破壊を狙うしかない。
逆にタイタンに乗っている側は敵プレイヤーや敵NPCを蹂躙するチャンスである。
かといってタイタンで調子に乗っているとあっという間に壊されてしまうくらい装甲は弱い。
ここに、「人間対人間、人間対タイタン、タイタン対タイタン」に分類される
三つの次元の戦闘が入り乱れる戦場が生まれた。
|
壁走り
|
演出が負けの印象をなくす
マルチプレイでありながら演出に凝っているのも『タイタンフォール』の特徴だ。
ひとつ目の特徴は
タイタンの存在である。
タイタンが空中から降下してプレイヤーを拾い上げ、敵との戦闘へ向かう様子は実に細部の動きまで凝っている。
二つ目の特徴は、
試合がいくつものフェイズに別れている点である。
試合開始当初しばらくは生身の戦闘が行われる。
次に各プレイヤーは次々と自分のタイタンを呼び押せる。
ここで生身対タイタン、タイタン対タイタンの戦闘が行われる。
そしてまたしばらくするとタイタンが撃破されたりして、次のタイタン降下まで戦況は変化する。
タイタンが2分ごとに使えるようになっているため、試合が途切れることなく、次元の異なる戦いが行われるのだ。
試合の最後に勝ちチームと負けチームに分かれても、負けチームは撤収のための作業が残っている。
味方母艦に戻るだけの単純な作業なのだが、これがモチベーションが下がりがちな負けチームに最後の活力を入れてくれる。
もし母艦に戻れれば負けた感覚は薄くなるであろう。
三つ目の特徴は、まるで
戦場に放り込まれたようにみせる演出の存在だ。
試合が始まるとプレイヤーは航空機から降下する演出が挟まれている。
また、地上に降下すると銃を持ったNPCがそこら中にいるため、大規模な戦闘が行われているような印象を与える。
試合が終わっても、撤収ミッションが残っている。
このような流れが存在するため、何の脈絡のないゲームをやっているような感じをプレイヤーに与えない。
プレイヤーは一人の兵士であり、タイタンを扱うエリート兵士であり、勝ちも負けもあるというわけだ。
『タイタンフォール』はマルチプレイのゲームでありながら、流れるような演出と展開によって、「試合」というよりも「戦場」で戦っている印象を強く残しているのだ。
|
協力して進む
|
どうしても一方的な展開になりがち
しかし『タイタンフォール』にも欠点はある。
やはりスポーツ系FPSの血を引いているせいか、
一方的な試合が多すぎるのである。
一方的な試合が多くなってしまう理由は主に二つ考えられよう。
まず、
ゲームのスピードが極めて速い点を指摘できる。
速い操作がどうしても要求されるため、ついていけないプレイヤーは上級プレイヤーのカモになってしまいがちである。
いくら簡略化したといってもスポーツ系に似た操作なので、スポーツ系特有の、そしてスポーツ系が廃れてしまった理由の一つが如実に表れている。
次に、
タイタンの存在が実力差を広げていると言えるだろう。
タイタンは生身の人間に対してはかなり一方的に虐殺できることはすでにのべた。
そしてタイタン対タイタンの場合、2vs1になったときはほぼ2体いる側が勝ってしまう。
ということは、戦場にいるタイタンが多い陣営は圧倒的に有利なのである。
一旦、タイタンの数で差を付けてしまうと、試合がそのままタイタンの数が多いチーム有利に進んでしまう。
タイタンは確かに動かしていて気持ちよいのだが、点差を狭める要素よりも広げる要素として機能している。
二つ目の欠点があるとすれば、人間の能力の限界というものについて少し問題があると思う。
『タイタンフォール』には一部の武器やパッド操作にはオートエイム機能が用意されている。
オートエイム機能があれば敵を簡単に狙えるようになり、下手なプレイヤーでもなんとか戦えるようになる。
こういった操作は人によって異なるプレイヤースキルの限界をソフト側で引き上げようとしていると言える。
それでも
ゲーム側で用意した機能を存分に使いこなせるプレイヤーが思ったよりも少ないのである。
であるから上手なプレイヤーなら『タイタンフォール』は末永く楽しめるが、そうでない人には難しいゲームになってしまう。
もったいないととるべきか、それともスキル差だからしょうがないと諦めるのかは考え方の違いになるのだが、私は「『タイタンフォール』を100パーセント遊び尽くせる人が少ないのはもったいない」と考えている。
三つ目の欠点は「思う存分敵に突進して戦えない」ことにある。
プレースタイルの差に吸収されうることなのだが、敵にむかってどんどん突撃するよりも自分の身を守るようにしながら戦う方がスコアが良くなる。
FPSは総じてこうした特徴をもつゲームであり、『タイタンフォール』でもそれは変わらない。
次世代のFPSが世に放たれたようにに見えても、実際はそれほど新しいスタイルのゲームではないのである。
|
負けたら撤収だ!
|
1ミリの駆け引きから大らかに遊べるゲームへ
『タイタンフォール』を製作したRespawn Entertainmentはかつて『コールオブデューティー モダンウォーフェア』を作ったメンバーが中心になって作った会社である。
この二つのゲームに共通するのは、扱いにくい武器を使ってミリ単位で敵を狙い撃つ緻密なFPSを、もうすこし楽に扱えるように一般化した点に求められよう。
すなわち、『コールオブデューティー モダンウォーフェア』は『カウンターストライク』系FPSの難しさをマイルドにし、『タイタンフォール』は『Quake』などのスポーツ系FPSをマイルドにしたのである。
おそらくマウスを使えないコンソールのためというのが大きな理由だと思われる。
より多くの売り上げをあげるために大きい市場を見据えれば、PCゲーム専用からコンソールへと移行するのは必然である。
コンソールはゲームパッドで狙いをつけ、PCはマウスで狙いを付ける。
どうしてもゲームパッドは緻密に狙えないので、細かいところを狙うゲームには向いていない。
そこで、1ミリ単位の駆け引きが必要ではないゲームを作り出したのではなかろうか。
また、多くの人に売るためにはマニアックな要素を排除して操作を簡単にする必要がある。
『タイタンフォール』はロボットを操ったりしていて若干マニアックな層を狙っているように見えるが、実際は演出重視・緻密さよりも大らかさ重視・過去の難しいゲームの簡略化を行ったビデオゲームである。
スポーツタイプのFPSにありがちな欠点は抱えているものの、誰でも楽しめる製品に仕上がっていると言えよう。
|
操作は簡単である。上手さ下手さはかなり出てしまうが・・・。
|