レビュー
深みはないが大きな欠点が無い良質なオンラインFPS。
時代はCOD?
FPSの潮流は『クエイク』や『カウンターストライク』の模倣からコールオブデューティーの模倣へと移り変わっていったことを『スペシャルフォース2』は象徴している。
『スペシャルフォース2』に限らずコールオブデューティーのフォロワーはいくつかの特徴があるので、列挙しておこう。
サイエンスフィクションではなく、実在の武器・場面・部隊といったものを重視した外見。
隠れる場所や進行ルートが多い比較的入り組ませたマップデザイン(ただし『スペシャルフォース2』はそこまで入り組んでいない)。
音声には実銃を録音したものを使い、リアルさを重視している。
登場する武器やグレネードは挙動が素直で扱いやすい。
キャラクターの動作がキビキビとしていて無駄な待ち時間などがなく、ゲームスピードが極めて早い。
どの武器にも照準機を使った「狙う」動作が備え付けられている。
以上のような特徴を併せ持つゲームが2000年代後半から多くなってきている。
しかし
コールオブデューティー系のゲームはTDM(チームデスマッチ)というルールに向いている。
というのも武器やグレネードの挙動にクセがないせいで、武器を扱う楽しみや戦略性が低い。
次にとにかくダッシュ機能を含めて展開が早いため、落ち着いて遊ぶとどうしてもキャンプかラッシュの二択になってしまう点も指摘できる。
あとはミニマップがあるせいで敵の位置が丸わかりになってしまうことや、『スペシャルフォース2』の爆破(デモリッション)ルールでは爆弾を仕掛けた位置が分かってしまうなど、色々ある。
もし爆破(デモリッション)と呼ばれる、カウンターストライク系の大会で採用されるルールを深めようととするならば、『スペシャルフォース2』に大幅な改造を施さなければならないのだ。
ちなみに『コールオブデューティー4』ではProMODというのを入れればかなり競技に向いたゲームに生まれ変わる。
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早い展開で敵をどんどん倒す
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TDM(チームデスマッチ)が面白い
TDMで遊ぶマップはどれもがよく考えられたマップだ。
例えばオンラインFPSには珍しいランダムリスポーンのマップが二つも用意されている。
ランダムリスポーン方式は負けチームが圧迫されにくいので、負けていても楽しく遊びやすい利点がある。
固定リスポーン方式のマップについては乱戦向きのマップと裏取り重視のマップが用意されており、どちらも存在意義がある。
しかもどのマップにも狭い場所と開けた場所がバランスよく組み込まれていて、スナイパーライフル無双やショットガン無双にはなりにくい構造だ。
『スペシャルフォース2』はスピード感に溢れ、余計な操作がいらないゲームだと紹介で述べた。
死んでもすぐに復活でき、どの武器も深く考えることなく扱える。
無駄なことを考えずに敵に突撃して倒していくだけで楽しめるわけだ。
反射神経勝負で敵の頭を打ち抜き、ひたすら前へ進んでいく、そんな展開が面白い。
武器ごとのバランスも良好である。
ややアサルトライフルが万能すぎるとはいえ、マシンガン、ショットガンが活躍できるマップや場所がある。
どんなスタイルのプレーヤーでも、キャンパーでない限り楽しめるゲームになっているのだ。
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壁抜きもできる
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爆破ルールのつまらなさ
しかし反面、
爆破(デモリッション)がさほど面白くない。
根本的な原因は「投げモノの使いにくさ」と「マップの悪さ」の二点に集約されると思われる。
「投げモノの使いにくさ」をみていこう。
『スペシャルフォース2』のグレネードで敵を倒そうとすると、遠くから投げて着地と同時に爆発させないといけなくなる。
つまり遠くから投げるか、建物越しに放り投げなければなかなか当たらないのだ。
一応グレネードを投げて牽制し敵をどかすことはできるが、むしろ自分の居場所を知らせてしまう欠点のほうが大きい。
こういった仕様のせいか、現時点では専ら「開幕グレネード」にしか使われていない。
ラウンドが始まってまもなくグレネードを中間地点に投げ込み、ラッシュしようとする敵を牽制するためだけしか使われていないのだ。
だがグレネードよりもフラッシュバンの使いにくさが問題だ。
というのもフラッシュバンの有効距離が短いため、食らって困ることがない。
次に「マップの悪さ」をみる。
敵味方の交戦ポイントが近く、敵との戦いは速攻の勝負になってしまいがちだ。
ラッシュするか、守るか、の二択しかない爆破ルールはつまらない。
また足音を消して歩くと移動速度がかなり低くなってしまうため、「思わぬところに敵がいて不意をつかれた」という場面が殆ど無い。
走るとガシガシと音が鳴ってしまって敵に居場所を知らせることになってしまう。
だから爆破ラウンドの中盤ともなるグレネードを使い果たしたプレイヤー達が足音を消してひっそりと敵の動向をうかがう展開になりがちだ。
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味方と連携!
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その他のルール(奪取、離脱、ハンティング)について
『スペシャルフォース2』には他のルールもある。
だが出来が悪いせいで遊ばれていない。
「奪取」と「離脱」は、「特定のオブジェクトを得て特定の地点にまで移動する」というルールである。
残念なことに現在の仕様では特定のオブジェクトを得た瞬間、相手チームと味方チームに大きな告知が出てしまう。
これでは敵チームの裏をかいてアイテムを奪取したり、敵陣から離脱することができない。
裏をかくことができない、つまり戦略性がないので、試合に勝つためには敵を排除すればよくなってしまう。
今のままではリスポーンのないチームデスマッチでしかあり得ない。
ハンティングモードはいわゆるゾンビモードとかヴァンパイアモードとか様々に呼ばれているモードの『スペシャルフォース2』版である。
人間陣営とモンスター陣営に分かれて相手を数多く倒した方が勝ちだ。
ゲーム中に必ず人間とモンスターの陣営は入れ替わるので、片方だけしか遊べなくて消化不良になることはない。
三種類のモンスターは使い方に特徴があり、またどちらかが強すぎるようにはなっていない。
そして
ランダム&無限リスポーンで心ゆくまで楽しめる。
無限リスポーンで楽しめる点がこの手のモードにしては良い調整だ(死んだら終わり、のゲームが意外と多いのである)。
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意外とおもしろいハンティングモード
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どのようなバランスのゲームか
『スペシャルフォース2』は以上述べてきたことをまとめつつ補足していくと次のように描ける。
銃の挙動が素直でキャラクターの動作が速く、敵を倒すことに集中できるゲームだ。
しかしグレネードは敵への牽制くらいしか使いどころが無く、グレネードを使った後は反射勝負か待ち伏せ同士の戦いになりがちである。
マップは入り組んだ場所があるとはいえ、基本的にまっすぐな通路が組み合わさった構造になっていて、カウンターストライク系統の流れを汲んでいることが分かる。
ところが銃の扱い方が簡単な上にヘッドショットが極めて出やすいため、反射神経に優れるプレイヤーが相手の頭を瞬時に撃ち抜いてしまう銃撃戦になりがちだ。
もうひとつゲームバランスを語る上で重要なのが足音の大きさである。
足音がむちゃくちゃ大きい上に、音の方向がすぐに分かり、地面によって音の種類が変わる(例えば地面によって金属音になったり、木の音になったり、コンクリート音になったりする)。
ゲームに慣れてくると足音を聞くだけで敵がどのように動いているのかすぐに分かるようになるくらいだ。
もちろん丁寧な音作りには感心できるのだが、『スペシャルフォース2』の場合はこのせいで足音を消さないと敵にバレバレになってしまう。
一方で足音を消して歩くと移動速度がとてつもなく遅くなってしまうので、下手に歩き回るくらいなら待ち伏せしていた方が楽だ。
要するに「走る」と「歩く」のトレードオフがうまくいっていないのだ。
開幕ラッシュと待ち伏せの二択しか用意されていない。
であるか
らラッシュするだけでいいルールのTDMは面白く、ラッシュも待ち伏せも組み合わせつつ相手を攪乱していく爆破ルールはイマイチである。
もしラッシュと待ち伏せの二択を解消できるとしたらチーム内で連携が取れているときのみであるが、これは分かっている人同士かクラン戦でやらないと厳しい条件だ。。
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爆破ルールは知識の差がものをいう
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競技性よりも娯楽性
開発・運営へのインタビュー(たとえば
4Gamerのインタビュー)によれば『スペシャルフォース2』は競技性の高さも売りにしている。
しかしここまでさんざん述べてきたように競技に向いているゲームではない。
ラッシュするかしないか、ジリジリ攻めていくかといったチームの連携を考える余地があるとはいえ、グレネードの仕様や反射神経勝負になりがちな撃ちあいに競技性を求めてもしょうがない。
むしろ銃の扱いやすさや迫力のある音声・演出が強調されてしかるべきだ。
それでも『スペシャルフォース2』は楽しさ重視かといえば、そうではない。
というのも、コールオブデューティーシリーズのようなカスタマイズ要素がないからだ。
自分のスキルや武器を好きなように組みあわせてプレイスタイルの幅を広げられるような楽しみが今のところ無い。
試行錯誤できるようになれば楽しいに決まっている。
ただしカスタマイズができるようになればゲームバランスの崩壊を起こしかねないわけで、ここは難しいところだろう。
いまの仕様から言って、
競技性と娯楽性の両立に苦しんでいるのではなかろうか。
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独りで遊べる練習モードがあるのはGOOD
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