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Crysis 2(クライシス 2)


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2011年
開発会社:Crytek

公式ウェブサイト

マルチプレイベータテストの感想はこちら

初稿2011年4月

紹介

『Crysis 2(クライシス 2)』は2011年に発売されたビデオゲームである。
開発はCrytek、発売はEA。
前作『Crysis』から3年経って発売された(スピンオフ作品の『Crysis Warhead』を含めると2年ほど)。
PC専売だった前作と違って、PCの他にPS3やXBOX360でも発売されている。

ストーリーは前作から数年経過したニューヨークではじまる。
初代『Crysis』を未プレイでも話は理解できるように作られているが、やはり前作をやっておくと話の筋が見えやすい(『Crysis Warheadはやらなくてもいい』)。

『クライシス2』はゲームエンジンのCryEngine3をお披露目するために作られたゲームだ。
CryEngine3はPC、XBOX360、PS3でのマルチ展開を行いながら、今世代最高クラスの映像美までも手中に入れている。
以前のCryEngine2はPC専用で「どれだけ革新的なことをやってのけるか」に主眼がおかれていた。
一方、今回使われたCryEngine3は「CryEngineの映像をPS3やXBOX360でも問題なく動かすこと」が目標だと言えるかもしれない。

グラフィックだけを見るならば前作『Crysis』から大幅に進化したと感じられる箇所はない。
むしろテクスチャーの解像度が下がったり、水の表現が悪くなったりしている面すらある。
とはいえPCと比べて明らかに性能が低いPS3やXBOX360でもかなり高品質な映像を出している。
マップ自体を小さくしたり、無駄を削ったり、ブラーなどの画面エフェクトの使い方が上手になったので、見た目を大きく損なわずにこれだけのグラフィックが出せるのだと思われる。
ただのスペック的なグラフィックの良さでは劣っているかもしれないが、映像美という面では『クライシス2』に軍配が上がる。
しかしゲーム側で詳しい画像設定が行えず、Sandboxも付属していない点はマルチ展開のゲームに度々見られる弊害だ。
純粋に初代『Crysis』の進化を望んでいた人はがっかりするかもしれない。
ビル
舞台はニューヨーク。ビル街だ。
シングルプレイもゲーム機とのマルチを前提とした作りに生まれ変わった。
前作は、圧倒的な広さのマップを好きなように攻略していくゲームだった。
車を使っても、ボートを使っても、徒歩で行っても何でも良いから、とにかく目的を達成すればよいという自由度の高さが多くのユーザーを魅了したのである。
一方の『クライシス2』は前作に比べるとマップは狭くなった結果、好き放題に暴れ回ることができなくなった。
このような点において前作のグレードアップ版を期待していた人にとっては残念な続編になっている。

しかし、『クライシス2』には『クライシス2』の魅力がある。
まずは演出だ。
物語の核心に迫るストーリーを盛り上げてくれるムービーやカットシーンがふんだんに使われている。
次にスピードアップした戦闘だ。
驚愕の自由度がなくなったかわりに、「ナノスーツ」の特殊能力を使った戦闘が面白い。
ダッシュや大ジャンプがかなり使いやすくなったので、豪快な戦闘を行える。

自由度自体は、類似のFPSと比べても高い部類だ(前作は異常に高かった)。
『クライシス2』はほぼ確実に、敵のいる場所を攻略する前にバイザーで戦略をたてられるように作られている。
つまり戦略を立ててから敵を倒しに行けるのだ。
しかも戦闘を行える場所はかなり広く、遮蔽物が多い。
そのため大ジャンプを使って建物の上によじ登って固定砲台をぶっぱなしたり、敵を欺くためにクロークを起動して透明になって一人ずつ暗殺してもクリアできる。
場合によっては敵を無視して突っ切っても良い。
すべての敵を倒す必要も、チマチマと敵を狙撃する必要もないのだ。

ゲームには全部で19のチャプターがある。
一つのチャプターはムービー、戦闘、カットシーンという流れで構成されている。
エイリアン
エイリアン(と便宜的に表記しておく)は何者なのか?
だだっぴろい場所で戦っていた前作と比べると、マルチプレイも最近流行の対戦形式になった。
マップが小さくなったために戦闘の密度が高い。
そして、相手を倒して経験値を貯めてレベルアップする要素がある。
例えば敵を一定数倒すと強力な特殊能力の使用権が解除されたり、レベルアップすることで新たな武器が使えるようになったりする。
特殊能力や新規武器を手に入れるためのレベルアップ条件がけっこう厳しくて長時間プレイする必要がある。
一つのマップを様々なルールや設定で遊ぶことができるのも流行の形式と言えるかもしれない。

対戦でもナノスーツを使った超人的な戦闘が楽しめる。
これが『クライシス2』の魅力だ。
高スピードで動き回り、大ジャンプでマップを縦横無尽に走り回る。
とりわけ大ジャンプによって高低差を意識した戦闘を行わなければならなくなったのは、『クライシス2』の面白さを高めている。

クローク(透明化)は試合を有利に進めるためには欠かせない機能だ。
かなりクセのあるクロークをいかに扱えるか、クロークの敵をどれだけ倒せるかが勝利にかかせない。
『クライシス2』ではクローク機能の使い方が上手い下手を左右する。
マルチ
マルチプレイの様子

レビュー

直球のFPS大作

前作と比較して

初代『Crysis』の衝撃を覚えている人は多いだろう。
私も発売後まもなくしてやったときは、未だかつて見たこともないグラフィックスと広大なマップで自由に遊べるゲームプレイの凄さに圧倒されたものだ。
『クライシス2』は残念ながら、こうした素晴らしさを感じることはできなった。
しかし一つのパッケージとして見た場合の完成度は、前作よりも高まっている。
スピード感のあるゲームプレイ、戦闘の自由度、驚きのストーリー、壮大な演出と音楽、充実したマルチプレイ、どこにも手抜かりがないのだ(細かい欠点はある)。

少し違う面から見てみると、『クライシス2』は細部まで手がかけられたゲームだと言うことができそうだ。
前作『Crysis』はプレイヤーを広大なジャングルに放りっぱなしのゲームであった。
ゲーム後半部分に「普通のFPS化」していたり、室内のモデリングが見窄らしかったり、ゲームエンジン自体が重すぎたことからして、今から見ると結構荒削りに見える。
一方の『クライシス2』はコンクリートジャングルにプレイヤーを放り込むのではなく、ある程度の筋道をつけた場所に誘導している。
また、見るに堪えなかった室内のモデリングや重すぎたゲームエンジンはかなり改善されている。

クライシスのシリーズを語る上では自由度の高低が大きな鍵となる。
自由度についても、手がかけられた自由度と手がかけられてない自由度がある。
よく見ると・・
静止画としてみると、まだまだゲーム画面って感じがするね

『クライシス2』の自由度とは何か

初代『Crysis』が完全な自由であるとすると、『クライシス2』はアシストされた自由である。
例えば一つのマップを想像すると分かりやすい。
『Crysis』はデカデカとしたマップを用意して、そこに敵、弾薬、乗り物などを配置してほったらかしただけだ。
敵は無駄話をしていることも多く、一つの生態系みたいなものがそっくりそのまま再現されていたとさえ言える。
そのような一種の秩序を、想像力を膨らませたプレイヤーが破壊していくようなゲームだった。
だから「何をやっても良い」と言われていたのである。
景色に見とれても、浜辺の鳥を眺めていても、建物を破壊していても、つまりゲームを進めなくても全く問題にならなかった。
それでも楽しめたくらいだった。

前作に比べると『クライシス2』は何というか普通のFPSに近い。
カッコイイ演出やブリーフィングを見た後に、ちょっと広めの空間で敵と対峙し、突破したらまた演出がはじまる。
ちょっと広めの空間で戦うときにクライシスらしい自由度を味わえる。
このとき、『クライシス2』は「どうやって遊ぶか(「敵を倒すか」と言った方が正確)を予めゲーム側で示唆している」点が初代と違う。
敵が現れるシーンの前に必ずナノスーツが「戦術オプション使用可能」と教えてくれるのだ。

事前に教えてくれることによって二つの変化が生まれている。
一つは、敵が出てくる瞬間が分かるようになる点。
ナノスーツがどれだけ高性能なのかを実感できる。
二つ目は「戦術オプション」なるものをプレイヤーが使おうとすること。
「戦術オプション」とはバイザーを覗いて戦略を立てる際に、プレイヤーへその場面のコツを教えてくれる要素のことだ。
この二つ目の変化が『クライシス2』では重要である。
なぜならプレイヤーは自分で意識しようとしなくても、ナノスーツの誘導に従ってなんとなくバイザーを使い、戦略を立てることになるからだ。

大抵のFPSで戦略を立てる際、死にながら覚えるとか、一回クリアしてから考え直さなければならない。
しかし『クライシス2』では初めていくマップであっても戦略を立てられるのだ。
更に言えば「戦略オプション」で何をすればいいのかを提示しているため、自由に振る舞っている自分がいることを感じやすい。
すべてをプレイヤーに委ねるというのは、自由と言うよりも放置である。
『クライシス2』はプレイヤーを放置せずに、戦術を選択させ、実に巧妙に自由という感触をもたらしている。
バイザー
バイザーを使いこなそう

ナノスーツの面白さ

自由度を高めているのは「戦術オプション」だけではない。
パワーアップしたナノスーツも大きく関係している。
ナノスーツには様々な特殊機能がついている。
敵の銃弾を弾くアーマー、透明になれるクローク、大ジャンプ、ダッシュといったところ。
前作『Crysis』ではこのような機能を、オプションから一つずつ切り替えて使う必要があった。
そのため切り替えが面倒で、テンポが悪くなっていた。

『クライシス2』はアーマーとクロークが排他で、アーマーやクローク状態でもダッシュジャンプが使えるようになった。
しかも今作はボタン一つで時間をかけることなく、どの機能も発動できる。
ゲームのスピードが向上するとともに、機能の使い分けがやりやすくなったのだ。
いくつかの機能を瞬時に切り替えられるおかげで、プライヤーは色々な選択をしやすい。
ナノスーツを使いこなせば、ステルスプレイも強引なプレイも好き放題に行える。
つまり煩わしい操作を無くすことで、自由に振る舞うためのナノスーツ機能にアクセスしやすくなったのだ。

さらにナノスーツの機能・・・というか特殊能力で使い勝手の良い「出っ張りをつかみ能力」が追加された。
これはちょっとした出っ張りを掴んで上にあがることができる能力だ(近づけば自動的に掴み動作へ移行する)。
「つかみ能力」のおかげで、高い場所へ簡単に登れる。
『クライシス2』ではダッシュからジャンプへつなぎ、高い場所によじ登って上から狙撃することも容易くなったのだ。

「つかみ能力」は2008年に発売された『ミラーズエッジ』で大々的に使われていた手法だ。
『ミラーズエッジ』は3D空間を一人称視点で自由自在に走り回る画期的なゲームである。
しかしレースゲームのような遊び方や、ジャンプボタンを押す煩わしさによって評価はまちまちだった。
『クライシス2』は『ミラーズエッジ』で使われていた手法を取り入れて、敵を倒していくFPSに仕上げているとも言えるだろう。

自由度について一旦まとめておく。
戦術オプションとバイザー使用による戦略性の向上と、ナノスーツの使い勝手の良さが『クライシス2』をスピーディで臨機応変に遊ことを可能にした。
このとき、細かなアシスト機能(バイザー使用を促すアナウンスや、自動で行える「出っ張りつかみ」)がプレイヤーの自由度をさらに高めている。
ジャンプ
マキシマムスピードでマキシマムジャンプ!

狩りをする快感、壮大な音楽、向上した銃撃感、スタックする敵

クライシスシリーズは敵を狩るゲームに近い。
バイザーで敵の位置をすべて把握できるし、自分は透明化できるクローク機能というチートまがいの機能を使える。
『クライシス2』でも相も変わらずクロークは強すぎるのだが、これはもうわざとやっているとしか思えない。
やはりこのシリーズの面白さは、敵が明らかに自分より格下であることを感じさせる点にある。
そうしないと驚異のテクノロジーであるナノスーツの強さをプレイヤーに実感してもらえないからだ。
『クライシス2』自体はやや重たい操作感で「リアルな部類」に入る。
マキシマムアーマー状態ではないとき、体力は意外と低く設定されている。
そのようなリアルさを吹き飛ばすのがナノスーツを使ったダッシュ、大ジャンプ、クローク、アーマーといった化け物じみた機能だ。
プレイヤーはまさにスーパーソルジャーになれるわけだ。
『クライシス2』で重要なのは、生身よりも強くなっていることを実感させられる点にあるだろう。
通常状態とナノスーツ機能を使っているときの差が良い対比をなしている。

ナノスーツ自体のギュピギュピした音も、自分がナノスーツを使っていることを分からせてくれる。
アーマーを発動したときのメキメキとした音、銃弾を弾く音、エネルギーを充填したり消費したときの音や、視点の変化は実にナノスーツ感を出している。
音楽については上記のような効果音だけでなく、BGMも素晴らしい。
場面を引き立てる音楽として申し分のない仕上がりだ。

戦闘については、銃を撃った感触が実に良い。
サウンドやエフェクトは前作よりも派手になっているばかりか、敵のモーションが増えている。
人間型の敵は撃つ場所によって反応がまるっきり変わるため、どこを撃ったのかがすぐに分かる。
やや大げさなぐらいでちょうど良い。
そして開発会社Crytekが大好きなエイリアン(化け物)がまるで人間のように動き、こちらが攻撃を与えると一々仰け反るのも銃撃感を増している。
仰け反ってくれるおかげで倒しやすくもなっている。

ところが、戦闘は敵のAIがややバカな点がどうしようもない。
敵が段差や遮蔽物の裏で立ち往生している場面が非常に多いのだ。
障害物が多いとか、敵が動きすぎだとか色んな原因は考えられる。
何というか敵のAIは賢さを演出するためにカバーを行ったりするわけだが、無闇にカバーへ移行するせいでバカっぽくなってしまっている。
遊んでいる側としては単にプレイヤーの側へジリジリ寄ってくる方がカバーをされるよりも手強く感じられるために、敵を賢く思えてしまうのだから不思議だ。
あとAIのスタックだけでなく、些細なバグが目立つ。
致命的なものがないぶんマシではある。
メラメラ
きちんと戦ってくれるならいいんだけどね、立ち往生はとても残念

ストーリー

ストーリーがどこかで見たことあると感じていたら、どうも『ハーフライフ』(特に『2』)にそっくりである。
とはいえハーフライフシリーズのように謎が謎のままで終わってしまうようにはなっていないから安心してほしい。
この二つのゲームの似ている点からFPSのストーリーのあり方を軽く考えてみたい。

「主人公が未知の体験を行う」点において『クライシス2』と『ハーフライフ2』は似ている。
どちらもゲームを始めて間もないときに、主人公は何も分からないまま外へ放り出される。
外界で何かが起こってはいるのだが、主人公は「何が起こっているのか」を示唆する情報を持ち合わせていない。
もちろんプレイヤーも主人公と同じように物語の概要すらつかめないまま、ゲームがはじまるのだ。
ところがゲーム中の他人は物語の核心を知っている。
したがって道中を進んで現状を見て、他人から説明されていくにつれて「世界の有り様」がプレイヤーも主人公もおぼろげに分かっていく。

このような物語にする理由は簡単だ。
一人称視点ゲームは主人公の目線をトレースすることで、主人公の目にすることを、プレイヤーも同時に体験することができる。
そこでゲーム内世界の情報について主人公とプレイヤーが同程度の知識をもつようにすれば、主人公の目線はプレイヤーに近くなれるのだ。
なお間違えないでほしいのだが、一人称視点だからといって主人公がプレイヤーの分身である必要性はない。
『クライシス2』でもカットシーンでは主人公が勝手に動いたりするし、重要な場面では「おいおい」と思うような行動もする。

利点があるとはいえ『クライシス2』や『ハーフライフ2』で使われている手法は結構違和感が強い。
理由の一つは主人公が滅多にしゃべらない点。
三人称視点のゲームと違って口が見えないために、台詞の臨場感が損なわれやすい。
他に主人公の目線とプレイヤーの目線を更に近づけようとするから喋らせないという理由も考えられる。
次の理由に、主人公が他人の言うことを従順に聞いてゲームを進める点。
個人的に言わせてもらうと、これにはかなり違和感がある。
主人公は人間なのだから様々な場面で葛藤や疑い、その他の意思は持つはずなのに、ゲームの中では何も描かれていない。
「あれをしてくれ」「これをしてくれ」と言われては、いいようにこき使われているとさえ感じる。
無理矢理解釈しようとすれば以下のようになる。
「主人公は何かしらの考えがあって、他人の言うことに従っている。ゲームでは主人公の内面を描かず、あくまで目線だけを描き、そしてプレイヤーは主人公の内面を想像する」。
ただちょっとぎこちなくなってしまう。

そういうわけで後発の『クライシス2』は一応の解決策をストーリー上で出してはいる。
序盤は自分の身に起きた変化を知りたいがための行動がクローズアップされる。
中盤からは「なぜ主人公は戦うのか」を考える以前に、人々を守らなければいけないとか自分に敵対するエイリアンをブチのめす意識が強まる。
最後の方はエイリアンの退治は自分しかできないことが分かるので、悲壮感漂う音楽と相まって空気の違いが読み取れる。
違和感はまだ従順すぎる主人公に残っているが、上手く工夫してあると思う。


『クライシス2』で優れている演出方法は、一人称視点の良さを生かしたものが多い。
例えば水にダイブするシーン、高所から飛び降りるシーン、敵に攻撃されてよろめくシーンのように、視点の動きを生かしたカットシーンが豊富に用意されているのだ。
高所からジャンプした後に迫り来る地面をナノスーツ機能で受け止めたりするのは実にカッコイイ。
今後、一人称視点で出す大作ゲームはこういった演出を使わなければならないだろう。
一人称視点を使う意味を見いだせないゲームは時代遅れになりつつある。
ジャンプ
ここから大ジャンプすると気持ちいい

マルチプレイ

マルチプレイにおいてナノスーツを使った戦は斬新だ。
ナノスーツの機能はボタン一発で発動・解除できるため、技巧的な要素が必要にならない。
使う場面を考えたり、瞬時に適切な機能を選択できるかが上手い下手を左右する。
クロークやアーマー状態のような強力な機能を使うためにはエネルギー残量を考えなくてはならない点もよくできている。
のだが、製品版では問題が出ている。

まずモジュールという能力強化が強すぎる。
これの問題はレベルアップすると更に強力になってしまう点にある。
例をあげれば、クローク機能(透明化能力)を底上げするモジュールは、経験値を稼いでレベルアップすると、敵に見えづらくなってエネルギー消費量も大幅に減る。
エネルギー消費の大きさがクロークの欠点なのに、欠点を帳消しにしてしまうというバカげたことになっているのだ。
しかもレベルアップまでの道のりがけっこう長くて、初心者はいつまでたっても狩られ役になる。
CODシリーズと比べても、能力強化が酷すぎる上に条件も厳しい。
使えるモジュールと使えないモジュールの差も激しすぎる。
『クライシス2』のマルチプレイはバランスとりに失敗してしまっている。
長く遊んだ人や上手な人を優遇しすぎるている。

そしてクローク能力(透明化能力)がオーバーパワー過ぎる。
ベータテストの頃と比べると、性能が大幅に上がっている。
とりわけ敵に見つかりにくくなった性能向上の効果は絶大で、クロークを使いこなさないとハイスコアは狙えなくなった。
もっと実情に即して言わせてもらうと、クロークを使って敵を奇襲するのがあまりにも簡単すぎる。
クロークと奇襲だけ繰り返せばすぐにトップ3になれる。

『クライシス2』において『ミラーズエッジ』の流れを受け継ぎ、壁つかみを使って自由自在に空間を移動して敵と戦うマルチプレイは類をみない。
過去のゲームを腐らせていないのは評価できる。
対戦用のマップは高低差が激しく、また入り組んでいるために激しい戦闘が楽しめる。
だが、いたるところへ移動できる長所が同時に、クロークを更に強くするという短所をもおびき寄せている。
要するに『クライシス2』では誰もがエネルギー消費を押さえるモジュールを選択してクロークばかり発動しつつ、ダッシュやらジャンプやらを使って敵を奇襲しまくれるのである。
ある程度上手い人同士の対戦にあんるとクローク合戦になってつまらないったらありゃしない。
もしこれを解決するとしたらクロークの弱体化以外に方法はない。

バランスの悪さに加えてコールオブデューティなどとの差が分かりづらくて、今後も人気を継続できる対戦とは言えない。
クローク
クローク発動!(画像はシングルです)

総括

PC専売だったゲームの続編がマルチタイトルになり、方向性が変わってしまうことは多い。
そのせいで駄作化したものもあれば、変わらぬ面白さを維持するものもある。
『クライシス2』は一つのパッケージとしてみればとても良く作り込まれている。
方向性は変わったが、別の面白さが出てきているのだ。
どう面白いかはレビューで語り尽くしたとおり、自由度やナノスーツ機能を感じさせることによって、自由度を楽しませる点にある。
前作のようにただただ広い空間にプレイヤーを放り込むのではなく、巧妙にアシストしてクリエイティビティを発揮させているのが『クライシス2』だ。
だから『クライシス2』をやると、制作者(制作チーム)の意図が見え隠れする。
そういう意味では作品としての完成度は高まっている。

Sandboxというのはアメリカ英語で砂場を意味する。
この言葉はソフトウェアでも使われている。
Wiki形式のウェブサイトで自由に練習できる場所が設けられているとき、そこをSandboxと呼んでいることが挙げられる。
ゲームでSandboxがあると言えば、同じようなマップをいじくって好きなように作れる場所やツールのことを示す。

初めてSandboxと表現した人は実にセンスがあると思う。
いくらでもいじくり回せて、それでいて元に戻すのも簡単な場所と言えば砂場だ。
前作『Crysis』はゲーム全般(正確には前半)が「Sandbox的」であった。
広い場所に放り込まれたプレイヤーは、用意された場所を自由に引っかき回す。
飽きてしまったらもう一度マップをロードして、まっさらな状態で遊ぶことができた。
では一方の『クライシス2』はどうかと言えば、たとえるなら「公園の遊具」である。
遊具は遊び方がある程度決まっていて、それに応じて遊ばれることが想定されている。
とは言っても、自由に遊べる余地はある。
ブランコなら座り漕ぎ、立ち漕ぎ、立って靴飛ばし、二人乗り、なんでもいい。
滑り台なら滑るだけでなくて、反対に登ることもできるだろう。
同様に『クライシス2』も、ある程度の遊び方は決まっているが、そこに選択肢や工夫を見いだせる。

砂場と遊具の優劣を決めることは無意味だ。
『Crysis』と『クライシス2』のように方向性は変わったものを同列に比べることも野暮である。
シングルはやや狭い場所もあるために、狙撃が最強というわけではない

まとめ

アシストされた自由を楽しむFPS。
演出、音楽、グラフィックは同列のFPSと比べてもトップレベル。
シングルプレイヤーは間違いなく良作だ。
しかしマルチプレイヤーはバランスが悪くて微妙だ。

前作とはひと味違う面白さを味わえる。

82点

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