トップページ >ゲームレビュー >FPS・TPSゲームレビュー >Crysis(クライシス)

Crysis(クライシス)


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2007年
開発会社:Crytek

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2008年11月 最終更新日2011年3月

紹介

『Crysis(クライシス)』は2007年に発売されたPC向けのFPSである。
開発はCrytekで販売元はElectronic Arts。
名前こそ違うがFarcryと開発元が同じでゲーム内容も似通っているため、実質的な後継作品と考えて良い。
2007年までに発売されたゲームタイトルの中では最も重く、そして最も質の高いグラフィックスを実現していることで有名なタイトルである。
完全日本語版が発売されている。
メニュー部分の日本語化に加えてすべての音声が吹き替えられていて、かなり力のこもったローカライズとなっている。

ストーリーは、2019年にフィリピン海の孤島で発見された古代遺跡を調査していたアメリカの調査員が突如として北朝鮮軍に拉致されたので、調査員を助けるために「NANOスーツ」という特殊スーツを装着した部隊が派遣されたというもの。
もうここでネタばれしても良いと思うが(体験版にもあるし)、北朝鮮軍と戦ううちにエイリアンとも戦うことになる。
滝をのぞむ画像
舞台は南国の島
やはり『Crysis』で最も注目されるのがグラフィックのクオリティである。
いかにもポリゴンを利用したゲームっぽい映像ではなく、極限まで写実的なグラフィックを求めて作られている。
派手さや目に付く要素があまりないので見た目は非常に地味なのが欠点といえば欠点なのかもしれない。
しかしよく見てみれば、あまりにも自然すぎて「美しいグラフィックだな」とすら思わなくなってしまうレベルだと気がつく。

『Crysis』で使われているゲームエンジンと同じものを使って現実の世界を再現した画像や映像があって、一瞬どちらが本物か偽物かと見間違うほどのグラフィックを見せてくれる。
特に有名なのはソニーのブラビア(テレビのブランド名)の北米用CMを再現した映像である。
実ゲーム中にこれだけのグラフィックが実現されているとは言いがたいが、それだけのパフォーマンスをもったゲームエンジンだと理解してもらいたい。
ゲーム後半のフローズンアイランド画像
ゲーム後半のグラフィックスクオリティは特に高い
主人公とその仲間はナノスーツという超強力なスーツを着込んでいて、プレイヤーはゲーム中にこのスーツの能力を駆使する。
HPとは別にスーツにエネルギーメーターが設定されており、そのエネルギーを使って四つの特殊能力を発揮できるようになっている。
敵からの防御能力を高める「アーマー」、移動速度が上がる「スピード」、パンチ力やジャンプ力が強化され銃の反動も減る「ストレングス」、自分を透明化する「クローク」の以上四つである。
それほど複雑ではないので場面に応じて自分の好きな能力に強化すればいい。
例えば素手で敵をなぎ倒したいのなら「ストレングス」、敵に見つからないようにして始末したいのなら「クローク」、敵から逃げたいのなら「スピード」と言った具合。
どの場面で必ず使わなければならないということはほとんどなく、自分の好きなようにプレイすることが出来るので戦闘の自由度は高い。

この自由度をさらに高めているのがゲームの舞台となる広大なフィールドである。
目的地や目標がマップ開始時に決められているが、そこまでどのように行動してもいいように作られているのだ。
これは実質的な前作の『Farcry』で盛り込まれていた要素で、 『Crysis』はさらに自由度が高められている。
『Crysis』と『Farcry』を比べてみると、『Crysis』ではナノスーツやカスタマイズ可能になった武器によって自由度が広がっている。
そして敵のAIの賢さも付け加えておきたい。
これも前作で評価された要素であり、『Crysis』ではさらに強化されていると感じた。
スコープを使って下調べをしている画像
どこからどう攻めるかは完全にプレイヤーの判断によっている
しかし自由度の高さはゲーム前半の特徴であって、ゲーム後半は自由度が無くなった一方通行のゲームデザインになっている。
後半は主にエイリアンとの戦闘をすることになるが、エイリアンのAIは特別賢いというわけではない。
どちらかといえばストーリーに奥行きを持たせるような展開になっているので、このようなデザインになったのはしょうがないとも言える。
『Crysis』の評価で槍玉にされるのがこの後半部分である。
後半は前半とのゲームプレイが大きく異なり、また重くなってしまう(前半よりfpsが10くらい下がる)ことが批判の的になっている。

他の要素としては、精巧に作られた物理エンジンや方向が明瞭に判別しやすい3Dサウンドは2007年のゲームとしても一級品のレベルにある。
足掛け4年もかけて作られたゲームなだけあって各要素のクオリティは相当に高い。

ゲームをインストールをするとゲームのマップエディターが標準でついてくる(Sandbox2という)。
これによってあまり知識が無い人でもMODを作成することが可能になっている。
使いこなすには相当の時間が必要になるが、そのおかげでMODコミュニティはとてもにぎわっている。
マルチプレイヤーは悪くないと思うのだが、あんまりやっていないのでレビューは控えさせてもらう。
ゲーム後半で苦しめられる敵の画像
エイリアン(の作り出したロボット兵器)

レビュー

2007年最高のゲーム技術が盛り込まれコンセプトはも申し分が無いのだが、所々に練りこみの足りなさが目立つ

できるだけ高い設定で遊びたい『Crysis』

とりあえず『Crysis』で使われた「CryEngine 2.0」というゲームエンジンの技術力には誰もが文句をつけようは無いだろう。
長らくゲームの標準的なベンチマークとして使われていた「Source Engine」や、Crysisが出る前に出てきた「Unreal Engine 3」を圧倒する驚異的なものを見せてくれる。
ところが、ここまで凄まじいグラフィックを表現するためには結構な金をかけてハイエンドパソコンを用意する必要がある(少なくとも発売当初の話)。
そういうものは年月が解決してくれるというのは非常に楽観的なものかもしれないが、発売日からしばらくたっても快適にプレイできるユーザーが限定されてしまうのは正直いただけない。
確かに設定を下げることによりミドルスペック以下のマシンでも動作させることはできるとはいえ、Crysisの世界を楽しむのならせめてMedium設定以上を選んで欲しい。
例えば家屋の壊れ方に関係する設定を高くすると「多くのものが壊れる」ようになる。
設定が高い場合、家屋に潜んでいても敵から攻撃をされればどんどん破壊されてしまうので、ずっと隠れることは出来なくなる。
まあつまり、ゲームプレイに変化が生まれるというわけである。
センスはないが細かいところまで作りこまれているキャラクターの画像
顔だけでなく服も細かくモデリングされている
ゲームの中身については、前半部分の出来は非常に良いと思う。
広大なマップ、優れた敵AI、何でも出来るナノスーツの三要素が織り成すゲームプレイは型にはまること無い戦闘を実現した。
特にナノスーツによってプレイヤーは自動回復に加えて四通りのゲームプレイが出来るため、大胆な攻撃方法を繰り返しチャレンジすることが出来る。
前作の『Farcry』は敵に攻撃されないようにチマチマせめていく必要があった(これが悪いとは言っていない)が、『Crysis』ではどのようにチマチマやってもいいしナノスーツの力を生かして強引にいくこともできる。
どちらかといえばプレイヤーは敵よりもオーバーパワーなので、どのように敵を狩っていくかのような面白さがある。
つまり試行錯誤してクリアすることに面白さを見出すというより、どのようにしてクリアしてやろうかと考えていく面白さが強い。
『Farcry』と同一視すると見落としがちだが、この要素はなかなか面白い。
クビ絞め攻撃の画像
こんな攻撃も出来る
ちょっとゲームを進めていくとアサルトライフルに取り付けるスコープが手に入るので、これを利用して遠距離から延々と狙撃してもいい。
クローク機能(自分を透明化する)を使って敵に近づいて首を絞めるなりしてもいい。
足がはやくなる機能を使って敵なんか無視して突っ切ってもいい。
そこら辺にあるドラム缶を投げつけて敵を倒して行ってもいい。
一つの場所を抜けるだけでも様々な攻略方法が存在しているので、リプレイ性は高く、そして戦略性も高い。
エイリアンに対してクビ絞め攻撃をする画像
ちなみにエイリアンも首絞め出来ます
ところが一方で問題もある。
それは何でも出来る自由度の高さという利点はあるが、どうしても強力なプレイ方法が限られてしまうこと。
透明化するナノスーツの機能やアサルトライフルにつけるスコープははっきり言ってかなり強い。
プレイヤー側で上手く機能を自重して調節するなりして難易度を上げれば、特に問題になることはない。
わざわざそういうことをしない限りは本当に「狩りを楽しむゲーム」になってしまう。
適度な緊張感の中に狩りの要素があるから面白いのであって、一方的に攻撃し続けていればまったく面白くないのは当たり前である。

この自由度というのが『Crysis』にとっての面白さでもある代わりに、面白さを損なうネックとなっている。
ゲームの前半部分はとても自由度が高いゲームになっている。
しかし、あまりにも自由度を高くしようとしたせいか、敵の配置が上手くない。
例えば川沿いに進むマップがあるとする。
川の中を通るとかなり遠いところまで敵に会わずにすむが、ある地点からはあたかも敵が川を見張っているかのように配置されている。
ここで川の中を通るルートは危険になってしまうものの、横のルートを通れば敵に会わずにさらに進むことが出来る。
この敵配置で問題なのは、敵にあわずに済むルートが存在し、そのルートをつぶすために露骨な敵配置が存在していることである。
他のマップにおいてもほとんど敵に会わずに済んでしまうルートや無駄にだだっ広い場所が目立つ。
少し調整不足かなという感じがする。
スコープを使って敵を攻撃する画像
スコープ
またどこからでもどのようにしてでも進められるため、意識的にプレイしないと同じようなルートと攻略法を繰り返すことになる。
人それぞれ癖というものがあり、それは意識していかないと癖のとおりに行動をしてしまう。
高い自由度が与えられれば与えられるほど自分にあった方法や楽な方法を自然と選択してしまうものだ。
そうなると、『Crysis』の面白さを担う自由度を自らつぶしてしまうことになってしまう。
また攻略法を思いつかなかったり、そもそも知らない(見落としがちな要素として、例えばナノスーツの能力のストレングスでは、銃の反動を抑えることができる)こともある。
どのようにしてプレイヤーに知らせるかというのは非常に大事で製作者側も理解していたようだが、正直上手く行っていないと思う。
戦車に乗ってどっかんどっかん攻撃
戦車に乗ってもいいが、乗り込まなくてもいい
乗ったほうが簡単だが
前半は自由度の高さが特徴であるものの、その自由度の高さを上手く制御できていないというのが最も強い印象だった。
しかしここまでの自由度の高さを持ち合わせていて、なおかつ破綻していないのはとても評価できる。
前半だけなら非常によくできたゲームになったと思う。
やはり後半が『Crysis』の評価を最も押し下げていると言えるだろう。

非常に自由度の高かった前半パートと比べると、後半においてルート選択の自由度はなくなってしまう。
敵もエイリアンだけとなり、ただひたすら目の前に出てくる敵と戦っていく。
後半部分だけをとるのなら決して出来は悪くないものの、前半の自由度の高さを見せつけられた後だと自由度の落差が激しすぎる。
もうひとつ後半の部分で指摘しなければならないことは、前半よりも動作が重くなることだろう。
人によっては設定を下げるかもしくはゲームをあきらめてしまう人がいるかもしれない。
とにかく後半はストーリーを多く語るスクリプト要素の強い(台本のある)ゲームに変貌してしまうのだが、それは果たして『Crysis』に必要だったかといわれればNOだ。

繰り返すが、ゲームのクオリティは非常に高い。
前半部分もアラを探さなければ十分に高い自由度を満喫できるし、後半は手に汗握るエイリアンとの死闘を繰り広げられる。
ただやればやるほど調整不足というか、ゲーム全体のバランスの悪さがにじみ出てくる。

前作『Farcry』の欠点だった難易度の高さはクイックセーブやいつでも難易度を選べることで完全に解消されているものの、面白くなかったミュータント戦や室内戦は『Crysis』でエイリアン戦として復活している。
プレイヤーからの批判から何を学んだのかと問いたくなるのは自分だけではないだろう。
白熱のイベントシーン画像
カットシーン

まとめ

『Farcry』とは似ているようで似ていないので『Farcry』が会わなかったプレイヤーにもお勧めできる。
ただし『Farcry』の面白さを求めても『Crysis』には存在しない。
前半の自由度の高さは『Farcry』をさらに超えていて、名作と呼ぶにふさわしい出来であるといえよう。
しかし後半は自由度が失われてしまって、普通のFPSになってしまっている。
『Crysis』の世界を堪能するためには最低でも推奨環境は必要なので、それだけでもプレイヤーを選ぶ。
ところどころに詰めの甘さは残るものの、非常に高水準のゲームである。

82点

ページトップへ

トップページ >ゲームレビュー >FPS・TPSゲームレビュー >Crysis(クライシス)

design by. (C) WebDaisuki.com