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The Tower of AION(タワー オブ アイオン)


ジャンル:MMORPG
機種:PC
発売年:2009年
開発会社:NCsoft

公式ウェブサイト

ベータテスト時の感想もあるので、そちらも参照して欲しい。
リンク

レビュー脱稿日2009年9月 最終更新日2011年3月

ただし私は2010年の初頭以降はやっていません。
レビューは「2.0」以前について書かれています。

紹介

(注)紹介、レビューともに2010年初めごろまでの『The Tower of AION(タワー オブ アイオン)』を基に書かれています。
最新の情報は分かりません。

『The Tower of AION(タワー オブ アイオン)』(『Aion』とする)は2009年に日本での正式サービスが開始したMMORPGである。
開発は韓国のNCsoftで運営は日本法人が行っている。
ゲームエンジンには有名なCryEngineを利用している。
大韓民国ゲーム大賞2008を受賞し、日本に来るまでの前評判が非常に高かったゲームだ。
それゆえ、ベータテストや正式サービスのときは何万人もの人たちでごった返すほどの盛況となった。
正式サービス後から数ヶ月経った現時点でもかなりの人数が接続しており、かなり人気があると言えるだろう。
課金は月額課金システムだ。
月100時間で2000円、または月300時間で3000円を課金して遊ぶことになる。
若干高めの金額に加え、ゲーム自体の動作環境も高いため、低年齢層を中心とする悪質なプレイヤーはあまりいない。
(4gamerのアンケートによると、30代のプレイヤーが最も多く遊んでいるそうな)
しかし後で述べるように、BOTなどの問題はある。
ミッションを受けている様子
序盤は幻想的な世界が用意されている
『Aion』の特徴は自らを『完成型』とうたうほどの完成度の高さである。
ただしこの完成型というのは今まで作られてきた韓国系MMORPGの発展系である。
決して『Aion』には斬新な要素や今後のMMORPGを変えるものが用意されていない。
とはいえ、美しいグラフィック・音楽・大まかなゲームバランスは今後出てくるMMORPGを測るための重要な尺度となるのは間違いない。
つまりこれまでのMMORPGの集大成みたいな側面がある。
その一方でMMORPGならではの問題点も当然ながら吹き出してくるので、そこはレビューにて触れていく。

プレイヤーはフィールドにはびこっている敵NPC(MOB)を倒してレベルやアイテム・金を集め、クエストを消化していくのが主なゲームの目的となる。
難しいクエストはパーティを組まないと無理だったり、強力な武具や高いレベルを必要とするので、ゲームの殆どは敵を狩ってレベル上げをすることに費やされる。
レベルが上がると敵対種族のプレイヤーと対戦を行うマップへと移動することができる。
ここでは生身の人間同士の対戦(勢力争い)を行うこともできる(もちろんやらなくても良い)。
『Aion』ではひたすら一人で敵を狩ることも、みんなでパーティを組んで敵種族を排除しても良いのだ。
まあ『Aion』のルールを簡単に説明するとこんなものだろう。
戦闘
敵との戦闘の様子だ
『Aion』のゲームシステムは平凡で魅力に乏しいが、他の箇所はかなり魅力的だ。

詳細なキャラクターエディットにより、自分好みのキャラクターを本当に作り出すことができる。
予め登録されたパーツを組み合わせるだけでなく、登録したパーツを少しずついじれるので、作成可能な顔のパターンは無限大だ。
これによって様々なタイプのキャラクターを作り出し、自分のキャラクターに愛着をもてる。
そして美しいグラフィックと音楽も、ゲームの世界の構築に重要な役割を果たしている。

他にも敵味方問わずキャラクターの動きが非常に細かく作り込まれており、非常に滑らかに動くことなど、『Aion』の世界を作り上げるための並々ならぬ気迫が伝わってくる。
しかもこのゲームには天族と魔族(天界と魔界)という二つの種族(世界)が用意されている。
一つのアカウントで最大5人ものキャラクターが作れるので、時間さえあれば天族と魔族の2つで遊ぶことができる。
どちらも方向性は違うものの、かなり作り込まれた世界がプレイヤーを待ち受けている。
顔作成
好きな顔や体型を作れる

レビュー

一見すると素晴らしいゲームだが、とてつもなく大きなものが欠けている

『Aion』の序盤はかなりよくできている


韓国製のゲームと言ったら、日本やアメリカ製のパッケージゲームと比較すると全ての点において劣悪なものが多い。
しかし『Aion』は、パッケージの一線級のゲームと遜色のない質を持っている数少ない韓国産ゲームだ。
一つのゲームで金をかけたかどうかを測るにはグラフィックの良さや、インターフェイス・ゲームシステムの快適さを見るのが手っ取り早い。
なぜなら、こういった点はいくらテクノロジーが進化しても最終的にかけた人数や時間がモノを言いやすいからだ。
『Aion』はゲームの隅から隅までが緻密に描写されていて、キャラクターのモーションは多彩で滑らかだ。
既に韓国版でサービスされていることもあるが目立ったバグもなく、ゲームバランスに関しても大きく崩れている様子はない。
だから『Aion』の第一印象というのは非常に良い。

第一印象のよさ後押ししているのは低レベル帯の作り込みだ。
ゲームを開始してからレベルが16か17になるまでの十数時間は非常に丁寧につくられている。
レベルが上がるごとに得られるクエストの数は結構な数があり、それもバリエーションが多い。
ただ単に敵を倒すものから、お使いをするもの、もしくは自分で行動を選択するものとかがある。
獲得できるクエストをこなしていくうちに自然とレベルが上がり、また次のクエストを獲得できるという好循環が生まれている。
首都
天族の首都は明るくて開放的だ
だが、このような好循環というのは、実のところオフラインRPGそのものなのである。
『Aion』はオンラインゲームなのだから長く人を遊ばせなければならない。
このときオンラインゲームが取る方向というのはかなり単純だ。
それは、レベルを上げにくくしたり、アイテムの値段を高くしたり、クエストにかかる時間を膨大にすることでプレイヤーを長時間縛り付けるのだ。
『Aion』ではレベルが20を超えた当たりからその片鱗が見え始め、30を過ぎると明らかに普通のMMORPGと変わらなくなっている。
(ただ、Aionは他のMMORPGと比較するとレベルアップに必要な経験値はヌルイそうだ)

また、レベルが上がっていけばいくほどクエストをクリアしたときの経験値が相対的に少なくなったり、クエスト自体の数も少なくなっていく。
特にカンスト50間近のレベル40代なんかかなり酷いもので、クエストの数が明らかに少なくてやることが無くなってしまっている(注:アップデートにより、着々と改善されているそうです)。
高レベル帯のフィールドは似たようなマップと色違いのモンスターばかりで手抜きが目立つ。

しかし『Aion』には敵種族の対戦が行えるかもしれないフィールドマップ(いわゆるPvPエリア)が用意されている。
いわゆる対戦ゲームに近いので、このフィールドでは明確に目標を定めなくとも楽しめる利点がある。
ところが『Aion』の対人戦というのは、レベルが高いもの勝ち、不意打ちしたもの勝ち、廃装備したもの勝ち、人数が多いもの勝ちという、対戦を楽しむ最低限の基準にすら到達していない。
そもそも対戦ゲームの面白さというのは、対戦する両者がある程度近い条件のもと戦い、やるまえから勝敗が決していないから面白いのであって、『Aion』のように勝負をする前から勝ち負けがほぼ決定してしまうのはクズである。
不意打ち
このように休憩中に襲われたらひとたまりもない

ソロプレイとパーティプレイ

MMORPGにおいてソロプレイというのは何のためにあるのだろうか。
パーティを組んだり協力することがMMORPGの面白さであるのは疑いはないが、あまりにもパーティプレイの比重が大きすぎると、ゲームの幅が無くなってしまう問題がある。
だからソロとパーティが適度に組み合わされていることが理想だ。

『Aion』は一部のレベル帯を除いてソロとパーティプレイが適度に組み合わされている。
ソロに飽きてきたなと思ったら、ソロでいけるクエストをペアで軽くクリアしても良いし、ガッツリとパーティクエストを行うこともできる。
その逆もまたしかりであって、たまには一人でのんびりやりたいときもあるだろう。
こういったクエストのバランス(自由度)は非常に優れていると思う。

ところが、パーティにはたったひとつ問題点がある。
職構成のバランスである。
最大6人のパーティを組むとして、普通に進めたいだけでも最低3人は確実に特定の職で埋まる。
(注:大昔の『Aion』は、キュア、シールド、スペルがいないと話にならなかった)
しかも役割分担というのが完全に決まっており、何度パーティを組んでも各自やることが同じなのである。
意外にも職構成の縛りがキツイのが『Aion』なのだが、これは大昔のMMORPGから指摘されている欠点だ。
(例えばダンジョンがあったとして、同じ職6人ではクリアできない。
これはゲームの幅(自由度)を無くしている。
ゲーム後半になればなるほど攻撃が強烈な敵は多くなるので、鉄板のパーティでなければまともに遊べなくなったりする。

ついでに言うと、慣れてきたら戦闘がただの作業になってしまう。
極端な話、フィールドを巡回している敵に向かって強力な技を順番にぶっ放して倒していくだけだ。
駆け引きとか戦略とかは何もない。
パーティ時においても似たようなことが当てはまる。
『Aion』は戦闘が単調でつまらないのである。
パーティ
MMOと言えばパーティプレイ

MMORPGの負の側面

『Aion』最大の難点というのは、ゲームシステムが古く、しかも問題点がハッキリとしている使い古されたものをそのまま持ってきている点にある。
長時間やらなければならないシステムや、単調すぎるゲームプレイなど、短時間しか遊べないプレイヤーは門前払い、プレイヤーがどっぷりと浸かろうにも単調で面白さがない。
もうひとつダメなのはお金がかかりすぎるゲームシステムだ。
ゲームをやればやるほど金策に苦労することになる。
だからこそ時間のない社会人はRMTをしたがってしまう。(RMT=リアルマネートレード)
しかも『Aion』はゲーム自体が単純なため、すさまじい数のプログラム制御で動くBOTや中身入り業者が存在している。
これは、ゲーム自体がRMTを推奨している作りだと言っても良いだろう。
要は長い間MMORPGについて言われてきた問題点をまったく解決する姿勢を見せずに、今まで作られてきたゲームシステムを流用し、最新技術でオメカシしているだけなのだ。

そしてここで初めて述べることになるが、『Aion』は新規プレイヤーを阻む仕組みが多い。
まず、このゲームでは2つの種族(天族・魔族)が勢力争いをするという形を取っているので、どちらかの種族を選んでプレーしなければならない。
しかし日本では天族が大人気なのでサーバー内の勢力バランスが崩れがちである。
運営はそれを考慮して、天族側での新規プレイヤー作成を制限している。
(注:昔のアイオンは作成制限で天族を選べなかった)
だから新規プレイヤーは天族でやりたいと思ってもできないという馬鹿げたことになってしまっている。

次は既に述べた対人の仕様である。
現状、新しくキャラクターを作成できる魔族でプレイすると、殆どのサーバーでは天族に押されている。
そうなると比較的高いレベル帯のフィールドエリアでは夜な夜な天族が「魔族狩り」を行うために、わざわざ魔界に遠征してくる。
わざわざ遠征してくるプレイヤーは「レベルが高くて強い」ので、為す術がなく殺されることが頻発する。
NCsoftはゲームを作っているときにこんな簡単な欠点が分かっていなかったのだろうか。
魔族
魔族プレイは天族に押され気味となるので、きつめ

いかにアップデートで改善されようとも、失われた時間は戻ってこない

オンラインゲームで大事なのはゲームの出来のほかに、運営の質というのがある。
NCsoftの日本法人は冗談抜きに最低クラスのクソ運営だ。
(注:今はだいぶんマシになっているそうですが)
そこらじゅうにいる不正ユーザー(BOTや肉入り業者)をまったく取り締まっていない。
通報ボタンを押しても、公式サイトから要望を送ってもまったく応じる様子がない。
不正ユーザーに邪魔されるまともなプレイヤーを尻目に、奴らは儲けた金でポテトチップスを作っていやがる。
もうひとつ大事なのはアカウントハック問題だ。
私の知り合いが何人もアカウントハックにあい、身ぐるみはがされた。
どうして毎日ゲームにINするたびに、アカウントが大丈夫かどうかビクビクしなきゃならないのだ。
(注:今はワンタイムパスワードなどの導入で少なくなったが、失われたものは取り戻せられない)

ゲームのクライアントに内在するローカライズバグも問題だ。
画面に表示される人数が多くなると、Aionはエラーを吐いて勝手に落ちる。
韓国や中国版ではまったく問題はなかったそうなので、これはローカライズの失敗だ。
上で横線を引っ張った情報は間違いです。
正しくは、「韓国版でも中国版でも、人数が大量に表示されるとクライアントが落ちる」です。
そもそも『Aion』の目玉のひとつに攻城戦があります。
攻城戦では数百人ものユーザーが参加して戦いを行います。
しかし、目玉であるはずの攻城戦をするときにクライアントが落ちやすくなるという欠点を、『Aion』は抱えていました。

これのせいで、私は大規模な戦闘に参加する事が出来ない。
いちおう対策はある。
音を切って、ゲーム内設定を最低にすれば落ちないそうだ。
だが私はそんなことをしてまでやりたいとは思わない。

アビス
バグはいただけない

新鮮さこそがMMORPG最大の魅力なのか。その新鮮さがなくなったときにどうすればよいのか

少し話を元に戻す。
『Aion』で一番面白かったのは、敵種族の世界への潜入だった。
そこらじゅう敵プレイヤーだらけなので、相手に見つからないように、そして相手をうまく排除するように動いていく必要がある。
潜入しなければうけられないクエストは難しい分、報酬は破格なのでそれだけやる価値があったのだ。
しかしそれは最初だけのことだった。
やっぱり慣れというものは恐ろしく、最初の頃持っていた緊張感は失われてしまう。
そして相手側も対処方法というのが分かってくるので、重要な場所で明らかにレベルが高いプレイヤーに待ち伏せされてることが多かった。
MMORPGの面白さというのは、誰も慣れていない頃の緊張感にあるのだろう。

『Aion』に欠けていたのは、遊ぶ人たちの視点である。
何が面白いのか、どのようなことを面白いと感じるのか、何をやれば楽しく遊んでもらえるかというのを何も考えずにゲームを作るとこんなのができあがる。
『Aion』は思考停止をして、オキマリの文法で作ったゲームなのだ。
しかしMMORPGというジャンルの性質上、外見が違えば新鮮さだけで何十時間以上は遊べてしまう。
NCsoftはジャンルの利点にあぐらをかいて、商品として利益を追求することだけを考え、遊ぶ楽しさをまったく無視している。

最後に、2008年にNCsoftの開発本部長が韓国で行った基調講演の話をして終わりとしよう。
彼によれば、最近の韓国のオンラインゲームは独創性がなく、外見を取り替えたものに過ぎないという。
だから次世代のゲームは新しい戦闘システムや、魅力的な設定やストーリーが必要なのだという。
ここで引用は終わるが、NCsoftはそもそもMMORPGの仕組み自体に疑問を挟んでいない。
ジャンルの枠組みを根本から考えていかなければ、今後も同じようなゲームは量産され続けるだろう。
アイオンは新たなるMMORPGの幕開けとはならなかった
アイオンは新たなるMMORPGの幕開けとはならなかった

まとめ

『Aion』の中身はよくある韓国製MMORPGだ。
外見は非常に綺麗で魅力的ではあるし、MMORPGの基本は押さえてあるのでそこそこ遊ぶことはできる。
しかし、やればやるほど細かい点に行き届いていない”至らなさ”を感じるだろう。
運営が最悪なので気持ちよく遊ぶことはできないかもしれない。

60点

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