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Alliance of Valiant Arms
(アライアンス オブ ヴァリアント アームズ)


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2008年
開発会社:Redduck

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2009年3月 最終更新日2011年3月
記事は2009年3月のままなので内容が古くなっています

紹介

『Alliance of Valiant Arms』(以下AVAとする)は韓国のRedduckが開発し、日本ではゲームオンが運営しているオンラインFPSである。
乱発される韓国産FPSの中で満を持して登場したのが『AVA』であった。
2007年の大韓民国ゲーム大賞を受賞した。
欧米のゲーム開発で有名な「Unreal Engine 3」を採用し、リアリティのあるグラフィックを実現している。
また他のゲームの欠点を反省してゲームバランスが改善されている。
これと言って特徴がないといえばそうなのだが、他の韓国産ゲームにあるような手抜き感や妙なバランスがない。
オンラインゲームとしては要求スペックが比較的高いものの、安定して人を呼び込むことに成功している。
おそらく、CODなどのパッケージものFPSをやっていた人が多くやっているのではないかと思われる。

ゲームシステムやプレイ感覚は、基本的に他の韓国産オンラインFPSと変わらないと考えて良いだろう。
したがって『サドンアタック』などをやってきた人ならばすんなり溶け込めるはずだ。
P90兵士が逃げ回る画像
他の韓国産ゲームとはひと味違うグラフィック
それでは簡単にルールを説明しよう。
プレイヤーが2チームに分かれて戦い合うのは他のFPSと全く同じである。
ゲームルールは、敵を一定数倒すことを目標とする「殲滅ミッション」(俗に言うデスマッチ、フリ−フォーオール)、特定地点の爆破をするか阻止をする「爆破ミッション」、そして独自の「護衛ミッション」がある。
護衛モードはちょっとややこしいが、自動で動く見方の戦車を守りながら特定地点まで進めることを競う。
一定時間で攻守が後退し、最初に戦車を動かしていたチームが到達した場所まで後者のチームの戦車が到達すれば、後者のチームの勝利となる。
守備側のチームは戦車の動きを止めるためにロケットランチャーをぶっ放し、攻撃側は予め敵を倒しておくか壊れた戦車を修理しながら戦車を進ませる。
現在は以上三つのルールに加えて、奪取(CTF)、AI戦、占領戦が追加されている。

韓国系FPS最大の難点だった武器とマップのバランスの悪さは、『AVA』において一定の解決策を出している。
『AVA』は兵科を導入することで、スナイパーライフル無双のような状況にならないのだ。
兵科は近距離に強いポイントマン、全距離をこなせるライフルマン、一撃必殺のライフルを所持するスナイパーマンの三つだ。
従って近距離はポイントマン、中距離はライフルマン、遠距離はスナイパーマンという役割が完全に分離されている。
ちなみに試合途中に変えることも可能だから、場面にあった兵科にどんどん変えていくことも可能だ。

『AVA』のマップは比較的狭いものの入り組んでいる場所が多く、各兵科に有利な場所が意図的に作られている。
また入り組んでいるので待ち伏せや裏取りといった立ち回りが戦況を大きく変えるだろう。
ところで何かひとつ『AVA』に近い感覚のゲームを上げてくれと言われたら、私は『COD4』(コールオブデューティ4)と答える。
戦車護衛中の画像 AK持ち
戦車と進軍しよう
初心者向けの要素も追加されているのもAVAの特徴だ。
自分一人しか入れない試し打ちやマップ探索が出来るサーバー、対人ではなくコンピュータが動かすBOTと殲滅を行うミッションが搭載されている。
またスコアが低い人だけしか入れないサーバーもあるので、初心者狩り(上手い人が初心者を狩って楽しむ卑劣な行為)も行われていない。

少し変わった要素に、AVAでは自分の取った行動によって経験値がたまるようなシステムがある。
一定値の経験がたまれば武器の修理や購入に使えるポイントが補給されたり、自分の能力を底上げするスキルが解放される。
ただし、スキルが解放されるといっても目に見えて強くなるようなことにはなっていない。
「がんばってきた勲章」ととらえるのが自然だろう。

そして「分隊長システム」が導入されているのも他のFPSにはない特徴だ。
分隊長は各チーム一人がなることができる特殊な役割である。
見方全体へラジオチャットを行って指示をしたり、敵を双眼鏡で覗いて敵の場所を一定時間捕捉することができる。
たとえ射撃や立ち回りが下手でも、分隊長なら活躍できるかもしれない。
銃撃

レビュー

隙のない出来。だが他のゲームとの差別化が出来ていない

『AVA』のポテンシャル

『AVA』は韓国で開発されたオンラインFPSゲームの中で最も出来が良い、つまり良質のゲームである。
ゲームをするだけなら無料で、より多くの追加要素を楽しみたければ課金しなければならないゲームは、最初からお金を払うゲームと比べると質が低い。
その理由は開発費に多大な費用をかけてしまうと回収できなく恐れがあったり、ゲームの運営を安定してしなければならないからである。
だからこそ初期投資金額が少なくなり結果として同じようなゲームや低品質のゲームが量産される。
そのような状態の中、一回使えば数千万円の使用料が発生するアンリアルエンジン3を利用して『AVA』という挑戦的なゲームが生まれた。
確かにお金をかけただけあって、韓国製カウンターストライククローンFPSの集大成のようなものになっている。

まず目を引くのがアンリアルエンジン3を使ったグラフィックだ。
オンラインFPSといえば、見た目をある程度犠牲にしてでも動作環境を極限まで下げることにより、より多くのユーザーを獲得しようとする。
つまりゲーム用に組み立てたPCを持っていない人もできるように作っていることが多い。
ユーザーを多く獲得するためにしかたないことなのだが、AVAではバッサリとゲーム用PCを持っているユーザーだけ顧客の対象にしている。
これにより、オンラインFPS特有の低年齢層流入によるプレイヤーの質の悪化がある程度食い止められている。
現状では結構人がいるのでゲームオンのもくろみは成功したと言えるのではないだろうか。

とかくグラフィックだけに目を奪われがちだが、キャラクターのモーションがこの手のゲームにしてはきっちり作られているのも好印象だ。
普通のオンラインFPSでは動作を軽くするためにモーションの数を減らしたり、奇妙な動きを繰り返すキャラクターを用意している。
『AVA』ではきちんとしたモーションが使われているのだ。
韓国系FPS最大にありがちな、見ているだけで可笑しい動きはまったくなく、さながらパッケージもののゲームと何ら遜色はない。

ただ残念なのは銃声がスカスカであることだ。
重厚な質感が特徴のアンリアルエンジン3に似合わないほど、軽くスカスカした音なのは拍子抜けてしまう。
銃を扱った戦闘を行うFPSにおいて銃声やヒット感覚は爽快感や銃撃感を演出数するために重要な要素だ。
しかしAVAでは銃撃の音がスッカスカなため、安っぽい感じがする。
つまりFPSで最も大事な「銃撃感」が微妙なのである。
MSG90で遠くの敵を狙う画像
スナイパーライフルもあるよ

マップの作りはどうだろうか

ではゲームの中身そのものについて説明していこう。
AVAはゲームバランスについてはこの手のゲームにしては入念に調整されていると言える。
マップは隠れる場所と開けた場所がバランス良く用意されていたり、現実に沿った様々なシチューションが用意されている。

とはいえ、マップは狭いわりに入り組んでいて、敵と真っ正面から対峙する場所と隠れつつゆっくり進む場所に分かれている。
この二つの場面を用意すること自体は良いことだ。
しかし、全体的に隠れる場所が多い印象を受ける。
つまり、現実にありそうな家を再現するマップでは部屋ごとに隠れる場所が出来たり、そうでなくても入り組んでいるため後ろからの不意打ちが頻発する。
このような要素が好きか嫌いかは考え方によるとは思う。
立ち回りの問題だと考えてしまえば、待ち伏せしたり相手の陣地へ押し入って相手の裏をかくことが戦略性が高いととらえることが出来るだろう。
一方で私のように、不意打ち攻撃に自分がやるにしろ敵がやるにしろ嫌悪感を抱く場合はストレートなマップ構成を好む。
どちらが好きかは人によるとしておきたいが、個人的には立ち回りよりも撃つ感覚を重視するのがFPSだと思っているのでAVAのマップ構成はあまり好きになれない。
ちなみにこのマップ構成が、紹介で私が「AVAはCOD4っぽい」と書いた理由だ。
どちらも立ち回りが非常に重要な意味を持つゲームである。
敵味方の銃撃戦画像
激しい銃撃戦だ

狭いマップ、そして護衛モードにつきまとう問題

そして『AVA』のマップは全体的に狭いのも問題だ。
韓国産のオンラインFPSは往々にしてマップが狭いのが特徴の一つなのだが、AVAはその中でも輪をかけて狭い。
キャラクターが大きめのモデルであることも狭さを感じる理由かもしれない。
マップが狭いために調子に乗って攻め込むと、殲滅ミッションや護衛ミッションでは敵のリスポーンポイントにすぐに到達してしまう。
特に戦車を護衛するミッションではリスポーンポイントの場所が悪い。
注意していないと、攻め側では復活した直後の無敵状態である敵と交戦する羽目になってしまう。

せっかくアンリアルエンジン3を利用するくらいの意欲があるのだから、殲滅ミッションをランダムリスポーンにしてもよかったのではないだろうか。
護衛ミッションは復活場所を数カ所に限定させず、徐々に後退させることは出来なかったのだろうか。
爆破ミッションでは、二地点ある爆破地点が微妙に近いため、どちらに仕掛けるかという面白味がない。
確かにマップバランスはいいものの、やればやるほど詰めの甘さが際だってしまう。

『AVA』独自の護衛ミッションは白熱した試合になれば面白い。
一方で、力量の差がハッキリと出てしまうのも特徴であり、欠点だ。
戦車を守るか攻撃するかという、一ヶ所を中心にした戦いが面白くないわけがない。
ところがルールを上手く理解できていない人や極端に上手い人が片方のチーム固まると状況が変わってくる。
この点の特殊ルールを行うFPSでは、戦力差がハッキリしたときにレイプ試合になることが多い。
だからこそ戦闘途中にチームを変えたりするバランス調整機能を導入させる必要がある。
ところが『AVA』ではゲーム開始前のシャッフル機能しか搭載されていない。
ついでに言うと護衛ミッションは20分を超える試合になるので、負けている側は延々と絶望的な試合をさせられることになる。
韓国系のFPSは、戦力差がハッキリしたときの措置には無頓着である。
爆弾を解除している様子の画像
勝てればうれしいのだが勝ち続けるのも問題

兵科の魅力と面白さ

バランス重視の『AVA』は、兵科を導入して韓国産オンラインFPS特有の問題点について一定の答えを出している。
韓国産のオンラインFPSは、大本のゲームであるカウンターストライクを参考、もといパクっている。
それゆえカウンターストライクの面白さを焼き直したようなものになっており、武器のシステムなんかも無理矢理オンライン課金に合わせるように作り替えられている。
ところがここで武器同士のバランスという歪みが生まれる。
現状では、豊富な武器を望むユーザー(みんな好きな銃使いたいでしょ)の要望に合わせ、バランスを徹底的に追求したゲームは存在せず、武器ごとのバランスが悪い。
つまり○○とかいうスナイパーライフルが強いとか、□□というサブマシンガンが最強だったり、弱すぎてネタとして扱われないものが存在している。
もちろん多様性はオンラインゲーム上での自分の立ち位置を固める上で重要なアバター要素にもなり得るわけで、難しい問題でもある。

『AVA』では無理矢理三つの兵科を導入することで武器ごとのバランスを変えてしまった。
つまり、近距離、中距離、遠距離を得意とする三つの兵科を用意し、得意な距離では他の兵科には容易に負けないようにした。
弱いと言われている武器でも得意とする距離ならば強く、もちろん上級プレイヤーはどんな距離でも実力でねじ伏せられるようになっている。
これは見事な決断だ。
自分は自動的に三つの兵科を持ち、それぞれの兵科にあった武器を三種類保持することになる。
つまりプレイスタイルが違う武器を課金せずとも使うこともできる。
兵科によって要求されるスキルもだいぶん違うので、極めようと思えば長く遊ぶことも出来る。
UZIで瞬殺しようとする画像
ポイントマンの戦闘だが、この距離は得意な戦闘だ!
きちんと敵を始末しよう
兵科によって戦闘の面白さは変わってくる。
まず近距離戦闘が得意なポイントマンは、走ってもジャンプしても銃を連射しても素直に弾が飛ぶため、縦横無尽に走り回りながら戦う。
中距離戦闘が得意なライフルマンは、無闇に動いたり銃を連射すれば弾があべこべに飛び散るので、小刻みに弾丸を発射して正確に狙う必要がある。
そしてスナイパーマンは、一撃必殺の銃を持つものの単発で扱いにくい。
つまりポイントマンは初級者、ライフルマンは中級者、スナイパーマンは上級者向けということができる。(極めればどの兵科も恐ろしく強いのは変わりがないが)

したがってFPSに慣れていない人はポイントマンを選んでおけば心配はない。
一人用の練習モードも完備されているので、初心者が突き放されるようなことはない。
そしてある程度慣れたら分隊長になってみるのもよいだろう。
双眼鏡を使って敵の位置を捕捉するのはチートまがいだという意見もあるが、捕捉するためには一端敵の前に出なければならないリスクがあるのでどっこいどっこいだ。

それと『AVA』の面白さは、みんなで連携する要素をある程度詰め込んでいる点にある。
分隊長にしろ、兵科にしろ、チームの状況に応じて適切に選ぶ必要がある。
移動速度が遅いなど全体的にスローテンポなゲームだが、その分自分の動きを考えつつ戦っていくのが本来の楽しみではないだろうか。
競技性よりもカジュアル感が強い、今風のゲームである。
スタート直後、みんなで走る画像
団体行動が基本だ

没個性な『AVA』

とまあ色々と述べてきた『AVA』最大の欠点は、何かが足りないことである。
独自のシステムのようなものはあるが、他のゲームで既に導入されているものをアレンジしたにすぎない。
マップにしろ実銃を使った戦闘にしろ、飽和状態のオンラインFPSでは目新しさが何もない。
もしこれで絶妙なゲームバランスをもっていたら評価はさらに高くなっただろう。
良作と言われるゲームの要素をこれでもかと詰め込んだので『AVA』なのだ。
しかし『AVA』はあくまでも韓国系オンラインFPSの線上から抜け出せていない。
パッケージのゲームと比べると、無料か少ない投資で出来ること以外の利点が何もない。

運営が積極的に動いていないのもよくない。
活気があるかどうかは公式ウェブサイトなりプレイヤーの交流なりでそことなく分かるのだが、『AVA』には活気がない。
アップデートの速度が遅く、面白いイベントも少なく、コレで本当にサドンアタックやスペシャルフォースの牙城を崩せると思っているのだろうか。
それにゲームオンならではの変な運営方針も気になる。
伝え聞くところによると、かつてアイテムの補償がなかったりしたそうだ。

『AVA』韓国系FPSでは群を抜く良作こそ厳しいことを述べてきた。
さすがに後発だけあってゲームの完成度は高く、とがった要素のない「遊べる」ゲームに仕上がっている。
しかし綺麗にまとまりすぎているし、没個性的なのでゲーム自体の魅力が乏しい。
本当に「何か」が足りていないゲームだ。もったいない。
ウォームアップタイムを利用してのナイフ合戦
ゲームが始まる前にはウォームアップタイムのようなものがある
ここでは好きなように動いておこう

まとめ
韓国産オンラインFPSゲームの一つの到達点。
グラフィックは無料ゲームとしてはかなりのレベルでキャラクターの造形やモーションもパッケージソフトに引けを取らない。
ゲームバランスは他のオンラインFPSよりも良好だ。
初心者向けに要素もたっぷりだからこれからFPS最大をやる人へもおすすめ出来る。
しかしこれと言って『AVA』をおすすめ出来る要素がないのが欠点。
(「○○が好きならAVAをやれ!」と言いにくい)

64点

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