レビュー
隙のない出来。だが他のゲームとの差別化が出来ていない
『AVA』のポテンシャル
『AVA』は韓国で開発されたオンラインFPSゲームの中で最も出来が良い、つまり良質のゲームである。
ゲームをするだけなら無料で、より多くの追加要素を楽しみたければ課金しなければならないゲームは、最初からお金を払うゲームと比べると質が低い。
その理由は開発費に多大な費用をかけてしまうと回収できなく恐れがあったり、ゲームの運営を安定してしなければならないからである。
だからこそ初期投資金額が少なくなり結果として同じようなゲームや低品質のゲームが量産される。
そのような状態の中、一回使えば数千万円の使用料が発生するアンリアルエンジン3を利用して『AVA』という挑戦的なゲームが生まれた。
確かにお金をかけただけあって、韓国製カウンターストライククローンFPSの集大成のようなものになっている。
まず目を引くのがアンリアルエンジン3を使ったグラフィックだ。
オンラインFPSといえば、見た目をある程度犠牲にしてでも動作環境を極限まで下げることにより、より多くのユーザーを獲得しようとする。
つまりゲーム用に組み立てたPCを持っていない人もできるように作っていることが多い。
ユーザーを多く獲得するためにしかたないことなのだが、
AVAではバッサリとゲーム用PCを持っているユーザーだけ顧客の対象にしている。
これにより、オンラインFPS特有の低年齢層流入によるプレイヤーの質の悪化がある程度食い止められている。
現状では結構人がいるのでゲームオンのもくろみは成功したと言えるのではないだろうか。
とかくグラフィックだけに目を奪われがちだが、キャラクターのモーションがこの手のゲームにしてはきっちり作られているのも好印象だ。
普通のオンラインFPSでは動作を軽くするためにモーションの数を減らしたり、奇妙な動きを繰り返すキャラクターを用意している。
『AVA』ではきちんとしたモーションが使われているのだ。
韓国系FPS最大にありがちな、見ているだけで可笑しい動きはまったくなく、さながらパッケージもののゲームと何ら遜色はない。
ただ残念なのは銃声がスカスカであることだ。
重厚な質感が特徴のアンリアルエンジン3に似合わないほど、軽くスカスカした音なのは拍子抜けてしまう。
銃を扱った戦闘を行うFPSにおいて銃声やヒット感覚は爽快感や銃撃感を演出数するために重要な要素だ。
しかしAVAでは銃撃の音がスッカスカなため、安っぽい感じがする。
つまりFPSで最も大事な「銃撃感」が微妙なのである。
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スナイパーライフルもあるよ
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マップの作りはどうだろうか
ではゲームの中身そのものについて説明していこう。
AVAはゲームバランスについてはこの手のゲームにしては入念に調整されていると言える。
マップは隠れる場所と開けた場所がバランス良く用意されていたり、現実に沿った様々なシチューションが用意されている。
とはいえ、マップは狭いわりに入り組んでいて、敵と真っ正面から対峙する場所と隠れつつゆっくり進む場所に分かれている。
この二つの場面を用意すること自体は良いことだ。
しかし、
全体的に隠れる場所が多い印象を受ける。
つまり、現実にありそうな家を再現するマップでは部屋ごとに隠れる場所が出来たり、そうでなくても入り組んでいるため後ろからの不意打ちが頻発する。
このような要素が好きか嫌いかは考え方によるとは思う。
立ち回りの問題だと考えてしまえば、待ち伏せしたり相手の陣地へ押し入って相手の裏をかくことが戦略性が高いととらえることが出来るだろう。
一方で私のように、不意打ち攻撃に自分がやるにしろ敵がやるにしろ嫌悪感を抱く場合はストレートなマップ構成を好む。
どちらが好きかは人によるとしておきたいが、個人的には立ち回りよりも撃つ感覚を重視するのがFPSだと思っているのでAVAのマップ構成はあまり好きになれない。
ちなみにこのマップ構成が、紹介で私が「AVAはCOD4っぽい」と書いた理由だ。
どちらも立ち回りが非常に重要な意味を持つゲームである。
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激しい銃撃戦だ
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狭いマップ、そして護衛モードにつきまとう問題
そして『AVA』のマップは全体的に狭いのも問題だ。
韓国産のオンラインFPSは往々にしてマップが狭いのが特徴の一つなのだが、AVAはその中でも輪をかけて狭い。
キャラクターが大きめのモデルであることも狭さを感じる理由かもしれない。
マップが狭いために調子に乗って攻め込むと、殲滅ミッションや護衛ミッションでは敵のリスポーンポイントにすぐに到達してしまう。
特に戦車を護衛するミッションではリスポーンポイントの場所が悪い。
注意していないと、攻め側では復活した直後の無敵状態である敵と交戦する羽目になってしまう。
せっかくアンリアルエンジン3を利用するくらいの意欲があるのだから、殲滅ミッションをランダムリスポーンにしてもよかったのではないだろうか。
護衛ミッションは復活場所を数カ所に限定させず、徐々に後退させることは出来なかったのだろうか。
爆破ミッションでは、二地点ある爆破地点が微妙に近いため、どちらに仕掛けるかという面白味がない。
確かにマップバランスはいいものの、やればやるほど詰めの甘さが際だってしまう。
『AVA』独自の護衛ミッションは白熱した試合になれば面白い。
一方で、力量の差がハッキリと出てしまうのも特徴であり、欠点だ。
戦車を守るか攻撃するかという、一ヶ所を中心にした戦いが面白くないわけがない。
ところがルールを上手く理解できていない人や極端に上手い人が片方のチーム固まると状況が変わってくる。
この点の特殊ルールを行うFPSでは、戦力差がハッキリしたときにレイプ試合になることが多い。
だからこそ戦闘途中にチームを変えたりするバランス調整機能を導入させる必要がある。
ところが『AVA』ではゲーム開始前のシャッフル機能しか搭載されていない。
ついでに言うと
護衛ミッションは20分を超える試合になるので、負けている側は延々と絶望的な試合をさせられることになる。
韓国系のFPSは、戦力差がハッキリしたときの措置には無頓着である。
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勝てればうれしいのだが勝ち続けるのも問題
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兵科の魅力と面白さ
バランス重視の『AVA』は、兵科を導入して韓国産オンラインFPS特有の問題点について一定の答えを出している。
韓国産のオンラインFPSは、大本のゲームであるカウンターストライクを参考、もといパクっている。
それゆえカウンターストライクの面白さを焼き直したようなものになっており、武器のシステムなんかも無理矢理オンライン課金に合わせるように作り替えられている。
ところがここで武器同士のバランスという歪みが生まれる。
現状では、豊富な武器を望むユーザー(みんな好きな銃使いたいでしょ)の要望に合わせ、バランスを徹底的に追求したゲームは存在せず、武器ごとのバランスが悪い。
つまり○○とかいうスナイパーライフルが強いとか、□□というサブマシンガンが最強だったり、弱すぎてネタとして扱われないものが存在している。
もちろん多様性はオンラインゲーム上での自分の立ち位置を固める上で重要なアバター要素にもなり得るわけで、難しい問題でもある。
『AVA』では無理矢理三つの兵科を導入することで武器ごとのバランスを変えてしまった。
つまり、近距離、中距離、遠距離を得意とする三つの兵科を用意し、得意な距離では他の兵科には容易に負けないようにした。
弱いと言われている武器でも得意とする距離ならば強く、もちろん上級プレイヤーはどんな距離でも実力でねじ伏せられるようになっている。
これは見事な決断だ。
自分は自動的に三つの兵科を持ち、それぞれの兵科にあった武器を三種類保持することになる。
つまりプレイスタイルが違う武器を課金せずとも使うこともできる。
兵科によって要求されるスキルもだいぶん違うので、極めようと思えば長く遊ぶことも出来る。
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ポイントマンの戦闘だが、この距離は得意な戦闘だ!
きちんと敵を始末しよう
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兵科によって戦闘の面白さは変わってくる。
まず
近距離戦闘が得意なポイントマンは、走ってもジャンプしても銃を連射しても素直に弾が飛ぶため、縦横無尽に走り回りながら戦う。
中距離戦闘が得意なライフルマンは、無闇に動いたり銃を連射すれば弾があべこべに飛び散るので、小刻みに弾丸を発射して正確に狙う必要がある。
そしてスナイパーマンは、一撃必殺の銃を持つものの単発で扱いにくい。
つまりポイントマンは初級者、ライフルマンは中級者、スナイパーマンは上級者向けということができる。(極めればどの兵科も恐ろしく強いのは変わりがないが)
したがってFPSに慣れていない人はポイントマンを選んでおけば心配はない。
一人用の練習モードも完備されているので、初心者が突き放されるようなことはない。
そしてある程度慣れたら分隊長になってみるのもよいだろう。
双眼鏡を使って敵の位置を捕捉するのはチートまがいだという意見もあるが、捕捉するためには一端敵の前に出なければならないリスクがあるのでどっこいどっこいだ。
それと
『AVA』の面白さは、みんなで連携する要素をある程度詰め込んでいる点にある。
分隊長にしろ、兵科にしろ、チームの状況に応じて適切に選ぶ必要がある。
移動速度が遅いなど全体的にスローテンポなゲームだが、その分自分の動きを考えつつ戦っていくのが本来の楽しみではないだろうか。
競技性よりもカジュアル感が強い、今風のゲームである。
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団体行動が基本だ
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没個性な『AVA』
とまあ色々と述べてきた『AVA』最大の欠点は、何かが足りないことである。
独自のシステムのようなものはあるが、他のゲームで既に導入されているものをアレンジしたにすぎない。
マップにしろ実銃を使った戦闘にしろ、飽和状態のオンラインFPSでは目新しさが何もない。
もしこれで絶妙なゲームバランスをもっていたら評価はさらに高くなっただろう。
良作と言われるゲームの要素をこれでもかと詰め込んだので『AVA』なのだ。
しかし『AVA』はあくまでも韓国系オンラインFPSの線上から抜け出せていない。
パッケージのゲームと比べると、無料か少ない投資で出来ること以外の利点が何もない。
運営が積極的に動いていないのもよくない。
活気があるかどうかは公式ウェブサイトなりプレイヤーの交流なりでそことなく分かるのだが、『AVA』には活気がない。
アップデートの速度が遅く、面白いイベントも少なく、コレで本当にサドンアタックやスペシャルフォースの牙城を崩せると思っているのだろうか。
それにゲームオンならではの変な運営方針も気になる。
伝え聞くところによると、かつてアイテムの補償がなかったりしたそうだ。
『AVA』韓国系FPSでは群を抜く良作こそ厳しいことを述べてきた。
さすがに後発だけあってゲームの完成度は高く、とがった要素のない「遊べる」ゲームに仕上がっている。
しかし綺麗にまとまりすぎているし、没個性的なのでゲーム自体の魅力が乏しい。
本当に「何か」が足りていないゲームだ。もったいない。
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ゲームが始まる前にはウォームアップタイムのようなものがある
ここでは好きなように動いておこう
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韓国産オンラインFPSゲームの一つの到達点。
グラフィックは無料ゲームとしてはかなりのレベルでキャラクターの造形やモーションもパッケージソフトに引けを取らない。
ゲームバランスは他のオンラインFPSよりも良好だ。
初心者向けに要素もたっぷりだからこれからFPS最大をやる人へもおすすめ出来る。
しかしこれと言って『AVA』をおすすめ出来る要素がないのが欠点。
(「○○が好きならAVAをやれ!」と言いにくい)
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