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『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜』


ジャンル:SRPG
機種:DS
発売年:2010年
開発会社:インテリジェントシステムズ


公式ウェブサイト


2014年5月レビュー

紹介

紹介

『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜』は2010年に発売されたシミュレーションロールプレイグゲームである。
先だって発売された『ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣』の続編にあたる。
もとは1991年に発売された『ファイアーエムブレム 紋章の謎』をリメイクしたものである。
開発はインテリジェントシステムズ、販売は任天堂が行っている。

ゲームの基本的な部分は『新・暗黒竜と光の剣』とほぼ同じだが、不評だった部分を改善している。
なので前作からの開発に一年以上かかったとインタビューにかかれている。
その成果なのか、『新・紋章の謎』は大胆なリメイクを行い、元のゲームとはかなり違うテイストのゲームになっている
まず、プレイヤーの分身となるマイユニットを作成してゲームの中で参戦できるようになった。
マイユニット専用の会話、外伝マップといったものが用意されている。
また、原作で説明が不十分だった点については『BS ファイアーエムブレム アカネイア戦記』を収録するなど、最大限多くの情報を提供している。
仲間になるユニットも原作より増え、まさに集大成と言った趣のリメイク作品に仕上がっている。
 
マイユニットはプレイヤーの分身である
そしてわざわざ味方をロスト(失って)してまで行かなくてはならなかった外伝マップは、もっと緩やかな条件にしている。
ファイアーエムブレムシリーズの根幹を揺るがすまでの厳しい条件を緩和したのだ。

兵種変更システムはそのまま継続し、ハードモード向けに綿密な調整が行われている。
詳しくはみないが単純に難しいだけのハードモードとなっておらず、末永く遊べるように作られた。
ただし兵種変更システムはどうしてもユニットの個性をなくす傾向があり、例えばマイユニットとの会話に齟齬をきたすことがある。

マイナーチェンジした二作目ではあるが、初心者でも遊べるようにカジュアルモードやチュートリアルも充実させている。
ついでにいえば、残念ながら海外では『新・紋章の謎』は発売されていない。
海外のファンにとってはもどかしい話である。
 
あの『アカネイア戦記』も収録してある

レビュー

大胆なリメイクで別物の良質なSRPGになった。しかし元ゲームの欠点はぬぐい去ることはできていない

リメイクの方針

リメイクと一言で言ってもたくさんの種類がある。
例えばもとのゲームを殆どそのまま移植するもの、少し変更しているもの、かなり変えているもの、別物になっているものに分けられよう。
『新・紋章の謎』は「かなり変えているもの」に分類される。
むろん、変わってない内容もある。

そこでまずは大きく変わった要素としてマイユニット追加について見る。
次に大きく変わりつつも変わっていない要素を併せ持つマップ構造を考察する。
最後は当時のファイアーエムブレムから一切変わらないものを見ていこう。
 
新マップ、新キャラクター

マイユニットの功罪

レイヤーの分身となるマイユニットの追加が『新・紋章の謎』最大の特徴である
マイユニットは他のユニットと同様に戦闘へ出撃し、味方と力をあわせて敵を倒していく。

どんな要素にも功罪はつきものである。
マイユニット追加によって、プレイヤーがまるでゲームの中の世界に張り込めるようになった点は、かつてのFEではなかなか見られない感触である。
そしてマイユニットはカスタマイズ性があり、どのユニットと比べても強力なので、上級者は自分好みに扱い、初心者は頼りになるエースユニットとして運用ができる。
また、マイユニット専用のイベント、会話がたくさん盛り込まれており、原作とは異なる物語展開を楽しめるようになっている。

しかしマイユニット追加がすべて良い方向に働いているわけではない。
ひとつはマイユニットが傑出して強いため、難易度が低いと一人で無双状態になってしまい、難易度が高くても頼れるエースユニットになってしまう点である。
ファイアーエムブレムシリーズはどうしても「一強」のユニットを作ってしまうとゲーム展開が楽になってしまう傾向がある。
それがファイアーエムブレムシリーズにおける成長と戦略のジレンマとなっており、マイユニットの存在はジレンマを際だたせてしまっている。

二つ目には、主人公がマイユニットとマルス(物語の柱となる人物)の二者体勢になってしまっているせいで、話がぶれている点を指摘できよう
つまりマイユニット界隈で展開する裏切り・友情といったストーリーと、マルス中心に語られる国と国との興亡史が平行してすすんでしまうのだ。
プレイヤーにとっては話があっちこっちに行ってしまい、特にマルスの影の薄さを感じてしまうに違いない。
本来はマルスがいなければ話がすすまないのに、目立つのはやはりマイユニットなのである。

最後の三つ目は無個性化である。
マイユニットの性格は愚直で誰が見ても好意的に見ることができる。
そして一方のマルスは当たり障りのない人物でありながらも芯の通った人物として描かれている。
すなわちマイユニットとマルスはほとんど同じキャラクター像なのである。
副題にある「光と影の英雄」を意識した点はキャラクターの性格にも見いだせるが、これでは主人公二人がごちゃごちゃになってしまいかねない。
 
あのセリフはもちろん収録

マップに潜む功罪

大きく変わりつつも変わっていない要素を併せ持つマップ構造もまた功罪を秘めている。

原作の『ファイアーエムブレム 紋章の謎』は第一部と第二部に別れており、第二部の「紋章の謎」が本作『新・紋章の謎』の元となっている。
第一部はと言うと『暗黒竜と光の剣』と呼ばれる初代ファミコン版のリメイクである。
ということで、旧「紋章の謎」はハードモードのような作りのマップ構造、敵の配置になっていた。
『暗黒竜と光の剣』はひとつひとつマップを遊びながらファイアーエムブレムの要素を学んでいくことができるデザインになっており、チュートリアル的な要素がゲームに自然と埋め込まれていた。
その第一部を終え、実力がついたプレイヤーにたたきつけた挑戦状が第二部「紋章の謎」だったのである


ところが、『新・紋章の謎』はいきなり「紋章の謎」から始まっている。
物語は途中で始まるし、マップの構造は相変わらずテクニカルである。
このテクニカルな構造というのは、仕掛けが分ければたやすいが分からなければ難しい構造のことを指している。
元々ニッチなユーザー向けへ出された『ファイアーエムブレム トラキア776』ならまだしも、完全新作を標榜するゲームでこのような構造のマップを取り入れるのは悪手だ。
『新・紋章の謎』はあくまでも前作『新・暗黒竜と光の剣』とセットで語られるべきゲームなのである。
 
なるべく情報を多くして、新規プレイヤーでも遊びやすくしている

マップに潜む功罪 2

ただし、制作側もこの問題は重々承知であった。
であるからチュートリアルを用意し、攻略方法が分かれば中だるみしやすい中盤のマップにてこ入れを行ってスリリングな展開になるように作り替えたのだ。

とはいえ私は露骨なチュートリアルについて低い評価を与えている。
ゲームの操作方法はチュートリアルのような説明書つきのトレーニング方法で学ぶのではなく、ゲームの中に自然に取り込んでいるのが理想だと、私は思っている。
『新・紋章の謎』においてマップを一から作り直すのはリメイクという観点からは難しく危うい判断に違いない。
そうした危険な橋を渡らずに済む方法として、マイユニットの訓練という形でチュートリアルを取り込まれたのであった。

中盤の中だるみしやすいマップについても、敵の数を増やしたり、原作では仲間にならないが『新・紋章の謎』では仲間になるユニットが攻撃してきたりと、かなり修正が行われている。
ただし言わせてもらうと、敵の数を増やすだけ、増援が増えるだけというのは「面白さ」にはあまり直結しないものだ。
面白さに直結するのはやはり、仲間になるユニットが集団で攻撃してきたりするような特殊なシチュエーションにこそある。
特殊なシチュエーションを設けた19章だけが『新・紋章の謎』のマップの中でもかなり出来がよい部類に入る。
 
テクニカルなマップ

ファイアーエムブレムでかわらないもの

何作も発売されているシリーズで何が変わり何が変わっていないのか。
いくつでも指摘できようが、やはりわたしは次の項目がファイアーエムブレム、いやシミュレーションロールプレイングゲームの面白さの根幹にあると思っている。
戦術を考える楽しさと、味方ユニットが成長していく嬉しさ」である。

この根幹を体現しているのが他でもなく、マイユニットである
マイユニットはキャラクターメイク時点から将来を見越した戦略が必要となってくる。
また、マイユニットは死亡するとゲームオーバーという恐ろしさはあるものの、他のユニットと比べてグングン成長する。
リメイクにおいて、原作とは別物とするためにマイユニットを用意したのはとても上手い手段だったと言えるだろう。
 
戦術を考える楽しさと、味方ユニットが成長していく嬉しさ

まとめ

原作とはプレイスタイルや製作意図がずいぶん異なるリメイクである。
マイユニットの存在を含めて功罪相半ばの要素は多いが、どの要素も破綻させることなく作り上げられたゲームである。

72点

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