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熟したオンラインゲーム --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介

熟したオンラインゲーム
2010年2月
オンラインゲームは普通のオフラインゲームと違い、人と人との協力・対戦プレイが魅力的です。
かつては一部の好き者だけが行っていたジャンルでしたが、ブロードバンド環境・高性能パソコン・高機能ゲーム機の登場によって、非常に身近なものとなりました。
それゆえオンラインに対応するゲームを含めれば、今発売されているゲームの多くがオンラインゲームと言えるでしょう。
人々を引きつける要素は、やはり人と人が作り出す新たな展開です。
例えば開発者が用意した正解の攻略法とはまったく違う、あっと驚く攻略法が発見されたりしてゲームが進化していくのです。
こうして最初期は手探り状態だったものが時を経て成熟し、また違うゲームへと生まれ変わっていくのです。

私は皆が手探り状態のサービス開始直後が最も面白いと考えています。
対人ゲームならば強いのかが全く分からない中でアレコレ試しながら遊ぶのが楽しい。
MMORPGならば見知らぬ土地へ見知らぬ人たちと旅をするのは格別の味わいがあります。
しかし、今回はゲームが成熟した場合の話をしたいと思います。

日本製のオンラインゲームとしては最古参になりつつあるFF11

まずオンラインゲームの利益を上げるモデルは主に二つ。
月額(プレイ時間)課金と、アバターやゲーム内アイテムの課金が挙げられます。
基本的には月額ゲームは長期間サービスを継続するものが多く、アイテム課金は短期間のものが多いです。
後述しますが、アイテム課金ゲームはある意味『売り逃げ』の面があります。
基本無料で間口を広げ、アイテムを課金してもらい、ある程度収益を上げたところでゲームに見切りをつけるのです。
それは成熟した後に人が集まるとは言えない、と運営が分かっているからなのだと思います。
成熟した後でも人を引き留めるのは非常に難しいからです。

典型的なMMORPGを考えてみましょう。
ゲームが成熟するというのは、言い換えればレベルの上限に達し、あとは装備を集めたり極端に難しいクエストを消化するだけの状態で現れます。
レベルが上がるのはモチベーション維持についてかなりの貢献をしますが、レベルが上がってしまった後はレア装備ような『称号』を手に入れることが他人との差を見せつけることになり、大きな優越感=モチベーションとなります。
ある意味ゲーム内の数値をチョイチョイっといじってマゾ化させているだけというわけです。
普通の人にとってはマゾさにあきれてゲームを止め、廃人はマゾさをものともせずにやり続けます。
それでも人が多いゲームは一部にありますが、それは古いゲームだからクエスト数が膨大であったり、人間関係に縛られたりという要因であることが多いと言われています。
レベルがカンストしてからはこうした枠に縛られつつ、ルーチンワークを延々とこなすのです。

大成功するゲームでもなければ人がドンドン減っていくのが分かると思います。
新しい刺激を求めて次のゲームへと人が移住していくわけですからね。
だからアイテム課金でさっさと売り上げをあげる、使い捨てゲームが最近は増えてきている。
何も新しい要素はなく、テンプレ的な作りのゲームが毎年毎年作られているのです。

売り逃げゲームといえば北斗の拳オンライン

モチベーション維持という点で言えば、対人ゲームは非常にわかりやすい。
絶えず変わる戦況、敵が本当の意味で二度とない戦いを楽しむことができます。
特に大多数が接続する大規模対人MMORPGやFPSはそのような状態が頻発します。
毎日新しい刺激を得られるのです。

しかし、私はサドンアタックというFPSをやっていて、毎日得られるはずの『新しい刺激』が乏しくなっていることに気づきました。
自分がゲームになれただけと最初は思っていたのですが、よく考えるとそれも違う。
じゃあ何か。
それはゲームの成熟と共に、ルーチンワークが多くなり、サドンアタック自体の底の浅さを浮き彫りにさせてしまったのです。
ゲーム自体がクソだったと言えばそうなのだけど、ここで問題にしたいのはゲームの硬直化です。
勝ちパターンを含め、有利な展開へ持っていくためのありとあらゆる方法が出尽くしてしまい、パターンを知っているプレイヤーが複数で固まると、そのチームの勝ちが決まってしまいやすくなっています。

サドンアタックには練習モードというのが追加されました。
去年のことです。
マップにNPCを配置して、立ち位置の確認・グレネード投げの練習・壁抜き(攻撃が抜ける壁があります)を行えます。
最初私はこのモードの登場を喜びました。
なぜって、思う存分練習できるからです。
ところが、現状ではこのような練習モードの効果により、やたらとグレネードと壁抜きが上手い人が増えました。
以前ならば一部の上手い人ができた”技”でしたが、今となってはそこらじゅうで見られます。

サドンアタックは、こうした技が非常に強力であると言えます。
各マップの重要ポイントやゲーム開始直後にグレネード投下や壁抜き攻撃を加えられるのです。
しかもこういう技は、駆け引き抜きに、相手がいることがほぼ分かっている状態で一方的に加えられる攻撃です。
練習モードがゲーム自体の成熟化を早め、そしてゲームの寿命を縮めかねない事態なのです。

サドンアタック

他にも、サドンアタックでは強い武器・有利な位置取りが当然として行われています。
勝ち負けを競うゲームなのだからしょうがないと言えばそうなのですが、私が以前頻繁にやっていた2008年頃よりもかなり露骨です。
お遊びプレイをする人が消えてしまったのだと思います。
これはサドンアタックに限ったことではなく、対戦ゲーム全般に当てはまることだと言えるでしょう。
対戦と言うだけあって勝敗がゲームの面白さとつながっていきやすいので、勝つための行動を優先するのは当たり前です。
負ければ楽しくないのも当然のこと。
しかし対戦を追求しすぎると、楽しく遊ぶという行為になかなかつながりにくいのももう一つの真実です。
セオリー通りに動くプレイヤーばかりの、成熟化したゲームは、新しさに乏しく初心者にも厳しい。

なまじ対戦という形式を取っているため、開発側からもプレイヤー側にゲームを『投げる』ことで済んでしまうきらいがあります。
極論ですが、クソゲーであっても対戦ゲームであれば面白いのです。
最高のAIを搭載した相手プレイヤーがいるわけですからね。


本当に優れたゲームというのは成熟してからこそ、その先を極めるのが面白く、単調なパターンにならないものであるはずです。
そういう意味では、現在のオンラインゲームはMMORPGであれ、対人FPSであれ、非常に未熟な発展段階にあると私は考えています。