デモの紹介・感想
紹介
『Another Day(アナザーデイ 正式名称はAnother Day: The Only Squad)』は韓国のQueen's Softが開発、JC Globalが運営をするオンラインFPSである。グラフィックエンジンに『FEAR』に使われていたものと同じLithtech Jupiter Extended、通称Jupiter EXが使われている。
映像の質感は『FEAR』にかなり似ている。
韓国ではまったく人気がないタイトルだそうだ。
これからサービスを開始する日本や北米で人気が出るかどうかが損益の分岐点や継続的なアップデートが行われるかを左右する。
「未来のFPS」というキャッチコピーのとおり、舞台は未来戦だ。
武器は架空銃やSFチックな特殊銃が用意されている。
また回数制限ありのブースト機能によって空高くジャンプしたり高速移動ができる。(お手軽な『Tribes』といえばいいだろうか)
ダッジジャンプという高速ステップ動作も用意されており、スポーツ系FPSに近い感覚でゲームを楽しめるようになっている。(二段ジャンプもある。まるで『UT』)
透明になるクローク機能というのもある。(まるで『Crysis』)
と言っても、大まかな作りはオンラインFPSの枠組みからは外れていない。
固定位置で復活するTDM、爆破ルール、そして三つ用意された兵科はスポーツ系では見られにくい要素だ。
二つのよいところを統合したと言えば聞こえは良いだろう。
防具や武器はゲーム内ポイントを利用して一定時間レンタルされる方式である。
そのかわり種類がかなり多く、武器にはスコープやグレネードランチャーのようなアドオンをつけられるようになっている。
種類が多いのでレンタル制にしているのだと思われる。
武器はスロット制を採用している。
バックパック(特殊能力を付加する装備)によって15とか20のスロットが用意されており、武器はそのうち6スロット程度を利用して携帯をする。
武器とバックパックの組み合わせによってはスナイパーライフル二本持ちやサブマシンガン三本持ちということもできる。
ゲームルールにはCTF(旗取りモード)やCOOP(協力プレイ)もある。
他にもあれもこれも詰め込んだ欲張りなゲームだと言える。
感想
とにかく分かりにくい
クローズドテストということもあるのだろうが、『アナザーデイ』は不親切なところが多い。初めてゲームを開始するとチュートリアルに突入する。
このチュートリアルが難しすぎる。
『アナザーデイ』は特殊な移動テクニックが要求されるゲームなのでチュートリアルで説明をしている。
しかし説明が唐突でクリア条件も厳しい。
最後に出てくるモンスターも強くて初心者はチュートリアルで嫌になってしまうかもしれない。
またチュートリアルでは面倒なカスタマイズシステムの説明がされていない。
『アナザーデイ』の魅力であるブースト機能や豊富な武器を選ぶ楽しみは、ショップで買い物をしなければ味わえない。
それが示されていないのだ。
私はゲーム内ポイントが大量に配られるクローズドテストを利用して丹念に武器の性能を比較しつつ購入した。
しかし正式サービス後はおそらく、配られるポイントが減少させられると予想される。
そうなれば、もし新規にやろうとしても何を買ったらよいのか、または選ぶ楽しみをすぐに経験できなくなってしまう。
チュートリアル終了からゲームに参加するまでの流れをまとめると以下のようになる。
まず、ショップでバックパック、防具、武器を購入する。
バックパックはアナザーデイの目玉機能ブースト・クロークや武器の所持数を変更するために欠かせないアイテムだ。
初期状態ではなぜがブーストが不可能で武器の携帯数も少なくなっており、わざわざショップで購入する必要がある。
次に購入した武器をカスタマイズするアドオンをショップで買うか決める。
最後に購入したアイテムを装着していく。
このときにアイテムスロットが余っていることもあるので、追加武器を購入して新たに装備しても良いだろう。
そして戦場へGOとなる。
以上のような流れがどこにも説明書きされていないのは問題だ。
ショップの見た目も分かりにくい。
クローズドのわりに完成度は高い
そのかわりにサーバーの安定性やセッティング周りには特に目立った不都合がなかった。だいたいベータテストのときは設定にバグはつきものだが、珍しくアナザーデイは最後まで問題なく遊べた。
何度も微妙な修正も行われており、これから大きなバグがあっても即座に対処してくれそうだ。
充実のカスタマイズ性とデザインとその不安
公式ウェブサイトで配布されているファンサイトキットには武器のコンセプトアートが入っている。ゲームではコンセプトアートそのままのSF的な独特のデザインがそのまま再現されている。
アドオンでスコープをつけたりするとゲーム内にフィードバックされるので、強さよりもデザイン重視でアドオンを選んでも良さそうなぐらいだ。
さすがに同じオンラインFPSの『オペレーション7]』ほどは自由にカスタマイズできないものの、『アナザーデイ』は携帯する武器の種類を自由に選べる点で個性を出しやすい。
これによって、類似のFPSでありがちなショットガンなどの特殊な用途に向いた武器を携帯する活路が開かれている。
もしメイン武器が一つだけしか持ち運べない仕様になるならば、ショットガンのような近接専用武器は「死に武器」となってしまう。
しかし『アナザーデイ』なら普段は遠距離も攻撃できる武器を装着し、場面によってショットガンに持ち替えるというような戦略性も生まれる。
武器ごとに性能が微妙に違っているので、二つの武器を携帯して使い分ける面白さがあるのだ。
武器だけでなく防具やバックパックの違いもハッキリとしている。
移動力は上がるが防御力がないアーマーと、逆に移動力はないが防御力が高いアーマーが用意されている。
バックパックはブーストのスピードがそれぞれ個別に設定されているし、ブーストを使うためのエネルギー残量の違いもある。
こうした幅広いカスタマイズの自由度はいつの日かテッパンの組み合わせができてしまうかもしれないが、いまのところ選ぶ楽しさがある。
ところがオンラインFPSの難点としてゲーム内ポイントを消費して武器や防具を買わなければならない。
今のところポイントが大量に用意されていても、正式サービスを開始したらポイント取得数が大幅に減少する恐れがある。
そして階級が高くなければ使えない武器や防具も多い。
性能差が微々たるものであれば問題はないが、現在は完全に上級武器・防具・バックパックのほうが強い仕様になっている。
たくさん用意されたアイテムを選ぶ楽しさ、装備してカスタマイズするたのしさを運営が踏みつぶしてしまわないか心配だ。
もちろん収益の問題で厳しい注文になってしまうと思うが。
初心者置き去りのゲーム
カスタマイズシステムに喜びを見いだすのはコアゲーマーぐらいのものだろう。そもそもゲームになれていなければグレネードランチャーやスコープの倍率差で喜びそうもない。
『アナザーデイ』は他にも豊富な移動手段やゲームルールが用意されている。
移動手段については、カッ飛ぶブースト機能、高速ステップをするダッジジャンプや細かなテクニックが満載だ。
ルールはTDM、CTF、爆破(SD)、脱出(クローズドベータでは未実装)、接近戦武器モード、COOPと大量にある。
しかもゲーム中にいつでも変更できる兵科が三種類ある。
組み合わせは無限大の自由度があるとしても、アナザーデイやFPSに初めて触れる人にとってはかなり酷である。
FPSのような対戦ゲームでややこしいシステムが導入される問題点はここにある。
新しくやり始めた人は古参プレイヤーとまったく同じ土俵にイキナリ立たされてしまうのだ。
せめて初心者だけでなくてゲームが苦手な人をソフトに誘導してくれる仕組みがなければ、新規ユーザーが流入せずにゲームが死んでいく。
確かにアナザーデイは必要スペックが高いゲームなのでコアユーザー向けと言えるかもしれないが、新しく人が入ってこないと運営だけでなく古参も困ってしまう。
ゲームスピードアップは失敗
『アナザーデイ』はクローズドベータ期間中にゲームスピードが1.4倍に上がっている。調整される前と後を比べていきながらどのようなゲームなのか述べていく。
元々の『アナザーデイ』は移動速度が遅めに調整されていた。
それこそブースト機能を燃料切れの心配なく使えるというのではなくて、切り札的に使うゲームだった。
『アナザーデイ』の兵科は突撃タイプ、狙撃タイプ、支援タイプと三種類ある。
攻撃力に優れた兵科アサルト(突撃タイプ)は移動速度がこれでもかというほど遅いかわりに大量のブーストを使って相手を翻弄するタイプである。
そのかわりサプライヤーという支援タイプの兵科は移動速度が大きくてブーストの使用に制限が大きかった。
しかし狙撃タイプは、緩やかなゲームスピードにも助けられて無敵の強さをもっていた。
ブーストはよく見ると飛ぶ軌跡がまったく丸わかりでありスナイパーの的だったのである。
それこそクレー射撃みたいものだ。
そしてベータテスト中に「もっとスピーディに」という声が上がり、ダッジジャンプをするためのスタミナが上方修正、移動速度も急激に上がった。
これによりスナイパーは確かに弱体化したのだが、反対にサプライヤー(支援兵)がむちゃくちゃ強くなった。
もとから支援兵は移動速度が大きい上にピョンピョン跳ねながらでも攻撃がまっすぐ飛びやすいサブマシンガンを使っていたので、好きなように動きまくれるようになったのだ。
しかもアップデートでブースト機能に特化したバックパックまで追加されることになった。
元々アサルトタイプ(突撃タイプ)は他のオンラインFPSに居るようなアサルトライフル兵にブースト機能を取って付けたような性能だった。
特に銃弾のバラツキ方はあの『カウンターストライク』っぽい感じで、立ち止まって単発撃ちしないとうまく当たらない。
つまりダッジジャンプを利用して動くような兵科ではなかったのに、アップデートでダッジジャンプの制限が緩やかになって、存在意義が失せたのである。
狙撃兵については、マップの構造が悪いので根本的な解決になっていない。
固定場所にリスポーンするゲームなのに、復活地点からすぐの場所に格好の狙撃ポイントが用意されている。
スナイパーのためのマップ構成である。
他にも、ゲームスピードが上がったのにマップの大きさは変わっていないので交戦ポイントがグチャグチャになってしまったとか、移動速度が上昇したせいで銃を連射して敵を倒さなければならなくなったのに命中率がそのままなので、照準がガン開きになりながら撃ち合うのが滑稽だとか、色々と言いたいことがある。
だいたいスピードが早いゲームがすごく魅力的に感じるのは錯覚である。
『アナザーデイ』は急激にスピードをアップさせるダッジジャンプやブースト機能による緩急が面白いのである。
韓国製ゲームらしさは吉か凶か
韓国産のゲームはなぜか共通する仕様がある。スナイパーライフルが強い、キャラクターの体力が低い、固定地点リスポーン方式などだ。
アナザーデイにも完全に受け継がれている。
元々『カウンターストライク』というゲームの爆破ルールとエコシステムに最適化される形で生まれた要素である。
しかし、オンラインFPSを作るにあたってルールを改変してもこうした基本的なシステムは変更されていない。
アナザーデイはそこにスポーツ系FPSのような移動手段を付け加えている。
したがって体力が低いまま敵に突撃しなければならないという自殺行為をするゲームとなってしまっている。
ランダムリスポーンを導入するだけでずいぶんと面白いゲームになりそうなものなのに、どうしてやらないのか理解に苦しむ。
ゲームルールごとの雑感
脱出は未実装なので、それ以外についてのインプレッション。TDMはどのマップにもリスポーン地点からすぐにスナイパーの狙撃場所があるというバランス崩壊っぷり。
ブーストをいかせられるマップが一つしかないにもかかわらず、裏取りをしてもリスポーンポイント間近なので裏取りの面白さはない
CTFは長方形型のマップしか用意されておらず、ルールの目新しさが人を引きつけている印象がある。
ある程度上手いサプライヤー(支援兵)がいると一瞬で旗を持ち帰ることができる。
つまり攻めたもの勝ち。
爆破はゲームスピード上昇で裏取りばかりが起こるゲームになってしまった。
死んだら復活できないルールにおいては致命的。
接近戦はよくあるナイフルール。
COOPには何のひねりもなくて、COOP目当てに遊ぶ意味は薄い。
数体のモンスターがプレイヤーに向かって襲いかかってくるので、それをプレイヤーは逃げながら撃つだけである。
賢いAIがあると宣伝されていたのは大嘘だ。
出てくる敵から一定地点を一定時間守るだけというありきたりな設定も面白さをそぐ。
ただしゲーム内ポイントをためる場所と新しく買った銃の試し打ちとしては有用。
その他細かいところ
ショップの画面が分かりにくくて、同じ商品を二度買ってしまうことがある。スナイパーを倒せるのはスナイパーだけ。
ライフルで狙撃するか、クロークで後ろから殺るか。
兵科やグレネードが色分けされているのですごく見やすい。
落ちている武器も強調されている。
一人で遊べる訓練場というモードもある。
移動の訓練や射撃の訓練をスコア化してくれるので、人がいない時間に使われるのだろうか。
まだヴェールに包まれたゲームモードがあるので、かなり暫定的な評価である。