レビュー
違和感はあるが、見事にロックマンを「復活」させている
懐かしさの復活
Wiiのバーチャルコンソールで過去のゲーム機が復刻されると聞いたとき、誰もが心を踊らせたはずだ。
その中には過去のゲームと同じグラフィックや音楽の新作が出るのではないかという期待があった。
『ロックマン9』はまさしく、昔のゲーム機を懐かしむゲーマーが喜ぶ新作として生まれた。
しかもファミコンの限界に挑戦したような様相はみせず、ファミコン中期のグラフィックや音楽を再現しているのも面白い。
それでいてところどころにファミコンを超える演出が入っているのだから、非常に不思議な感覚だ。
ゲームの作りは初期の頃のロックマンのような、初見クリアは難しいけれど繰り返せばクリアできるという作りになっている。
しかしアイテムショップの登場によって、全体的な難易度はシリーズ通しても中の上ぐらいに押さえられている。
今のゲームとしては若干難しめなのだが、それは過去作をクリアしたプレイヤーが『ロックマン9』をやるからこその措置だったと思いたい。
そして、最近のゲームに失われがちな一発死の恐怖や、一ドットの感覚を思い起こさせるために、若干難しめに調整されてもいる。
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一発死のトゲがなんとも嫌らしい
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シンプルなゲーム
『ロックマン9』のコンセプトは、シンプルなゲームの面白さの再発見である。
だからスライディングもチャージショット(ため撃ち)もない。
歩いてジャンプしてロックバスターで攻撃するだけだ。
シンプルなゲームの良さは、プレイヤーの上達が速く、そして上達をすぐに実感できることだ。
そして2Dゲームは3Dゲームよりも周囲の状況を把握しやすく、上達度が目に見えるように分かる。
特に一ドットの紙一重を避ける、攻撃を当てる、ジャンプする感覚は2Dならではの良さだ。
『ロックマン9』をやれば、現代のゲームで忘れ去られがちな要素を思い起こさせてくれる。
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狭い足場をピョンピョンいくのも2Dならでは
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難易度の高さは意図的なもの
『ロックマン9』は一筋縄ではいかない難易度になっている。
シリーズで最もいやらしい配置の一発死を起こす『トゲ』の配置や、正解の方法が分からなければ死ぬ続ける仕掛けが多い。
こういうのは初回プレイ時にある種の理不尽さを感じてしまうのが難点だ。
しかし、『ロックマン9』では「そこにトゲ(または一発死の仕掛け)がある」と分かってしまえば何のことはないトラップが多い。
ゲームをやり始めて間もない最初の頃こそ難易度の高さに閉口してしまうが、一回クリアするころにはずいぶんと死ななくなっている。
その理由は先ほど述べたような2Dならではの良さもあるし、ゲーム自体の作りにも一端がある。
『ロックマン9』は一発もダメージを受けないように、そしてタイムアタックをしてもらえるように作られているのだ。
非常に上手いプレーを見てもらうと、ロックマン9がいかに計算されて作られているか分かるはずだ。
大きなダメージを受けなくてもすむような正解のルートがハッキリと、しっかりと作られているから、上達が速くて目に見えて分かるのである。
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ぐるんぐるんと不思議な仕掛けもある
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特殊武器の使い勝手がいい
傍目では『ロックマン9』はスライディングやチャージショットがなくなったせいで、ゲームに幅がなくなったように見える。
だが特殊武器の能力が大幅に上がっているため、ファミコン時代のロックマンにはなかった戦略性が生まれている
今までのシリーズのように特殊武器が一部の敵に対して強力な効果を持つと言うこともあるし、ステージに仕掛けられたトラップを無効化できる場合もある。
『ロックマン9』ではゲーム後半のワイリーステージなればなるほど、こうした特殊効果が設けられていることが多い。
また、ボスに有効な武器の攻撃力がかなり高めなのも特徴だ。
つまり『ロックマン9』はゲームに慣れてきて効果的に特殊武器を使えるようになると、難易度はかなり低下するのである。
ロックマンシリーズの後期はチャージショット(ためショット)が使えるようになったため、特殊武器の存在価値が薄くなっていた。
極端な話、ラスボス以外はチャージショットを駆使すればクリアできた。
『ロックマン9』はこのようなロックマンシリーズの欠点を浮き彫りにしたのである。
確かにかつてのシリーズにあったアクションを失った『ロックマン9』だが、特殊武器の活用という違った面白さを生み出しているのだ。
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この中ボスにはこの特殊武器が効く
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ファミコンのロックマンとの違い
ファミコン時代のゲームとは違うとは思っていても、やはり差異は気になるものである。
まずは音楽の違い。
かつてのロックマンミュージックらしさはあるのだが、拍節(等間隔で打たれるリズム音のこと)やメロディ以外音のボリュームが大きいことがきになる。
まあファミコンそのものじゃないのだからしょうがないかもしれない。
ただ、同時発音数の限界を超えると音が消えるのを再現しているのは良かったと思う。
次はゲームバランスの問題になってしまうが、アイテムが出にくく消えるのが速い。
ロックマンでは雑魚敵を倒したときに体力が回復するアイテムなどがでる。
しかしロックマン9はアイテムが全然出ない上に消えるのが早すぎる。
どう考えてもこの調整は不必要に難易度を高めている点で失敗だ。
特にアイテムを購入するためのネジがまったく出てこないのには参る。
アイテムショップが一週目のプレイでは意味をなしていないのだ。(二週目からはネジを引き継げる)
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消える床も健在だ
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そして最大の差異であり、『ロックマン9』の欠点は理不尽な一発死の多さである。
簡単に言えば「孔明の罠」だらけなのだ。
わざわざ初見のプレイヤーをはめようとする陰湿な仕掛けや罠をそこらに散りばめているのがロックマンではない。
上手い具合に敵のダメージが蓄積して体力ゼロになったり、アイテムを取ろうと欲を出して一発死に引っかかるものなのである。
したがって
『ロックマン9』の初回プレイは最悪の印象しか持ち得ないだろう。
あと気になるのは敵の密度が薄いこととボスの攻撃パターンが少ないことだろうか。
『ロックマン9』はタイムアタックを意識して作っているためか、敵の数が少ない。
スカスカした印象を受ける。
ボスがどいつもこいつも似たような動きをしてくるのも物足りない。
地面を揺らしてロックマンの動きを止めるボスが中ボスを含めて3体いるとか、バリエーションの少なさがやや気になる。
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ボスはややワンパターンになりがち(わざとやっているのかもしれないが)
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一発死の多さは動画サイト準拠をいみするのか?
『ロックマン9』はおそらく、ニコニコ動画などの動画サイトに適した作りになっている。
ニコ動を見れば一発もダメージ受けずにクリアしていたり、初期装備だけでクリアしたり、はたまたプレイヤーが改造したゲームが紹介されている。
プレイヤーが改造したマリオなどのアクションゲームは、理不尽な一発死を誘発する「孔明の罠」が数多く組み込まれている。
実際にプレイしている側としては憤慨するしかないのだが、見ている方はあからさまな罠を見て、喜ぶ。
『ロックマン9』が『ロックマン2』準拠の作りになっていることからも動画サイトに向けた作りを察することが出来る。
ずいぶん前にニコニコ動画では『ロックマン2』のワイリーステージに歌をつけた曲が流行った。
その後ロックマンと言えば『2』みたいな雰囲気が作られていったのだ。
まあこれは私個人の捻くれた考えなので無視して良い。
『ロックマン9』は、過去のロックマンシリーズをやったことがある人にこそやってもらいたいゲームだ。
ファミコン風のつくりはそれだけで懐かしさを呼び起こしてくれるし、ファミコンそのままではないゲームの作りには新たな発見があるだろう。
ややヘンテコなバランス調整にさえ目をつむれば良質のアクションゲームとして遊べる。
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タコ型の敵から攻撃を食らうと、真っ黒に!
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