レビュー
実にロックマン。それを歓迎できるかどうか
様式美の追求
紹介にも書いてあるように開発者が『ロックマン10』のことを「『様式美の追求』で、いつかは『“8bit”というジャンルにできれば』」と言っているのはなかなか意味深である。
様式美とはなんたるかだが、「はてなキーワード」では「洗練された手順や形式に存在する美しさ。類義語:お約束」とされている。
他に近い意味の言葉は「国民的」ではないだろうか。
つまり誰もが認める型を作り上げることが出来れば、それ自体の価値が出てくる。
毎度同じ話の国民的アニメのドラえもんと国民的時代劇の水戸黄門は同じ展開だからこそ評価される面もあるのだ。
国民的RPGといえばドラクエだが、カプコン(ロックマンの会社)はいつの日か国民的アクションゲームと言えばロックマンと言われる日を夢見ているのだろう。
前作『ロックマン9』は昔のゲームを再現することがコンセプトだったように思われる。
例えばストーリーが「用済みになったロボットの反逆」をテーマとしていた。
これは、かえりみられなくなったとなった8bitのファミコンスタイルを暗示している。
『ロックマン10』はと言えば、8bitスタイルやロックマンスタイルの普及が最も中心となるコンセプトだ。
どういうことかいくつかの事例から考えていこう。
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トゲ
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ストーリーの組み替えは何を意味するのか
まずはストーリー。
『ロックマン10』は過去のストーリーをある程度無視していることが特徴だ。
主人公ロックマンはスライディングやチャージショットをシリーズを経るごとに身につけた。
しかし『9』と『10』では使えなくなっている。
『9』では「久しぶりの出動だから」という理由づけがされていたが、『10』はなんとまったく理由が書かれてもいない。
そして、前作の『9』までは一応シリーズが進むにつれて時系列も一緒に進んでいた。
ところが『10』ではロックマンのキャラクター設定などの時間が止まっている。
これは俗に言う「サザエさん方式」に近い。
(サザエさん方式とは、話が進行しても登場人物が歳をとらないこと。時間を経る部分と変わらない部分が混じっている状態)
サザエさん方式を取る理由は様々あって、中でもロックマンシリーズに近い理由は長期展開(長期連載)への布石である。
仮に『ロックマン10』が好評でその後も8bitスタイルでゲームが作られ続けられる場合、こういう時間軸の設定は大きな意味を持つ。
いくら作ったって何も違和感がなくなるからだ。
つまり先を見越して設定を作り変えたのである。
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ボスだ
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シンプルに、そしてテクニカルに
ストーリーによってロックマンの能力が初期シリーズのように限定されると、中期以降のシリーズにあるスライディングやチャージショットを使いたいユーザーの要求もくまなくてはならない。
そこに登場するのがブルースだ。
ブルースはもう一人の主人公として、後期ロックマンと同じような操作を使うことが出来るキャラクターである。
『10』ではロックマンとブルース、そしてダウンロードコンテンツによって限定的にしか使えないが、フォルテを加えた三人でゲームをスタートできる。(レビュー時点でフォルテはまだ未実装だが、さらに能力が強化されたタイプだと思ってほしい)
シンプルの極限であるロックマンは、8bitスタイルでは絶対に外せない。
しかしそれだけだと何とも寂しい。
それゆえロックマンの穴埋めをするようにテクニカルなキャラクターのブルースやフォルテが用意されているのだ。
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ブルースでのプレイはひと味違う
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絶妙な難易度の調整
『ロックマン10』が国民的となるためにはシンプルさと分かりやすさに加え、難易度の調整も不可欠な問題になってくる。
この話をする際にロックマンシリーズの難易度について少し話さなければならない。
無印ロックマンと一口にいってもたくさんの作品があるので、どれを最初にやったかで難しさについての印象が変わってくる。
かなり難しいのもあれば簡単なのもある。
だからロックマンと言えば高難易度と思い浮かべる人もいれば、それほど難しくないと考える人もいる。
おおむね初期ほど難しく、前作の『9』は初期シリーズ(というか『1』)を参考に難易度を設定していたのでかなり難しかった。
したがって最近のゲームとしては異質な難易度設定だった9は、一部のユーザーから難しすぎて楽しめないと批判されるがちであった。
その反省として『10』は全体的に陰湿な仕掛けをなくして難易度を下げ、さらにはイージーモードを追加している。
実にこのイージーモードはよくできている。
ノーマルと比べて敵の数やボスの攻撃パターンを削っているだけなのだが、あまりにも易しすぎないように上手いこと調整されている。
体力回復アイテムも出やすく、穴やトゲに落ちやすい場所にはフタがしてあったりもする。
だからイージーでクリアした後にノーマルをやり始めても、攻略法がほぼ通用する。
過去作でいうと最も簡単な『5』や『6』並みの難しさだと言える。
一方のノーマルモードは過去シリーズと比べても真ん中ぐらいの難しさであるので、人を選ぶほどではない。
ストーリーと難易度に代表される『ロックマン10』の変化は、より多くの人に遊んでもらうためであった。
それはロックマンが新たな存在へと生まれ変わる第一歩となるのかもしれない。
(とか言ってるけど、11でロックマンがFCスタイルを破棄したら今言っていることは的外れになっていたことになるんだよな。まあ気にしない)
なお、腕に自信のある人むけにハードモードも用意されている。
これは本当に難しい。
ノーマルの攻略法が通じない。
過去シリーズのどれよりも難しいと思う。
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色々な仕掛けがある
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良いところも悪いところも
少しゲームバランスで気になるのはボスを倒すと得られる特殊武器の存在だ。
前作はゲームにメリハリを付けるために、チャージショットやスライディングを削除した埋め合わせとして特殊武器を使いやすくしていた。
ところが『ロックマン10』は特殊武器が使いにくいので、ノーマルショットに頼りがちになる。
それゆえ一部のステージが単調に感じるかもしれない。
次に『9』と同じような敵やボスが出てくるのは大きな欠点である。
例えば分身をするブロックデビルや、地面を揺らしてロックマンの動きを止めるボスがまたもや登場している。
せめて『6』や『7』の敵から引っ張ってくればプレイヤーに既視感を与えにくいと思う。
だがステージごとのギミックはかなり斬新であり、上で述べたような使い回し以外の動きは過去作と比べても奇抜なのが多い。
体力を回復するE缶や1アップアイテムはふんだんに落ちているし、アイテムショップの使い勝手は前作より向上しているため、体感難易度は落ちているだろう。
一発死をする場面を極力少なくしているのが実に『ロックマン10』らしい調整の方針だ。
いくら慣れれば回避できるとはいえ、一発で即死する仕掛けを初回プレイで味わうとかなり不快だ。
二回目からは引っかからなくなるため、わずか1回だけ驚かせる仕掛けは「質の低い」仕掛けである。
面白いトラップというのは何度繰り返しても違った面をみせてくれる仕掛けのことだ。
即死トラップはこのような遊びが無い。
『ロックマン10』は1ステージに2ルート用意されていたりして、繰り返し遊びたくある幅もある。
そしてブルースが使えたり、チャレンジモードという本編とは違う単発ステージも収録されている。
このあたりがガチガチパターンゲームにならない『ロックマン10』の懐の深さを物語っている。
それともう一つ触れておきたいのが音楽だ。
今回のBGMはボスやステージのイメージにあわせた曲や、起伏にとんだ展開の曲が多い。
ノリノリ系はないものの、聞いていて面白い。
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ブロックデビル・・・
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ファミコンっぽさをどう考えるか
これ以上『ロックマン10』のゲーム内容について詳しくレビューしても仕方がないと思う。
なぜか。
どのように語ろうとしても、今では失われたファミコンの頃のゲームだという説明にしかなり得ない。
ここが人によっては何にも代え難いほどの魅力となるだろうし、最大の欠点ともなり得るのである。
私はファミコンスタイルに割と肯定的である。
2Dのドットはロックマンのようなスクロール系ゲームに最も適している。
ドット単位の動きが把握しやすいからだ。
だから昔ながらの2Dスクロールゲームは、ゲームの多様性を保つために必要なのである。
3Dには3Dの良さがあり、2Dには2Dなりのゲームデザインとかグラフィックの見た目だけではなくて、遊びやすさの向上もある。
昨今は開発費の上昇とともに対策であればあるほど大きな冒険が出来なくなっており、どこか似たようなゲームが多い。
そう考えてみれば昔のゲームをいまに伝える『ロックマン10』は希少価値のある存在なのである。
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チャレンジモードのステージ
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