レビュー
ポテンシャルは認めるが、改善するべき点は多い
映画を見ないと話が分からない
慰めの報酬はキャラゲーである。
一人称視点のFPSであることを付け加えると、プレイヤーがジェームズ・ボンドになりきって遊べるかどうかが、評価のカナメとなる。
しかし慰めの報酬にはかなり大きな欠陥がある。
ストーリーが分かりづらいのだ。
映画二つ「カジノロワイヤル」と「慰めの報酬」を見ていなければゲームのストーリーは分かったものではない。
これは、二つの映画のハイライトシーンを切り取っていくつかのミッションに再構成したゲーム側に問題がある。
ミッションの合間に補足や説明が挿入されるわけでもない。
ボンドの所属する組織の上層部がボンドを間接的に見た様子が語られるだけで、ただただ分かりづらい。
だからボンドガールについても、ボンドが何を目的に敵と戦っているかについても、そして敵が何者なのかもプレーヤーは分からない。
これではただステージをクリアするだけのゲームと同じだ。
せめて映画未経験者でも楽しめるように作ってほしいものだ。
キャラゲーでありがちな欠点が浮き出ている。
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ミッションの始まるときにブリーフィングもどきがあるが、まったく話がつかめない
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吹き替えは映画と同じ声優を使っていたり、モデリングは本人そっくりなところはすばらしい。
ミッションの合間には映画さながらの迫力あるアクションを収録したムービーもある。
ゲーム中は爆発シーンや建物のベランダを伝うような、緊張感をあおる演出も盛りだくさんだ。
ところが、ストーリーテリングの陳腐さが良い点の全てを台無しにしている。
部分部分はよくても話の筋がダメなのだ。
ではストーリーを楽しまずにゲームそのものだけを楽しめるか。
残念だが慰めの報酬は良い面もあるのだが変な面が多く、かなり冴えない印象をうける。
『ゴールデンアイ』の再現とはならなかった。
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ミニゲーム的なものもある
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説明がない。不親切
『コールオブデューティー4』と同じゲームエンジンを使っているので、基本的な部分の出来は申し分ない。
それ以外のところで慰めの報酬は損をしてしまっている。
ゲームを初めてすぐに突き当たるのはチュートリアルの不親切さである。
カバーアクションのシステムをロクに説明してないし、キーパッドの解除方法、監視カメラや近接戦闘の存在についても軽くしか触れられていない。
特に監視カメラについての説明が不十分である。
ステルスが要求されるミッションでは監視カメラを無効化したり無視することが攻略のカギとなるのだが、何度かリトライしない限り重要性には気づきにくい。
実は監視カメラは『スプリンターセル』と同じようなものなので、他のゲームをやっていれば自ずと分かる。
他に近接戦闘の有効性など、どれもが他のゲームにも見られるものなのだ。
映画原作のゲームなのに詳しいチュートリアルを排除し、ゲーマーでなければ門前払いになっている。
キャラゲーなのにコア向けとは何かがおかしい。
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ブラインドファイアが強い
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底の浅いカバアークションやQTE
そして詰め込まれたシステムの底が浅い。
まずはカバーアクションだ。
慰めの報酬におけるカバーアクションはかなり強い。
敵が側面に回ってこない限り、敵の攻撃が絶対にあたらない。
したがって、後ろの方で壁に隠れながら敵を撃つだけで簡単に進めてしまう。
場面によっては敵が側面へ回り込んでくることもあるが、下がっていれば対処できる。
それを反映してか、難易度を最も高い設定にすると敵の攻撃力が高くなりすぎていて、カバーアクションだけのゲームとなりはてる。
敵が弾倉交換をするまで待ち、交換をし始めたらこちらが攻撃するだけだ。
QTE(クイックタイムイベント)は、よほど面白いものでなければ入れるべきではない。
慰めの報酬に使われているQTEはその程度のものだ。
面白いとも面白くないとも感じないタダのコマンド入力をさせるぐらいなら、ムービーにしてくれた方が迫力が出る。
それか、本当に一部だけQTEにすることで緊張感をもたせながら見させるというのもありだろう。
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難易度が低いなら、カバーなんか行わないで突撃をした方が楽かもしれない
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007のイメージを損なうゲームプレイ
ステルスは見つかったらリカバリーが効かない上に、見つかっても大したペナルティがないというよくわからない仕様になっている。
『007 慰めの報酬』は、ボンドというエリートスパイのゲームなのだからステルスや特殊工作を楽しめるゲームにしてほしいのだが、実際は銃撃戦中心のドンパチゲームだ。
ヒロインを救うために遠距離狙撃をするとか、ヘリコプター撃墜とか銃を使ったシーンばかり使われている。
それと、そこらじゅうにガスボンベやドラム缶(のような引火物)が置いてあり、銃で撃てば爆発する。
これを上手く使えば敵を楽に倒せるので、一種の頭脳プレイとなっている。
見た目が派手で爽快感もある。
しかし『慰めの報酬』はシュワルツェネッガーが活躍するアクション映画ではないはずだ。
『007 慰めの報酬』は、映画のゲーム化またはキャラゲーであるのだから、しっかりとキャラクターや世界のイメージを生かした作りにしてほしかった。
ただ、映画原作らしい豪勢な演出になっていることは確かである。
列車に乗って狭い場所をぎりぎり通っているときに対向車両が通りかかるとか、崩れていく建物を逃げ回るとかはかなり燃える展開だ。
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これが列車シーン。見づらいけど
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極度まで削ったゲームプレイは、開発チームの自信の現れか
開発にあたってテストプレイは入念に行ったようである。
画面に表示される情報だけで次何をすればよいのか、どこに行けば良いのかを分からせてくれる。
次に進むべきハシゴをぴかっと光らせていたり、撃てば爆発するガスボンベなどに派手な色をつけているのだ。
ハシゴには近づくだけで自動的に上り下りする画面に切り替わるので、余計な操作もいらない。
チュートリアルがおざなりなのは入念なテストプレイに自信があったからなのかもしれない。
言葉で表現せずに画面で語らせているのは良く作り込んだ証拠だ。
難易度はオートエイムがあるのでかなり楽に調整することもできる。
ゲームが苦手でもたぶんクリアできる。
ただ、説明がいい加減なのでムダにストレスをためるかもしれないが。
キャラゲーというのは、何よりもまず原作を再現していることが大切だ。
ストーリーの再現はもちろん、キャラクターの性格、世界の雰囲気、どれもこれもやらなければならない。
なぜならあくまでも原作が主でゲームは従の関係にあたるからだ。
『007 慰めの報酬』は映画と同じ音楽、人物、場面と忠実に再現しているのもあれば、話がとんで理解不能なストーリーや爆発物だらけの派手なゲームプレイと原作の良さを生かし切れていない要素も見受けられる。
ゲーム自体もそれほど面白いわけではない。
豪華な作りでお金をふんだんにかけているのはわかるが、あまりにも小粒である。
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どかーん
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