レビュー
生かしきれないアイデアとつまらない戦闘
技術力は認めるが・・・
『フラクチャー』では地形を自由に隆起させたり沈降させることができる。
だが地形形成によって創造的なゲームプレイが可能にはならなかった。
特殊銃は使いづらくて、謎解きも中途半端な量で物足りない。
残念なことに、戦闘は堅くて数が多い敵のせいでうんざりしてしまう。
しかし難易度イージーならそのような、バランスの崩壊した戦闘に悩まされることはない。
それでも地形形成を生かした場面が少なく、平凡なTPSの域を出ていない。
高い技術力を用いてもゲームが面白くなるとは限らないことを『フラクチャー』は証明してしまった。
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巨大なロボットが!
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システムを生かし切れていない
地形を自在に操れる特異なシステムは、今世代のゲーム機ならではのものだと言えるだろう。
TPSの根幹である戦闘を始め、アドベンチャーゲームのような謎解きへも応用することによって、既存のTPSらしからぬ名ゲームへと変貌する可能性はあったのだ。
ところが『フラクチャー』で地形形成が使われる場面は、次へ行く場所への踏み台として地形を盛り上げるか、行く手をふさぐ地面を沈降させて先へ進むばかりだ。
他にも、主人公の上司が「あれを持ち上げて先へ進め」「それを隆起させてシステム起動しろ」とヒントをあらかじめまっすぐに言ってしまっている。
確かに謎解きはノーヒントだと詰まりやすくなりがちである。
しかし、直接下された命令をプレイヤーがトレースすることは、ただのお使い要素であり、やらされるだけのゲームになる。
フラクチャーの謎解きはここに問題があるのだ。
画面で語らせるような謎解き要素、または上司の命令を実行する際にも創造力が必要とされるような仕掛けが理想的である。
言い換えると、何を使うのか、どのように使うかがある程度ハッキリしている上で、
組み合わせを創造的に考えるなぞなぞが、『フラクチャー』にはない。
この理想的な仕掛けに近い箇所が1カ所だけある。
ただしそこは地形変更ではなくて特定の武器を使って進む場面である。
絶対量も少なく、かなり物足りない。
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沈降を使うと進めるシーン
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戦闘でも意味なし
地形に作用させるシステムは戦闘に生かすことは難しい。
ただ単に遮蔽物として使うのならそこそこの働きはしてくれるのだが、自分が隆起・沈降をやりたい場所をピンポイントに思い通りにすることが難しいのである。
『フラクチャー』は三人称視点のTPSである。
ということはカメラは必然的に人物の少し上から、人物と同じような視点となるような位置に存在する。
プレイヤーは特殊銃を地面に撃って地形を変更させるので、必然的に角度の付け方でどこを狙うかが変わってくる。
これだと
地形を変えた場所をピンポイントで指定しにくい問題がでてくる。
もし地形を自由自在に変更させたいのなら、俯瞰視点で選べるようなシステムも付け加えた方がよい。
結局フラクチャーは、殆どの場面で地形変更の恩恵を受けずに進むことになっている。
ゲーム中盤からは高所から狙い撃ちする敵も多くなり、隆起させて壁にするというのもあまり意味をなさなくなってくる。
地形変更はポテンシャルこそ高いものの、実際に使ってみようとしても使い道に困ってしまうのである。
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戦闘中に有効利用するのはかなり難しい
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ヘッタクソな難易度調整の仕方
そして『フラクチャー』の評価が芳しくない一番の原因は戦闘である。
三段階存在する難易度(イージー・ノーマル・ハード)の調整が明らかに失敗している。
『フラクチャー』は難易度を高くすると敵の耐久力が上がり、自分のシールド耐久力が下がるという調整法を使っている。
特に敵の耐久力が上昇してしまう調整が最悪である。
イージーはちょうど良いのだが、ノーマルでも結構堅いしハードだと堅すぎてやってられなくなる。
敵があまりにも堅すぎるので、ゲームのテンポが悪くなってしまう。
ほとんど聞こえないヒットサウンドのせいで余計堅く感じる。
したがってこれからやる方は難易度イージーをお勧めする。
終盤は敵の出現数も結構多く、画面を揺らす爆弾を多用してくるので、酷い戦いになりやすい。
武器の使い分けはしっかりしている。
実銃と同じような使い方をするのが多いのはSFっぽくないが、近距離武器と遠距離武器の差別化や、ロケットランチャーのような強力な兵器は弾薬を少なくしてあり、武器バランスはきちんと調整されている。
だからこそ敵の耐久力をきちっと調整してほしかった。
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敵かたすぎるよ
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技術力はすごくとも
『フラクチャー』のグラフィックは細部まで描かれており、2008年のゲームとしてはそこそ良質なレベルにあたると思う。
また、物理エンジンもHavokを使っているだけあって問題ない。
地形を変形させる要素も含め、高い技術に裏付けされたゲームだと言える。
しかし地形を変形させることをうまくゲームに組み込むことは今ひとつであった。
ゲーム中に獲得できるコインを集めると、練習モードのようなもので遊ぶことができる。
そこで私は自在に地形を変形させたり、コンテナを大量に降らせて物理エンジンの凄さを改めて体験した。
特殊なグレネードを投げると周囲にある物体を巻き込んで竜巻状にグルグルと回転して爆発させられる。
しかし物理エンジンを上手いこと利用しているのはこのグレネードだけである。
いくら見た目は派手で面白くとも、ゲームプレイに組み込まれなければ大きな意味はなさない。
地形への干渉にしろ物理エンジンにしろ、すごい技術であってもそれで「どのように面白いことができるのか」「(開発チームは)何がしたいのか」が明確に現れていなければ、楽しさには繋がらない。
『フラクチャー』はどのように「技術を使うか」を考えて作られた。
上手く使いこなせなかったため、『フラクチャー』はアイデアこそ良いが面白くないゲームになってしまった。
最終的な形が見えていてそれに対して技術を近づけていくゲームは、目標をどれだけ達成できたのかについて判断が下される。
逆に『フラクチャー』のような、技術とアイデアは良くてもゲームの最終的な形が開発前に分かりにくかったゲームは、アイデアをどのように使うかについて検討される。
もし私たちが何か改善点を提言しようとしても、それはとても難しい。
なぜならゲームの仕組みを根本的に解きほぐさなければいけないほど「つまらない」という根は深いからだ。
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物理エンジンを上手く使えたゲームはそうそうみない
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