レビュー
『COD3』は、『COD2』の 劣化版である
初めから期待されていない『COD3』
そもそもコールオブデューティシリーズは、初代を作ったInfinity Wardのものではなく、権利を持っているアクティビジョンのものらしい。
つまりゲームを制作する人たちと、ゲームの権利を保有する人たちは別である。
コールオブデューティはInfinity Wardが作るからコールオブデューティなのではなく、「アクティビジョンが名前にコールオブデューティ」がつければシリーズの一つになる。
アクティビジョンは「初代コールオブデューティ」という金の卵を大事に大事に育てようとした。
そのためには毎年のように決まったシリーズが出続けることが、消費者への大きなアピールになると考えたのだろう。
だからこそTreyarchに「もうひとつのコールオブデューティ」を作らせている。
言ってみれば本命の裏年として必要最低限のクオリティを維持しつつ、消費者を飽きさせない質を維持するために「Treyarchのコールオブデューティ」を位置づけていた。
結果、新作が1000万本を超す化け物シリーズへと変貌させた。
しかし、というか、それゆえに、Treyarchは「コールオブデューティのイメージ」を損なわないように作らなければならなくなった。
実際、Treyarchが自分の色を出していくのは次作『Call of Duty:World at War』からである。
開発期間の問題もあったのだろうが、『COD3』は『COD2』をそっくりそのまま再構成したかのような内容になっている。
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WW2ではステンがでないと雰囲気ないよね
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操作する国が変わっても、やることが変わらない
戦争における一兵士の戦いを、様々な軍の目線から描くというのは決して悪くはない判断である。
重層的に描ける可能性がある。
しかし、『COD3』は各軍ごとの特徴を事細かに描かれていない。
だから画面が切り替わっても、自分がアメリカ軍とカナダ軍のどちらを操作しているのかがまったく分からない。
またイギリス軍ミッションはゲリラ活動が多い点で差別化はできているものの、ハラハラするような構成になっておらず、規模の小さいアメリカ軍のような戦闘にしかなり得ていない。
イギリス軍ミッションで車を操縦して逃げ回るシーンだけは良くできているとは思う。
ポーランド軍に至っては相も変わらず戦車を使うだけである。
しかも同じようなシーンが極めて多い。
特に多いのは「目の前で味方が撃たれて死ぬ」とか、ドイツ軍の侵攻を一定時間食い止めるというものである。
したがって、特定の主人公ならではのシーンというものがない。
これでは4つの軍団を用意して話をする意味がない。
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アメリカ軍の銃と言ったらM1ガーランド。ゲームの中でも性能が非常に高い
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だが、これは仕方がない面もある。
というのも部隊は第二次世界大戦で、しかもドイツ軍が常に敵であるからだ。
ゲームになる程度のリアリティのある戦争の一兵士を描こうとすればするほど、同じような展開や地味なストーリーは増えていくものだ。
このような欠点が極めて色濃く出ていたのが前作『COD2』であった。
『COD2』はゲームの後半部分が明らかに前半の焼き直しとなっていた。
当時としては未だかつてないほどの素晴らしい戦場の雰囲気を擁していながらも、ワンパターンな戦闘シーンだらけだったのだ。
解決方法は、味方の存在を綿密に描いたり、大きな物語に主人公を関わらせることにある。
没個性の主人公をウリにするゲームは、周囲の人物や環境から「まわりの空気」をあぶり出していくしかない。
ところが、『COD3』は解決策が満足のいく程度になっていない。
「目の前で味方が撃たれて死ぬ」ことは、確かに強烈な印象を与える。
それでも『COD3』の描き方はあまりにもあっけない。
例えば匹夫の勇を奮い立たせて死んでいったキャラクターがいる。
彼はずいぶん前のミッションから帯同しているので、臆病なことはプレイヤーにもわかっている。
と言っても、何故臆病なのか、何故匹夫の勇を最期に奮い立たせたのかというのがまったく分からない。
他にも「目立つキャラ(ネタバレになるので詳しくは書かない)」が自爆するシーンもあるのだが、どうして自爆するのかなどが理解できない。
あまりにも唐突すぎて、
軽薄な演出になってしまっているのである。
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ろ獲した独逸のMP44で敵を攻撃する
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深みがない演出、ストーリー、バグの多さ
『COD3』は前作2をやった後で見ると、同じような場面が多く、しかも話の筋が浅い。
だから非常に単調で既視感ばかり感じられるゲームになってしまっている。
ワーッと出てくる敵から建物を一定時間防衛するだけ。
まったく攻撃しない敵戦車が目の前にいるので、ロケットランチャーでぶっ壊すだけ。
敵を倒すと同じ場所から続々湧いてくる。
別にこういう演出が悪いのではなく、見せ方や程度の問題である。
非常に露骨で、演出のための演出が多すぎるのだ。
「これをみせればスゴイとおもうでしょ?」と言われて、演出をみせられたらどう感じるだろうか?
またバグや不具合が多い。
オブジェクトのエッジ判定が超いい加減なのを初めとして、特定の視点でしゃがむと画面ががくがくしてワープしたりする。
無敵の敵が突然目の前に出現することもある。
ついでに言うと難易度を高くすると敵の一斉攻撃がプレイヤーだけに降りかかる。
まったく面白くない。
これは間違いなく、開発期間が足りていない証拠である。
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バズーカで戦車を壊そう
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『COD3』の存在意義
とはいえ、独創性とか新規性とかゲームバランスを考えないで演出がスンゲエゲームだと割り切り、「COD2クローン」として考えるのならばそんなに悪くはないかもしれない。
そもそも『COD3』が『COD2』の焼き直しとして作られたことを考えないとしたら、『COD3』は演出が過激で第二次世界大戦の雰囲気がタップリの良質なFPSである(こんな仮定は意味もないが)。
偉大な親をそっくりそのままコピーしていても、同じようなゲームは他社から出ていないのである。
過剰な演出はコールオブデューティーシリーズのお約束であり、シリーズのもつアイデンティティーだ。
アイデンティティーを持ってさえいれば、シリーズとして認識される。
「コールオブデューティという名前」と「演出」さえあれば。
『COD2』と『COD4』の間の一年を穴埋めするために『COD3』は作られた。
汚い言葉を使うと、捨て駒である。
「前作の路線を踏襲したまま、そこそこ同じような見た目のゲームさえ作れば、それなりの満足度をユーザーから得られる」とアクティビジョンは踏んだに違いない。
シリーズを毀損する可能性は、「開発会社が違うから」と逃げることもできる。
有名な名前がついている紛い物であっても、コールオブデューティ3は紛れもなくコールオブデューティシリーズのひとつである。
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QTEとか呼ばれているシーンの画像
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