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アフターバーナー クライマックス


ジャンル:シューティング
機種:XBOX360
発売年:2010年
開発会社:セガ

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2010年5月 最終更新日2011年3月

紹介

『アフターバーナー クライマックス』はセガ製作・販売のシューティングゲームである。
PS3とXBOX360で発売されている。
3Dのゲームなのだが一方通行のゲームであるため、2Dのスクロールシューティングゲームをそのまま立体的にしてみたと想像すると、どんなゲームなのか分かりやすいと思う
厳密にジャンルわけをすると3Dシューティングやフライトシューティングになるのだろうか。

同名アーケードゲームの移植作で、アーケードでは前作アフターバーナー2から20年近くたっての発売だった。
体感ゲームとして専用筐体で集荷されたものの、インカムはそれほどよくなかったようだ。
インカムがよくなかった理由はジャンルが下火なシューティングゲームであることと、せっかく遊んでくれたユーザーを突き放す難易度の高さの二つである。

「セガらしいゲーム」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
『アフターバーナー クライマックス』は典型的なセガゲーである。
夕焼け
フライトシューティングゲームだ
かつてセガが全盛期のころ作っていたゲームの多くは、操作が独特で難易度がやったらやったら高いが、極めれば超人的に操れるという特徴を持っていた。
今からみればかなり古いタイプのゲームバランスである。
しかし任天堂やソニーの作る軽いゲームとは違う硬派さやゲーマー向けの調整が当時評価されていた。
メガドライブ、セガサターンの隆盛はセガらしさを抜きに語ることはできない。

前作にあたる『アフターバーナーII』は1987年、メガドライブは88年発売だから、前作はまさにセガの黄金期に作られたゲームだったのだ。
『アフターバーナー クライマックス』でもこうしたセガの魂(?)を色濃く引き継いでいる。
操作、難易度ともに難ししいものの、慣れてくればスーパープレイ(のようなもの)を連発できる。
そんな昔ながらのセガらしいげーむなのだ
しかし今の時代にあっているかは別問題である。
こうした空気の読めなさがセガっぽい感じでもあるのだが。
オーロラ
やばい!あたりそう
『アフターバーナー クライマックス』は難易度が高い。
高すぎてアーケードでは不振になってしまったくらいだ。
とはいえ家庭版専用のオプションをいじることでだいぶん簡単になる。
プレイ結果の累積で様々なゲーム内オプション(EXオプション)がアンロックされていく。
最初は残機数といったものから始まり、最終的には画面内の敵を自動ロックオン、無敵、敵の攻撃無効など、やりたい放題になる。
どのようなEXオプションの組み合わせでも試せるため、自分の好きな難易度に調節可能とも言える。
EXオプションを適用しているときでも、次のEXオプションを解除する条件を満たしているので、時間さえあれば誰でも全解除はできる。
本来のゲームはかなり難しいが、自分にちょうどよい難しさへ調整して遊んでもいいのだ。
時間をかければ簡単になるRPGのような作りとも考えられる。
EXオプション
EXオプションがいっぱい

レビュー

セガっぽい

『アフターバーナー クライマックス』はセガゲーだ

「セガは滅びぬ、何度でもよみがえるさ」
この言葉についてイエスorノーを問うてみたい。

もしイエスを選んだなら『アフターバーナー クライマックス』は間違いなく神ゲーになってくれる。
何も言わずにダウンロードして買って、触れてください。
これ以上私が言うこともないです。
最近のセガはもの足りねえと考えている人もどうぞ。

ノーを選んだなら『アフターバーナー クライマックス』は微妙に感じるかもしれない。
なんせセガらしいゲームだからだ。
それとセガと聞いたら腹が煮え渡ってくる一部のお人は買わない方が良い。

あえて極論を言ってみたが、それは『アフターバーナー クライマックス』がセガらしいゲームだからだ。
紹介で書いてるような硬派さがにじみ出ている。
ただし、家庭版はEXオプションをいじることで簡単にもなるので、オプションをいじることが嫌でなければ誰でも楽しく遊べる。
クライマックスモード
一定時間時間を遅くするクライマックスモード

どうして難易度が高いのか

普通にやるなら、言い換えればアーケードで稼働していたのと同じ設定でやるのなら『アフターバーナー クライマックス』は難しい。
それは短い時間でプレイ回数を増やしてお金を回収するアーケードゲームの仕様が理由だ。
品のない言い方をすれば、様々な要素で難易度を高くして死なせることによってお金を稼ぐ方法である。
だからゲームデザインに多大な影響が出てくる。

『アフターバーナー クライマックス』の難しさは、確かに単に敵の攻撃ダメージが大きくて自機がやられやすいという面もあるのだが、それ以上に敵の攻撃をよけられない面が大きい。
3Dシューティングゲームだけでなくて3D空間を動くゲームでは、2Dのゲームと違って距離感を意識して遊ばなければならない。
一般に3Dゲームが初心者に受け入れられにくいのは、この距離感や奥行きである。
2Dのテレビ画面に立体的なゲーム内世界が描かれているので、実際にみるのとは違う感覚でゲームをやらなければならない。
また、遠くの敵は小さくて見づらいというのも指摘しておこう。
遠くにいる敵がわからなくて、こちらが対処不能になるまで近づいてきたというのはときたまある話である。
ゲーム内で描かれる3Dの感覚に慣れなくてはいけないのだ。
紙一重
紙一重!

難易度が高い理由その2

『アフターバーナー クライマックス』では遠くにいる敵の戦闘機をすぐさま認識しにくい上に、敵から発射されるミサイルの軌道がわかりにくくて速度も早い。
敵の攻撃にあわせて回避行動を取っても対策が不十分で激突してしまうことが多いのである。
したがって、敵の出方や攻撃を暗記して事前に行動を取っていないと撃墜されてしまう。
俗に言う覚えゲーであるが、敵が次にやってくる攻撃を常に先読みする必要があるので、精神的にはかなりつらいものがある。
前作にあたる『アフターバーナーII』や昔のシューティングゲームにはこういうのが多かった気がする。

しかし『アフターバーナー クライマックス』は他のゲームと比べても、異常に密度が高い。
クリアするだけなら15分程度のゲームであるが、お遊びや休憩の場面がステージクリア後にしか存在せず、ほとんど気が抜けない。
常に緊張感を張り詰めなければならないため、密度が高いと表現させてもらった。

敵のミサイル攻撃は特定の軌道を通るのではなく、自機のいる位置に向かって飛んでくるだけなので、左か右に引きつけ上下運動で交わすことができる。
そして敵の攻撃は9割以上が引きつけ動作の必要なミサイル攻撃である。
つまり、敵がどのような場所から出てくるとかどういう攻撃をしてくるかは『アフターバーナー クライマックス』の本質とは関係ないのだ。
ゲームのほとんどが単純な切り返し動作で構成されており、敵の攻撃は『見て避ける』必要がない。
次に「どういう攻撃がくるか」をひたすら暗記しさえすればクリアできる(しかし「難しい」と言っておく)。

したがって、うまくプレイできれば自分がニュータイプであるかのようにゲームを進行できる。
超高速で飛んでくるミサイルを紙一重で避けられるのだから、これほど面白いこともあるまい。
ところがあまりにもガチガチのパターンで作られているために、一定の操作を機械的に行っているだけに感じやすい。
アドリブがなさすぎて窮屈すぎるのだ。
トンネル
室内(ほとんどの画像は見栄えを良くするためにパラメータ表示を切っています)

どうしても単調に感じてしまう理由

『アフターバーナー クライマックス』の問題は、2Dシューティングゲームをそのまま3Dシューティングゲームに描きおこしたゲームがほとんどないということと関係している。
敵の攻撃とかがあまりにも分かりにくくて「自分が今どのような場面にいるのか」がわかりにくい。
次に敵が出てくることを覚えて動くだけではただ正解をトレースするだけになってしまう。

これが2Dシューティングならば、見て避けるとか変わった敵が出てくるとかで差別化を行っている。
どのゲームも突き詰めると単純な動作の繰り返しやボタンといったコントローラーの入力の有無に帰着されるわけだが、そうとは感じさせないように作るのが筋である。
だが『アフターバーナー クライマックス』はそういったことを行っていない。
ステージによって背景が変わり、敵がちょっとだけ種類があるという程度なのでまだまだ物足りないのである。

たとえてみると、『アフターバーナー クライマックス』は目隠ししてどこから飛んでくるかわからないミサイルを、自分が覚えたとおりにコントローラーを動かしているような感覚のゲームだ。
どうして3Dのシューティングゲームが一般化しなかったのかというのは開発費の問題もあろうが、こうした見易さわかり易さを犠牲にしてしまうからだといえる。
夜景
夜のシーン

EXオプションの良さ

この問題をセガはアーケードゲームでは「慣れろ」の一言で片付けてしまっていた。
かなりインカムは悪かったようである。
プレイヤーへの間口を広げるようなことはせず、さらには慣れても慣れても難しいままと突き放している。
セガゲーが好きならこんな仕様に大喜びしそうなものだが。

一応ゲーム機に移植するにあたっては、間口の狭さの問題を解決する方法が用意されている。
それがEXオプションである。
フルでオプションの機能を使えば自動ロックオンに無敵、敵弾無しにもできるが、適切な使い方は自分にあった難易度まで落とせられる。
最初はEXオプションが何も解除されていないため、難しいままのアフターバーナークライマックスを遊ぶことになるが、オプションを次々と解除・適用していくにしたがって遊びの幅が広がってくる。

これはセガ側が用意した良心である。
すなわち、アーケードそのままの厳しいバランスはかつての『アフターバーナーII』そのものであることを示し、そこからプレイヤー側に最適な難易度を徐々に試行錯誤していってもらおうとしているのだ。

成績をオンラインにアップデートできるスコアアタックモードでは自機数が無限でゲームオーバーがない。
おそらく開発側もアーケードモードのバランス設定には本意ではないのだろうと思う。
アーケードゲームは数分で一回、客を回さなければ儲けが出ないので、難しくしないといけない。
制限によってえるものは大きいが、捨てなければならないことも多い。
大型機
敵の大型機が!

誰でも楽しめるスピード感

グラフィックスはやや物足りないものの、エフェクトが派手でしっかりしていて、さらにはスピード感がものすごいので、美しく感じる。
『アフターバーナー クライマックス』の魅力はこのスピードだ。
特に狭い場所を抜けるシーンは何度やってもグッとくるものがある。
いくら難易度を下げようとも、このシーンだけは変わらない。
誰だって楽しめるのだ。
音楽はなぜか『アフターバーナーII』のものも選択できるので、やっぱり昔ながらのユーザーを大事にしているのだなと感じさせてくれる。
20年前の前作をバリバリやっていた人も今ではほとんどが中年なのだから、キツイゲームについていけないかもしれないから。

『アフターバーナー クライマックス』が1000円足らずで買えるというのは、アーケードからの移植だということを差し引いてもじゅうぶんにおつりがくる。
金額だけなら10回やればおつりがきてしまう価格だ。
しかしそれ以上に満足度が高い。

確かにセガゲーらしい初級者を無視した作りだが、オプションをいじれば誰もが遊べる設定にすることができる。
緊張感のある戦いを楽しむのもよし、爽快感を求めて存分に暴れ回るのも良い。
せまいところ
こういうシーンはいいよね

まとめ

昔のゲームを画像だけ豪華にして移植したゲーム。
オプションの追加で誰でも遊べるようになってはいる。
スピード感のあるゲームプレイは魅力的だ。

なお、本文ではハッキリと触れていないが、ゲームが一回15分である上にオプション使い放題なので、自分で目標をたててスコアアタックでもしない限りすぐに飽きる。
これはもうゲーム自体の性質でもあり、欠点でもある。
廉価なダウンロード専売にしたことはユーザーにとって評価ができるけれど、むしろダウンロード販売ではないとそこまで評価も売り上げの伸びもなかったような気もする。

69点

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