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Splinter Cell(スプリンターセル)


ジャンル:アクション
機種:XBOX
発売年:2002年
開発会社:UBI

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2009年2月 最終更新日2011年3月

紹介

『スプリンターセル』はUBIが開発と販売をしたアクションゲームである。
XBOXのほか、PCやPS2などの多くのゲーム機でも発売されている。
ただしXBOX版をメインに開発されたいるので、PS2版の出来は良くない。
PC版はXBOX版のゲームバランスやシステムを忠実にPC向けへ開発し直したものである。
移植するに当たりグラフィックは強化されている。

『スプリンターセル』は2002年に発売されるとプレイヤーやレビュアーからグラフィックとゲームシステムで絶賛をうけ、2002年の北米ゲーム市場でXBOXの普及に大いに貢献した。
日本で発売されているXBOX版、PC版、PS2版のうち、XBOX版のみ音声まで日本語化されている。
PC版とPS2版は英語音声の日本語字幕である。
出荷数はかなり多かったらしく中古市場に多く出回っている。
XBOX版はきちんとローカライズされているので安心
『スプリンターセル』は敵に見つからないように進めるゲームだ。
ジャンルを細かく分けていけばアクションアドベンチャー型ステルスゲームとでも言えるかもしれない。

ステルスゲームは一般的なアクションゲームと異なり、ゲームクリアをするためには敵に見つからないことが重要だ。
敵キャラクターには視界や聴覚が設定されており、プレイヤーが視界に入ったり聴覚を刺激することで敵に発見されてしまう。
しかしステルスゲームではプレイヤーの戦闘能力が低く設定されていたり、そもそも敵に見つかった時点でゲームオーバーになったり、他にもステージをすすめるためには敵に見つからずに目的を遂げなければならないなどの制限も掛けられている。
したがってプレイヤーは敵キャラクターの行動の特徴や視聴覚能力を把握して、いかに敵に気づかれずに進めるかを考えなければならない。
もちろん敵を排除する方法も用意されているが、敵にさとられずに不意打ちすればするほど効果的に排除できる。

ステルスゲームを作るには様々な切り込み方法が存在すると思うが、スプリンターセルは光と影にスポットを当てて開発されている。
具体的には暗くなればなるほどプレイヤーは敵に見つかりにくくなる。
陰を上手く利用して敵に近づくなり、敵をやり過ごすゲームであると言えるだろう。
陰影表現をさらに際だたせているのが、当時としては驚異的だった光と影を表現するグラフィックである。
例えばスポットライトでコンテナが積まれた場所を照らしている場面では、光が当てられた部分とそうでない部分の陰影、コンテナの陰がしっかりと描画されている。
敵味方問わずキャラクターの陰もきちんと描かれていて、自分の陰が敵の視界に入ると敵は警戒をし始めるようにもなっている。
中央に見える敵キャラの陰に注目して欲しい
ストーリーは、アメリカの秘密諜報機関に所属する主人公が様々な場所に潜入してとある陰謀の全貌をたぐっていくというもの。
トムクランシーシーリーズの名前を冠しているだけあって、非常に現実的というか軍事要素がはいりこんだ展開になっている。
ステルスゲームとして名高いメタルギアシリーズのようなぶっとんだ展開にはなっていない。
主人公からして髭が似合う白髪交じりのおじ様です。

もうひとつ『スプリンターセル』を特徴付けているのが、主人公の多彩な動きである。
しゃがむ、飛び跳ねるのように基本的な動作の他に、壁の取っ手に捕まったりパイプを登ったりすることができる。
単に敵とのスニーキングミッションを堪能するだけでなく、どのように移動したらよいのかを考えるアドベンチャー要素がふんだんに盛り込まれている。
高いビルからロープを伝って目標の建物へ潜入するとか、いかにも潜入している感じを味わえる。

どういうゲームなのかわかりにくいだろうから、ミッションの進め方について一つ仮想ミッションを作って大ざっぱに見ていこう。
ミッションが始まると主人公が持っているOPSAT(オプサット)というPDAみたいなものに目標が書かれる。
ここでは機密情報の奪取としておこう。
目標の部屋に近づこうとするが、敵が警備をしていてなかなか近づくことが出来ない。
このとき陰を使って忍び足で歩きながら敵をやり過ごしても、わざと音を立てておびき寄せて倒してもいいだろう。
次のフロアにつくと監視カメラがあるので、カメラに写らないようにして動いていく。
もう少しで目標の部屋だが、よく見ると壁面地雷が仕掛けられているので、落ち着いて解除する。
目標の部屋の前についたもののドアがロックされているのでピッキングツールを使って開ける。
そして目標のデータを奪取した! するとOPSATに新たな目標として「屋上で待っているヘリで帰還せよ」と書かれている。
敵の攻撃を華麗な体術を駆使してやり過ごし、仲間が待っている屋上のヘリに近づいてステージクリアーだ。

パイプに捕まる

レビュー

類を見ないゲームシステムが素晴らしい

光と影を表現するだけでなく、ゲームに組み込んだ慧眼


『スプリンターセル』はそれまで発売された数多くのステルスゲームの良いところを上手く消化して、さらに新しい要素を付け加えた野心的なゲームである。
一番よく似ているゲームは何かと言われても一言で答えることが出来ない。
敵との駆け引きステルスゲームっぽさは『メタルギアソリッド』らしいし、銃を撃つ感覚はむしろTPS、そしてキャラクターを操作する要素はアクションゲーム、光と影を駆使したゲームは『シーフ』だろうか。
まあとにかく色々なものが下地になって新たな境地に到達したものが『スプリンターセル』だと言える。
これは『スプリンターセル』に文句を言っているわけではない。
別の方向から持ってきた要素を組み合わせることで新たなものが生まれているのだ。

『スプリンターセル』で特に評価したいのが光と影を利用した表現と、それを利用したゲームシステムである。
それまでは出来なかった技術が実用可能になり、新たな面白さを作り出した。
コマンド式RPGでは顕著なのだが、いくらPS3やXBOX360になろうともやっていることはファミコン時代と変わりがない。
ゲーム関連技術の進歩は精細なグラフィック面だけにとらわれがちであるが、スプリンターセルのようにシステムに直結するゲームは少ないのだ。
しかも技術を付け加えたことが中途半端になっておらず、いわゆる「技術デモンストレーション」の様相がないのも好印象である。
最初から最後まで光と影はスプリンターセルらしいシステムとグラフィックを作るのに貢献している。
ナイトビジョンを使って暗い地下道を進む

『スプリンターセル』は一本道だ

『スプリンターセル』は確かに斬新ではあるのだが、完璧なゲームではない。
まずはよく言われる一本道のゲーム展開について触れてみよう。

どこまでが一本道ゲームであるかは人それぞれの判断によるとは思う。
それでも『スプリンターセル』は制作者が用意した正解以外の方法は許容されていないか、実行するのに大きな労力がいる点でかなり一本道である。
わかりやすい例を考えてみると、目の前に敵が徘徊しているとき、完全にやり過ごすか背後から近づいて気絶させるという主に二つの解決方法がある。
これは場面場面によって適切に使い分けるのがた正しい攻略法だが、適切ではない方法で無理矢理進むことも出来る。
適切ではない方法はかなり窮屈で難しいので、わざわざやる見返りというのが少ない。(自己満足ぐらいか)
結局『スプリンターセル』は攻略法をなぞっていくだけのゲームになってしまう。

さらに一本道なのが、体術を駆使したアドベンチャー要素である。
例えば高い場所へ壁蹴りを利用してよじ登ったり、ロープを伝って敵に気づかれないような高い場所を移動するとき、ルートが一つしか用意されていない。
ある部屋に入ろうとしたが入れなかったのであちこちを探してみると上からロープを伝って侵入できた、という感じ。

そしてアドベンチャー要素は、どこにロープとかパイプがあるのかわかりにくい。
おそらく初めてのプレイではどのように行けばいいのか分からないのでおちこちを探索することが多いだろう。
いかんせんスプリンターセルはヒントが少なすぎるのでどのようにすれば良いのかがわかりにくい。
しかもあちこちを探し回る必要があるため、敵を生かしておくと攻撃される恐れが出てくる。
こうなっては片っ端から敵を倒して行った方が楽になってしまう。
ステルスもあったものではない。
あばよっ!
とはいえ、一本道ゲームにも利点はある。
一本道ならば、正解の方法をとると苦労することなく難しい場面をスマートにクリアでき、一種の優越感が味わえるのだ。
アドベンチャーゲームのように体術を駆使してルートを探す要素は、見つけたときに大きな喜びを感じられる。
敵が多すぎてどうにもならないと思われる場所をスルリと回避できたりする。

2回目以降のプレイはアドベンチャー要素による驚きはなくなり、いかに敵を華麗にスルーしていくかが問われる。
ただ、ハッキリ言って一本道の程度が激しいのでもう一度プレイする気にはならないだろう。
体力が無限になる要素が解禁されるといった、他のゲームにはよくある2週目をやる動機付けもまったくなされていない。
おそらく1週目が本番のゲームなのだろうと思われる。
そう考えると、片っ端から敵を倒して様々なルートを探すことがこのゲームの本質だったのではないかとさえ思えてくる。
敵をやり過ごす

詰めの甘さ

陰を使ったステルス要素は、見た目の陰影表現の充実と合わさって、実に素晴らしい。
真っ暗な場所では敵に見つかるようで見つからない紙一重の緊張感がある。
ステルスゲームの面白さは敵に見つかるか見つからないかの境界を行き来することにある。
明るいか暗くないかで一目で分かるところも非常によい。

と中盤まで思っていたが、後半で評価が変わった。
中途半端に暗い場所だと認識するのかしないのかが全く分からないのである。
またグラフィック上では明るいのに明るさメーター(このメーターが暗い場所にいるかいないかを計る指標になる)では真っ暗になっていたりするので余計に混乱する。
それにゲーム後半になってくると敵の反応も厳しくなり難易度が増してくるのだが、何度やっても敵の認識力の目安が分からなかった。
ステルスゲームで最も大事なのは、数値化や視覚化できない敵の認識力をどのように伝えるかにある。
せめてイージーモードを作るか、敵の認識力をプレイヤーに分からせるモードはつけるべきなんじゃないかと思う。
認識するかしないかの線引きが分からなければ、何度も何度も死んでしまうときに理不尽さを感じてしまう。
ついでに言うとステルスものでは重要なサウンド要素が弱い。
その分グラフィックに力を入れていると言えるかもしれないのだが。

敵に一旦見つかってしまうとほとんどリカバリーが効かないことも気になる。
一応離れたところまで走って物陰に隠れることでやり過ごすことはできるのだが、そんなことをするくらいならチェックポイントからやり直した方が手っ取り早い。
言い換えれば、スプリンターセルのゲームバランスは失敗が許されにくい。
ゲーム後半は敵の反応がシビアになり攻撃力も高くなるので、何度も繰り返してプレイする羽目になる。
イージーモードは搭載されていない。
いやむしろ、緊張感があって「リアルな」ステルスゲームとも考えられるかもしれない。
シビアだからこそ慎重にやる必要がある
しかしそこが難しい

まとめ

光と影を駆使した独特のゲームシステムは他のゲームには見られないほど斬新である。
一本道のゲームだという批判はあるが、一本道故に一つの難所をくぐり抜けたときの達成感はかなりのものがある。
また高い難易度とシビアなゲームバランスは独特の緊張感を作り出している。
しかしゲームに慣れた人ならば歯ごたえがあり慣れてない人にとっては難しすぎるバランスなので人を選ぶ。
洋ゲーのもつ典型的なイメージ像である「高い難易度」「突き放したゲームプレイ」を体現したかのようなゲーム。
ただまあ中身の出来は非常によろしいので気になった人は是非とも手にとっていただきたい。

73点

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