レビュー
格闘ゲームからアクションゲームへの変身
シビアで面白い戦闘
『ニンジャガイデン』は格闘ゲームである。
と言うと「何言ってるんだコイツ」と思うだろう。
私はアクションゲームが好きでも嫌いでもない。
一方で、対戦型格闘ゲームはどちらかというと嫌いだ。
実のところニンジャガイデンをやりはじめて数時間は、アクションゲームではあまり感じることのない違和感や嫌悪感を感じていたので正直言って印象は悪かった。
しかしよく考えてみると、ゲームの感覚が格闘ゲームに近かったからこその嫌悪感と違和感だったのだ。
様々なアクションゲームが世の中に存在するが、敵がガードを駆使してコンボ攻撃を決めてきたり、こちらが空振りした攻撃に合わせて攻撃を入れてくる『ニンジャガイデン』のようなゲームはそうそう無い。
むしろこういった要素は格闘ゲームでの対戦において頻繁に見られる。
また、ニンジャガイデンでの死因は敵との戦闘が8割以上だと言っていい。
それほど
戦闘がシビアなので、アクションゲームというよりも戦闘の駆け引きを楽しむ格闘ゲームの延長だと考えると非常にスッキリする。
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敵のニンジャがおそってくる
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格闘ゲームでは一対一が多いものの、ニンジャガイデンでは一対多数の場面が非常に多い。
多数の敵に囲まれると攻撃が波状で行われるので、こちらが手を出すタイミングなどが非常に取りづらくなる。
運が悪ければ袋だたきにあって一気にHPを削られてしまうことも多い。
しかし
ニンジャガイデンではプレイヤーのガードは非常に固く設定されており、ほとんどの敵攻撃を弾くことが出来る。
終盤の一部の敵にはガード不能技があるが、それまでは敵の攻撃のほとんどがガード可能になっている。
つまりガードを使えば無傷で敵の攻撃を耐えられるのだ。
上手くガードを使って敵の攻撃がやむタイミングを見計らい、攻撃をすれば時間はかかるものの確実に進めることができる。
もちろん上手いプレイヤーはガードを最小限にして攻撃を立て続けに繰り出して敵を倒すことも可能だ。
どちらかというと爽快感は重視されておらず、敵とのタイミングを計る駆け引きや敵を倒したときの派手な動きが重視されている。
なぜこんなことを言うのかと言えば、ニンジャガイデンの面白さに「爽快感」を挙げる人がいるからだ。
私はニンジャガイデンをクリアするまでついぞ爽快感を得られることはなかった。
そこら辺の雑魚敵でも油断するとあっさり殺されてしまうので、敵を倒したときは爽快さよりも達成感の方が大きい。
爽快というよりもネチネチとしたゲームではないだろうか。
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キック
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格闘ゲームは駆け引きや攻撃が多彩だから面白い。
敵が様々な動きをしてくるのを見切り、そして打ち勝ったときは達成感が大きい。
『ニンジャガイデン』の面白さはまさしくここにある。
慣れるまでは次々と攻撃をしてくる敵になすすべもないが、ガードしたりして敵の攻撃を眺めていくうちに敵の行動パターンが読めてくる。
そうなればしめたもので、効果的な攻撃方法を行えば強いと思われた敵をもあっさりと撃破することが出来るのだ。
どのアクションゲームでもその要素はあるといえばある。
しかし『ニンジャガイデン』はとことん格闘ゲームのような駆け引きを盛り込んだことによって戦闘の面白さを引き出している。
さすがデッドオアアライブシリーズを作り続けてきたTeam NINJAだと言えるだろう。
戦闘においてもうひとつ注目すべきなのは、自動的に敵に照準が向かっていくことなどの戦闘補助機能である。
大昔の3Dアクションゲームはこのような補助機能がなかったので、敵に攻撃を当てるだけでも非常に苦労した。
その後、大抵のゲームには備わっているほど重要な機能だ。
『ニンジャガイデン』の補助機能はきわめて優れていると言える。
こればっかりは感覚的な話になってくるのだが、完全に照準が敵にロックされもせず、かと言ってロックされないで困ることもない絶妙なバランスである。
補助機能の利点は自分が余計なこと(敵と正対すること)に気を遣わなくて済む点にある。
言い換えれば、補助機能によって敵との攻防の駆け引きのみに意識を集約できるのである。
その他私が気づいていない場所にまで気づきにくい箇所に微妙な修正が入っていると感じる。
それらの要素がプレイヤーをアシストすることで、戦闘にのみ集中できる環境が整っているのだろう。
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投げ物も有効だ
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やや残念な視点アドベンチャー要素
『ニンジャガイデン』は戦闘以外に悪いところが集中している。
アクションゲームならではとも言うべき「ジャンプアクションに代表されるアクションシーン」の出来が非常に悪いのだ。
まず気になるのがキャラクターの動きが微妙にアシストされているので自分の動かしたいように動かすことが出来ないのである。
キャラクターを動かしてみると、どんなにちょこっと動かしても一定量の方向にしか動けないために、一か所にとどまって好きな方向へ転回することが出来ない。
したがってジャンプをするときに方向をつけるのに非常に苦労をする。
またニンジャガイデンではまっすぐ歩くためのアシスト機能が働いており、斜め方向への動きが出来ないと行っても良い。
45度方向への移動は割と簡単なのだが、その間の微妙なさじ加減ができない。
これも同じくジャンプするときに非常に邪魔になる。
最も劣悪なのはカメラの悪さである。
やたらと位置が低かったり、プレイヤーの動きに合わせてグルグル回ったり、自分で好きに動かすことが出来ないのでカメラの死角から敵に攻撃されることもある。
これも難易度の一部になるのかもしれないが、プレイヤーにとってはただのストレスにしかなり得ていない。
特にジャンプアクションをする場面では操作の悪さとカメラの悪さの相乗効果で酷いことになっている。
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高いところから着地したはいいが、元に戻るのが面倒だったりする
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また、時々挿入される「謎解き要素」(アドベンチャー要素)はプレイヤーを迷わすだけだというのが分かっていないらしい。
「どこどこへ行って○○を入手し、入手した○○を××に置く」という昔ながらのお使い要素が当たり前のように使われているのには閉口する。
本当に必要なのかどうなのか、ということについて絶対に考えるべきである。
しかしニンジャガイデンのラスボスやその前ぐらいのボスはそんなに強くないことが気に入ったので帳消しにすることにした。
人によって考え方は様々なので文句は言わないが、ゲームバランスについてはゲーム後半になればなるほど難しくなっていきラスボスは出来るだけ強い方が良いと考える人がいる。
まさにこの手の人たちの考え方はラスボス直前にある今まで倒したボスのラッシュや類似のイベントに心を踊らせるのだ。
私はひと味違った考え方を持っていて、ラストになればなるほどイベント的な戦闘の度合いを強めていき難易度は押さえるべきだと考えている。
わざわざクリア直前で苦しい思いをするのは嫌だからだ。
確かに苦しい思いをしてクリアすると格別の達成感はあるのかもしれない。
かと言って人間、物量作戦や理不尽な難易度のラスボスとは戦いたくないものだ。
『ニンジャガイデン』ではボスラッシュがあるものの、そこに出てくるボスは弱いし直前でセーブできるので「難しいけれども理不尽ではない」バランスになっている。
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様々なボスがいる
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理不尽にならない難易度
『ニンジャガイデン』は最近のゲームにしては難しさが際だつゲームだ。
ところが開発者は意図的に初心者モードを用意していない。
これは「出来るようになるまでやれ」と開発者が公言しておるとおりの仕様である。
とはいえ理不尽にはならないように攻略法や救済策(回復アイテムを買うとか)がしっかりと用意されているので、出来ないほど難しいゲームではない。
どうもTeam NINJAの方針として、簡単ではないけれども理不尽ではない難易度を目指して作っているらしい。
なるほど、ニンジャガイデンのノーマル難易度はまさしくこれである。(あくまでノーマル難易度の話ね)
要は出来るようになるまで繰り返しやることが推奨されているけれども、かと言って根本的な人間能力を要求される場面は少なくし、殆どの人が到達できるように作り上げている。
決してヤワなゲームではないが、それでもきちんと筋立てて攻略もしくは攻略情報を読むなり動画を見るなりすれば、クリアは出来る。
前述した「あまり強くないボスラッシュ」や「弱いラスボス」は露骨に難易度を上げないように考えた末の結果なのではないだろうか。
細かな欠点はあるものの、それでも絶妙な調整がなされたゲームだ。
プレイヤーが上手くなっていく課程が手に取るように分かる。
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効果的に忍術を使おう
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