紹介
『FATAL FRAME -零 SPECIALEDITION-(フェイタルフレーム ゼロ スペシャルエディション)』(以下『零』)はテクモが開発販売をしたホラーアドベンチャーゲームである。PS2で2001年に発売された『零〜zero〜』がXBOXに移植されたものが『FATAL FRAME -零 SPECIALEDITION-(フェイタルフレーム ゼロ スペシャルエディション)』である。
移植するにあたってグラフィックが新たに描き起こされてパワーアップしてる他、新エンディング、敵の追加などがされている。
XBOX版は出荷本数が少なかったこともあってか価格が定価以上に高騰しており、法外な値段で売られている。
しかしゲームバランスやシステムはPS2版と殆ど同じなので、PS2版を購入数するのが手っ取り早い。
PS2版は出荷本数が多い上にベスト化されているから欲しいと思えばすぐに手に入るだろう。
新エンディングは動画サイトで補足すれば事足りる。
『零』はプレイヤーを怖がらせるホラーの要素と、敵を倒したり謎を解くアクションアドベンチャーゲームの要素を混ぜて出来た典型的なホラーゲームである。
しかし『零』ではいたずらに謎解きを複雑化したり戦闘部分の比重を多くせずに、いかにプレイヤーを怖がらせるかに重点が置かれている。
主人公がおかれるシチュエーションは昔ながらの日本家屋で敵となるのは幽霊であったりと、日本人の感覚に訴えかけてくる。
有名なホラーゲーム(『バイオハザード』など)では銃が使われていたりと比較的西洋風の物語が多いので、『零』のように和風を前面に押し出しているのは珍しい。
その意味でも『零』の怖さはジャパニーズホラーの怖さと同じだと言える。
またストーリーが幻想的で儚いことも、日本で多く作られている文章中心のアドベンチャーゲームに類似している。
『零』はスプラッタ表現(残虐表現)やグロさを重視していない。
幽霊がどこにいるのか?という想像をかきたてる |
プレイヤーはカメラを使って幽霊を倒して行く。
カメラを覗いて幽霊を捕捉しシャッターを下ろせば敵にダメージが入り、相手の体力が無くなれば消滅する。
『零』というホラーゲームにおいてカメラの持つ意味は二つある。
まず「常に幽霊を見続けなければならない」ことだ。
プレイヤーを怖がらせる上で重要な役割をもっている幽霊はいるだけでも怖いのに、その幽霊をカメラのファインダー越しに捕捉しなければならないのだ。
しかも、カメラを覗いているときは視点が狭まってしまう。
これが二つ目の理由だ。
幽霊が怖いからと言って常にカメラを覗くのは自殺行為になるのだ。
謎解きなどのゲームシステムは他のホラーゲームとあまり違わないが、カメラの要素についてはひと味もふた味も違う。
また、プレイヤーの恐怖を演出するのに視覚を使ってビックリさせることがあまり使われていないのも、ホラーゲームとしての『零』を際だたせている。
コントローラーが振動することや、カタカタ音、亡霊特有の音楽が鳴り響くことでプレイヤーを怖がらせる。
幽霊はゆっくりと出てくるのでギョッとすることはない。
あくまでもジワジワくる怖さなのである。
例えばホラー要素として典型的な「ふすまを開けたら目を血ばらせた幽霊がこっちを睨む」というような場面は極力排除されている。
直接的に驚かせるよりも間接的な表現や、雰囲気で恐怖を演出している。
廃墟となった夜の日本家屋はそれだけでも何かが出そうだ。
ろうそく、鏡、日本人形と暗い空間で存在するだけで怖いものが目白押しだ。
日本人形は見方を変えればとても不気味だ |
要は、非現実的な出来事で怖さを演出するのではなく、いかにも昔から仕えられてきたような、そしてつい最近まで行われてきたような不気味さを上手く表現している。
超人間的な物によって引き起こされた悲劇というより、人の感情や行動が生み出した悲劇や恐怖が怖さの元になっている。
意外なことにカメラを使って幽霊をたおしていくアクション要素も面白い。
トリッキーな動きをする幽霊を予測して照準をあわせるのは、私が好きなFPSに似ている。
とはいえ『零』はけっこうむずかしい。
ゲームが苦手な人にとっては少々キツイ物があると思う。
サバイバルホラーなので厳しさが面白さを生み出しているとも言えなくはないのだが。
幽霊から攻撃をうけるとこんな感じ |