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FATAL FRAME -零 SPECIAL EDITION-
(フェイタルフレーム ゼロ スペシャルエディション)


ジャンル:アドベンチャー
機種:XBOX
発売年:2003年
開発会社:テクモ

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2009年2月 最終更新日2011年3月

紹介

『FATAL FRAME -零 SPECIALEDITION-(フェイタルフレーム ゼロ スペシャルエディション)』(以下『零』)はテクモが開発販売をしたホラーアドベンチャーゲームである。
PS2で2001年に発売された『零〜zero〜』がXBOXに移植されたものが『FATAL FRAME -零 SPECIALEDITION-(フェイタルフレーム ゼロ スペシャルエディション)』である。
移植するにあたってグラフィックが新たに描き起こされてパワーアップしてる他、新エンディング、敵の追加などがされている。
XBOX版は出荷本数が少なかったこともあってか価格が定価以上に高騰しており、法外な値段で売られている。
しかしゲームバランスやシステムはPS2版と殆ど同じなので、PS2版を購入数するのが手っ取り早い。
PS2版は出荷本数が多い上にベスト化されているから欲しいと思えばすぐに手に入るだろう。
新エンディングは動画サイトで補足すれば事足りる。

『零』はプレイヤーを怖がらせるホラーの要素と、敵を倒したり謎を解くアクションアドベンチャーゲームの要素を混ぜて出来た典型的なホラーゲームである。
しかし『零』ではいたずらに謎解きを複雑化したり戦闘部分の比重を多くせずに、いかにプレイヤーを怖がらせるかに重点が置かれている。
主人公がおかれるシチュエーションは昔ながらの日本家屋で敵となるのは幽霊であったりと、日本人の感覚に訴えかけてくる。
有名なホラーゲーム(『バイオハザード』など)では銃が使われていたりと比較的西洋風の物語が多いので、『零』のように和風を前面に押し出しているのは珍しい。
その意味でも『零』の怖さはジャパニーズホラーの怖さと同じだと言える。
またストーリーが幻想的で儚いことも、日本で多く作られている文章中心のアドベンチャーゲームに類似している。
『零』はスプラッタ表現(残虐表現)やグロさを重視していない。

幽霊がどこにいるのか?という想像をかきたてる
『零』の命綱はカメラだ。
プレイヤーはカメラを使って幽霊を倒して行く。
カメラを覗いて幽霊を捕捉しシャッターを下ろせば敵にダメージが入り、相手の体力が無くなれば消滅する。

『零』というホラーゲームにおいてカメラの持つ意味は二つある。
まず「常に幽霊を見続けなければならない」ことだ。
プレイヤーを怖がらせる上で重要な役割をもっている幽霊はいるだけでも怖いのに、その幽霊をカメラのファインダー越しに捕捉しなければならないのだ。
しかも、カメラを覗いているときは視点が狭まってしまう。
これが二つ目の理由だ。
幽霊が怖いからと言って常にカメラを覗くのは自殺行為になるのだ。
謎解きなどのゲームシステムは他のホラーゲームとあまり違わないが、カメラの要素についてはひと味もふた味も違う。

また、プレイヤーの恐怖を演出するのに視覚を使ってビックリさせることがあまり使われていないのも、ホラーゲームとしての『零』を際だたせている。
コントローラーが振動することや、カタカタ音、亡霊特有の音楽が鳴り響くことでプレイヤーを怖がらせる。
幽霊はゆっくりと出てくるのでギョッとすることはない。
あくまでもジワジワくる怖さなのである。

例えばホラー要素として典型的な「ふすまを開けたら目を血ばらせた幽霊がこっちを睨む」というような場面は極力排除されている。
直接的に驚かせるよりも間接的な表現や、雰囲気で恐怖を演出している。
廃墟となった夜の日本家屋はそれだけでも何かが出そうだ。
ろうそく、鏡、日本人形と暗い空間で存在するだけで怖いものが目白押しだ。
日本人形は見方を変えればとても不気味だ
ストーリーが一地方に伝わる習慣や信仰に焦点が当てられているのも、怖さに一役買っている。
要は、非現実的な出来事で怖さを演出するのではなく、いかにも昔から仕えられてきたような、そしてつい最近まで行われてきたような不気味さを上手く表現している。
超人間的な物によって引き起こされた悲劇というより、人の感情や行動が生み出した悲劇や恐怖が怖さの元になっている。

意外なことにカメラを使って幽霊をたおしていくアクション要素も面白い。
トリッキーな動きをする幽霊を予測して照準をあわせるのは、私が好きなFPSに似ている。

とはいえ『零』はけっこうむずかしい。
ゲームが苦手な人にとっては少々キツイ物があると思う。
サバイバルホラーなので厳しさが面白さを生み出しているとも言えなくはないのだが。
幽霊から攻撃をうけるとこんな感じ

レビュー

背筋がゾクゾクする恐怖を追い求めたホラー

『零』の怖さはどのような怖さなのか

怖いと言われるホラーゲームには、一口に怖さと言っても様々な種類がある。
例えば、血などのグロテスクな表現を見ると人によっては恐怖を感じるだろう。
他にも狂気に彩られた世界を舞台にするゲームがあれば自分の常識が通じない人々を見て怖いと思うかもしれない。
『零』の恐怖感は暗い廃屋や暗闇への怖さ、そして何かが出てくるかもしれないという不安からくるジワジワとしたものである。
何かというのは実際のゲームで出てくる幽霊のことだ。

『零』における幽霊は単なるお化け屋敷のお化けのようにビックリさせる存在ではない。
お化けが出てくる場面を順を追って説明していこう。
まず幽霊が出てくる場面では、出てこない場面と比べると環境音が微妙に違う。
わかりやすい幽霊ならばお経がなるとか、重低音を響かせるとかで、わかりにくいものは高周波をキーンとならしたり、あるいはうめき声を上げてくる。
実はこのとき、画面を見る限りは幽霊の存在がわからない。
幽霊が近くにいることは分かるのだが、どこにいるかは視覚からはハッキリと感じ取れないのだ。
幽霊を探す方法は画面に表示されるメーターとコントローラーの振動の強弱を使うことになる。
キャラクターが幽霊の方向を向けがメーターが反応し、コントローラーが振動する。
そして待ち構えていると、またたく間に幽霊が出てくる

『零』は聴覚、触覚、視覚をプレイヤーに訴えかけてくるゲームなのだ。
怖いからって音を切ったり、振動機能をオフにするのはもったいない。
お堂もありますぜ
幽霊との対峙をする場面は、特に音の良さを評価したい。
音は疑似的にサラウンドになっており、音の方向をきちんと捕捉できれば幽霊のいる方向が分かる。
この音もジーッというノイズからお経まで様々な種類がある。
音を言葉で表現するのには限界があると思うが、チープな音やいかにも作り物の音という感じがなく、非常に質が高い。
敵によって違う音が割り振られてもいる。
慣れてくると音の判別から敵の種類を見分けられる。

怖さの演出では、雰囲気重視のグラフィックもポイントが高い。
明るすぎず暗すぎず、それでも全体的にじとっとしていて暗い。
幽霊が出てくるのにぴったりな雰囲気を上手く表現している。
画面全体がぼやけた感じで全体的に黒っぽく色彩に乏しいのは、視認性を犠牲にしてでも、怖さを演出するには間違っていない選択である。
ゲ!目が会ってしまった

恐怖を蓄積させる場面、恐怖を発散させる場面

『零』の恐怖感でもっとも優れているのは幽霊を出すタイミングと出し方にある。

幽霊は元々生きていた人間に事件が起きて、あのような形(幽霊)になってしまっている。
ゲームでは幽霊になったときの性質と生きていた頃の性質が混じり合い、人間らしい動きを見せつつ幽霊の利点を生かして行動をする。
クリアするまで幽霊に会う回数や総数は決して多くない多くないが、逆に一回一回を丁寧に作ってあるため、非常に印象が強い。
どの幽霊にもバックグラウンドが作られていているので、生き霊とでもいうべき感覚を生み出している。

敵を倒すアクション要素にも、謎を解いたりストーリーを進めるアドベンチャーにも偏らずに純粋に「怖さ」を追求したこその結果であると言える。
また、一つ一つのムービーが恐怖をあおるように作られている。
普段はゲームの舞台となるに不気味な日本屋敷を探索するのが恐怖をためるパートだとすれば、随所に挿入されるムービーや幽霊が現れる場面は恐怖が発散される場面である。
恐怖を溜め込む部分と、爆発させる場面が絶妙に絡み合っている『零』は、だれることなく遊べるのだ。
うしろから・・・・

ホラーを引き立たせる戦闘、アドベンチャー

アクションとアドベンチャー要素についても、それぞれの要素はホラー要素に負けないぐらいにしっかりと作られている。

まずアクション要素は、一定時間カメラのファインダー越しに幽霊を見続けるけると攻撃力がアップするという仕掛けが面白い。
見たくもない幽霊を見続けなくてはならないけれども、確実にダメージを多くして倒すには敵を見なければならない。
幽霊は結構好戦的にこちらを攻撃してくるので、おちおちしてずっと見続ければダメージを食らうことになる。
しかしダメージを与えるにはずっと見続ければならない・・というジレンマがある。
倒すためには見続ける必要があるが、敵からのダメージを負わないためには敵を見なくても良いというトレードオフの関係が見事に生まれている。
またファインダー越しに敵を捕捉し続けるのは、FPSと同じ面白さを生み出してくれている。
敵の動きを予測したり瞬時に反応しつつじっくりと照準を会わせていくのはまさにFPSそのものだ。
とはいえ、敵が強いので複数回のリトライが必要になってくる場合が多く、セーブに気を遣わなければならないのはあまり褒められたものではない。

謎解きについては、やたらと難しいものやストーリーの雰囲気にそぐわない物が一切ないので、テンポを崩さないようになっている。
むしろ謎解きに時間を取らせず、ストーリーに集中させるためにはこれぐらいの難しさの方がちょうど良い。
ストーリーは物語の舞台になる館やそこで行われていた儀式が徐々に明らかになっていく典型的なパターンだ。
それほど複雑でもなく単純すぎるわけでもなく、ゲームをすすめながら自然と入ってくる絶妙な量になっている。
最終的には儚く悲しいものになっているものの、後を引く物ではないて非常にスッキリとした感じをうける。
シャッターを押して倒そう

ホラーゲームであるがゆえの欠点

『零』は非常に高い完成度と絶妙なバランスをもったゲームである。
しかし唯一にして最大の欠点がホラーゲームというジャンルそのものなのだ。
怖さを感じられるかどうかでゲームの評価が変わってしまう。

いくら戦闘が面白いとかストーリーがよいとか言っても、その道の専門ゲームには勝てるわけがない。
『零』なら、戦闘は有名なFPS、ストーリーはテキストアドベンチャーの方が良質なものがある。
つまり『零』の良さはやっぱり怖さにあるわけなので、怖さを感じられなければバイオハザードのパクリゲームに成り下がってしまうのだ。
例えばお化け屋敷が好きな人は、いつビックリさせられるかという不安感からくる恐怖を楽しむが、これは『零』ではあまり重視されていない。
スプラッターやグロ表現に恐怖を抱く人は『零』なんて子供だましに感じるだろう。
そのかわり、廃墟となった日本家屋や幽霊のような和物系のホラーに耐性があまりない人ほど『零』を楽しめるはずだ。
やはり、ある種のホラーに耐性がある人にとって耐性があるホラーを見るのは、ただの子供だましのコメディやつまらない劇にしかなり得ないのだ。
『零』を購入する際はそのことをしっかりと頭に入れて欲しい。
鏡自体は怖くないが、暗闇にあると怖くなるのだ

まとめ

日本を舞台とするストーリーによって怖がらせることを非常に重視したゲームである。
ドッキリやスプラッター表現を多用することなくあくまでも和風の雰囲気で怖がらせようとする。
敵を大量に配置して恐怖をつのらせるのタイプのゲームとは全く違う、一つ一つを印象づけるように丁寧に表現や配置がされている。
意外にもアクションゲームとしても楽しめる作りになっており、怖さが半減してくるゲーム後半はアクションゲームとしても楽しめる。
しかし結局のところは怖さを感じられるかどうかがzeroの評価を最も左右する要素であることには変わりない。
かなり感覚的な話になってしまうので、合う人には合う、合わない人には合わないゲームだと言える。
背筋がゾクゾクするゲームを探しているのなら非常にお勧めできる。

86点

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