レビュー
偉大な前作に霞むものの、完成度は高い
『紅い蝶』になって変わったこと
『紅い蝶』は確かに良くできたゲームだ。
高い評価を得ているのも納得できる。
前作で評価された点を劣化させずに上手く紅い蝶のゲームシステムに組み込み、順当な続編になっている。
見方によっては、より深みを増したとも考えられる。
戦闘システムについては、前作はファインダー越しにひたすら敵を追いかけることが大切だった。
加えて『紅い蝶』では敵を捕捉するだけでなくて、敵のモーションの癖を掴む必要がある。
その理由は、敵が攻撃モーションをするかまたは特定のモーションをしたときに、こちらの攻撃力が大幅に上がるシャッターチャンスが訪れるからだ。
シャッターチャンスは、ジジジジ・・・とノイズのような音が入り画面に特殊なエフェクトが出るので、いつシャッターを押せばいいのかはわかりやすくなっている。
しかしシャッターチャンスの時間が非常に短いために、反応してからシャッターを押すのでは遅すぎて空振りになってしまう。
だからこそ敵の行動パターンを事前に読むことが重要になっているのだ。
ストーリーはかなり深みを見せる。
何人も登場人物が出てきて、それぞれが複雑な思いを交差させながら村のしきたりを守っている。
そして、一言で言い切れない複雑な感情が描かれている。
特にラストのやりきれなさはかなりのものだ。
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不気味な雰囲気
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『紅い蝶』の欠点とは
『紅い蝶』の欠点は、結局のところ続編に陥りがちな前作とあまり変わりばえしないゲームプレイにある。
また上記のように深みを増した・・と言えば聞こえは良いのだが、むやみに複雑化して要らないものまで作りだしてしまった感じがある。
さらにストーリーも、迷い込んだ村を脱出するという主人公たち目的と話の筋が絡み合っていない。
エンディングに近づけば近づくほど、何を目的に謎解きをして先に進むのか分からなくなるのだ。
しかし紅い蝶最大の欠点は前作より明らかに怖くないことにある。
怖くないホラーゲームはただのアドベンチャーゲームかギャグである。
紅い蝶はアドベンチャーゲームのようなストーリーや謎解き探索要素に力を入れたために、ホラー要素の薄いアドベンチャーになってしまった。
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子供がいる・・
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前作が斬新だったのは、バイオハザードが続編乱発で食傷気味だったアクションアドベンチャーというジャンルに、カメラを使った操作と極限まで追い求めた恐怖感を追加したことにある。
カメラを使う攻撃方法は、それまでは直視しなかった怖い敵を直視することにより新たな恐怖を生み出した。
そして恐怖の演出を丁寧に吟味し作り上げていった結果、背中に冷たい水が流れ落ちるようなゾクゾク感を醸し出すゲームが完成した。
ストーリー要素も、アドベンチャー要素も、アクション要素も、すべてがかわみあってホラーを増幅させていたのが前作『零』である。
つまり怖さの表現こそが前作の『零』らしさを作っていたと言える。
『紅い蝶』はどうにもこうにも恐怖感が足りていない。
ホラー要素を薄めているのは様々な要素が絡んでいるので、ちょっとずつ紐解いていこう。
まずは戦闘のテンポの悪さである。
幽霊との戦闘は戦闘のはじめこそ怖いが、長い間やっていると慣れが生じて全然怖くなくなってくる。
だから戦闘に掛ける時間や、幽霊との戦闘回数は少ない方が良い。
ところが紅い蝶の場合は幽霊の動きがとてものそのそしている上にシャッターチャンスが少なく、敵の体力も高いために戦闘が長く感じてしまう。
幽霊が出てくる量も時間もかなり増えてしまった。
こうしてプレイヤーは怨霊や幽霊に慣れてしまうのだ。
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彼女はこわいけどね
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次はアドベンチャーゲーム的な要素である探索要素やストーリー性についてである。
探索要素自体は決して悪いわけではないのだが、マップが広くなったり探す物が増えてくると幽霊以外のことに意識が飛んでしまって怖さを感じなくなる。
話の筋は、最初のころ村から逃げ出すことが目的だったのに、主人公の姉がふらふらとどこかへ行ってしまうものだからついでに村の人々だった幽霊の様子がうかがい知れてきたという話の筋は、非常に惰性感が大きい。
いつのまにか物語の目的が「村からの脱出」から「姉の探索」へとすり替わってしまう。
そして話の筋が無闇に交錯していてわかりにくい。
おそらく話の全貌はエンディング内容を含めると一回クリアしただけでは何が何だかわからないだろう。
『紅い蝶』が面クリア型のアクションゲームならそれでも十分問題なかったのだろうが、ストーリーが重視されるタイプのゲームでは致命的である。
イベントシーンの見せ方は、前作よりも直接的な描写が増えたことにより衝撃度は高まってはいる。
しかし、後へ残るような不気味さは消えてしまった。
実は衝撃的なシーンというのはその一瞬だけが衝撃的で後々まで残るような物ではない。
残るような物は確かにあっても、それは嫌悪感や衝撃だけであって決して『零』で見せたい恐怖そのものではない。
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一度に出てきすぎ
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それでも良質なゲームであることは確か
とまあいくつか悪い点を述べてきたが、それは非常によい出来だった前作を評価の軸にしているからだと念を押しておきたい。
前作と比べなければ十分に質の高いホラーゲームとして楽しめる。
しかし根本的なところが前作と代わり映えしないので、前作をやったプレイヤーであればあるほど肩すかしを食らう可能性がある。
私は短い期間に連続してやったので紅い蝶のダメな点が嫌と言うほど分かってしまった。
出来の良い作品の後継作というのは非常に立ち位置が難しい。
これはゲームでも映画でもなんでも共通するある種のジンクスと言える。
異なる物にして新たな評価を築くか、より発展させたものをつくるかは作り手の自由だ。
どちらが良いのかもハッキリと言い切れない。
『紅い蝶』は前作の路線においてを超えることはできなかった。
ストーリー性では確かに深みを増したが、はたしてそれがホラーゲームとしてのストーリーであるべき内容だったのかは疑問が残る。
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やればやるほど類似点がわかるだろう
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