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BREAKDOWN(ブレイクダウン)


ジャンル:アクション
機種:XBOX
発売年:2004年
開発会社:ナムコ

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2009年2月 最終更新日2011年3月

紹介

『ブレイクダウン』はナムコが製作販売をしたアクションゲームである。
発売はXBOX版のみ。
日本版はD1出力にしか対応していない。(なぜか海外版はD2出力できる)
なお台詞はすべて英語音声日本語字幕になっている。
現在は安値で中古市場に出回っているので入手はしやすいだろう。

一人称視点による主人公とプレイヤーの一体感が『ブレイクダウン』の良さである。
パンチやキックを主体とした戦闘、度肝を抜くストーリーは他のゲームでは体験できない。
他の一人称視点ではあまり見られないようなゲームシステムなので、FPSを期待していると肩すかしを食らう。
あくまでもアドベンチャー要素の強いアクションゲームとして考えて欲しい。
鏡の前にて
一人称視点のゲームにしては珍しく、戦闘は素手によるパンチやキックといった格闘攻撃が中心だ。
ふつう、一人称視点のゲームは近接攻撃の距離感が掴みにくいため、距離を想定する必要が低い銃撃戦をメインとして作られていることが多い。
『ブレイクダウン』は格闘攻撃をするときも自動的に照準が敵にロックされる上にリーチの差で戦闘の勝敗が決まるようにはなっていないので、一人称視点で格闘をする際の欠点は全く気にならないように作られている。
そして銃撃戦の要素はあるが、照準が敵に自動ロックされるので「敵を狙う」必要は無い。
このあたり、普通のFPSとは違う。

中盤以降は銃が効かない敵が多くなるので格闘攻撃に頼らざるを得なくなる。
攻撃に使うボタンは左右のトリガーボタン(LRボタンのこと)が中心だ。
トリガーボタンを移動キーと組み合わせることによってキックやアッパーが出てくる。
この辺は格ゲーに似たところがある。

一人称視点での没入感を得やすくするために、頭の動きをトレースした様々なアクションが用意されている。
物を食べたり飲んだりするシーンは一人称のまま行われるし、壁をよじ登ったり匍匐移動するときは意図的に自分の体を見させるシーンが多い。
しかし、敵から殴られたときや出っ張りによじ登るときは視点が激しく移動する上にブラーのようなぼけるエフェクトがかかるため、非常に酔いやすいと言われている。
私は酔わなかったが、多くの人から酔いやすいという意見が出ているので3D酔いになりやすい人には注意が必要だろう。
パンチ!
没入感を得るための演出で最も際だつのはストーリーの語り方である。
主人公は何も記憶が無いという設定なのだが、周りの人は主人公について知っている。
だからゲームをして間もないうちに主人公の名前を教えてくれるし、何をすべきかについて助言をしたり導いてくれる。
しかし主人公の記憶は最後まで思い出されることがない。
こうして目の前の出来事が主人公とプレイヤーが目にしていることと一致するというスタンスを最初から最後まで崩さずに物語が語られる。
主人公とプレイヤーの一体感を生かしたゲームなので、「ストーリーを自分で動かす」と言っても良いかもしれない。

大抵のゲームでは、プレイヤー側は知らないことを主人公は知っている。
例えば主人公を動かせるようになったときの前から主人公はその世界で生きているので、その世界が何たるかを知っているのだ。
一方で、『ブレイクダウン』では主人公の記憶が全くない。
つまり「プレイヤーが知っていること」と、「主人公が知っていること」が完全に一致する(話の上では)。
さらに、主人公はどのような存在なのかや世界がどのような状態なのかが説明書にもゲーム中にも「説明的に」語られることはない。
画面や音声から得られる情報が世界を徐々に形作っていくとでも言えばいいだろうか。
パートナー

レビュー

一人称視点ならではの物語構成はすばらしい

ブレイクダウンの魅力は「一人称視点の使い方」にあり

『ブレイクダウン』は一人称視点の良さを引き出したゲームだと言える。
ゲーム機やパソコンの3Dを表現する能力が高まるにつれて、ゲームをプレイすればその世界へと入り込む要素も強くなっていった。
数あるゲームの中で最も没入感を得られるのが一人称視点である。

しかし一人称でのゲームは見下ろし型のゲームよりも制約が多い。
視点が狭いため画面から得られる情報は少なく、激しい動きをすれば視点がグルグル動き、自分の攻撃の範囲やプレイヤーの体の位置の感覚などがわかりにくくなってしまう。
だから一人称視点でのゲームはFPSかアクション要素が少ないアドベンチャーやRPGにどうしても限定されてくる。
そういう意味では『ブレイクダウン』はFPSやアドベンチャーゲームの良さをうまく融合させたゲームだと言える。
一人称視点やストーリーを効果的に利用し、没入感覚を重視して作られているのだ。
主人公はストーリーを進めると強くなれる
FPSとしての良さは戦闘要素にある。
『ブレイクダウン』では格闘攻撃が基本というFPSにあるまじきシステムを採用している。
一人称視点の醍醐味は、自分自身の視点からもたらされる臨場感ある戦闘である。
そして銃撃よりも格闘攻撃に重点を置いた『ブレイクダウン』は、臨場感の演出という意味では成功している。
銃を撃つよりも自分の手でボコボコぶん殴っている方が、普通の人間にとってはしっくりとくるはずである。
またパンチやキックをするときは視点が微妙に動くので、あたかも自分が動いているような感覚を得やすく作られている。

もしもブレイクダウンが銃撃戦主体のゲームならば、そこら辺に数多く転がっているFPSと見分けがつかないはずだ。
ブレイクダウンへの的外れな批判として、一人称視点なのに銃撃戦が面白くないからクソだとか言う人は結構見かけるのだが、これは銃撃ゲームではなくてアクションゲームというか格闘ゲームである。

物を手に取ったときに眺める動作もなかなか凝っていて個人的には好きだ。
特にハンバーガーを食べたり缶ジュースを飲むシーンはこのゲームらしい場面である。
ジュースを飲む
アドベンチャーゲームらしさはやはりストーリーに集約されているだろう。
ゲームの主人公はプレイヤーの分身なのかそれともプレイヤーの操る駒なのかというのはゲームによって様々であるが、『ブレイクダウン』はプレイヤーの分身としての主人公をハッキリと意識して作られている。
ただ単に一人称視点にしたからだとか、喋る台詞が少ないからだというわけではない。
ましてや自分好みにカスタマイズできる自由度や行動の自由度を元に「没入感」を約束するゲームでもない。
『ブレイクダウン』はきちんと道筋を立てて展開されるストーリーがあってこその一体感である。

ゲームをはじめると、主人公は研究所のような部屋の一角で目が覚め、そして急に軍隊が押し寄せてきて主人公を襲う。
なにがなんだか分からないままパートナーの言うまま一緒に逃げていくうちに、主人公が「最後の希望」と呼ばれる理由がプレイヤー側になんとなく身にしみてくる。
アドベンチャーゲームとして考えると会話量はハッキリ言ってものすごく少ないが、最低限のことを話しており、アクションゲームとしてのテンポは崩していない。
目の前にある難関をくぐり抜けていくうちに自ずとストーリーが徐々に挿入されて入ってくると言えばいいだろうか。

ゲームの終盤に物語の核心というか概念がガラリと変わる場面がある。
そこは映画や小説では見られないゲームならではの、プレイヤーが主人公を操っていればこその展開なのでぜひとも情報無しで体験して欲しい。
物語の最後も超格好いい形で終わっている。
まさに映画のような形、そのものである。
心震える音楽と相まって、最後まで遊んだ人を裏切らないゲームだ。
絶体絶命

コンセプトは素晴らしいが、粗悪な箇所も多い

しかし『ブレイクダウン』はダメなところが多い。
全体的にストーリーでごまかしているような感じもあるので、いくつか挙げていこう。

まず気になるのがグラフィッククオリティの低さである。
人物の造形や机や椅子のようなオブジェクトに関してはかなり凝っているのだが、他のものはけっこう酷い。
薄っぺらいテクスチャの板で作った箱の空間がずっと連続していると言えばわかるだろうか。
室内の場面が殆どなので、ほとんど同じような場面が続いて見飽きてしまう。
せめて模様や色彩を変えるなりすれば単調感も減ったはずなのに、ほとんど同じ色彩なのだ。
これは「手抜きと思。

このゲームの作りはどこかで見たことがあるような気がしたのだが、これは『HALO』っぽいのである。
ついでに言うと、日本版『ブレイクダウン』はD2に対応していない。
初代XBOXのゲームは殆どがD2対応なのに、『ブレイクダウン』は対応していない。
敵キャラはモデリングいいんですけどね
次は操作性の悪さである。
視点をまっすぐにしていないと移動できず、変な慣性もかかっていて上下を見渡すことがやりにくい。
ジャンプを多用する場面が非常に多いのに、ジャンプボタンが非常に押しづらい場所に配置されている。
つまりジャンプを要求される場面が多いのもかかわらず、上下に見渡しにくいので足場の確認がしにくく、ボタンは押しづらいのだ。

一人称視点に慣れていない人にとっては非常にイライラするに違いない。
視点移動がかなり激しいので酔いやすいのも、人によっては結構キツイ物があるだろう。
おまけにジャンプするにしても妙な慣性がついているので慣れるまでは苦労する。

戦闘は格闘を駆使する必要があって新鮮だ。
しかし終盤はただ敵を数多く出しているだけという感じがする。
『ブレイクダウン』では基本は一対一でしか戦闘が出来ないので、終盤に油断すると敵の集団からボコられる。
しかも攻撃されると視界がぐらぐら揺れて、主人公が倒れ込んでしまう。
戦闘のテンポが悪くて画面が揺れて不快な気分になりやすい。

テンポが悪いと言えば、回復アイテムなどのアイテムを取るときに一々手にとって物色する様子が入る。
最初は面白くとも慣れてくるとだるくなってくる。
敵にブン殴られるとこんな感じ

ナムコ製作と言うことで、日本産一人称視点ゲームは珍しいと思う

その他良いことも悪いことでも無いことを書いておこう。

7時間もあれば全部クリアすることが出来るくらいのボリュームである。
一度やってしまえばまたやりたいとは思いにくいゲームなので、短い時間で楽しむゲームを探している人にはおすすめ出来る。
そしてチェックポイントが頻繁に設けられている。
死んでしまうとチェックポイントに体力が回復した状態で戻るので難易度はそこまで高くない。
3D酔いなどの要素を除けば気軽にやれる。
しかし、終盤は一部難しい場面があるのは注意。

以上でレビューは終わる。
『ブレイクダウン』は全体的にFPSを作り慣れていないのだなという印象を受けた。
日本のゲームメーカーは一人称視点のゲームを作り慣れていない。
そこで習作の意味合いも兼ねて、一人称らしさを生かしつつ従来の一人称ゲームを超えるべく『ブレイクダウン』は製作されたのではないか。
しかしできあがった物はやりたいことが大いに伝わってくるものの改善点が多いゲームだった。
他のFPSを参考にしたような展開が結構見受けられるので、「共通点探し」も面白いかもしれない。
主人公に秘められている超人的な力が目覚める

まとめ

一人称視点であっても、銃撃よりも格闘攻撃やストーリー展開に力を入れたアクションアドベンチャーゲームである。
三人称視点で作らずにわざわざ一人称にした理由は、ゲームの後半になればなるほど分かってくる。
操作体系が悪かったりと洗練されていなくて詰めの甘さが所々にある。
奥深さはないが短いプレイ時間を一気にやって満足感を得られるタイプのゲーム。


66点

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