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ジャンル:アクション
機種:PS3
発売年:2010年
開発会社:カプコン

公式サイト

レビュー脱稿日2011年3月

紹介

『バイオハザード5 オルタナティブ エディション』は2010年にカプコンがPS3向けに発売したバイオシリーズの七作目である。
七作目なのになぜ「5」なのかというと、ナンバリングには『0』と『コードベロニカ』を含めているからだ。
『オルタナティブエディション』は無印の『バイオハザード5』に追加コンテンツとPlayStation Move対応を加えた再販売にあたる。
追加コンテンツはダウンロード販売されているので、無印を持っている人が改めて買う必要はない。
またこれから買う人は、ダウンロードコンテンツの料金がかからない『オルタナティブエディション』を買った方が割安になる。
紹介・レビューの際には追加コンテンツと無印のコンテンツ部分を分けて説明する。
PlayStation Moveは持っていないので言及しない。

オルタナティブエディションの追加コンテンツは三つある。
一つ目は、初代バイオハザードのリメイク版に登場する洋館を模したマップをクリアするもの。
ゲーム的にも謎解きお使いが含まれていて、旧作のスタイルを新作で表現してみましたという感じ。
裏技で三人称視点にもできる。
二つ目は本編をさらに過激にしたようなCOOPミッション。
こちらは2人で協力すればするほど華麗にクリア出来るようになっている。
三つ目は、無印にも収録されていたマーセナリーズモードに新たなキャラクターを追加したもの。
マーセナリーズモードとは、無限に出現する敵をひたすら倒していくことでスコアを競い合うモードのことだ。
敵を倒す爽快感を強調している。
クリス、シェバ
左:シェバ、右:クリス。クリスは初代からお馴染みで、シェバは新キャラ
無印『バイオハザード5』はPS3のほかにXBOX360とPCで発売されたこともあって、シリーズ最高の売り上げを記録した(それまでは『2』が最高記録)。
これだけ売れたのは、ひとえに前作の『4』が文句のつけようもないほどの傑作だったからだ。
シリーズものの売れ行きは、前作の評価に大きく依存していると思っておけばいい。
『4』の評価が高まった理由は主に二つある。
ひとつは5作連続でマンネリ化していたシリーズを一新し、TPS風の視点で遊ぶゲームにしたこと。
次にゲームキューブのコントローラーに特化した操作方法を取り入れた数少ないゲームだったこと。
もちろんゲーム自体もスキのない作りだった。

『バイオハザード5』は『4』で培われた三人称視点を踏襲している。
細かなところは変化したとはいえ、正当な続編と考えるとスッキリする。
『4』から『5』への最大の変化はCOOPプレイに特化した点にある。
それまでは純粋な1人用のゲームだったシリーズに、初めて協力プレイという流行の要素を付け加えたのだ。
しかも最初から最後までパートナーと共に進めることになる。
普段はAI操作のパートナー(相棒)だが、もう一つのコントローラーやオンライン環境を用意すれば、いつでもどこでも協力プレイを始められる。
マーセナリーズ
マーセナリーズの一シーン
しかしCOOP特化によって失われてしまった要素も指摘しなければならない。
例えばシリーズ伝統の「謎解き」、「1人で遊ぶ恐怖感」、「長大な建物を探索する」場面がなくなっている。
『バイオハザード5』は殆どが戦闘に当てられて、COOPだから常に2人、オンラインに繋ぐためにか昨今主流のチャプター制を取り入れている。
COOPについて補足しておくと、1人プレイ時にはパートナーをAIが動かすため、あまりにも凝った仕掛けがあるわけではない。
過大な期待を抱かない方が良い。
以上のような特徴から、バイオハザードシリーズを昔からこよなく愛していたファンほど反発が強くなると考えられる。
つまり「こんなのバイオシリーズではない!」という一言に集約されるのではないか。
これだけ売れた割には、『バイオハザード5』の評価は芳しくない。

私は便宜上『バイオハザード5』のジャンルをアクションと分類しているが、むしろTPS(三人称視点シューティング)に近い。
しかし、一般的なTPSとはやや異なる。
まず見て分かるとおりキャラクターが非常に大きく描かれて死角が大きい。
そして旋回性能や照準のあわせ方にクセがあるため、思い通りに動けるようになっていない。
言い換えるとFPSをそのまま三人称にしたTPSではないということだ。
このような操作性になっている理由は簡単に二つ。
COOPに特化しているため死角を補い合うことを意識させるため。
もう一つは、バイオシリーズならではのモタモタ動くゾンビを大きく見せるためである(正確には『4』と『5』の敵はゾンビではないが)。
これまたFPSファンがTPSを期待して買うとやや違和感を覚えるに違いない。

『バイオハザード5』は課されていた期待すべてを満たそうとするあまり、中途半端な面が多くなってしまった大作と言える。
どんなゲームなのかはレビューで見ていく。
パートナー
パートナーだと、右側にキャラが位置する

レビュー

アクションシューティングとしては面白い部類に入るが、それ以外を期待すると肩すかしを食らう

COOPで失われたもの

『バイオハザード5』はバイオシリーズの一つとしてみると、明らかに異質だ。
今まで培ってきたバイオハザードらしさが全くないからだ。
これではハイオハザードと名乗る意味が見いだせない。
別に「寄生虫撲滅作戦X」とかいう名前でも問題ない。

COOPを採用しているおかげでバイオハザードらしさがかなり失われている。
言い換えると、COOPを実現するためにカットせざるを得なかった要素がたくさんあるのだ。

まず、ストレス無くオンラインで繋がるために、ゲームをいくつものチャプターに分けている。
これによってバイオハザードならではの「行って、戻って、お使い要素をこなして長大な建物を探索する」という要素が抜け落ちてしまっている。
もう一つ抜け落ちたのは「敵を倒しておくべきかどうかの選択」である。
昔のバイオハザードシリーズであるならば、同じ建物を何度も往復することがあった。
であるから、度々移動する通路の敵を倒しておき、移動に使わない通路の敵を残して弾薬の節約をすることもできた。
『バイオハザード5』は目の前の敵を倒さないと先に進めないので、敵を生かすか殺すかの選択をする意味がない。

ついでに言えば長い時間オンラインで繋がるのを避けるために、お馴染みの「面倒な謎解き」も無くなっている。

そして常に2人で行動するので、1人で行動することによる寂しさもなくなっている。
バイオハザードシリーズでは、主人公以外の生身の人間が殆ど登場しなかった。
ゾンビがウヨウヨと徘徊する広大な建物や市街地を、たった1人で心細く探索することがバイオハザードらしさの一つだった。
世紀末だぜ!でもこれのどこがバイオハザードなんだぜ!

COOPで得られたもの

これだけの犠牲を払ってCOOPを導入しているのだから、勇気がいる行為だったのではないだろうか。
ところが、『バイオハザード5』が捨て去ったものに対して得たものは少ない。

2人で協力しないと解決できないような困難を解けたときに、私たちはCOOPをやってよかったと感じる。
しかし、私たちはいつでもCOOPができるわけではない(時間の都合とか、精神状態の都合とか)。
そこでAI操作のパートナーも用意されている。
このとき「AIでは行えない操作」をゲームに盛り込んでしまうと、クリア不可能になってしまう恐れが出てくる。
『バイオハザード5』では解決方法として、AIにも任せられる程度の攻略法とかミッションしか盛り込んでいない。
つまりCOOPならではの面白さを味わえる場面が意図的に少なくなっているのだ。

一応、COOPの面白さを感じさせてくれる場面はある。
洞窟のステージで、片方のプレイヤーがライトを持ち、もう片方が敵を排除するシーンは実に面白い。
いくつかのボス戦では、2人でコンビネーションを考えて倒すと楽々倒せることもある。
他にも『バイオハザード5』自体が1人で倒しきれないほど多くの敵を相手にするため、山のような敵を捌く際に敵に詰められることが多い。
COOPだから、仮に敵に詰め寄られて攻撃されそうになっても、味方が助けてくれることもある。
武器や弾薬の融通をし合う戦略性もある。
まれに「あうんの呼吸」で遊びあえるプレイヤーと出会うと、それこそ寝食を忘れてゲームを続けられるぐらいだ。

とはいえ、これはオンラインで繋いだ場合の話である。
詳しくは後述するが、AIにちょっとした問題がある。
洞窟
洞窟のシーン。パートナーに照らしてもらって、攻略するのだ

COOPとは何だったのか

『バイオハザード5』のCOOPならではの魅力が少ないのも確かだ。
要は、物量が多い敵を捌くからこそCOOPが面白いのであって、COOPにしかなしえないミッションがないのだ。
ここが『バイオハザード5』のCOOPに大きく欠けている点である。
敵の量を少なくしてしまえば、『バイオハザード5』はパートナーなしに1人で遊べるのではないだろうか。

『バイオハザード5』のCOOPで評価できるのは、ネットワーク接続などの技術的な話題に尽きる。
オンラインで協力してプレイヤーを捜すのに全くストレスがない。
他人の部屋にいつでも入れて、いつでも出ることができる。

実は追加コンテンツにCOOPプレイの魅力が詰まったミッションがある。
それが本編をクリアした後に解除される「DESPERATE ESCAPE」だ。
これは『オルタナティブエディション』またはダウンロードコンテンツ(有料)で遊べる。
「DESPERATE ESCAPE」は2人で協力しながら進めなければならない場面が用意されているのだ。
上手く連携すると、実に素早くクリア出来るようになっていて、タイムアタックの面白さも出てくる。
ミッションの最後には山のように押し寄せてくる敵から、2人が力を合わせて逃げ延びるシーンもある。
「DESPERATE ESCAPE」をやると、「ゲーム本編がCOOP特化ではない」ことがアリアリと分かってしまう。

『バイオハザード5』のCOOPは面白い。
確かにそうだが、今後のゲームソフトを大きく変えるほどの変化はないだろう。
同時期にCOOP特化の『Left 4 Dead』とかが出てきたおかげで、かなり霞んでしまう。
DESPERATE ESCAPE
これが「DESPERATE ESCAPE」最後の場面。厳しい場面だ

ホラーゲームとしてはどうなのだろうか

バイオシリーズといえばホラーだが、『バイオハザード5』はホラーゲームではない。
もはや怖がらせることを放棄しているとしか思えない。

まず、敵が前作の『バイオハザード4』と殆ど同じである。
やはり既視感のある敵には驚きにくい。
新しい敵はニュルニュルとした触手が生えていて気持ち悪いだけだ。

敵が出てくる前から戦闘の音楽が鳴り響くので、敵の出現に驚かされることはない。
急に敵が押し寄せてくる場合も、ご丁寧にカットシーンが挿入されてから敵さんが出現する。
もはや一匹残らず倒してください、と言わんばかりの状態である。
敵に襲われる恐怖が無いのだ。

暗くて不気味な場所や、気持ち悪い雰囲気もない。
これではもうホラーゲームの看板を外した方が良い。
「寄生虫撲滅部隊」のゲームがどうしてホラーなのか。

追加コンテンツには、初代『バイオハザード』の恐怖感を再現した「LOST IN NIGHTMARES」がある。
「LOST IN NIGHTMARES」は雰囲気からして実に怖い。
薄暗くて何かが出てきそうな屋敷を探索するだけで背筋はゾクゾクしてくる。
私は『バイオハザード5』を全編「LOST IN NIGHTMARES」にしろとは言わない。
それでも、『バイオハザード5』があまりにもホラーを無視しているのには頭をかしげてしまう。
LOST IN NIGHTMARES
「LOST IN NIGHTMARES」の洋館

『バイオハザード5』と『バイオハザード4』の違い

ウリのCOOPは特に凄いわけではなく、恐怖感もない。
そんな『バイオハザード5』に残されたものはただ一つ、戦闘の楽しさだ。
これだけは前作『4』ほどの斬新さはないものの、爽快感にあふれている。

『バイオハザード5』と『4』の戦闘の違いは、「蹴り」や「ナイフ」といった接近攻撃が使えるかどうかである。
『4』は「蹴り」や「ナイフ」を使って敵を倒すことが重要だった。
つまり接近攻撃が強力だったのだ。
これは、敵に接近されたときはダメージを負うリスクと、大ダメージを与えるチャンスを持つ意味で、非常に優れていた。
ごく普通のシューターには見られない『バイオ4』ならではの面白さに繋がっていたと考えられる。
一方の『バイオハザード5』は「蹴り(パンチ)」や「ナイフ」が弱体化されている。
弱体化されたぶんはパートナーとの連携で補えと言う訳である。

『バイオハザード5』は遠くの敵を倒していくシーンが増えている。
敵も弓矢や、果てには銃を使うように奴まで現れ、なんだかよくあるシューターに近づいたような感じさえする
しかし、相変わらず弾薬が厳しくて無駄撃ちが許されないようなバランスは健在だ。
無駄に銃を撃つと弾薬が切れてしまう点が確保されている限り、『バイオハザード5』は平凡なシューターとは一線を画している。

無駄撃ちが許されないと言っても、攻略不能になってしまわないようにつくられている。
なぜなら、一度クリアしたチャプターを再度プレイして弾薬を溜めたり、武器の強化費用を貯めることができるのだ。
シビアに遊びたければ再プレイを禁止すればよく、楽にクリアしたいのなら再プレイを繰り返せば良い。
チャプター制になっているおかげで、クリア後のお楽しみである無限武器も取得しやすい。
総じてゲームが苦手な人にもやさしい作りだ。
やられる
ぐわあああああ

『バイオハザード5』の戦闘の面白さと、欠点

『バイオハザード5』の戦闘は三人称視点と言っても肩越しで敵の挙動が見えにくく、またキビキビと動けないことから、敵と自分との位置取りが重要だ。
しかも銃を構えたときに動けない。
敵との距離感を取ることが他のシューター以上に大きな意味を持つ。
動きながら銃を撃てるようになってしまっては、普通のTPSになってしまう。

そして、「溜め」と「発散」が組み合わさった面白さも忘れてはならない。
プレイヤーは腕を振り上げて圧迫感を出しながら迫ってくる敵にジリジリと狙いをつける。
頭に攻撃を加えたりショットガンを使えば、敵はしぶきをあげながら吹っ飛んでいく。
こうして敵を待ち構える「溜め」の場面と、爽快に敵を倒せる「発散」が『バイオハザード5』独特のシューティング感覚を生み出している。
攻撃を当てた感触が、類似のシューターと比べても極めて大きい。
以上の要素は正確に言うと『4』から継承されているだけなのだが、『バイオハザード5』は敵のモーションが増えてグラフィックも向上しているので、爽快感は上がっている。

だが、『バイオハザード5』には戦闘について大きな欠陥がある。
AI操作のパートナーが思った通りに動いてくれないのだ。
一部ではバカとも形容されているが、そもそも私は賢いAI操作のCPUに出会ったことがない。
これはもうAIの限界としか表現しようがない。
特に難易度をハード(ゲーム内ではベテラン表記)以上にすると、かなり役に立たなくなってしまう。
イージーやノーマルにあたる難易度ならば、AIのクセを見越した装備や道具を所持させておけば良い。
見て分かるとおり、キャラがでかい(クリスがごついというのもあるが・・・)

グラフィックスやストーリーについて

なんというか、グラフィックスやストーリーについても、過去からのイメージを大きく変えている。
主人公や重要キャラクターは顔や雰囲気が変化している。
とりわけバイオハザードシリーズで重要な意味合いを持つ敵(ウェスカーという名前)が、映画『マトリックス』ばりの超人になっていて、どうしても苦笑せざるを得なかった。
ストーリーは過去シリーズをやっていない人にはワケが分からず、大した深みもない。
とはいえ、グチャグチャになりすぎたバイオハザードの設定に一旦ケリをつけたことだけは評価したい。

最後に

『バイオハザード5』には中途半端という言葉がよく似合う。

オンライン環境がすべてのゲームで完備されていないとき、COOP特化にすることはできない。
1人で遊ぶことも考慮した結果、AIの限界をまざまざと見せつけてしまうようなゲームになっている。
優れた戦闘システムはすべて『4』から受け継いだものである。
かつてのシリーズを作り上げてきた要素を振り払って果敢に挑んだ「COOPの実装」は、不完全燃焼で終わってしまった。

「COOP実装」が上手くいっていれば比類ない名作となったのだろうが、結果は見ての通りである。
それでも、破綻させることなく良質なゲームとしてまとめ上げたところはさすがカプコンと言って良いだろう。
シャッガン最高

まとめ

良質だが際だって素晴らしいところもないゲーム。
シリーズ経験者にはそっぽを向かれ、TPSを期待しても当てが外れる。
オフラインで遊ぶのならば、低い難易度で遊んだほうが良い。
高い難易度は、信頼できる仲間を見つけてオンラインでやらなければらない。

73点

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