レビュー
アクションシューティングとしては面白い部類に入るが、それ以外を期待すると肩すかしを食らう
COOPで失われたもの
『バイオハザード5』はバイオシリーズの一つとしてみると、明らかに異質だ。
今まで培ってきたバイオハザードらしさが全くないからだ。
これではハイオハザードと名乗る意味が見いだせない。
別に「寄生虫撲滅作戦X」とかいう名前でも問題ない。
COOPを採用しているおかげでバイオハザードらしさがかなり失われている。
言い換えると、COOPを実現するためにカットせざるを得なかった要素がたくさんあるのだ。
まず、ストレス無くオンラインで繋がるために、ゲームをいくつものチャプターに分けている。
これによってバイオハザードならではの「行って、戻って、お使い要素をこなして長大な建物を探索する」という要素が抜け落ちてしまっている。
もう一つ抜け落ちたのは「敵を倒しておくべきかどうかの選択」である。
昔のバイオハザードシリーズであるならば、同じ建物を何度も往復することがあった。
であるから、度々移動する通路の敵を倒しておき、移動に使わない通路の敵を残して弾薬の節約をすることもできた。
『バイオハザード5』は目の前の敵を倒さないと先に進めないので、敵を生かすか殺すかの選択をする意味がない。
ついでに言えば長い時間オンラインで繋がるのを避けるために、お馴染みの「面倒な謎解き」も無くなっている。
そして常に2人で行動するので、1人で行動することによる寂しさもなくなっている。
バイオハザードシリーズでは、主人公以外の生身の人間が殆ど登場しなかった。
ゾンビがウヨウヨと徘徊する広大な建物や市街地を、たった1人で心細く探索することがバイオハザードらしさの一つだった。
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世紀末だぜ!でもこれのどこがバイオハザードなんだぜ!
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COOPで得られたもの
これだけの犠牲を払ってCOOPを導入しているのだから、勇気がいる行為だったのではないだろうか。
ところが、『バイオハザード5』が捨て去ったものに対して得たものは少ない。
2人で協力しないと解決できないような困難を解けたときに、私たちはCOOPをやってよかったと感じる。
しかし、私たちはいつでもCOOPができるわけではない(時間の都合とか、精神状態の都合とか)。
そこでAI操作のパートナーも用意されている。
このとき「AIでは行えない操作」をゲームに盛り込んでしまうと、クリア不可能になってしまう恐れが出てくる。
『バイオハザード5』では解決方法として、AIにも任せられる程度の攻略法とかミッションしか盛り込んでいない。
つまりCOOPならではの面白さを味わえる場面が意図的に少なくなっているのだ。
一応、COOPの面白さを感じさせてくれる場面はある。
洞窟のステージで、片方のプレイヤーがライトを持ち、もう片方が敵を排除するシーンは実に面白い。
いくつかのボス戦では、2人でコンビネーションを考えて倒すと楽々倒せることもある。
他にも『バイオハザード5』自体が1人で倒しきれないほど多くの敵を相手にするため、山のような敵を捌く際に敵に詰められることが多い。
COOPだから、仮に敵に詰め寄られて攻撃されそうになっても、味方が助けてくれることもある。
武器や弾薬の融通をし合う戦略性もある。
まれに「あうんの呼吸」で遊びあえるプレイヤーと出会うと、それこそ寝食を忘れてゲームを続けられるぐらいだ。
とはいえ、これはオンラインで繋いだ場合の話である。
詳しくは後述するが、AIにちょっとした問題がある。
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洞窟のシーン。パートナーに照らしてもらって、攻略するのだ
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COOPとは何だったのか
『バイオハザード5』のCOOPならではの魅力が少ないのも確かだ。
要は、物量が多い敵を捌くからこそCOOPが面白いのであって、COOPにしかなしえないミッションがないのだ。
ここが『バイオハザード5』のCOOPに大きく欠けている点である。
敵の量を少なくしてしまえば、『バイオハザード5』はパートナーなしに1人で遊べるのではないだろうか。
『バイオハザード5』のCOOPで評価できるのは、ネットワーク接続などの技術的な話題に尽きる。
オンラインで協力してプレイヤーを捜すのに全くストレスがない。
他人の部屋にいつでも入れて、いつでも出ることができる。
実は追加コンテンツにCOOPプレイの魅力が詰まったミッションがある。
それが本編をクリアした後に解除される「DESPERATE ESCAPE」だ。
これは『オルタナティブエディション』またはダウンロードコンテンツ(有料)で遊べる。
「DESPERATE ESCAPE」は2人で協力しながら進めなければならない場面が用意されているのだ。
上手く連携すると、実に素早くクリア出来るようになっていて、タイムアタックの面白さも出てくる。
ミッションの最後には山のように押し寄せてくる敵から、2人が力を合わせて逃げ延びるシーンもある。
「DESPERATE ESCAPE」をやると、「ゲーム本編がCOOP特化ではない」ことがアリアリと分かってしまう。
『バイオハザード5』のCOOPは面白い。
確かにそうだが、今後のゲームソフトを大きく変えるほどの変化はないだろう。
同時期にCOOP特化の『Left 4 Dead』とかが出てきたおかげで、かなり霞んでしまう。
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これが「DESPERATE ESCAPE」最後の場面。厳しい場面だ
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ホラーゲームとしてはどうなのだろうか
バイオシリーズといえばホラーだが、『バイオハザード5』はホラーゲームではない。
もはや怖がらせることを放棄しているとしか思えない。
まず、敵が前作の『バイオハザード4』と殆ど同じである。
やはり既視感のある敵には驚きにくい。
新しい敵はニュルニュルとした触手が生えていて気持ち悪いだけだ。
敵が出てくる前から戦闘の音楽が鳴り響くので、敵の出現に驚かされることはない。
急に敵が押し寄せてくる場合も、ご丁寧にカットシーンが挿入されてから敵さんが出現する。
もはや一匹残らず倒してください、と言わんばかりの状態である。
敵に襲われる恐怖が無いのだ。
暗くて不気味な場所や、気持ち悪い雰囲気もない。
これではもうホラーゲームの看板を外した方が良い。
「寄生虫撲滅部隊」のゲームがどうしてホラーなのか。
追加コンテンツには、初代『バイオハザード』の恐怖感を再現した「LOST IN NIGHTMARES」がある。
「LOST IN NIGHTMARES」は雰囲気からして実に怖い。
薄暗くて何かが出てきそうな屋敷を探索するだけで背筋はゾクゾクしてくる。
私は『バイオハザード5』を全編「LOST IN NIGHTMARES」にしろとは言わない。
それでも、『バイオハザード5』があまりにもホラーを無視しているのには頭をかしげてしまう。
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「LOST IN NIGHTMARES」の洋館
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『バイオハザード5』と『バイオハザード4』の違い
ウリのCOOPは特に凄いわけではなく、恐怖感もない。
そんな『バイオハザード5』に残されたものはただ一つ、戦闘の楽しさだ。
これだけは前作『4』ほどの斬新さはないものの、爽快感にあふれている。
『バイオハザード5』と『4』の戦闘の違いは、「蹴り」や「ナイフ」といった接近攻撃が使えるかどうかである。
『4』は「蹴り」や「ナイフ」を使って敵を倒すことが重要だった。
つまり接近攻撃が強力だったのだ。
これは、敵に接近されたときはダメージを負うリスクと、大ダメージを与えるチャンスを持つ意味で、非常に優れていた。
ごく普通のシューターには見られない『バイオ4』ならではの面白さに繋がっていたと考えられる。
一方の『バイオハザード5』は「蹴り(パンチ)」や「ナイフ」が弱体化されている。
弱体化されたぶんはパートナーとの連携で補えと言う訳である。
『バイオハザード5』は遠くの敵を倒していくシーンが増えている。
敵も弓矢や、果てには銃を使うように奴まで現れ、なんだか
よくあるシューターに近づいたような感じさえする。
しかし、
相変わらず弾薬が厳しくて無駄撃ちが許されないようなバランスは健在だ。
無駄に銃を撃つと弾薬が切れてしまう点が確保されている限り、『バイオハザード5』は平凡なシューターとは一線を画している。
無駄撃ちが許されないと言っても、攻略不能になってしまわないようにつくられている。
なぜなら、一度クリアしたチャプターを再度プレイして弾薬を溜めたり、武器の強化費用を貯めることができるのだ。
シビアに遊びたければ再プレイを禁止すればよく、楽にクリアしたいのなら再プレイを繰り返せば良い。
チャプター制になっているおかげで、クリア後のお楽しみである無限武器も取得しやすい。
総じてゲームが苦手な人にもやさしい作りだ。
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ぐわあああああ
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『バイオハザード5』の戦闘の面白さと、欠点
『バイオハザード5』の戦闘は三人称視点と言っても肩越しで敵の挙動が見えにくく、またキビキビと動けないことから、敵と自分との位置取りが重要だ。
しかも銃を構えたときに動けない。
敵との距離感を取ることが他のシューター以上に大きな意味を持つ。
動きながら銃を撃てるようになってしまっては、普通のTPSになってしまう。
そして、「溜め」と「発散」が組み合わさった面白さも忘れてはならない。
プレイヤーは腕を振り上げて圧迫感を出しながら迫ってくる敵にジリジリと狙いをつける。
頭に攻撃を加えたりショットガンを使えば、敵はしぶきをあげながら吹っ飛んでいく。
こうして敵を待ち構える「溜め」の場面と、爽快に敵を倒せる「発散」が『バイオハザード5』独特のシューティング感覚を生み出している。
攻撃を当てた感触が、類似のシューターと比べても極めて大きい。
以上の要素は正確に言うと『4』から継承されているだけなのだが、『バイオハザード5』は敵のモーションが増えてグラフィックも向上しているので、爽快感は上がっている。
だが、『バイオハザード5』には戦闘について大きな欠陥がある。
AI操作のパートナーが思った通りに動いてくれないのだ。
一部ではバカとも形容されているが、そもそも私は賢いAI操作のCPUに出会ったことがない。
これはもうAIの限界としか表現しようがない。
特に難易度をハード(ゲーム内ではベテラン表記)以上にすると、かなり役に立たなくなってしまう。
イージーやノーマルにあたる難易度ならば、AIのクセを見越した装備や道具を所持させておけば良い。
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見て分かるとおり、キャラがでかい(クリスがごついというのもあるが・・・)
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グラフィックスやストーリーについて
なんというか、
グラフィックスやストーリーについても、過去からのイメージを大きく変えている。
主人公や重要キャラクターは顔や雰囲気が変化している。
とりわけバイオハザードシリーズで重要な意味合いを持つ敵(ウェスカーという名前)が、映画『マトリックス』ばりの超人になっていて、どうしても苦笑せざるを得なかった。
ストーリーは過去シリーズをやっていない人にはワケが分からず、大した深みもない。
とはいえ、グチャグチャになりすぎたバイオハザードの設定に一旦ケリをつけたことだけは評価したい。
最後に
『バイオハザード5』には中途半端という言葉がよく似合う。
オンライン環境がすべてのゲームで完備されていないとき、COOP特化にすることはできない。
1人で遊ぶことも考慮した結果、AIの限界をまざまざと見せつけてしまうようなゲームになっている。
優れた戦闘システムはすべて『4』から受け継いだものである。
かつてのシリーズを作り上げてきた要素を振り払って果敢に挑んだ「COOPの実装」は、不完全燃焼で終わってしまった。
「COOP実装」が上手くいっていれば比類ない名作となったのだろうが、結果は見ての通りである。
それでも、破綻させることなく良質なゲームとしてまとめ上げたところはさすがカプコンと言って良いだろう。
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シャッガン最高
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