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『Wanted:Weapons of Fate(ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト)』


ジャンル:TPS
機種:PS3
発売年:2009年
開発会社:Grin

公式サイト
2012年12月レビュー

紹介

『Wanted:Weapons of Fate(ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト)』は2009年に発売されたビデオゲームである。
ジャンルは三人称視点のタクティカルシューターである。

開発はGrin、販売は海外ではUniversal Studiosが販売、日本ではスパイクがローカライズと販売をした。
Grinはスウェーデンに本社のあるメーカーだったが、本作を世に出した後倒産した。

パブリッシャーのUniversal Studiosは映画で有名な会社だ。
本作『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』は2008年に公開された映画『ウォンテッド』を原作としている
であるから登場人物のモデリングはもちろん、声優もなるべく映画と同じキャスティングをしている。
ストーリーは映画終了後数時間経ってから始まるという設定だ。
映画本編やコミックを読んだ人にはニヤリとする要素が含まれている。
三人称視点のシューターだ!
『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』の特徴はカバーアクション主体のタクティカルシューターであることと、「銃弾を曲げ」たり、「バレットタイムモードを発動」することができる点に集約される。
カバー中は横から回り込まれない限り、敵の攻撃を食らうことはなくなる。
よって壁や障害物に身を隠しながら敵の動向をうかがい、隙をみて攻撃することが重要だ。
映画で主人公が使えるようになった「銃弾を曲げる能力」はゲーム中でも使える。
物陰に隠れた敵をロックオンし、発射ボタンをおすことで敵に攻撃を当てられる。
もうひとつの特徴は「バレットタイムモード」である。
要は一時的にスローモーションにし、一方的に敵の銃弾を浴びせ続けられるシステムだ。
ただし「銃弾を曲げる能力」と「バレットタイムモード」は敵を倒したときに得られるアドレナリンを消費しなければ使えない。

映画原作ということもあってシングルプレイのみ、かつクリアまで5時間かからないほど短い。
また原作映画を見なくても楽しめないことはないが、やはり版権ものは原作を知っていた方が良いと思う。
敵をつかまえて盾にする

レビュー

こぢんまりとしているが、理屈にあったシステムを搭載したシューター

「銃弾を曲げるシステム」のよさ

『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』はかなりこぢんまりとしたゲームではあるが、ところどころにスパイスが効いている。

一つ目のスパイスが「銃弾を曲げるシステム」である。
「銃弾を曲げるシステム」はカバーアクション主体のTPSと極めて相性がよい。
なぜなら壁や障害物の裏に隠れた敵を問答無用で攻撃できるからである。
カバーアクションができるゲームでは、敵が身体を出してくる瞬間を狙い撃つだけのゲームになってしまいがちである。
しかし隠れている敵をあぶり出せるようになるとしたら、こちら側に主導権が移り、ゲームスピードが格段に上がる。
「曲げた銃弾」が敵に当たると、敵は身体を障害物から離し、一時的に無防備になる。
そこをプレイヤーは狙い撃てるようになっている
のだ。
カバーアクションの欠点を見事に面白さへと組み替えたシステムだと言える。
銃弾を曲げて敵を狙え!

「バレットタイムモード」の存在

二つ目のスパイスが「バレットタイムモード」である。
数多くのゲームで搭載されているので、改めて『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』が斬新だとは言わない。
しかし、なぜバレットタイムモードを搭載するのか?について答えを出してる点は指摘しておきたい。

バレットタイムモードとは単に敵を倒しやすくするためにスローモーションにさせているのではない。
例えば『マックス ペイン』で導入されていたように、スローモーションになったときの画面効果によるカッコイイ演出を狙ったものでなくてはならないのだ。
『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』でもバレットタイム発動中は画面に大きくエフェクトがかかり、またキャラクターも専用のモーションで動く。
まさに映画の主人公になったかのような気分で敵を倒せるわけだ。

実はこのゲームには使える銃がピストルひとつしかない。
そのぶん「銃弾を曲げるシステム」と「バレットタイムモード」を駆使して戦うようになっている。
二つのシステムは敵を倒して手に入るアドレナリンを消費して発動するため、使い分ける戦略性もある。
敵の出方についてもどちらを選ばせるかについて考えさせるようなデザインになっている。
飛び出して敵を始末しよう!

こだわりの見え隠れするストーリー、下手な説明

ストーリーは主人公と主人公の父を巡る物語である。
主人公出生の謎をからませつつ、二人の主人公を交互にあやつりながら物語は進んでいく。
単調にならないように配慮が成されている。
なのだが、やや説明不足である。
場面の切り替わりが分かりづらく、何が起こっているのか理解しにくい場面がいくらかある。

起伏のないゲームパート

それよりも問題なのは起伏がないゲームパートだろう。
敵がゾロゾロと目の前に出てくるだけなので、敵を倒すときの緊張感がない。
横から出てきたり、意表をつく出方をしないのだ。
もちろん「銃弾を曲げるシステム」と「バレットタイムモード」を使う戦略性はある。
しかし敵の出方が工夫されていないのとは別の問題だ。
父と子のストーリーだ

いびつな難易度

そして難易度のいびつさも『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』の問題だ。
三つ用意されている難易度のうち、ほどよく難しくほどよく簡単な難易度がない。
イージーとノーマルの間にもうひとつ難易度選択を設けるべきであった。
まったく死ぬ気配がないイージーと、数発食らえば死ぬノーマルには差がありすぎる
加えて、難易度ノーマルだとあまりにも固定砲台のシーンが難しすぎる。
これはもう調整不足としか言いようがない。
独創性のあるシステム以外の部分が大きく足を引っ張ってしまっているのだ。
カバーシューターなら敵の横をつけるようにしてもよかったのでは

映画原作のゲームとして

原作のストーリーを尊重した展開はもちろん、相当レベルの高いグラフィックによる臨場感は申し分ない。
しかしよくみると顔のモデリングにアラがあったり、時折挿入されるムービーのビットレートが低いのが気になる。
ゲーム部分は原作にあった「銃弾をまげる能力」をタクティカルシューターと巧みに混ぜている。
「バレットタイムモード」の存在は映画のような臨場感と、二つの能力を使いこなす戦略性を生み出している。
ただし、いつまでたっても現れる同じような展開といびつな難易度が欠点である。

版権もののゲームというのは一線級タイトルと比べると、やはり質が悪いものだ。
原作をやった人にしか買われないから開発費を投じないのだろうし、原作ファンなら出来が悪かろうとも購入してしまうという販売側のもくろみもあるのだろう。
そのなかでいかに遊ぶに耐えるゲームをつくるのかが開発側の腕の見せ所である。
『ウォンテッド:ウェポンズ オブ フェイト』は荒削りな面があるとはいえ、カバーシューターにありがちな欠点を補うシステムを導入している。
開発を行ったGrinのセンスが光るゲームだ。
グラフィックはなかなかのもの

まとめ

典型的な映画ゲームであり、ファン向けアイテムといえるだろう。
しかし「銃弾を曲げる」システムはモグラ叩きのようなカバーシューターへの答えを導き出している。

53点

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