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Malicious(マリシアス)


ジャンル:アクション
機種:PS3
発売年:2010年
開発会社:アルヴィオン

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2010年11月 最終更新日2011年3月

紹介

『Malicious(マリシアス)』はPlayStation Networkで販売されているアクションゲームである。
開発・販売ともにアルヴィオン。
かつて『サーカディア』や『チェインダイブ』を作った会社である。
少し話はそれるが、アルヴィオンの本社は大阪府吹田市にある。
吹田といえばSNK(現SNKプレイモア)を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。

アルヴィオンは開発会社として実績を積んできた。
2009年からは販売業務も行うようになり、『マリシアス』もその流れのもとに販売されている。
そして『マリシアス』は価格が800円のダウンロードタイトルでありながら、高い品質が評判となっている。
メディアでの取り上げられ方やユーザーからの反響を考えると、売り上げは悪くなさそうである。
主人公
主人公は少年の姿と少女の姿を選べる

ゲームの流れはきわめて簡単だ。
ボスが待ち受けるステージを選択をしてクリアすることを繰り返す。
ロックマン方式と言えば分かりやすいかもしれない。
しかもマリシアスはステージ選択をした瞬間からボスとの戦いが始まる。
ぜんぶで5つのボス(ステージ)が用意されている。
驚くほど簡素だ。

ボスは短期間で倒せる方法が存在するので、繰り返し遊んで攻略法を練っていくことが正しい遊び方と言える。
ただ、難易度は結構高い。
※2011年1月にイージーモードのアップデートがされました。レビュー、紹介ともにイージーモードがない状態での話です。
さっさとボスを倒すには「オーラ」というものを溜めなければならない。
「オーラ」はボスの周りにいる雑魚敵を倒したり、ボスの攻撃を当たりそうな瞬間にガード(ジャストガード)することでたまっていく。
しかし溜めること自体が意外と難しい。
ボスもゲームの終盤になると攻撃力・耐久力が上がっていて、かなり手ごわい。
またキャラクター操作がややこしくて覚えることも多い。

操作方法が若干分かりづらいこともあって、実はゲーマー向けといえるだろう。
剣ボス
このボスを後回しにすると面倒きわまりない

レビュー

800円をどのように解釈するか、が重要

800円なりと見るか、800円以上とみるか

『マリシアス』は800円で販売されている。
「800円なり」と解釈するのか、それとも「800円なのに」と考えるかは人によって違う。
見た目は800円以上、中身はやや難ありというのが私の意見だ。

グラフィックの良さはスクリーンショットを見てもらえれば分かるだろう。
筆で描いたような見た目のキャラクターや世界が映っている。
リアルでスゴイとかではなく、絵づくりが独特なのである。
映像を見れば「マリシアスだ」と分かるような画像がそこにある。

落ち着いていて幻想的な音楽が流れるトレーラームービーも悪くない。
そして宣伝で披露される流麗な戦いと操作も、ユーザーにとって魅力的だ。
「つかみ」は数千円のパッケージゲームと比べても見劣りしない。
いや、800円という値段を考えると、実に素晴らしい。
ビーム
写実的ではないが味のあるグラフィックだ

操作の難しさ

ゲームを開始したときの感触も気持ちが良い。
操作に対する反応は即時で、余計な慣性は働いていない。
思い通りに動かせそうな感じを抱く。

ところがボスと戦うために実際の戦闘を行うと、それまでの期待はすべて吹き飛んでしまう。
操作が分かりにくいのだ。
上手く操作できない感覚はかなりもどかしい。
しかもボスはかなり堅い。
決定的な攻略法を見つけるまでは、いたずらにプレイ時間だけが過ぎていく。

操作の難しさは主に二つの理由がある。
一つは、2ボタン同時押しや組み合わせが多様なアクションをするために必要である点。
つまり暴発や失敗が起きやすく、操作を体系化しにくいために頭の中で混乱しやすい。
二つ目はボタンの位置が悪い。
ここが最大の問題となっている。
例えば、左のスティックでキャラクターを動かしながら、左の方向キー(十字)を入力して攻撃方法を選択しなければならない。
右手も親指が常にフル稼働状態である。
自由自在に操るためには、ずいぶん長いこと練習が必要だ。
思い通りに動かすのは意外と難しい。
難しい
倒すのに時間がかかるボスもいる

門内払い

ボス戦(というかステージだが)は初回プレイであれば20分は軽くかかる。
これは操作方法の難しさに加えて、正しい攻略法を踏まえなければ時間がかかるようなバランスになっているのが原因だ。
つまり、初回プレイは時間がかかりすぎる。
慣れてくると短時間で終わらせられるように「は」なる。

以上の二つの事柄によって、気軽に遊ぶための関門は狭くなっている。
『マリシアス』のボリュームは少なく、短い。
しかし、それはやり慣れた人からの視点から見た場合の話である。
初めて触れる人がどのように反応するかを考えていない。
慣れていないうちのプレイ時間はかなり結構長くなってしまう。
つまり開発のコンセプトである「気軽に遊ぶ」ことは、やり込んだ人しか行えないのである。
ユーザーに買ってもらうまでの道のりは平坦だが、ユーザーがプレイを続けるための道は険しくなっている。
「門前払い」ではなく、「門内払い」である。

また、攻略法もやや唐突なものが多い。
倒し方がほぼ決まっているボスなどがいて、簡単な倒し方を知らないプレイヤーは何をすればいいのかをあれこれ試さなくてはいけなくなっている。
ヒントのようなものはない。
要するに『マリシアス』というのはぶっきらぼうなのである。
槍
槍攻撃

操作に慣れるゲーム

このあたりが800円の限界だと言えるだろう。
フルプライスならば、操作を簡便にしてささやかなヒントをゲームに盛り込むための調整時間もあったに違いない。

アーケードゲームっぽいと言われる。
しかし、ここまで取っつきにくいものがアーケードで発売された場合、間違いなく淘汰される。
見た目が良いだけでは長く遊んでもらえないのだ。
3分1プレイ100円で判断される厳しい世界がアーケードゲームだ。

長く遊んでもらうためには、長時間プレイした後に得られる何かしらの楽しみを提示することが必要不可欠である。
端的に言うと、『マリシアス』は操作に習熟することが最大の報奨になっている。
開発者がそれを目指したとかは関係なく、いま私たちが買うことができる『マリシアス』はそのような構造なのだ。
攻略方法さえ知ってしまえばある程度のスコアでクリアすることが出来る。
ボスは意外と単調に動き、一部のボスは無駄に強い。
一回クリアした後繰り返しても特別楽しいというわけではない。
ほぼ自分にロックオンされる敵の攻撃にあわせて、こちらが最適な行動をする必要はない。
どこにいようとガードさえしていれば事足りる。
盾ボス
剣攻撃はスキが多いけれど、あたれば強い

ぶっきらぼうな『マリシアス』

ではこの「操作をマスターする」ゲームとはどのようなものなのだろうか。
簡単に言うとマスターすること自体が面白いゲームのことである。
特にシミュレーター系のゲームは、現実をトレースするという目的があるので、操作じたいに楽しさを見いだす人がいる。
(電車、飛行機、車を想像してみよう。ファンやマニアが本物の代替としてゲームを渇望するわけだ)
一方、『マリシアス』は操作をマスターするための理由がない。
本当に優れたビデオゲームというのは、簡単な操作でその先に未知の世界が待っているはずだ。
『マリシアス』は操作が複雑でランダムな要素が混ぜ合わさり、習熟に時間を要する。
そのようなものが一見すると奥深く見えるのは当たり前である。
しかし逆説的だが、やれることが少ないときにこそ人は道筋を見つけ、創造力を発揮できる。

「昔ふう」の調整と言われる。
だが、『マリシアス』は無愛想だ。
よくない意味で「昔ふう」である。
皮肉なことに中古に出せないところが、我々が小さい頃にさほど面白くないファミコンソフトを買ってもらったときの思い出と重なっている。
買う前と買った後の落差。
やるしかないから遊んでいたら、そこそこ面白く感じられるようになってしまう。
800円で出すのはやはり無理があったのではないかと考えさせてくれる。
オーラ
オーラを使ってパワーアップ!

まとめ

グラフィックよし、音楽よし、操作の基本はよし。
体験版を入手して遊ぶ限りは素晴らしいゲームなのだ。
もちろん体験版を作り込むことが悪いと言っているのではない。
体験版の先に、操作を覚え込むための退屈な期間が鎮座している。
その後はゴリゴリ攻撃するだけ。

64点

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