レビュー
携帯アプリ並。500円以下
どれくらいダメか
『ラストリベリオン』はまごうことなきクソゲーである。
私は『ラストリベリオン』をやっていてもさほど呆れはしなかった。
投げ売りされていたからだとか、ダメな意味での話題作だったからだとかではない。
携帯電話で購入する500円アプリとさほど変らないようなクオリティだったからである。
ただし、買って損したと思わせてしまうゲームと同程度の品質だ。
出来の良いアプリならば500円以上の価値はある。
なんというか『ラストリベリオン』は話題に事欠かない。
なぜか英語音声のみであることや、バランスが崩壊した戦闘、不親切極まりないコマンドなど、はたから見るだけでその驚くべきポテンシャルの低さが分かる。
グラフィックがPS2レベルであることは、本当のクソゲーへの序の口なのである。
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フィールドで魔法を使うことも出来ます
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ゲームを起動して驚くこと
ゲームを開始すると30秒はあろうかという長い長いロードがある。
マップ切り替え時に毎度毎度長ったらしいロードが挿入されるので、移動するのが面倒になってくる。
とはいえ戦闘前のロード時間は皆無である。
ここは評価したい。
少し補足しておくと、『ラストリベリオン』は長い長いダンジョンがいくつも繋がっているような構造のマップで作られている。
フィールドマップと言ってもアクションゲームで言うステージみたいなもんだが、どこも広く作られているため、実際は頻繁に複数のマップを行き来して長いロード時間に苦しめられることはほとんどない。
ただ、終盤にややこしいマップ巡りがあり、そこで嫌と言うほどロード画面をみるハメになる。
そして『ラストリベリオン』の本編が始まるとプレイヤーは英語音声に驚く。
海外製のローカライズならまだしも、日本で作られたゲームなのに英語音声日本語字幕なのである。
なぜ日本製のRPGで英語を楽しまなければならないのか。
しかもゲーム内のBGMも声もボリュームがとんでもなく低い。
まともに聞きたいのなら一々設定をやり直す必要がある。
『ラストリベリオン』はバグが少ないので、テストプレイをやったことはやったのだと思うが、こうした初歩的なミスを犯している。
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英語音声はあり得ないです
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みずぼらしい演出、ストーリー
ポリゴンで表現されたキャラクターはPS2に毛が生えた程度である。
ヒロインのモデリングはぜんぜん可愛くないし、ヒーローもまったくかっこよくない。
なお、登場人物同士の会話では2D立ち絵が多く使われている。
2D絵についてはポリゴンにはない良さがあるので、それ自体が悪いわけではない。
なぜなら絵であってもドットであっても、3Dポリゴンであっても、キャラクターの表情が見えるように表現することには変わりないからである。
言い換えれば、ボディランゲージのようなものがなければゲームのストーリーとして失格なのである。
『ラストリベリオン』は絵のパターンがかなり少ない。
たくさんの表情や動きを表現した絵がなくてかなり寂しいのだ。
せっかくビデオゲームにするのだから、賑やかな絵づくりをしなければならない。
言葉のやりとりが見たければ小説でも読んでいればいい。
しかも英語音声によって演技を楽しむと言うことも制限されている。
せっかくストーリーのあらすじがメニューからみれるのに台無しだ。
ゲーム中に話を忘れてしまった人がストーリーを思い出すため、こういった過去を振り返る手段が用意されているのは良いことであるのに、肝心のストーリーが英語音声日本語字幕なのは残念だ。
英語に関することをもう一つ。
『ラストリベリオン』には広くて迷いやすいマップの案内用に、ミニミップが用意されている。
それはすばらしいことなのだが、
なぜかミニマップの地名説明が英語小さく書かれているため、次に向かうべき地点が分かりにくい。
加えて、マップがかなり立体的な構造をしているせいでミニマップの使い勝手が恐ろしく悪いという欠点もある。
もう少し平面的なフィールドを作らないと迷いやすいと思う。
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ミニマップを見てほしい。英語である
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世界の狭さ
RPGと言えばストーリーと戦闘が大きく評価されるジャンルだ。
『ラストリベリオン』はどちらも誉めるところがない。
重厚長大路線に陥っているRPGの皮肉や反逆(英語でリベリオン)として作られたかは分からないが、ラストリベリオンはクリアまでに10時間程度である。
短い時間であってもあっと驚く話や壮大な物語を作ることは出来るため、時間の短さはダメなストーリーの言い訳にはならない。
『ラストリベリオン』のストーリーには色々と問題が多い。
なかでも疑問を覚えるのが登場人物の少なさである。
『ラストリベリオン』はRPGにありがちな世界を救うというエンディングが待っている。
世界を救った感覚をプレイヤーが実感するには、ゲームの世界の大きさを実感させる必要がある。
それか狭くても問題ないような世界、例えば世の中に10人しかいなくなった未来とかを用意しなければならない。
ところが『ラストリベリオン』では少ない人数で、大規模な戦争をを行っているかのような台詞が飛び交う。
主人公が住んでいた城には人物が一人しかいないし、街には人が一人もいない。
既に死んでしまった人が幽霊のような状態になって浮遊してはいるが、根本的に数が少ない。
敵モンスターもほとんどが色違いか大きさ違いで構成されている。
言葉で大規模な戦争を意識させていても、ゲームの中で世界の広さを全く感じさせていないのである。
ネタバレになってしまうので詳しくは述べないが、ラストのどんでん返しが私が高校生の頃妄想していたRPGツクール製ゲームと同じである。
似たような話はラノベや漫画にありそうなのでツクールレベルであるとはさすがに思わない(というか私のゲームはただのパクリだった)。
ツクール製RPGにありがちな失敗がある。
ラスト付近で「いままでクリアしたマップを巡り、キーアイテムを探し出す」という無駄な時間稼ぎ要素である。
もちろん『ラストリベリオン』は期待を裏切らない。
最後の最後にマップ巡りがプレイヤーを待っている。
さんざんツクールで「やるな」と言われているのに、商用ゲームでやるのか。
加えて、マップ巡りでは厄介なことに、敵から逃れられないという問題がある。
シンボルエンカウントにもかかわらず、敵にいったん見つかるとプレイヤーの走る早さ以上の速度で、敵が地の果てまで追いかけてくる。
また接触面積も異常に広い。
戦闘では敵を一発で殺す手段や「逃げるコマンド」はあるのだが、相当レベルが高くなっていないと効果が出ない。
マップ巡りはイライラさせるだけの要素にしかなっていないのだ。
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まともな人間はこの方しかおりません
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戦闘で評価できるのは「概念」である
戦闘は欠陥のカタマリだ。
なぜならゲームを開始してまもなくバランスが完全に崩壊し、攻撃(物理攻撃)をするのが最も効率がよくなるのだ。
つまり決定ボタン押して物理攻撃をするだけの戦闘が続く。
『ラストリベリオン』の戦闘には様々なパラメーターやシステムが組み合わせてある。
それら一つずつが密接に絡まっているのならば抜群のバランスを持ち合わせた戦闘になっていたかもしれない。
ところが実際はうまい着地点が見つかっていない。
もしかすると開発はその問題を解決するために、物理攻撃の威力を底上げしたのではないだろうか。
以下、『ラストリベリオン』の戦闘システムを詳しく見ていく。
これから説明する「
魔吸」と「
封魂」の概念は理にかなったシステムと言える。
戦闘において重要なパラメータはHP、MP、CP(チェインポイント、詳しくは後述)である。
ラストリベリオンは戦闘終了後にHPやMPといった数値が回復することはなく、おまけに「宿屋」が存在しないという特徴がある。
HPやMPはフィールドで放置していれば徐々に回復はするが、かなりゆっくりとした速度なので多用できるほど効率は良くない。
そこで使うのが「
魔吸」と「
封魂」というコマンドだ。
「
魔吸」は敵からMPを吸い取り、「
封魂」はHPを吸収する。
また、「
魔吸」は何度でも使えるが「
封魂」に成功すると敵は消滅する。
戦闘中に敵を戦闘不能状態に追い込むと「
魔吸」「
封魂」は100パーセント成功する。
通常の状態ならば、レベル差が高くないと失敗する。
ここで戦闘不能状態の敵を放置すると数ターン後に強力な状態となって復活するのがキモである。
つまり、MPを回復するためには「魔吸」を繰り返すことが必要となっているが、欲を出して使いすぎると敵が強くなって復活し、こちらがピンチになるのである。
敵によって復活のタイミングは違うので、ほどよいところで「封魂」を使って切り上げなければならない。
HPは魔法によっても回復できるため、「
魔吸」がカギを握っていると言えるだろう。
この「魔吸」「封魂」システムは評価できる概念である。
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戦闘シーン
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概念は評価できても、かみ合っていない
『ラストリベリオン』の問題はここにCP(チェインポイント)が組み合わさることで生まれる。
CPは戦闘中に行動をするために必要なコストの概念である。
例えば魔法は全て1で防御は0、通常打撃攻撃はそれらに比べて5、10といった大きな数値が必要だ。
ターン終了後にいくらか回復するのだが、それでもコストが高い打撃攻撃を常に使い続けるというのは不可能である。
したがって魔法を適度に組み合わせて強力な物理攻撃ばかりしないように、CPを節約する必要がある。
ただし、『ラストリベリオン』では打撃攻撃をあてた敵にのみ魔法がかかるという仕様になっている。
本来なら魔法と打撃をコストの天秤にかけて使いこなすゲームだったに違いない。
魔法は打撃ほど強くはないが、CPコストは低くてすむ。
また戦闘が長引けば回復魔法によってMPを大量に消費するため、攻撃魔法も使いどころを考えなければならなかった。
そして、『ラストリベリオン』は戦闘終了後にパラメーターが回復しない。
下手すれば消耗した状態でフィールドに放り出される。
そうなればかなり長い時間放置をして体力が回復するのを待たなければならなくなる。
だから、戦闘中にも「
魔吸」「
封魂」を駆使して戦闘後のことを考えて行動しなければならない。
ところが『ラストリベリオン』では、「魔吸」「封魂」によって回復する数値が少なく、敵が堅すぎるため、戦闘がややこしくなってしまう。
敵はHPが非常に高く設定されているので適正レベルだと長期戦になりがちである。
それゆえに毎ターン毎ターン経営シミュレーションをしているかのような、込み入ったコスト概念をやらなければならない。
長い時間をコストのやりくりに費やされるゲームははっきり言って苦痛だ。
魔法も打撃攻撃も足かせとなるコストによってがんじがらめにされている。
これでは行動を起こそうにも起こせない要素だらけである。
しかも戦闘が終わったら後に控える次の戦闘を見越して行動しなければならないため、考えることが多すぎて頭がパンクしそうになる。
一言で『ラストリベリオン』の戦闘を説明するとすれば、「行動のコストをやりくりするRPG」である。
しかし煩雑になりがちなため、
仮にうまくバランスがとれていてもややこしくてストレスが多い戦闘になっていたはずだ。
そこで解決法として打撃攻撃を最強にしてしまったのである。
中盤以降、コストを左右していたCPのバランスをすべて無駄にするための魔法が手に入る。
この魔法を使えば打撃攻撃は使い放題だ。
CPのコストを考える必要をなくす魔法さえあれば、面倒なコスト計算からおさらばできる。
おさらばした後は最強の攻撃である「打撃」をすればいい。
上記太字になった部分が開発チームの考えていたことなのではないだろうか。
面倒なコスト概念からおさらばしてひたすら物理攻撃をするRPG。
つまり『ラストリベリオン』は「物理で殴ればいい」RPGなのである。
一応、CPはフィールドの点在する緑色の柱を、攻撃ボタンで叩くことでも回復できる。
だが、わざわざ回復する必要はあるのかと問いたい。
戦闘終了後に自動的に回復する(または一定値になる)ように調整すれば済む話ではないだろうか。
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こうして物理で殴ればいい。画像は日本一ソフトウェアおなじみのキャラクター
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盛りだくさんだが意味のないシステム
敵は部位が設定されている。
部位を正確な順番で攻撃すると敵へのダメージが多少大きくなる。
初めて出会う敵は正解の攻撃方法が分からないため、どうしても「しらみつぶし」の部位攻撃になりがちだ。
敵の部位を順番に攻撃するような「しらみつぶし」には戦略性も何もない。
こんあのは面白くも何ともない。
見たことのない敵と出くわしたら一つ一つ部位をずらして攻撃することに戦略性も工夫のしがいは皆無だ。
敵ごとには逆鱗が設定されている。
適切な順番以外で逆鱗へ攻撃すると強力な反撃を受ける。
慣れてくると分かるのだが、適切な順番で敵をたたいても叩かなくてもダメージの差は数パーセントである。
したがって逆鱗を避けるように攻撃すると戦いやすくなる。
こうなってしまっては逆鱗の意味がなくなってしまう。
他にも意味があるのかどうか迷う要素が多い。
まず、
魔法が多すぎる。
属性がありすぎて把握しきれないぐらいである
こちらのレベルが低ければ無効化されるし、属性があわなければダメージがまったく通らない。
弱点をつけば代目―字が与えられると行っても、そもそも魔法が多すぎて使う気になれない。
攻撃力や防御力を一時的に高める魔法はあるが、効果は雀の涙ほどである。
ボスを中心に、状態異常攻撃がうざったい。
こちらが状態異常魔法を使っても全くかからないのに敵の魔法はほぼ100パーセント効く。
仮に利いても状態回復魔法のみ発動できるので、1ターンのみの作業が増えているだけだ。
しかもボスはHPが異常に高い。
結局打撃をつかわないとさっさとと倒せないし、打撃を使っても長い長い戦闘が待っている。
敵の攻撃パターンは単調なので、ボス戦もボタンを押すだけである。
俗に言うリミット技はあるが、発動条件が厳しすぎて存在意味がない。
そして最後に、防具の意味がない。
これも上昇する数値がわずかなために装備をする必要がなくなっている。
影山ヒロノブの歌がかかる戦闘シーンはあるけど、場面にあってない。
そしてかっこいいのに一回きりしか聞けない。
なんだあれは。
まだ突っ込みたいところはあるがこれくらいにしておこう。
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CP回復に斬りつけるシーン
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それでもバグが少ない
ラストリベリオンは戦闘、ストーリー、グラフィック、キャラクターどれもが最悪に作用したゲームだ。
戦闘は概念こそ良いが、バランスをつかさどる数値の扱いを失敗してしまったようだ。
ストーリーは英語音声が全てを台無しにしている。
英語音声なんて使う必要はない。
グラフィック・キャラクターはキレイな2Dを用意するものの、そのポテンシャルを生かし切っていない。
大量の余計なシステムが多く、重要なものだけに絞り切れていない。
しかし気合いを入れて作ったのだろうなとは思わせる。
これだけひどいゲームなのにバグが少ないのである。
ストーリーを振り返るシステムなどの細かなところもきちんと作られている。
説明書にはただコマンドを説明するのではなく、どの場面で何をすれば良いのかと言ったような、戦闘の指南が事細かに書かれている。
クソゲーにはいろいろな種類がある。
明らかに手を抜いたゲーム、時間が足りなかった未完成品、しっかりつくったはずなのにコケたゲーム。
『ラストリベリオン』は完成度が高いわりに、ことごとく外してしまっている。
誰だってクソゲーがでてきたことを喜んでいるわけではない。
渾身の一作がクソゲーと化してしまった悲劇を語っているだけなのだ。
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魔吸・封魂の概念は良いのだが
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