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Kane & Lynch: Dead Men
 (ケイン&リンチ: デッドメン)


ジャンル:TPS
機種:PS3
発売年:2008年
開発会社:IO Interactive

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2009年9月 最終更新日2011年3月

紹介

『KANE & LYNCH: DEAD MEN (ケイン&リンチ: デッドメン』(以下『ケイン&リンチ』とする)はIO Interactiveが開発、Eidos Interactive が発売、日本向けにスパイクがローカライズを行ったゲームだ。
海外では2007年に発売されたが、日本ではローカライズ上2008年に発売された。
IO Interactiveは、殺し屋を操る『ヒットマン』シリーズや、分隊指揮が特徴のTPS『フリーダムファイターズ』で知名度がある開発会社で、本稿で紹介する『ケイン&リンチ』は2つのゲームの雰囲気を足し合わせたようなものになっている。
ちなみに現在はIO InteractiveとEidos Interactiveはスクウェアエニックスに買収されている。

『ケイン&リンチ』はダークな雰囲気のストーリーと、分隊を指揮する戦術的な要素が濃いTPSである。
ストーリーは主人公ケインと相棒のリンチの、暗い過去を持つ中年を過ぎた人間達による会話が魅力的だ。
映画化されることも発売前から決まっており、ゲームのストーリーも映画のような雰囲気がある。
このゲームは味方を指揮して効果的に敵を排除していくのがもうひとつの面白さである。
自分の体力は低めなので、仲間を上手く使っていかないと先に進むのは難しい。
壁を背にしたカバーアクションを駆使しながら、じっくりと進むタイプのゲームだ。
カバーアクション
カバーアクションをしている様子
分隊操作について簡単に説明しておこう。
プレイヤーの操るキャラクターの補佐として、マップによっては一人から四人のNPCがついてくる。
NPCには3つの指示が出せる。
プレイヤーについていくのか、その場で待機するのか、指示された地点へ動くかである。
敵とはちあえば自動的に応戦してくれるし、こちらから特定の敵を攻撃しろと言う命令を下すことができる。
敵は壁に隠れながらチョコチョコ攻撃してくることが多く、味方を横から潜り込ませたり自分が横から攻撃すると倒しやすくなる。
そして自分のHPがなくなっても、味方が生きている限り回数限定ながら復活させてくれる。
味方がやられてしまったときは逆に、プレイヤーがアドレナリンを注射して復活することができる。
ほったらかしていると完全に死んでしまいゲームオーバーとなるので、無視することはできない。

プレイヤーが持っている弾が無くなった場合、味方に近寄れば自動補給してくれたり、武器を交換することもできる。
一連の操作はゲームパッドでの操作に最適化されており、使うボタンが少ないのも特徴だ。
限りなく簡略化させた操作によって、マニア向けになりがちな分隊指揮というシステムをうまく一般化させている。
味方達
味方と一緒に目的を遂げよう
各方面からの評価はかなり厳しめだ。
発売前はかなり宣伝されていて期待感が高かったが、実際に発売されると肩すかしを食らったユーザーが評価を低くしたというケースが多く見られる。
よく言われるのは味方AIのひどさとカバーアクションのやりづらさによって、戦術を練る意味があまりないことである。

オフラインのみのCOOPモードやオンラインの対戦はあるが、やっていないので紹介やレビューは行わない。
たくさん出荷されたおかげで手に入れることは簡単だと思う。
最近は廉価版も販売されている。
日本語版は有名声優を使って映画さながらのフルローカライズがされているので、買うなら日本語版がおすすめだ。
日本ではPS3版とXBOX360版が発売されている。
海外版ならそれに加えてPC版もある。
日本
このゲームの日本は「おかしなNippon」だ

レビュー

宣伝効果もあってか、最終的に『ケイン&リンチ』は全世界で140万本以上を売り上げることとなった。
大台の100万は超えているのだから大作と言っても良いのだが、ゲームの中身は中途半端で未完成のように感じられる部分が多かった。
ゲームの評判で売り上げが伸びたと言うよりも、事前のマーケティングが成功したからこそ、これだけの売り上げがあったと考えられる。
最初から結論になってしまうのだが、『ケイン&リンチ』自体は特に優れているゲームではない。

発売前に行われていた宣伝や前評判から考えつく『ケイン&リンチ』の内容と、実際の中身の差はかなり大きい。
購入した人にとっては期待はずれ感がかなりあり、あまり期待していなくてもやればやるほど拍子抜けをしていく。
典型的なガッカリゲームを地でいくのが『ケイン&リンチ』なのである。
かっとシーン
重厚なストーリーと宣伝されていたが・・・
しかし優れている点はいくつかある。
ゲームをやっていてまず気がつくのは、操作が非常に簡略化されていることである。
『ケイン&リンチ』のような「分隊戦術を必要とされるTPS(FPS)」はシミュレーター要素と結びつきやすく、複雑なゲームになりがちだ。
例えばゴーストリコンという屋外の特殊部隊を扱ったゲームは、ミッションを遂行する前に大量の事前準備が必要となる。
キャラクターごとに能力が違っていたり操作方法や味方への指示が細かく行える反面、かなりややこしくなってしまう欠点がある。
その点で言うと、『ケイン&リンチ』はプレイヤーが行える行動を限定することで誰でも手軽に分隊指揮を楽しめるようにしている。
ゲーマー向けになりやすいジャンルを普及層まで押し下げてきたことには、大いに評価する価値があると言える。

説明書なんか読まなくても、ゲーム開始して間もない頃のチュートリアルだけやればすぐさま操作になれてしまうぐらいだ。
あとは難易度はいつでもイージーに出来たり、チェックポイントがこまめに用意されているのでユーザーには優しい作りになっている。
指揮
指揮を執りながら敵をたおしていこう
操作が簡単なことは褒められても、『ケイン&リンチ』は分隊指揮に致命的な欠点がある。
ゲームデザインや味方・敵のAIの至らなさにより、ゲーム自体に分隊指揮がそれほど必要だったのかと思わせるのである。
序盤は難易度を押さえるために味方をあまり必要とさせないようにしているのは分かるが、中盤から後半にかけても味方がいて助かったと思わせる場面が少ない。(もちろんあることにはある)

いくつかの理由があるので整理してみると、まずは味方AIの問題がある。
味方に指示を出して遠距離の敵を攻撃することも出来るのだが、ある程度の距離が離れるとまったくもって当たらない。
これ自体は味方が強すぎるとゲームにならないから短所にも長所にもなっていない。
遠距離で自分の攻撃は当たるから、味方の攻撃をブラフにしてチマチマ攻撃しても良い。
ここで1つ問題があり、遠距離の敵への攻撃指示を味方に出した場合、味方は自動的に敵に向かって突撃・接近をしてしまうのである。
ゲーム後半ともなれば敵がウジャウジャしてくるので、迂闊に突撃させるといくら耐久力がある味方といえどもあっけなくやられてしまう。
結局、自分の周りに味方を待機させ、遠距離から自分の力で敵を一つ一つ排除していくのが最も安全かつ楽な攻略法になっているのだ。
自分のみ
結局頼れるのは自分のみなのだ
それでもさっさとクリアしてしまいたいときは、味方を突撃させた方が早かったりする。
敵が味方に向かって攻撃している間は自分に攻撃が向いてこないことを利用して、味方が敵と交戦している間に自分が敵を排除しまくるのである。
この作戦を使うと必ずといっていいぐらいの確率で味方がやられてしまう。
ところがやられてしまった味方はプレイヤーがアドレナリン注射をすれば何回でも生き返ってしまうために、このような突撃作戦は意外にもゲームオーバーになりにくいために非常に有効だ。
しかし分隊指揮がウリのゲームにおいてこんな作戦は「ない」と思う、個人的に。
比較的難しい場面でも、何回か場当たり的に味方を突撃させてしまえばクリアできてしまったり、味方をわざと弾避けにして進むぐらいならば、わざわざ分隊の指揮を中心にゲームを組み立てる必要性はないと言える。

もうひとつ突撃作戦をしがちになる理由はカバーアクションの使えなさである。
プレイヤーが壁や車などの障害物に近寄ると、障害物を背にしたり、壁から手だけ出して銃を撃つことが出来る。
ところが壁に近寄ると自動的にカバーの体制に入るかと思いきや、入ったり入らなかったりして使い勝手が非常に悪い。
元々味方が敵に攻撃するのを援助したり、大量の敵がいる場所で攻撃を受けないようにするためのシステムだったとは思う。
しかし使いたいときに使えないシステムには頼るのは心許ない。
さらに言うと壁の後ろでしゃがんでいたり、カバーアクションを使用せずに若干壁に隠れる形で射撃するだけで十分に敵を排除することが出来てしまう。
カーチェイス
カーチェイスのシーン
敵AIの作りにも問題がある。
『ケイン&リンチ』の敵は突っ込んでくるか、その場で動かないかの二通りの動きしかしない。
突っ込んでくる敵に関しては分隊指揮の意味はなく、まったく動かない敵については遠くからチマチマ攻撃するか、無理矢理味方を突撃させた方が良いのだ。
敵配置については、後半になればなるほどタレット(固定機関銃)が多くなっていて、迂闊に分隊を突撃させると全滅してしまうという難点がある。
そんなときは自分で敵をキッチリ片付けなくてはいけない。
まとめれば、『ケイン&リンチ』は分隊なんかに頼らずに自分でガンガン進んだ方が楽なゲームなのである。

TPSやFPSにおいて盛り上げる場面や山場の演出は、オキマリのようなものがある。
『ケイン&リンチ』では使い古された場面が当然のように使われている。
それが「装甲車をロケットランチャーで破壊」したり「ヘリコプターをロケットランチャーで撃墜」、「固定砲台がついた車で激走」するシーンだ。
ただ、これらの場面は不必要に難しかったりするのでプレイヤーのストレスの頂点になっていたりする。
相も変わらずこのような以前から使われているシーンを見るとは思わなかった。
まあ、基本をしっかりと押さえているとも考えられなくはないが。
ロープ
ロープを使って降りるシーンとかね
もちろん目を見張る演出というのはある。
『ケイン&リンチ』はストーリー重視、演出重視のゲームだから力が入っている場面は他のゲームとは違う魅力がある。
ライトバンの後ろからパトカーとカーチェイスするシーンや、大量の一般人が逃げ惑うディスコでの戦闘はクライムアクションゲームの雰囲気としてもピッタリだし、迫力が素晴らしい。
特にディスコのシーンは、かなり大量の人混みの中から敵を発見して排除する必要性があって面白い。

これまでストーリーが重視されていると言い続けてきたが、話の筋としてはたいしたものではない。
いわゆるアクションものハリウッド的な、厚みはないが雰囲気が良いストーリーだ。
主人公ケインも他のキャラも皆頭のてっぺんが寂しかったりする中年で、他のキャラクターもほとんどが元犯罪者だったりする。
現実的なわけではないが、他のゲームとは異質な空気はそれだけで魅力的だ。

『ケイン&リンチ』の中盤以降はストーリーがしりすぼんでいく。
これは大きな問題だ。
先に述べた目を見張る演出はすべて中盤までに出尽くし、それ以後は盛り上がることもなく、唐突なエンディングを迎える。
ゲームとしても、ストーリーとしても一番面白いのが中盤であるので後半はどうにかならなかったのかと思ってしまう。
そして、主人公の相棒となるリンチ、他の仲間の立ち位置が微妙だ。
みんなが個性的なメンバーのはずなのに、それを生かした話が作られていない。
これは残念なところだ。
人混み
混み合うディスコのシーン

一見すると『ケイン&リンチ』は重厚なストーリーと戦術が必要なゲーム展開を楽しめるように思える。
ところが中身は意外にも薄っぺらいのだ。
ストーリーは盛り上がりに欠け・、説明も全体的に不足している。
戦闘においては戦術はあまり必要とされず、一般的なTPSのように自分の力でドンドン進む意味合いが強い。
せっかく洗練された操作方法を用意しても使い道がない。

『ケイン&リンチ』のコンセプトは素晴らしいものがあると思うが、うまく形になって現れていない。
全体的に調整不足なのか作り込みが甘く、未完成に近い印象を受ける。
(銃の使い分けが意味をなさない、グレネードが多すぎるなどなど、本文で触れていないことは多い)
これは当時、会社の経営が悪化していたので、発売日に合わせるために予算不足の突貫工事をしたのだとも考えることが出来る。
ゲーム自体の目指す方向性は悪くないのだから、時間をかけていけば良質のゲームとなり得た惜しい作品だと言える。
銃撃
最後には普通のTPSになってしまった

まとめ

クライムアクションものなので、ゲームの雰囲気が気になる人は購入候補に入れて良いかもしれない。
ストーリーもゲームプレイにも深みがそれほど無いので一回やれば良いだろう。
一本道ゲームなので、自由度は皆無。
手軽に分隊指揮要素のあるゲームをやってみたい人向けか。

45点

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