レビュー
ロボット以外は特に変わったことのない「よくある」シューター
ありきたりなゲーム
ひとつのジャンルが生まれるとき、それはひとつの「型」が生まれたことを意味している。
どのように作れば一定のジャンルとしてみなされ、遊ばれ、評価されるのかが確立するのである。
逆に言うと、決まり事を守れば立派なものが出来上がる。
しかしそうして作られれば、どうしてもありきたりになってしまいがちだ。
『フロントミッション エボルヴ』はロボット以外は特に語ることがないほどの典型的なTPSだ。
アクションゲーム、特にTPSでよく使われているゲーム作成の「作法」というべきものを忠実に守っている。
斬新なシステムはもちろんないし、おまけに優れたバランスで作られているわけでもない。
おそらく
時間が経てば、誰も気にすることがなく、そのまま歴史に埋もれてしまうだろう。
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色々な場所で戦いはおこる
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ロボットを使う意味はそこそこある
ゲーム内でヴァンツァーと呼ばれるロボットを操縦する戦闘は、生身の人間を扱うTPSとは操作や楽しみ方が異なる。
第一に、ロボットはいくつかの部位パーツを組み合わせられるようになってる点を指摘できる。
自分のプレースタイルにあったパーツや武器を選択できるのだ。
第二に、ダッシュ機能やロックオンミサイルといった、ロボットにしかできないようなアクションを行える点もロボットならではだ。
ストーリーについても、ヴァンツァーに謎をプレイヤーにふっかけて、徐々に謎が明らかになっていくという構成になっている。
もちろん巨大なロボットとのボス戦、ライバルとなるキャラクターとの戦いもある。
ヴァンツァーはカスタマイズしたパーツによってモーションが変わったりもする。
このあたりはしっかりと作り込んである。
なのだが、まあ言わせてもらうと「驚き」が全くない。
ロボットを出せばカスタマイズしたくなるのは常だし、ロボット独自の操作もその延長上に浮かび上がる。
そしてボスとなるライバルがいるというのもありがちな展開だ。
ストーリーの核心部分はやや捻ってあって面白いとは思うが、それ以外は平凡にもほどがある。
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ヴァンツァーのカスタマイズだ
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緻密さがないゲームバランス(ヴァンツァー編)
ところで平凡だから直ちにダメというわけではない。
ゲームバランスが優れていれば、平凡なアイデアのゲームであっても面白いはずだ。
しかし『フロントミッション エボルヴ』は
緻密さがまったくなくて、プレイヤーを退屈にさせるに違いない。
ロボットを操るシーンではカスタマイズ性の高さが故にプレースタイルに応じて色々できそうな気がするのだが、結局やることが二通りしかないのだ。
その二つとはダッシュして敵と距離をとりつつ遠くの敵をロックオンするか、ただひたすら機関銃を撃ち込むことである。
ダッシュすると移動速度が速くなるため、機関銃やミサイルを当てるのは難しくなる。
だからロックオンミサイルとダッシュは相性がよい。
一方で、ダッシュとロックオンをやっていれば殆どの場面が突破できてしまう。
壁に身を隠してダッシュのゲージがたまってきたら壁から身を乗り出しロックオンし、後に壁に隠れれば敵はなすすべもなく倒れていく。
敵の数、種類、耐久力に応じて戦術を変える必要があるとか、突然後ろから襲いかかってくるとか、そういう変化もないのだ。
シューターで大事な「狙う」面白さもない。
ボス戦はやたらめったら耐久力が高く、ロックオンは使いにくい。
ではどうするかというと機関銃を使って撃ち込まなければならなくなってしまっている。
機関銃は攻撃力が高い反面、敵の攻撃を受けやすい。
なので扱いは難しい部類に入るはずなのだが、このゲームではダッシュすれば敵の攻撃は九割方避けられるし、回復アイテムがそこら中に落ちているため、回復とダッシュとを繰り返した
ゴリ押しでどうにかなってしまう場面ばかりだ。
ゴリ押しできるようでは、敵の攻撃を避けて敵に攻撃を撃ち込んで…というアクションの面白さが無くなってしまっている。
かと言ってゴリ押し以外の方法で進めようとすると、あまりにも敵から受けるダメージが少なくこちらの攻撃力が低いため、難易度が急上昇してしまう。
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ボス戦
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緻密さがないゲームバランス(歩兵編)
ロボットを操るパートよりも緻密さに欠けるのが歩兵編である。
『フロントミッション エボルヴ』ではときどきロボットから降りて白兵戦をしなければならない場面にうつりかわる。
白兵戦はロボット独自のダッシュとかカスタマイズもなく、いたって普通のTPSだ。
しかしロボット操作時以上に曖昧でいい加減なバランスだ。
敵の攻撃を受けてもすぐ回復できる自動回復に加え、銃弾はありあまるほど手に入る。
敵さんは棒立ちでこちらを攻撃してくるだけなので、ちょっと引き気味に戦うことを意識すれば、敵の出方を覚える必要や遮蔽物に身を隠す戦略性もない。
武器の種類もすくなく、使い分けをする楽しさは皆無だ。
歩兵編もゴリ押しでどうにかなる。
というかゴリ押しせざるをえない。
だがバランス以上に苦痛なのが、軽くておもちゃを扱っているようにしか感じない音やモーションだ。
人体の重みを感じさせないモーションでチョコマカと素早く動く主人公のいかに安っぽいことか。
ロボット独特の重量感と対比させようとしたのかもしれないが、ネズミみたいにしてしまったら意味もない。
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ロボットの方が面白い。白兵戦は…息抜きにもならない
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まるで2000年代初めのゲームをやるかのような…
ゲームを始めてまもないころに挿入されるムービーはロボットのモデリングの質も高く、演出も派手で、これから訪れるゲームの世界について期待を膨らませてくれる。
しかし一旦始まると、ロボット以外のお粗末な挙動や人物モデリング、スケールを無視した町並み、キャラクターの内面を掘り下げない薄っぺらいストーリー、単調なゲームバランスがプレイヤーを待ち構えている。
とはいえ、『フロントミッション エボルヴ』は現在のゲームと比較すると見劣りするが、流石に最下級ソフトほどのものではない。
最下級ソフトはゲームにすらなっていないものがあるので、最後まで遊べる『フロントミッション エボルヴ』はまだ良心的ですらある。
また、2000年代初めのTPSやFPSはこれくらいのものがずらりと並んでいた。
今でも話にのぼる有名タイトル以外は今から見ると本当に遊びにくい。
そういう意味で時代に取り残されたゲームだと言えそうな気はする。
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オープニングのムービーはよくできている
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