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Final Fantasy XIII (ファイナルファンタジー 13)


ジャンル:RPG
機種:PS3
発売年:2009年
開発会社:スクウェアエニックス

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2010年2月 最終更新日2011年3月

紹介

ファイナルファンタジーのシリーズで初めてHD規格に対応したのが『ファイナルファンタジー13』(以下『FF13』)である。
映像の美しさを売り文句にするファイナルファンタジー史上最高の高精細画像を描くべく、通称HD機と呼ばれるゲーム機向けに作られている。
PS3版のほか、現在はXBOX360版も発売されている。
開発販売共にスクウェアエニックスが行っていて、特に実績の高いメンバーが集結して作られている。
エンディングでは『FF10』や『キングダムハーツ』を開発した、いわゆる元第一開発部所属の人たちが多くクレジットされている。
例えばキャラクターデザインの野村哲也やFFに数多く携わってきた北瀬佳範など。

『FF13』が初めてその存在を明らかにしたのは2006年の5月であった。
このときはPS3独占とされていたようだ。
PS3の発売は同年の11月だから発表時期としてはかなり早かったことは言うまでもないし、それゆえキラーソフトとして扱われていた面もあった。
その後情報が小出しにされていたが、いつの間にやら初期の設定はなかったことにされたり、XBOX360版も発売決定になったりしている。
大きなイベントでもプロモーションムービーが流れるだけで、開発が順調にいっているとは傍目からはとうてい思えなかったものの、遂に2009年に発売が決定し延期することなく発売された。
日本では発売一ヶ月で実売150万本に達したとされている。
これは日本のPS3所持者の三人に一人がFF13を買ったというとてつもない数値でもある。
スノウ
左手に光るもの。それは・・・。
『FF13』はファミコン時代のRPGとはまったく違う作りのRPGである。
そこかしこで言われているように、かなり一本道なのだ。
ゲーム途中でストーリーと違うところに寄り道をしたり、以前のダンジョンへ戻ったり、そんなことをする場面が殆ど無い。
敵との戦闘は何度もリスタートできるものの、逃げることができない。
ひたすら一本の道を進み、敵を倒し、美しいムービーとストーリーを観賞する、以上の繰り替えしを行う。
ただこれはRPGだから違和感があるように受け取られることも多い。
典型的なアクションゲームを想像してもらうとわかりやすいが、『FF13』のように一本道をひたすら突き進み、ボスをクリアしたらムービーになっているアクションゲームは多い。
『FF13』は戦闘が忙しいので、アクションゲームっぽいとも言えるだろう。

戦闘はコマンド式である。
コマンド式といったら「キャラが棒立ちでターンを待つので不自然」になりやすい。
しかし『FF13』のアクティブタイムバトルシステムは、キャラクター常に動きっぱなしだ。
だから棒立ちによる違和感が全くない。
そのぶんコマンド入力を頻繁に行わないといけないので、アクションゲームのような感覚で遊ぶことになる。
忙しく入力しなければいけないこともあって戦闘の難易度は決して低いわけではない。
何も考えずに遊べるのは序盤の一部だけである。
オーディン
戦闘シーン
典型的なRPGとは戦闘システムについても毛色が違っている。
戦闘に参加するキャラクターは3人で、そのうち一人を直接動かし残りの二人は指示を出してAI任せの行動を行わせる。
指示といっても攻撃役回復役といった大ざっぱな程度の指示だ。
割と同じようなパターンで動くAIのクセを見抜くことが重要になってくる。

そして『FF13』の戦闘で際だっているのがチェーンとブレイクのシステムだ。
一定時間内に敵を攻撃することでチェーンがたまっていき、ある程度たまるとブレイクという状態になる。
ブレイクすると普通に攻撃するよりも5倍10倍のダメージを与えられるので、戦闘ではブレイクを狙うのがセオリーだ。

ムービーが多いのはもはやスクエニ製のRPGとしては当然のことになっていると思われる。
ゲームディスクの総容量38GBのうち、ムービーにはなんと30GBも使われている。
時間にすると6時間あるらしい。
クリアするのに60時間はかかると開発者は言っているので、ゲームの10パーセントがムービーに費やされている計算だ。
少し話は脱線すると、昔から次世代ゲーム機が出ればムービーが無くなると言われていた。
すべてリアルタイムレンダリングできればゲームの容量や、ムービーとゲームの違和感も減るというわけである。
しかしPS3の世代になってもそこまでの性能にいまいち足りていないらしく、また映像を制作する部門とゲームを開発する部門が分かれていることもあって、『FF13』ではプリレンダリングのムービーが使われている。
とは言ってもゲーム中とはあまり変わらないようなモデリングでムービーが流れてくれる。
明らかなムービーだから気が滅入ると言うことはない。
ブレイク!
ブレイクの瞬間だ。

レビュー

見通しが悪いストーリー、覚えるべきことが多い戦闘

一週をどれだけ楽しませるかに特化した『FF13』

世の中にはリプレイしたくなるゲームとそうではないゲームがある。
ここで注意して欲しいのだが、何度も繰り返し遊ばせるゲームこそ素晴らしいとは言い切れない。
たとえ一回だけやって満足してしまうものであっても、その一回が十分に満足できるのであれば十分に高い評価を与えられるはずだ。
『FF13』は一回キリのゲームプレイを楽しませることに特化した作りになっている。
ここまであからさまにリプレイを考慮することなく作られたゲームは見たことがない。(言葉は変だが、褒めている)

特に『FF13』においてリプレイ性を犠牲にすることで際だっているのが長大なチュートリアルである。
ゲーム序盤、全体から見れば三分の一はチュートリアルだと私は感じた。
決してゲーム内ではチュートリアルであることは触れられていないのだが、作りはあからさまにチュートリアル的である。
ゲームシステムや戦闘の詳細な説明が序盤はそこかしこに散りばめられている。
ユーザーが説明書を読まないでゲームを始めることが多く、そのようなユーザーにゲームシステムを理解して貰うために、長い長いチュートリアルが儲けてあると考えられる。
しかしチュートリアルが長い理由としては、典型とは程遠い『FF13』の戦闘システムに原因があるのではないだろうか。
『FF13』の独特なシステムをプレーヤーに理解させ、それを自由自在に操れるようになるまで手取り足取り覚えさせていくために恐ろしく長いほどのチュートリアルが存在しているのである。
パルス
一本道であるので戻れない場所も多い

長いチュートリアルは何を意味するのか

『FF13』の戦闘はキャラクターごとの特性や組み合わせる陣形(のようなもの)によって戦闘の難易度などが大きく変わってくる。
中盤以降で顕著なのだが、普通に進めていればごり押しで進めるようなゲームバランスにはなっていないので、戦闘の仕組みをじっくりと理解していないと確実に攻略不能となる。
戦闘のやり方を少しでも間違うと無駄に長引いたり全滅しかねない。
最近のRPGにしては結構きつめのゲームバランスだというのは、私だけでなく多くの人も感じているはずだ。

だからこそ、長い長いチュートリアルは必要であったし、搭載しているのは正しい選択だったと言える。
チュートリアルがなければプレイヤーは攻略不能になりかねない。
例えば『FF13』は戦闘は予め設定した仲間キャラクターの役割を適宜変更していくというシステムであるので、役割の選び方が下手だとスムーズにゲームを進めることができなくなる。
ここでゲーム側はチュートリアルとして、 組み合わせがあまり良くないキャラクター同士で強制的にパーティを組み合わせたり、 メンバー同士の能力を発揮しなければ倒せないボスを登場させたりする。
そうするとプレイヤーはゲームを進めていくだけで、『FF13』独特の戦闘システムを自然に勉強できるのだ。
ここまで贅沢にゲームの時間を使っているのは、ひとえに一本道の1回きりクリアのゲームだからである。
『FF13』は複数回プレイして楽しむようなゲームではない。

ゲーム後半の強いったらありゃしない雑魚やクエストボス討伐で、そこまでしてたたき込んだ『FF13』の戦闘が生きてくる。
自由自在にキャラクターを操り、命令し、雑魚とは言えないほど強い敵を倒したときの快感はRPGに限らず、ゲームを楽しむ上で欠かせない感覚だ。
一本道が顕著な『FF13』だが、終盤に少しだけ自由に行動する場面が用意されている。
いわゆるボス退治ミッションが60個ぐらい用意されていて、個性豊かなボスやちょっとしたストーリーの神髄に迫ることができる。
まあ私は途中で面倒になって止めてしまったのだが、結構楽しめた。(私は一つのゲームを極めるというタイプではない)
やたらと強いボスの討伐方法を試すためにも、序盤のチュートリアルは役に立ってくるはずだ。
アダマン
強い敵にも攻略方法はある!

戦闘の面白さ

『FF13』の戦闘は面白い。
長時間のチュートリアルで勉強する必要があるものの、ストーリーが着々と進行していくのであまり苦にならないのではない。
確かにストーリーが気にくわなかったらどうしようもないが、それは違う問題だ。
後の方でストーリーについては述べている。

ドラクエに代表される、ターン制の戦闘は古い(オールドな)形式だと言われている。
時代の流れから考えてもリアルタイム性を重視したシステムが海外を中心として求められている。
それに同じ会社からの巨大タイトル同士つぶし合いをすることも不毛である。
『FF13』の戦闘は従来のRPGと比べると、コマンドを選んでいくRPG的感覚がない。
どちらかというと格闘ゲームやアクションゲームに近い。
しかし、アクションゲームや格闘ゲームそのものではない。
時々RPGにアクション性を求めたりする勘違いする人がいるのだが、そのものが欲しかったら『ストリートファイター』や『ゴッドオブウォー』のような有名どころをやっておけと言いたい。

アクティブタイムバトルの楽しさは敵がやってくる攻撃パターンに合わせて、こちらが色々と行動を起こせることにある。
例えばボスが弱点をチョイチョイ変えてくるとか、特殊な攻撃をしてくるので、プレイヤーは防御態勢や攻撃態勢を変えるとかをリアルタイムで行う。
ドラクエのようなターン式ゲームでは「2ターン後に強力な攻撃を行う」タイプの技や魔法は少ない。
それは「ターン」という硬直した概念に縛られているからだ。
FFのアクティブタイムバトルならば、「2秒、1.6秒」といった変化が可能な細かな時間に設定できるので、時間の差をゲームに利用できる。
例えばドラクエでボスが「2ターン後に強力な攻撃を行う」のならば仲間全員に回復の指示を出したり、防御呪文を唱えて備えるのはすごく簡単だ。
そんなわかりやすい攻撃を取り入れてもすぐに対策される。
しかしFFではどうだろうか。
瞬時に正しい判断をし、適切なコマンドを入力しなければパーティは大きなダメージを負う。
このような判断力、俊敏さはアクションゲームなどに通じる楽しさである。
キメる
流れるような戦闘は必見だ

従来のアクティブタイムバトルをさらに早く、攻撃的に

このようなアクティブタイムバトルは15年以上前の『FF4』から実装されている。
『FF13』は戦闘速度がさらに向上しただけと言っても良いかもしれない。
その意味では、『FF13』は間違いなくファイナルファンタジーシリーズの続編だ。

どのように『FF13』は速度が上がっているのだろうか。
まず、一人のメインキャラクター以外はオートの戦闘になっている。
それに伴って自分のアクティブタイムゲージがたまる早さが上がっている。
言い換えれば、常にメインキャラクターに指示を出さなければならなくなった。
コレによって、攻撃をしないで突っ立っている状況がかなり少なくなっているのだ。
RPGでよく言われる批判「棒立ち良くない!」をゲームスピードの向上により、無理なく実現している。
しかも『FF13』ではコマンドの数も必要最低限に抑えられており、無駄なものが全くないと言える。
昔のアクティブタイムバトルそのままならば、ゲームスピードの向上はコマンド入力の多さで不可能だったはずだ。
あと、常にキャラクターが動いている場面を見るだけでも楽しい。
戦闘でカメラ位置がグルグル回りすぎだとは思うのだが、スピード感を出すためだと思えばそれほど悪いものではない。

もう一つ従来のアクティブタイムバトルと違うところはチェーンとブレイクシステムの実装による、敵を知る必要性の向上だ。
チャーン・ブレイクシステムをわかりやすく言い換えると、「敵に継続的に攻撃を与え続けてチェーンをためることで、より大きなダメージを与えられるシステム」のことだ。
仮にチェーンをためないで的を倒そうとした場合、何十分もかかって敵を倒す羽目になる。
つまりこまめに敵を攻撃してチェーンをためることが、さっさと敵を倒すために必要なのだ。

しかし『FF13』の敵は多彩な攻撃パターンを保有しており、タダの雑魚であっても強力な攻撃を仕掛けてくることが多く、その後は回復に専念せざるを得なくなりやすい。
このときにチェーンコンボを失ってしまってはもったいないので、予めチェーンを稼いでおく必要がある。
他にも全体的に、弱点をつかないとまともなダメージが与えられない敵、攻撃パターンがガラリと変わる敵、補助系魔法を駆使しないと戦いにくい敵が『FF13』は多い。
何も考えずに戦っていると敵にチェーンの蓄積を邪魔されてしまうので、チェーンをためるために敵を知り尽くす必要があるのだ。
敵の弱点や攻撃パターンは戦闘中にいつでも見られる「図鑑」に詳しく載っている。

瞬時の判断力が多層的に要求される戦闘は、コマンド式でありながらアクションゲーム的である。
攻撃や回復はAIに任せっきりになる面も多いのでいわゆるRPGとは感覚がぜんぜん違う。
サボテン
サボテンダー

戦闘のややこしさ

もちろん今まで褒めしてきた戦闘にも欠点はある。
戦闘自身よりも戦闘の下準備が面倒くさいのだ。
まず、成長要素の「クリスタリウム」がややこしい。
これは戦闘終了後に貰えるポイントを消費して自分の好きな能力を解放していくというRPGではよく見られる成長システムである。
ところが『FF13』でもどのゲームにも言えると思うが、全てのキャラクターについて一々成長を考えるのは時間がかかってしまう。
そして自分の好きなように成長させられると言っても、ゲームのバランスを取るために、結局は成長のさせ方は決まり切った方向性になってしまう。
戦闘終了後にキャラクターのステータスを開き、一々手動で能力をアップさせていくのは何とかならなかったのだろうか。

そしてさらに面倒なのはオプティマ再設定という問題だ。
簡単に言うと、これはキャラクターごとの戦闘AI設定の話である。
例えば特定のキャラクターに、回復させたいとか補助させたいとか色々あるだろう。
『FF13』では戦闘前に自分のが操るキャラクターを含め、予め役割をあてがっておく必要がある。
しかしこれもまた面倒なのである。
なぜなら『FF13』では戦闘に参加するキャラクターを変えるごとにAI設定が初期化されてしまうので、何度も設定し直さなければならないのだ。
これによって強敵を前に新たな対策を練るということがおっくうになってしまいがちである。
一々設定するのは面倒だから、このままのAI設定でスマートに倒せなくても構わない(ごり押しで良い)と考えるプレーヤーは多いはずだ。

あと戦闘について良いとも悪いとも言えないことが二つある。
まず味方AIを細かく設定できない点が一つ。(あの魔法を使える使えないという設定を作るとか)
これは自分の思い通りに動かせないという欠点を抱えているが、FFのようなライトなゲーマーが購入の中心となるゲームではあまり複雑化しない方が良いという面もある。
前作の『FF12』は戦闘のシステムを複雑にしすぎたせいで評価は散々である。
次に自分の操作キャラクターが死亡するとゲームオーバーだったり、戦闘中にAI・役割をチェンジさせると硬直時間が生まれて敵に攻撃される点。
前者についてはゲームをやった人にしか分からない言葉で書いて申し訳ないのだが、ディフェンダーという役割の意義を増大させるための措置であると思う。
硬直時間の発生についてはAI・役割をコロコロ変えられない欠点はあるものの、事前にAI・役割についてじっくり考えて選ばなければならないというバランスの問題だろうか。

戦闘は極上である。
やや難しめのバランスではあるが、ライトユーザーでも攻略不能になるほどの難しさではない。
ただ、ストーリーと組み合わせて考えると、それほど面白いとは考えにくい。
面白い話ならば序盤の長いチュートリアルを感じさせないようにユーザーを引っ張れるが、『FF13』のストーリーは魅力に乏しいために、チュートリアルがお勉強的で辛く感じてしまうのである。
鳥
チョコボ

『FF13』でストーリーが重視される理由

誰がなんと言おうと、『FF13』はやはりストーリー重視のゲームである。
大量のムービーを使って物語をたたみかける手法はスクウェアエニックスのお家芸であり、最近のFFに共通してみられる。
長い長い戦闘のチュートリアルも、アクションゲーム的な反射能力が必要な戦闘システムも、すべてはストーリー・ムービーを見せるためだと言っても良いだろう。
本来ならそれだけのお膳立てをしてでも先が気になる物語展開と美しいムービーが、プレイヤーを先に進ませたくなる動力源になるはずだ。
割と強いボス敵を倒せばムービーが見られたり、ムービーの途中でイベントボスと戦闘して勝利するその他の仕掛けは、『FF13』がストーリーを軸として作られている事への証拠でもある。
『FF13』が良作か駄作か、あえて言えば神ゲーかクソゲーかはストーリーにかかっているのである。
しかし、これだけ念を押したことでも分かると思うが、FF13のストーリーは多くの人にとって魅力に乏しい。
色々な問題点があるのでいくつかの点に分けて解説していこう。

これだけの大プロジェクトメディアのストーリーは往々にして単純であることが多い。
ハリウッドの映画はわかりやすい例だろう。
悪役を倒し世界が救われるとか、愛し合っていた二人が結ばれるとか、大概はハッピーエンドでなければ大衆娯楽にはなれない。
なぜかと言えば分かりやすさと爽快感を重視しているからだ。
大きな物語は単純であればあるほど、大きな力を持つ。

『FF13』のストーリー最大の問題点は分かりにくさにある。
「専門用語が分かりにくい」とすのるは度々目にする批判だが、これは表面的なものであって問題はもっと奥深いところにある。
キャラクターの心理変化の描写が乏しく、ストーリーの組み立て方もおかしいのだ。
この二つの要素が著しく劣っているものだから『FF13』のストーリーは全体像がつかめない。
個々のシーンは印象的で感動的なものもあるのに、話全体を通してみると非常に見通しが悪く、いびつである。
見渡す限り廃墟
確かに印象的なシーンはあるのだ

説明不足の心理、そして小説の存在

『FF13』ではキャラクターがかなり明確な意志を持って動いている。
ところが、この目的がはっきりとわかるのがゲームの中盤なので、序盤は話の筋が見えにくい。
実のところFF13は、物語全体の時間軸で言うと中ほどからゲームがスタートする。
ゲームを開始した頃には既にかなりの部分の話が進んでいる後なのだ。
そこで『FF13』では回想という形で過去のシーンを見せている。
回想でキャラクター同士の相関関係や、主人公達の秘めたる目的が分かるのだが、このような手法はあまり褒められた物ではない。
私が思うに、プレイヤーがゲームを進めていくと、さりげないイベントシーンで過去の事実が明るみになったりするのが理想的な方法はではないだろうか。

おまけに『FF13』はキャラクターの性格描写のうち、ゲーム中でも描かれていないにもかかわらず重要な部分を、小説で補われている。
小説は購入しても良いし、お金を払うのが面倒なら公式ウェブサイトでも読める。
確かに無料で読めることは読めるのだ。
しかし、ゲームをする前に基本知識がないと楽しめないというストーリーはいかがなものであろうか。
だから多くのプレーヤーはゲームを始めて間もなく「置き去りにされる」感覚を覚えるのだ。
これは専門用語が分からないからだとか言う問題よりももっと深い場所、ストーリーを語る順番に問題がある。
『FF13』には何も前提知識を持たない人が本当にストーリーにのめり込めるか、理解できるか、という視点がかなり欠如しているのだ。

物語中盤には各キャラクターが自問自答をして自分の考えを昇華していく場面が用意されている。
そこでは仲間同士の葛藤などが描かれているわけだが、描写が割とお粗末である。
キャラクターの心情の移り変わりが微妙に描かれているわけではなく、かなり唐突に悩み出したり悩みを解決したりする。
ここでの問題は「なぜ心情が移り変わったか」というのが不明瞭な点である。
つまり、きっかけとなる出来事などが描ききれていないため、プレイヤーが話を理解できないのだ。
よける
敵を避ける

独特の設定をもっと語らせるべきであった

『FF13』の物語の不明瞭さをまた違った視点から見ると、世界を俯瞰できないからだと思われる。
わかりやすい例は「フィールドマップが無い」ことだろう。
フィールドを歩いて次の町へ移動したり行ったり来たりするのは典型的なRPGでは普通に見られる光景だ。
これは探索するという過程を通じ、ゲーム世界を個々人の頭の中に描くことを助けている。
別にフィールドマップが無いゲームであっても、ゲーム固有の設定を丹念に説明していけばプレーヤーはゲーム世界を自分のものにできる。

『FF13』はもちろん解説的な場面は結構あるものの、その特殊な世界設定を存分に説明しきれていないのだ。
このような世界設定への理解不足は、ラスボスの行動が意図不明な事実にもつながっていく。
普通にやっているだけでは全くわかり得ない、というかゲーム側では明確に何もラスボスの本当の目的について提示していないのである。
考察できるほど面白い内容でもなく、しかも最終的に答えを持たせていないため、一消費者としてみれば投げっぱなしに感じてしまう。

以上まとめてみると、『FF13』には何度も何度も解説の不足が現れてくると分かるだろう。
世界設定の説明不足、キャラクターの心理描写不足、ラスボスの動機が不明など、とにかくプレーヤーは分からないことだらけだ。

『FF13』はゲームをクリアするまでの60時間、ムービーの6時間では世界の設定・キャラクターの心情を説明しきれていない。
おそらくすべてを説明するべく丁寧に作れば、二倍以上の時間になっていたに違いない。
そこまで作れるほど時間も金も無尽蔵にあるわけではないので、ゲーム本編は本来作られるべきだった『FF13』のダイジェストとなっていると考えられないだろうか。
だからストーリーにおいて消化不良感がたっぷり漂うのである。
自分が詳しくない映画やアニメのダイジェストを見て面白いと感じるだろうか?
絶対に感じるわけがないのだ。
だからプレーヤーはゲームから突き放されたように感じ、物語にのめり込めないのである。
オーディンのシーン
なぜ、そうなるのか?という疑問が残る場面が多々。

部分部分はすばらしくとも、通してみるとてんでダメ

グラフィックスや音楽はFFの名に恥じない素晴らしいものになっている、とここで言っておく。
他のゲームと比べてもやはりトップクラスなのは言うまでもない。
特にキャラクターやオブジェクトの造形については目を見張るものがあると思う。

『ファイナルファンタジー13』は二週目を極力排除した作りになっている。
それはストーリー、戦闘、ミッションなどゲームの構成から自ずと分かってくる。
難しめだがやりがいのある戦闘と大河的なストーリーはゲームの流れにあってないとよく批判されているが、私はそうは思わない。
戦闘が優しすぎるゲームはアドベンチャーゲームになってしまうからだ。
強い敵を倒すことへの征服感とご褒美としてムービーを見ることは、あくまでも日本式RPGの形を維持するならば共存し得る。
その中でも一周のプレイを重視するゲームとしては、このような緊張感のある戦闘とのんびりできるムービーの組み合わせがベストであると思う。

しかし、『FF13』はストーリーパートの出来が良くない。
個々の場面はきっちり作ってあっても全体としての流れが悪い。
これが『FF13』の評価を最大限に落としている要因だ。
「木を見て森を見ず」とはまさに『FF13』を端的にあらわすのにふさわしい言葉だ。
映える場面
個々のシーンはよくとも、動画としてみるとブラーや揺れの多用で見づらいのも「木を見て森を見ず」をよく表現していると思う。

まとめ

繰り返し遊ぶのではなく、一回クリアするまでをどうにかして楽しませるかという視点で作られたゲーム。
戦闘システムはこれまで作られてきたアクティブタイムバトルを一次元高めた素晴らしいものに仕上がっている。
しかしストーリーがどうにもこうにも理解しにくく、プレーヤーはFF13の世界にのめり込みにくいという大問題がある。
ゲームの流れやイメージは非常にアクションゲーム的である。
一般的なRPGの感覚とは違う。
当たり前だがムービーたっぷりの典型的なFFである。
昔ながらのRPGをやりたい人は買わないほうがいい。

点数についてはストーリーの不備で大きく下げた。

74点

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