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Dark Sector (ダークセクター)


ジャンル:TPS
機種:PS3
発売年:2008年
開発会社:Dark Sector (ダークセクター)

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2010年8月 最終更新日2011年3月

紹介

『Dark Sector (ダークセクター)』はDigital Extremes開発、D3パブリッシャー販売のTPSである。
Digital Extremesは『Unreal Tournament』を共同で開発したこともあるディベロッパーなので、海外製ゲームに明るい人聞なら聞いたことがある名前かもしれない。
日本、海外ともにPS3、XBOX360、PCで販売がされている。
残虐表現のすさまじさでオーストラリアでは発禁処分になっている。
なお、日本版はXBOX360のみ表現修正が緩く、海外製とほぼ同じだそうだ。
PS3とPCでは部位破損を中心にむごい表現を押さえてある。

メタスコアなどのレビューを見る限り、評価は平均よりも高めといったところである。
美しいグラフィックや類似のTPSには見られない独自の攻撃方法が評価されている。
海外でも日本でも中古価格が暴落しているので手に入れることは容易いだろう。
Dark Sector (ダークセクター)
主人公。ちなみにイケメンボイス
『ダークセクター』は『バイオハザード4』に似ている。
暗い雰囲気とグラフィック、重さを感じさせる操作感、人間が変化したバケモノを相手にするホラー要素、武器を売買する商人の存在は『バイオ4』と共通している。
だが『ダークセクター』は戦闘を重視している点が違う。
それが最も顕著に現れているのが「グレイヴ」の存在である。
グレイヴは物語序盤から使用できるブーメラン型の兵器だ。
『ダークセクター』では、普通のTPSと同じように銃を使うこともできるが、グレイヴで敵を切り刻むこともできる。
弾薬が厳しめのバランスになっているので、必然的に無限に使用可能なグレイヴを使う場面は増えてくる。

グレイヴは物語を進めるごとに様々な特殊能力を獲得する。
プレイヤーは場面に応じた能力を使って効率よく敵を倒し、時には謎解き要素をクリアしていく。
Dark Sector (ダークセクター)
グレイヴとは右手に持っている刃のついたブーメランのことだ
もうひとつ戦闘に密接に関わってくるのはカバーシステムである。
壁や障害物に近づいてボタンを押すと、キャラクターがぴったりと貼り付く。
ダークセクターの敵は、こちらに向かって突撃してくるタイプと距離をとって遠距離攻撃をしてくる二つのタイプがある。
カバーシステムは遠距離攻撃をしてくる敵に対して有効な選択肢となってくれる。
しかし突撃してくる敵についてはあまり有効ではないので、カバーシステムだけでは突破できないバランスになっているのだ。

海外製ゲームには珍しく、難易度の選択がない。
それほど難しいわけではないが、ゲームが苦手な方は注意がいる。
クリアするとハードモードが出現する。
Dark Sector (ダークセクター)
カバーをしながら敵をたおす

レビュー

斬新なシステムと全く面白くない戦闘

平均的な水準は超えているけれども、良作とは言い難いゲームである。
ただ、良いところと悪いところがハッキリしており、それをどのように感じるかによって評価は変わってくると思われる。
私は全体に漂う、あと一歩足りない感じがかなり気になっている。

『ダークセクター』のウリはグレイヴの操作だ。
ブーメランを投げて敵を攻撃するだけでは銃の延長に過ぎないが、様々な特殊能力を付加されることでゲームの幅が広がる。
シューターと言えば無心に銃を撃ってばかりのゲームが多いので斬新なシステムは目を引く。
グレイヴは特殊能力が付加されればヘッドショットを狙いやすくするスローモーションや、一定範囲を爆発させてダメージを与えたりすることができ、ゲームが単調にならないような工夫が見える。

またグレイヴを投げて戻ってくるまでの時間、ピストルを使って敵を攻撃することもできる。
投げて、撃って、を繰り返すのは他のTPSやFPSには見られない特徴だ。
Dark Sector (ダークセクター)
グレイヴを投げて、ピストルを撃て!
ダークセクターで優れているのはピストルを腐らせてない点にある。
FPSやTPSではピストルの存在意義が不明というのはよくある話だ。
そこでダークセクターはグレイヴとピストルを同時に扱えるようにすることで、どちらも腐らせないでいるのだ。
グレイブで大ダメージを与えてピストルでトドメを指すという使い方が非常に面白い。
上手くグレイブを当てると敵が赤色に発色し、その状態だと二・三発銃弾を撃ち込むだけで倒すことができる。
場面によっては近づいてカッコイイ近距離攻撃をしても良いだろう。

実はグレイヴよりも銃(突撃銃やショットガン)の方が強くて使いやすい。
だが強い銃はグレイヴと同時に使用することはできず、調子に乗って使うと弾薬が底をつくため、使いどころが限られてくる。
とはいえ『ダークセクター』最強の武器ショットガンの弾薬はあまりがちである。
Dark Sector (ダークセクター)
真っ赤に光る

銃を装備する敵を倒すと、よくあるシューターと同じように、敵は銃を落として死んでいく。
これを拾って使うことができるのだが、一定時間経つと認証コードが発動して使えなくなるようになっている。
だから拾った銃は手当たり次第に乱射してしまうのが賢い戦闘方法になる。
弾薬を気にせずに撃ちまくれるのはなかなか気持ちが良い。
「いつか使うから」と温存していて結局アイテムを使わなかったという経験はだれもがあるはずだ。
ダークセクターはそのようなもったいない症候群を起こさせないように作ってある。

しかも拾った銃で敵を倒すと、さらに銃を落とす。
グレイヴの非凡なところは、遠くにあるアイテムを拾って手元へ持ってくる特殊能力も持っていることにある。
つまり敵を倒して銃を奪うという流れをなんの滞りもなく行えるのだ。
Dark Sector (ダークセクター)
グレイヴをキャッチ
しかしグレイブの特殊能力のうち、使い勝手がよいものは使用可能かどうかが状況に左右されるのは惜しい。
グレイブ自身に炎・雷・氷の属性を付加する特殊能力は、属性を帯びているときに敵に与えるダメージが飛躍的に多くなる。
また投げたグレイブの周囲を爆発させることで広範囲にダメージを与えることもできるので、非常に強力で使いやすい。
ゲームバランスの兼ね合いもあるのだろうが、この特殊能力を使えるシーンが思ったほど多くない。

特殊能力を使えないときは攻撃力が低くもなる。
したがって、能力を使わないで地味に敵を減らしていかなければならないシーンが殆どなのである。
グレイヴの楽しさを殺してしまっているゲームデザインと言える。
一度でも特殊能力の強さを体験したプレイヤーが地味で単調なプレイに耐えきれるとは思えない。
そして『ダークセクター』は題名にあるとおり「ダーク」なグラフィックが特徴なので、特殊能力である炎の赤、雷の紫、氷の青は画面に映えて美しい。

以上述べてきたように、理にかなったシステムに関しては高い評価を与えられる。
ところが私は戦闘が全てを台無しにしてしまっていると考えている。
いくらすばらしいシステムを構築しようとも、それを生かし魅せる作りになっていなければならない。
また全体的に不親切な箇所が多いのも気になっている。
Dark Sector (ダークセクター)
派手な攻撃
『ダークセクター』の戦闘は対人と対モンスターの二つに分けられる。
どちらも面倒であるという点で、対人にも対モンスターにも大きな欠点がある。
敵の量が圧倒的に多いのである。
とにかく物量作戦で敵の行動を設定しているとしか思えない。
例えばある地点の敵を倒しても、次から次へと後ろから沸いて出てくるので、自分が敵を減らせているかどうかが全くわからないのである。
ゲーム後半になると対モンスター戦ばかりになるが、耐久力が高く、透明化までする敵と戦わなければならなくなる。
これは不快感を増長しているだけだ。
グレイヴ自体が素早く投げられるわけでもなく、グレイヴとピストルの二段攻撃は二度手間の末に行われることを付け加えると、ちっとも減らせない敵の前にイライラがつのっていく状況が理解していただけると思う。

さらに付け加えるなら、私は一回クリアした後には「すべての敵を倒す必要がない」ことに気づいた。
ダークセクターは簡単な謎解きなどを除けば、ほとんどが扉などで仕切られていないマップが連続している。
つまり敵を無視して先へ先へ進むことで時間を短縮できるようになっているのだ。
もちろん初回プレイでは正解のルートがどこにあるか分からないので、全ての敵を倒して丹念に先へ進む道や方法を探さなければならない。
せっかく色々なシチュエーションを用意し、独創的なボス戦を用意しても普段の戦闘がこれではどうしようもない。
Dark Sector (ダークセクター)
逃げてしまえ
そして『ダークセクター』全体に流れる、中途半端な不親切さが私は気になってしょうがない。
簡単な謎解きが豊富に用意されているのだが、ヒントがあるようで存在しないので、わからなければ一生分からない。
いわゆるユーザーに配慮しない謎解きである。
操作に慣れてもいない、そしてボスの倒し方も知らないプレーヤーは攻略方法が分からずに長い間そこらじゅうを彷徨ったりしなければならない。
ゲームを開始してチュートリアルがないまま、いきなり戦闘に放り出されるなど、 難易度カーブも序盤ほど高いような作りになっている。

ごく最近のゲームは画面に表示されるHUD(パラメータなどが表示されているもの)を取り払い、説明的な文章もなるべく排除するように作られていることが多い。
それが臨場感や没入感を増大させると言われているからだ。
チュートリアルについても、画面を見れば何をすればいいのか分かる要素を重視して、あからさまな説明書きやヒントはなくなっている。
しかしここで忘れてはないらないのは、そうした仕掛けを作ることの難しさである。
何度も何度もテストプレイしなければ、かえって不親切なゲームとなってしまう。

見たこともないような奇抜で面白いシステムがウリの『ダークセクター』。
しかし内容は劣化した『バイオハザード4』としか言えない程度であった。
長所を尊重するのなら高い評価をしてもいいかもしれないが、私にはどうしても戦闘のだるさが気になった。
Dark Sector (ダークセクター)
HUDは最小限でもかまわないけれど、ヒントが分かりづらい

まとめ

グレイヴを使った唯一無二のゲームプレイには大きな価値があると言える。
だが、不親切なシーンやかったるい戦闘も指摘すべき短所である。
どちらも理解した上で遊ぶのなら問題はないだろう。

62点

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