レビュー
特盛りトッピング全部のせ
『COD4』の続編
『モダンウォーフェア2』は特盛りでトッピングがすべてのっかったカレー(牛丼でもいい)みたいなものである。
とにかく量が多く、美味しいモノをてんこもりにした豪勢な食事。
しかし、逆にボリュームがありすぎると消化できる限界を超えてしまう。
あまりにも大量に詰め込まれすぎているのが『モダンウォーフェア2』だ。
個々の要素は文句なしに質が高いものの、絶対量は多すぎて限度を超えている。
シングルもマルチも同じである。
ではまずシングルプレイから見ていこう。
CODシリーズはかつて「戦場を体験する」ことに主眼が置かれて製作されていた。
中でも『COD2』は臨場感たっぷりの音声による演出が際立っていた。
すると、『COD4』でシリーズは方向転換をする。
『COD4』は「大規模部隊による戦争パート」と「エリート部隊による単独行動パート」に分かれている。
戦争パートは『COD2』からの流れを引き継いでいる一方で、エリート部隊パートはヒーローになったかのようなシーンが目白押しだった。
このエリート部隊パートが『COD4』の演出で高く評価されていたと言えるだろう。
まるでハリウッド映画の主人公になったかのような感覚を楽しめた。
『モダンウォーフェア2』でも、二つの場面による演出方法を引き継いでいる。
「市街地を守る陸軍部隊」と「特殊任務を遂行するエリート部隊」の二つだ。
ゲームのつくりは『COD4』の延長線上にあると言える。
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雪山
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強引なプロット
しかし『モダンウォーフェア2』は話のつながりが悪い。
簡単に言うと「○○は××だった!」というシーンが多いのである。
以前の話と現在の話が連続せずに、いきなり「△△は□□だったのだよ」といわれて、プレイヤーは納得できるだろうか。
このような突き放しが何度も何度も次から次へと展開するのである。
しかも主人公や登場人物のポリシーが何も分からないままに、ただただ惰性で敵を探し出して倒すというのが物語の帰結になっている。
見た目こそ硬派な軍事ものであるが、中身は中学生の書いた空想小説である。
なぜチグハグとしたプロットになるのだろうか。
それは最高の演出シーンをプレイヤーに見せるためである。
ファンタジー物語にすることでどんなシーンでも作り出すことができる。
話の流れなどどうでもいいから、圧倒的な量と質でプレイヤーを興奮させるのだ。
場面設定のために話を作っている。
『モダンウォーフェア2』は個々のシーンを切り取ってみると、『COD4』以上に手に汗を握り、興奮できるものばかりだ。
雪山の基地へ潜入して心音レーダーを使いながら敵を排除していくシーンは、吹雪の中を手探りで進む緊張感にあふれている。
EMP爆弾が投下された廃墟のワシントンは、まさにこの世の終わりとも感じられる物悲しく孤独な雰囲気を残していて、CODシリーズの中でも指折りの場面である。
さらにCOD4で問題になった「敵の無限沸き」やガチガチの一本道スクリプトの場面はずいぶんなくなっている。
難易度も下がっているので割と自由に立ち回れる。
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やはりCODシリーズは戦争の再現が上手い
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やりすぎ演出
『モダンウォーフェア2』にはこれでもか、これでもかと考えうる限りのシーンを詰め込んである。
個別のシーンはシリーズ最高のできばえであるが、場面ごとをつなぐ筋が安っぽい。
過剰な演出は「やりすぎ」でもある。
刺激は多ければ多いほど良いというわけではない。
『モダンウォーフェア2』では、本当に息つく暇もないほど次から次へとストーリーが展開していく。
あまりにも忙しすぎる。
すごかったけど終わってみれば何も残らない、そんなゲームだ。
支離滅裂なストーリーを演出でごまかしているだけに過ぎない。
謎をふっかけておいて、すぐにネタばらしはうんざりする。
何かに似ていると思ったらファイナルファンタジー13だった。
ひとつひとつのシーンは素晴らしくとも、全体を通してみると不可解な点が多い。
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スノーモービルにのる
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スペシャルオプスモードは良心か
演出重視のゲームには大きな欠点がある。
どうしてもプレイヤーの自由度を奪うことなしに強烈なシーンを作ることはできないのだ。
したがって、敵をどのように倒していくかといったゲームならではの楽しみが薄れていく。
そこで『モダンウォーフェア2』は「スペシャル・オプス モード」がある。
スペシャル・オプスモードはシングルプレイで使われた場所をもとに、敵を殲滅するなどの目標を遂行するミニミッションだ。
6時間程度で終わってしまうシングルプレイのボリュームを補うとともに、FPSをする楽しさを思い出させてくれる。
難易度は低いものから高いものまである。
ゲーム本編を再構成したモードが用意されているのは特別珍しいものではない。
とはいえ『モダンウォーフェア2』の場合、やや長めの尺をとって作っているので、遊びやすくなっている。
このあたり、物語の流れを無視して場面を構成したことが良い方向に作用したような気がする。
『モダンウォーフェア2』のシングルプレイは全体としてのまとまりに欠けるが、それぞれの場面は映画のよう迫力ある演出はよくできている。
しかし「何度も繰り返してクリアーする」というゲーム的な要素に乏しい。
そのためゲーム的に組み替えたのが「スペシャル・オプス」である。
唐突にバーチャルシミュレーションを行うような感じさせるミッションではない。
本編の延長上のようにすらりと遊べてしまう。
ちなみにスペシャルオプスのほうがシングルよりも難しく作られている。
何度も繰り返して遊べるゲームモードだ。
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ごちゃごちゃした雰囲気は文句なし
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マルチプレイの魅力
マルチプレイは前作COD4から順当に進化している。
特に目を見張るのは「Perkの充実」と「キルストリークの充実」にある。
Perkとはプレイヤーが身につける特殊能力のようなものだ。
速く走れたり、体力が多くなったりする。
COD4と比べると使い道がみつからないネタPerkが減っていて、より実践的になった。
キルストリークは、プレイヤーが死なずに敵を倒し続けるともらえる報酬のことである。
これまた様々な種類が増えていて、戦闘の幅が広がった。
死にまくったときに発動する「デスストリーク」なる特殊能力もある。
もちろん武器の種類も増えていて、かつてないほどカスタマイズの選択肢が多様になったと言えるだろう。
その結果、プレイヤーの個性を出しやすくなっている。
これだけの要素を詰め込んだからこそ『モダンウォーフェア2』のレベル制は意味をなしている。
遊べば遊ぶほど使える武器や特殊能力が広がっていくので、継続的に遊ぶのが楽しくなる。
あたかもRPGをやっているような気にさせてくれる。
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町並みが実に本物っぽく感じる
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ワンマンデンクロとスカベンデンクロでグレポングレポン、これはFPSではない
非常に素晴らしいマルチプレイだが、実は大きな問題がある。
ひとつはレベル制はプレイ時間の長短によって使用武器・能力差を付けることになる点。
しかし詳しくは過去のレビュー(『COD4』や『CODWaW』)で語り尽くしたので、今回は『モダンウォーフェア2』特有の重大な欠点について書いていく。
いまから話すことの方が致命的な欠陥であると言って良い。
『モダンウォーフェア2』の長所であるはずの高いカスタマイズ性がゲームバランスをまるっきりぶちこわしているのだ。
ありとあらゆるPerkやキルストリークを詰め込んだ結果である。
具体的には、Perkのデンジャークローズにワンマンアーミーやスカベンジャーを組み合わせたものが強すぎる。
これはグレネードランチャーをぶっ放すためのカスタマイズだ。
ワンマンデンクロやスカベンデンクロならば、爆風の威力を上げつつ、ランチャーの弾薬を実質的に増やすことができるのだ。
FPSやTPSで使われるグレネードランチャーは、「敵がいそうな場所(出てきそうな場所)」に撃ち込んで相手を排除する。
そこには撃ち合いなんてものはない。
あるのは山勘でグレネードをポンポン放り込むだけである。
オブジェクト系ルールだったら敵が目標に近づいたのを見計らってポン。
グレネードポンポンはFPSではない。
他にもナイフが異常に強くてナイフプレイをしている人がいたり、キルストリークが強すぎるためにキャンパーが大量発生している。
(ついでに言うとPS3版はチート・ハックが蔓延していて、メーカー側から「遊ぶな」という警告が出ている)
何でも取り込めばバランス取りが難しくなるのは当然だ。
シングルもマルチも比類ないほど贅沢に作られた『モダンウォーフェア2』。
しかし最終的には詰めの甘さが垣間見られるゲームであった。
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何が何だかわからない場面も多い
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