レビュー
すべてが並み以下の出来だが、手軽に遊べるCOOPゲームとしてはアリ
感触の悪さ
バイオハザードシリーズはもともと「制限の中で足掻く」ことをゲームデザインの中に取り入れてサバイバル感をだしていた。
しかし『4』以降は主人公の攻撃力が飛躍的に上がり、『5』からはプレイヤー二人による協力プレイを取り入れることによって、雰囲気が変わってきている。
『オペラク』もそのようなバイオの系譜に位置づけられる。
つまりTPSのようなシューターが生み出す「敵を倒す楽しさ」と、他プレイヤーと協力することで生まれる「臨機応変に動く楽しさ」を更に推し進めたのである。
最大4人が参加できるカバーアクション主体のTPSとして『オペラク』が作られたのは何の不思議でもない。
ところが出来上がった製品は欠点がかなり目立ち、誇るべきバイオの系譜に連ねてしまうと恥ずかしいゲームだった。
2012年に発売されたTPSにしてはみすぼらしい要素をふたつ指摘しよう。
第一に、
戦闘モーションの悪さである。
『オペラク』はカバーアクション中心のTPSなので、敵や味方はカバーを行いつつ時折身体を乗り出して銃撃を行う。
このカバーと銃撃に移行するときのモーションが極めて悪い。
特に敵キャラが銃撃に移行するとき、動作が「飛ぶ」。
なめらかに動かず、立ったりしゃがんだりしているのである。
他にも自分で動かすキャラの緊急回避モーションが「飛ぶ」。
第二に
音の方向と距離がわからない。
おおざっぱな方向しかわからないので、音で味方がどこにいるのか特定しにくい。
外見に関する部分はゲームの第一印象を大きく決めてしまう。
一流ゲームみたいな質を要求するわけではないが、それでも誰もが気になってしまうほど粗悪である。
とはいえ2003年に発売された、とかであれば問題ないレベルなのだが。
|
近接攻撃のモーションだけはよくできている。近接攻撃は『4』以降のバイオシリーズの特徴だ。
|
中途半端な演出
FPSとTPSを比べると、TPSは豪勢な演出をするのに向いている方式である。
というわけで『オペラク』もいくつかの演出に凝っている。
まず、
出血状態になったときの演出はすばらしい。
出血状態とは敵の攻撃をうけたときに一定確率でなってしまうステータスだ。
運悪く出血状態になってしまったプレイヤーへむかって、ゾンビがものすごい勢いで群がってくるようになる。
どこに隠れていたのかと思うほどの物量でゾンビが襲いかかってくるのだ。
襲われる方はたまったものではなく、まさにホラーゲームならではの恐怖を味わえる。
加えて味方や人間の敵も出血状態になることがあり、襲われているキャラを助けるなり放っておくなり自由だ。
他には暗闇で戦わなければならないシーンや敵がほぼ無尽蔵にわき出てくる脱出シーンは一時も気を抜けないサバイバル感を演出できている。
しかしサバイバルホラーとしての演出はそれっきり、である。
ほとんどの場面はプレイヤーの目の前にゾンビや人間の敵が現れるだけだ。
こちらの意表をつくような、つまり恐怖を煽るような出方ではなくて、マップの奥の方からわらわら出てくるだけなのだ。
そしてストーリーを演出するためのカットシーンや語り方が粗雑だ。
キャラのモーションが悪いとか、レオンやジルのモデリングが『5』や『6』に遙かに劣っていて残念なのはまだ良いとしよう。
問題はそこではない。
『バイオハザード2』や『3』のキャラクターとクロスオーバーする際の演出がだめなのである。
例えば『2』のキャラを抹殺しようと命令が下って追いかけるシーンがあるとしよう。
ある程度進めると、なぜか『2』のキャラが棒立ちをしている。
もし命令通りにそいつを倒そうとするのなら、銃で撃つ絶好のチャンスだ。
だが銃で撃ってもキャラにはあたり判定が無く、「銃弾が当たらない」。
ではどうすれば先に進めるのだろうか?
正解は『2』のキャラに近づいて次のカットシーンを出現させること、である。
まったくもってゲームのストーリーと整合性のとれない手抜きシーンだ。
もし違和感なく演出するとすれば、『2』のキャラは画面の先に少しだけ見えるだけで追いかけるしかないとか、銃弾を当てた時点でイベントが進行してしまうようにするとか、色々なやり方はあるはずだった。
このような粗雑なシーンがちらほら垣間見えてしまう『オペラク』は『2』や『3』のファンであればがっかりしてしまうに違いない。
ついでに言えば
キャラクター同士がクロスするシーンの絶対量が少なすぎる。
『2』や『3』を知っている人間としては極めて残念だ。
ましてや『オペラク』内で敵対する勢力にいたってはキャンペーンモードではまったくクロスしない。
「対戦モードでは二陣営に分かれて戦うから、キャンペーンでは出会いもしません」と開発が考えているわけではないだろう?
事前の宣伝で期待させておいた要素が期待はずれだったときの落胆は大きいものだ。
|
大量にあらわれるゾンビを撃つ!ゾンビのプルプルした動きはなかなか見応えがある
|
クラスシステムならびにCOOPの必要性
見た目ダメ、演出ダメ、ならばゲーム自体が面白ければどうってことないかもしれない。
『オペラク』は斬新さや際だったバランスがあるわけではないが、平凡なTPSとしてよくまとまっている。
しかしクラスシステムはキャンペ−ンよりも対戦向きに調整されているらしく、キャンペーンではあまり意味がない。
また、キャンペーンがCOOPに特化しているようでいてそこまで特化しているわけでもない。
まずクラスシステムを見ていこう。
キャンペーンで操作するキャラクターそれぞれが異なった特殊能力をもっている、のだが、特殊能力が威力を発揮する場面が殆ど用意されていない。
要はハマリ防止のためにマイルドな調整をになっているのだと思われる。
これのせいでCPUに任せていても困ることがない。
いやむしろ『オペラク』独特の難易度調整システムのせいで、手慣れたプレイヤーでない限りCPUを入れておいた方が楽になってしまっている。
なぜなら『オペラク』はプレイヤーが増えれば増えるほど、敵に与えるダメージが減り敵から受けるダメージが増えるような調整を行っている。
人間が増えて難易度が低下しないようにしているのだ。
逆に見ると二人くらいでやった方が、高い攻撃力と高い防御力で敵を落ち着いて倒せてしまう。
『オペラク』がCOOP特化になっていない理由は簡単だ。
味方と呼吸を合わせて強大なボスを倒すとか、遠くの味方に援護射撃を行うとか、そういう味方との連携を促すシーンを用意できていない。
残念ながら『オペラク』は単に敵が大量に襲いかかってくるから味方の助けがいるだけ、なのである。
|
お馴染みのタイラントさん
|
リプレイ重視のゲーム
ただCOOPを何度も遊ぶことを重視したデザインになっているため、『オペラク』は救われている。
何度も遊べるように作られている点を五つ指摘しておこう。
第一に、COOPゲームというものそのものがもつ魅力である。
やるたびに異なる味方がいるおかげでプレイが単調になりにくい。
クラス制を採用しているのも協力する楽しさを強調するためだろう。
第二に、スコア表示の存在だ。
他人にも自分のスコアを自慢できるので、高いランクを取ろうとする意欲がわく。
第三に、アンロック武器やアンロック能力のシステムだ。
ポイント稼ぎのためにCOOPをやる意味が出ている。
第四に、かなり「飛ばせる」デザインになっている点も指摘したい。
慣れてくると無視できる敵、さっさと倒せる敵の存在が分かってくる。
高い評価をとるためにどこで敵を倒すか無視するかを考える余地はある。
第五に、キャンペーンモードのチャプターごとの短さである。
一回30分で終わるチャプターが5つ用意されている。
次の項目で述べるダウンロードコンテンツを含めればその数は二倍になる。
だが
『オペラク』におけるリプレイ性の根幹はゲームにランダム性を加えると言った仕掛けを用意しているのではなく、協力をする味方の存在によって保たれている。
言い換えるならば斬新なシステムを入れるとか、極めて高度なAIを入れるとか、無限の攻略法を用意しているわけではない。
どこかで見たことあるような、しっかりとしたものを組み入れているだけなのだ。
|
あのキャラを守る場面も
|
終わりに−追加コンテンツの存在
ゲーム自体はそこまで良いわけではないが、繰り返し遊べるようには作られている。
敵の出方には起伏があって単調になりにくく、何度かプレイしても飽きることはないだろう。
売り上げは全世界で200万本ということもあって週末になれば全世界の誰かしらとCOOPはできる。
もちろんフレンドを誘って遊んでもいい。
一回あたりのプレイ時間も短いし難易度もノーマルなら控えめなため、COOPをやりたい人にはお勧めできる。
しかし最悪なことに
ダウンロードコンテンツを買わなければ本編を遊び尽くせない。
というかここが各種ユーザーレビューで散々叩かれている根本原因だと思ってもらって良い。
2000円で購入できるダウンロードコンテンツは、最初からパッケージに入っているキャンペーンモードと同じくらいの量が収録されている。
カプコンはゲーム発売時点で完成していたと思われるコンテンツをわざわざ別売りにしているのだ。
ダウンロードコンテンツは初期コンテンツをクリアした人向けに調整されていて、面白く仕上がっている。
ホラーゲームっぽさは段違いで上であるし、敵がたくさん出てきていて倒しがいがある。
『オペラク』を遊びたいのならばぜひともダウンロードコンテンツを購入して欲しい。
|
ゾンビに襲われたら感染することがある。さっさと治療しなければならない
|