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イースV ロスト ケフィン キングダム オブ サンド


ジャンル:ARPG
機種:PS2
発売年:2006年
開発会社:タイトー



レビュー脱稿日2009年6月 最終更新日2011年3月

紹介

『イースV ロスト ケフィン キングダム オブ サンド』はタイトーが製作と販売を行ったゲームだ。
イースシリーズといえば日本ファルコムの看板アクションRPGである。
今作『イースV ロスト ケフィン キングダム オブ サンド』はタイトーが制作を担当している。
ファルコムは基本ノータッチらしい。
PS2で発売されたイースIII・IV・Vはいずれもタイトーがリメイクを行っており、タイトー版イースとも呼ばれている。
巷で言われているようにタイトー版イースはどれもが低水準のゲームだ。

別にここで述べる話ではないかもしれないが、タイトーの開発力低下について少し触れておく。
タイトーは90年後半頃から優秀なプログラマーなどが次々と退職していた。
さらに2000年以降は大規模な人員削減も行われている。
かつてはアーケードゲームでは人気作を次々と生み出していたタイトーは、90年後半以降はパッとせず、2000年代に至っては普通のゲームを開発することすらできない状況になっていたとも言える。
そんな中、経営が悪化したタイトーはスクエニに買収されることとなったわけだ。
会話シーン
今回はケフィンという幻の街に関するストーリーだ
開発力が低下したタイトーの作ったイースVは前作のタイトー版『イースIII』や『IV』よりも多少マシとはいえ、平均以下の出来となっている。
具体的な欠点はレビューで触れるとする。

ゲームシステムは一般的なアクションRPGそのものだ。
普通のアクションゲームと違い、敵を倒すと経験値がたまっていき、レベルアップする。
レベルが低いと敵からのダメージが多くて苦戦するので、適宜レベル上げをしつつゲームを進めていく。
同じように、武器や防具も買いそろえていかないと敵にダメージすら通らなくなったりする。
こういった仕様はアクションRPGとしては割と見られるバランス取りである。
だから普段の戦闘が面白いか面白くないかが評価の大きな分かれ目となる。
ふぃーるど
フィールドの様子
グラフィックは2D絵をそのまま3Dに落とし込んだようなものだ。
プリレンダリング気味のグラフィックにしたことによって見栄えが良くなっている。
視点は斜め見下ろし型なので、視野は広い。
音楽はSFC版のアレンジだそうだ。

『イースV』には『III』や『IV』のゲームデータとデータのリンク機能がある。
リンクすれば、過去作の音楽を聴きながらイラストギャラリーを見るモードが追加される。
またゲーム本編で使えるアイテムを入手することもできる。
ただ当たり前だが、前作のセーブデータがなければ見ることができないのには注意。

PS2の末期に出たゲームなのであまり中古に出回っていない。
しかしプレミアにはなっておらず、捜そうと思えばすぐに手に入る。
じゃんぷ
静止画だと結構ギザギザしているが、動いているとそれほど粗は見えない

レビュー

単調すぎる。ここまで単調なのも珍しい

『イースV』のつまらなさとは何か

RPGというのは、つきつめればレベル上げのためにひたすら同じ作業(戦闘)を繰り返すジャンルであるとも言える。
だからこそ作業自体が面白くなければならないし、作業に感じさせないための仕掛けは必要だ。
先に進めたくなるストーリーや魅力的な世界の設定はやはり大事なのだ。
イースVは戦闘が面白くない上にストーリーの見せ方・演出も悪い。
ただ、このイースVというゲームは見た目はそこそこ良くゲームバランスも崩壊していないので、感触は悪くなかったりする。

駄作とされるゲームにはいくつかのタイプがある。
イースVはその中でも、『単調すぎてつまらない』種類に当てはまる。
プレイヤーは面白くもないことを何時間も繰り返しやらされるのだ。
ぼす
ボス戦のシーンだ

まったく面白くない戦闘

敵を見つけたら持っている武器で殴るだけ、というのが『イースV』の戦闘の印象だ。
攻撃には明確なコンボのようなものが無い。
一応説明書には通常攻撃と魔法攻撃を組み合わせることでコンボが生まれるとか書いてるが、ただ単に攻撃の後に魔法が発動するだけなので、コンボにすらなっていない。
しかも通常の敵は、適正レベルと装備ならば3回程度の攻撃でさっさと倒せる。
そもそもコンボを行って敵を攻撃する必要はない。
魔法攻撃については威力がかなり低い上に当てにくく、一部のボス戦以外では使い勝手が悪い。

このような攻撃の当てにくさは『イースV』においてかなりストレスがたまる仕様だと思う。
移動に関してはアナログスティックで自由に移動できるのに対して、攻撃はほぼ8方向に限定されている。
つまりアナログスティックを使った調整に意味はない。
十字キーで8方向移動・8方向攻撃をしなければ敵に攻撃を当てられないのだ。
『イースV』はせっかく3Dを使ったゲームなのに、ゲーム自体が8方向への攻撃を前提とした「昔からある擬似3Dゲーム」と同じ仕様になっている。
このようなズレによって、攻撃が当てにくいったらありゃしない。
魔法
魔法もあることにあはる

使いまわしのマップと敵

さらに単調さを助長しているのが使い回しのマップと種類の少ない敵である。

敵については攻撃パターン別に8種類ぐらいしかいない。
それぞれの敵は明確な違いというのもあまり存在しないので、プレイヤーは同じような敵ばっかりと戦闘していると感じるはずだ。

マップの使い回しはかなり酷いレベルだ。
簡単に言うと、イースVは十字路と十字路から一方向ないし二方向の道を削った小さなマップをつなぎ合わせているだけだ。
特にダンジョンの使い回しはダンジョン自体の長さと相まって、かなり気になる。
どこへ言っても同じようなマップなので、マッピングをするか短い時間で一気にやらないと確実に迷う。
ダンジョンの仕掛けもかなり単調だ。
あっちへ行って仕掛けを作動し、反対側のドアを開けて次のフロアへ行くという「お使い要素」しか用意されていない。
単調なダンジョン
問題の単調なダンジョンがこれ。すさまじく長いです

イベントも使いまわし

イベントも同じものが多く用意されていて、単調さに拍車をかけている。

使い回されているのが「護衛イベント」である。
これはダンジョンの深部に特定のNPCと連れて行ったり、ダンジョンからNPCを自由を脱出させたりするイベントだ。
NPCはプレイヤーの動かしたキャラクターの後ろからのそのそついてくるので、敵を排除するなり敵のいないところを縫っていけば楽にクリアできる。
最初に護衛イベントがあったのはアクセントという意味ではかなり良かった。
しかし『イースV』はクリアするまでに4回も護衛イベントがある。
同じのを4回もやるとさすがに疲れてしまう。
しかも最後の二回はとても長いダンジョンの深部にいるNPCを救出し、元の場所に戻ってくる往復イベントだ。
長くて単調なダンジョンを嫌々進み、見飽きたイベントを消化しつつ同じ道を元に戻るという地獄が待っている。
今まで述べてきたことを読めば、『イース』がとにかく単調なのがおわかりいただけるだろう。
護衛
護衛イベントのシーン

盛り上がりに欠けるストーリー

じゃあストーリーはどうなのという話になる。
前半は淡々としているものの後半は題名にもある「ケフィン」関連でなかなかの盛り上がりを見せてくれるので、クリアしたときは達成感があって気持ちが良い。
だが、盛り上がれるのは最後の最後だけだ。
ゲームの殆どが大して面白くもないストーリー、単調なダンジョンと演出に費やされている。
最終ボス間際になって見せる盛り上がり方も、見方を変えればラスボス直前直後の自分語りに過ぎなかったりする。
聞きたくもないのにアレコレ聞かされても人によっては興味を持てないと思う。
私の意見としては、中盤から情報を小出しにしていったほうがプレイヤーの興味を損なわずに済んだと思う。

イースと言えば音楽、ということで『イースV』もそれなりの質の音楽が用意されている。
注文をつけるとすれば、ダンジョンの曲数が少ないことと地味であることか。
悪くはないのだが、特に終盤は音楽で雰囲気を醸し出して欲しかった。
ドギ
相棒というか友人のドギも健在

なにがどうしてこうなるのか?

イースVの欠点は全体のデザインの悪さだと思う。
見た目は綺麗で大きな不具合がないゲームなのに驚くほど単調なゲームに仕上がっているのは、ゲームを設計する段階に欠点があることを物語っている。
戦闘が単調でもストーリーで魅せたり、面白いダンジョンやイベント豊富に用意すればもっとマシなゲームになったはずだ。

クリアした後に流れるスタッフロールを見ると、結構少ない人数で製作しているのがわかる。
金をかければいいという話ではないが、予算や時間の制約はあったのだと予想できる。

『イースV』は『III』や『IV』が発売してから一年ほどで発売されており、三つのセットを買うとオルゴールが当たるキャンペーンも行われている。
前作の発売と時期をあわせるために、なるべく早く発売しようとした結果なのかもしれない。

あまりにも同じような展開が連続するのが『イースV』である。
人数や時間の制約はあったにせよ、とても世に出して評価されるようなゲームではない。
目玉の敵を倒す
攻撃を当てにくいのでジャンプ切りばかりした方が良い

まとめ

単調さが目立つ。
無駄に時間をつぶしたい人ならばやっても良いだろうか。
『イースIII』や『IV』をもっているのならリンク要素目当てにするのも手。
面白さが完全に欠如しているゲームだ。
イースファンは買ってはいけない。

30点

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