レビュー
わりとツボを押さえているが、荒削りな箇所が極めて多い
PS2の性能の限界?
『キルゾーン』は荒いところが非常に目立つゲームだ。
ただ、そうした荒さに隠れた魅力も持ち合わせている。
ゲームを始めて間もない頃、プレイヤーの誰もがPS2最高のグラフィックス表現に唸ることとなる。
しかし銃撃戦でのフレームレート低下が著しくてグラフィックスの美しさなんてどうでも良くなる。
いくら最高の映像美をみせようとも、ガクガクしてまともに動かしにくくてストレスがたまったり、目が疲れるという自体があってはダメだ。
ゲーム内においてはフレームレートの上下動は無くすことが理想だ。
それがたとえ常時1秒間に30回更新(30fps)だとしても、常に同じであればストレスは少なくなる。
こういったフレームレートの上下動があると、遊ぶほうとしてはつかれやすい。
特にアクション要素の濃いゲームでは、フレームレートの上下動は操作に悪影響を与える。
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PS2最高クラスの映像を見よ!
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フレームレート低下に加えて気になるのはテクスチャーの張り遅れである。
ゲームの中盤以降はだだっ広い場所での戦闘や大人数が入り乱れる戦闘地帯がおおいため、この張り遅れがけっこう目立つ。
のっぺらぼうのキャラクターや、近づかないと現れない障害物なんて見ているだけで滑稽なのだ。
「フレームレート低下」、「テクスチャの貼り遅れ」という2つの問題は、簡単に言えばPS2のスペック不足が原因である。
しかしPS2の性能を考慮しなかった開発側にも責任はある。
それとグラフィックスだけに関して言えば、このゲームよりもすごいゲームが存在する。(『Black』や『God of War』など)
もし仮にキルゾーンがPS2では最高のグラフィックスだとしたらフレームレート低下はやむを得ないものはあったと思うのだ。
ところが『Black』や『God of War』は『キルゾーン』並みかそれ以上の映像美を実現し、急激なフレームレート低下も少ない。
こうしたこと考えてみると、フレームレートの問題は実ゲーム中でのストレスに加えて他のゲームと比べての技術的問題と合わさって、『キルゾーン』の大きなマイナスポイントとなっている。
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リロードモーションはど派手
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詰めの甘さ
そしてもう一つ気になるのは全体的に漂う安っぽさである。
例えば銃を撃ったときに重厚から閃光が起きる(マズルラッシュ)。
残念ながら『キルゾーン』では固定絵を出すだけだ。
どうしてこんなところがお粗末になっているのかが不可解だ。
他にも映像の美しさの割に
演出は地味で、音楽が殆ど使われないのも寂しい。
ゲームにおいて音楽はその場の雰囲気を出したりするために非常に重要だ。
キルゾーンではゲーム中にBGMがかかることがない。
嘘ではない。本当だ。
ゲーム中に流れる音は敵味方の銃声とかけ声だけだ。
このような音声に関しては、メダルオブオナーのような第二次世界大戦の戦場を舞台とするゲームが舞台的にも優れているのは言うまでもないだろう。
だからこそキルゾーンではBGMを流して緊張感などを醸し出す必要はあった。
ちなみにBGMが流れる場面はステージの合間に流れるムービーパートだけだ。
そこではSF映画のようなオーケーストラ風の壮大な音楽が流れる。
これをゲーム中に流してくれよ。
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激しい戦闘でも銃声しか聞こえない
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『キルゾーン』はオリジナリティ不足だ
ゲームの部分だけを見ると、やや単調ながらなかなか面白い。
技術的・演出的なところに問題はあってもゲームの根幹は比較的しっかりとしている。
FPSというジャンルは単調になりやすい。
極論すれば敵を見つけて攻撃し、隠れるだけだからだ。
したがってプレイヤーを楽しませるためには単調さを軽減するための仕掛けを数多く用意したり、短い時間の密度を濃くする必要がある。
キルゾーンでは荒野、市街地、海岸、軍の基地、ジャングル、雪山などの多彩な場面が用意されている。
ついでに言うと『HALO』みたいな使い回しによる水増しは全くない。
ミッションの種類も豊富で、市街地戦では建物を遮蔽物として攻略を行い、ジャングルでは木に覆われて見えにくい場所で敵との遭遇戦が行えたりする。
場面によっては第二次世界大戦の「オマハビーチ」に刺激を受けたような防衛ミッションや、固定タレットを利用して大量の敵を捌く場面もある。
性能が違うキャラクターをステージによって使い分ける面白さもある。
ところ
が多様なシーンはまだしも、このような防衛、固定タレットの使用は『キルゾーン』独自のものではない。
第二次世界大戦を舞台にする『メダルオブオナー』や『コールオブデューティー』にて、既にさんざん繰り返されているのである。
というかFPSならおなじみの、王道の、基本的なシーンと言っても良いだろう。
つまり『キルゾーン』はグラフィックス以外に、あまり目新しさがないのだ。
なので既視感を強く感じてしまう。
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いやほんと映像は良いんだけどね
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ここまで書いてきて気づいたのだが、ゲームシステムやバランスについて全く書いていなかった。
映像や音楽、技術的な問題、そして演出の話ばかりだった。
その理由としては『キルゾーン』自体が没個性的で、説明をあまり必要としないゲームシステムになっていることが大きい。
具体的にぐだぐだ書いても面倒なので簡単にまとめてしまう。
敵のダメージが比較的大きくて、敵に突っ込んだら簡単に死んでしまうようなバランスだ。
その分しゃがんだり、遮蔽物を使用したり、こちらに気づいていない敵に先制攻撃をすることでダメージを減らすことが出来る。
体力は一定値まで自動回復するが、それ以上はメディキットを拾わないと全快しないシステムを採用している。
過去の名作を焼きなおした、至って普通のFPSだ。
他のゲームと比べて際立つ特徴は、味方が常についてくることと、マップ開始時にキャラクターを選べることだろうか。
この味方は強すぎず弱すぎずのバランスがちょうど良い。
役に立つ立たないと言えば、どちらかというと立たないほうだが、味方が強すぎると自分はすることが無くなるのでこれくらいの方が良い。
そして仲間たちはマップ開始時にプレイヤーとして選択可能でもある。
選んだキャラクターによって進行ルートが変わったりする。
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グレネードランチャーはやはり強力
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4人いる仲間は能力が少し違っているので、単調になりがちなゲーム展開へのほどよいスパイスになってくれるはずだった。
しかし、実際はキャラクターごとのゲームプレイの変化がそれほど大きくなかった。
耐久力や命中率、最初から持っている武器が変化するだけで、ゲームが一変するような劇的な変化がない。
キャラクターごとにルート分岐は用意されているものの、絶対数が少ない。
コンセプトは納得できるのだが、もっと踏み込んで作り込むべきだったと言える。
重装備キャラクターを選んだときはひたすら撃つだけになってしまい、とりわけ単調さを感じやすい。
そして1つのマップの後半になると最初から携帯している武器の弾薬がなくなり、敵の武器を使うしかなくなるのも気になる。
これはキルゾーンに限ったことではなくて、ほとんどのFPSに共通する変なところだ。
マップのスタート時に持っている武器をずっと使っていたら弾切れを起こすから、敵の武器を拾って使い、結局のところ「敵の武器ばかり使っている」とかどう考えてもおかしい。
『キルゾーン』の魅力は何かというと、ハードSFの世界設定である。
ゲーム自体はそこそこ良い感じの出来ではあるものの、新しさに欠けていて終盤は単調さも出てくる。
しかしPS2にしては美しいグラフィックスや敵や銃のかっけえモデリングはかなり魅力的だ。
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初期武器は強力だが弾数がすくない
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