レビュー
遊べることは遊べるがひどい有様のゲーム
まれに見るひどさ
アメリカ製のゲームは総じて質が高いと勘違いしている人もいるのだろうが、すばらしいのは一部のメーカーが制作したものだけである。
そのことを分かるためには『Turning Point: Fall of Liberty』を買うのが手っ取り早い。
2000円程度ドブに捨てることになるが、高くはない授業料だ。
しかも面白いことに開発したSpark Unlimitedは、PS2のCall of Dutyを開発した会社でもある。
この移植は確かに評価は悪かったが、それでも平均的な点数だった。
初めての自社開発製品であることを差し引いても『Turning Point: Fall of Liberty』はかなり酷い出来である。
かつて有名作の移植を手がけた経験がほとんど生かされていない。
とはいえ『Turning Point: Fall of Liberty』はCODを参考にしたゲームであることは言える。
舞台が架空になっていることを除いて、ゲームの内容は紛れもなく「CODによって作られた第二次世界大戦シューター」と同じである。
『Turning Point: Fall of Liberty』の問題は、名作をなぞるにしても最悪のなぞり方をしている点にある。
使い古された仕様を極度に劣化させて使っているため、わざわざ『Turning Point: Fall of Liberty』を遊ぶ理由がないのだ。
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このゲームのマズルフラッシュは、見て分かるとおり一枚絵です
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魅力を生かしきっていない
このゲームの名誉のために良い点を少しだけ述べておこう。
まずはナチスドイツがアメリカに攻め入ったらという舞台設定だ。
ゲーム冒頭で自由の女神が破壊されるシーンはかなりインパクトがある。
私がこのゲームに興味をもったののも魅力的な設定があったからだ。
もう一つは近接戦闘である。
主人公と敵がとっくみあいをするだけに見えるが、場面によっては敵を崖下に落とすなど特殊な演出へと移行する。
ところがTPでは良い点がまったく生かされていない。
せっかく仕様書などで斬新な設定とシステムを盛り込んだはいいが、まったくゲーム中に面白さとして盛り込まれていないのである。
世界設定の面白さは冒頭の自由の女神を爆撃するシーンだけだ。
近接戦闘は使う場面が少しだけである。
いくら目新しいシステムをも盛り込んでも使わなければただのゴミクズである。
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敵を盾にして進むことは出来るが数多くある選択肢のひとつにすぎず、使える場面がほとんどない
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技術力の問題
私はよほどひどいグラフィックでなければ酷評はしないと決めている。
少人数で制作したゲームにおいて、映像は最も犠牲になりやすいからだ。
しかしバグが残っていたり極端にパフォーマンスが悪いゲームについては批判させていただく。
『Turning Point: Fall of Liberty』はPCゲームに移植されているのに、コンフィグが不十分である。
グラフィックの設定は解像度しか指定できないので、スペックが低いユーザーを完全に切り捨てている。
しかもインターフェイスがマウスを全く考慮していない作りである。
十字キーで操作するかゲームパッドで操作した方が楽な有様。
さらにPC版で重要なマウス感度設定も、いい加減すぎて適切な感度に設定できない。
このようなコンシューマーからそのまま移植しただけのゲームは、それだけで低評価を下したくなってくる。
『Turning Point: Fall of Liberty』はパフォーマンス面も悪い。
不必要に重くなるシーンがちらほらある。
また、マップの途中でロードに入ると必ず2秒以上一旦停止してしまう。
ゲームがフリーズしてしまったのではないかと不安になる。
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敵の造形はまぁまぁ良いかな
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コールオブデューティのパクリなのに、参考にした点が全くない
さてゲームの中身については、超劣化したコールオブデューティーを想像してもらいたい。
やったことがなければ一本道のシューティングゲームを考えればいいだろう。
自由度を追求せずに一本道を選択するのはゲームバランスの追求や演出をするためである。
ところが『Turning Point: Fall of Liberty』はどっちもダメだ。
TPでは敵に向かって銃を発砲しても全然当たらないのにも関わらず、サポートする仲間や豊富な銃弾が用意されていないため、残り少ない弾数を当たらない銃でやりくりしなければならない。
あえてプレイヤーにストレスをかぶせているようなものだ。
銃弾にたいする希少性をだすならば、見返りとして銃の命中率を上げるなどの措置がなくてはプレイヤーは疲弊してしまう。
演出はお手本のCODをまったく参考にしていないので、本当に家庭用とはいえCODを作ったのかと疑いたくなる。
ゲームを始めて間もない頃の摩天楼で敵軍機が爆撃を行うシーンと、町中を駆けるシーンはそれなりに面白い。
しかし戦争系FPSならおなじみの仲間との共闘や、手本となるCODならおなじみの車両で逃げる場面のような盛り上がる山場が序盤の序盤にしか用意されていない。
ゲーム全体の盛り上げ方をしっかりと考えるべきであった。
クリアまでの時間が短いこともあり、エンディングが唐突に始まるのも納得いかなかった。
それならばもうすこし尺をのばしてでも盛り上がる演出を入れてほしいものだ。
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顔が怖い
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三人称視点の不必要性
演出については「なぜか唐突に三人称視点になる段差乗り越え」ははずせない。
『Turning Point: Fall of Liberty』はジャンプが存在しない。
そのかわりちょっとした段差をよじ登るためには、近づけば自動的に三人称視点となってのぼってくれる。
こいつがまた問題を秘めている。
少しでも段差があれば容赦なく三人称視点に移行するのだ。
うざったらしいことこの上ない。
ついでに言うとはしごを登ったり、パイプを伝ったりするシーンでも三人称視点になる。
こういううざったさと解決する方法はある。
例えば、最初からこんな演出は用意せずに、ジャンプなだと素直に入れたゲームを作るか、それともジャンプやパイプ伝いをしないようにマップをデザインすることにある。
しかも『Turning Point: Fall of Liberty』では主人公にキャラクター性がまったくない。
これでは三人称視点を使って主人公をプレイヤーに見せる意味がないのである。
建設作業員という立場があるだけで、ゲーム中はロクにしゃべらないし、レジスタンスとの共闘も意味が分からない。
三人称視点は演出面でまったく生かせていない。
もちろんゲーム的な利点、例えば操作しやすくなることもない。
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これが三人称シーン
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銃に関するダメなところ
FPSとして大事な銃のモデリングはしっかりしている。
だが、発砲音がショボくて銃弾が当たったエフェクトが弱いため、自分の撃った銃が相手にあたったかが分からなくなっている。
しかも
銃のマズルフラッシュは数パターンの絵でしか表現されていない。
透明処理が施されていないので、ただただ見づらいだけだ。
なぜかTPの世界では金網に銃弾やロケットランチャーを撃ち込んでも通過するようである。
人は金網を超えられないのにロケットは素通りするという物理法則はすごいと思う。
ここは透明化しなくていいよ。
極めつけのダメなところは固定機関銃の装弾だ。
固定機関銃は横に長々と銃弾をベルトでつないでいて、銃を撃つたびにベルトから弾が装弾されるようになっている。
普通のゲームなら弾が入ったベルトが銃の中に移動し、そこから薬莢が排出される。
『Turning Point: Fall of Liberty』はどうか。
ベルトが上下に波打つだけで銃弾が装填されないのだ。
銃をひたすら撃つ横で、ベルトにつながれた弾薬がさながらでかいミミズがうにょうにょしているかのように、うごめくだけなのだ。
ここはもうひたすら笑ってしまった。
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これがミミズのたうちシーンだ!ちなみに機関銃の前へ行くとどこからともなくダメージが積み重なって死にます
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オドロキのクソさ
他にも敵の挙動が変だとか、AIがクソっぽいとか、いったん敵を殲滅した後に殲滅したはずの場所から敵が湧いてくるとか、CODによってならボタン一発で済む爆弾設置に面倒くさい手順を踏む必要があるとか、まだまだ色々とある。
とにかくダメなことだらけでどうしようもないのである。
FPSなのでそこそこ遊べてしまうことは確かだし、ゲームの進行を妨げるようなクソっぷりがないことがせめてもの良心なのかもしれない。
とまあボロクソに叩いてきた『Turning Point: Fall of Liberty』は、紛れもなくクソゲーハンター(?)の魂を揺さぶってくれると言える。
このゲームで救えないのは「比較的予算をかけて作られたゲームである」事実だ。
元CODの外伝を開発した人たちが35万ドル(3500万円)というアンリアルエンジンのライセンス料金を支払い、三機種へマルチ展開し、フルプライスで販売したのである。
宣伝費も結構かかっていそうだ。
もし、『Turning Point: Fall of Liberty』が2002年前後にPS2で発売されていたらクソ一歩手前で済んだかもしれない。
しかし歴史のifをゲームで再現するのは自由だが、現在にifはないのだ。
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このゲームに赤ドラムあるけどまともに使えたのは一回かそれくらい。これはダメだね
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