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The Elder Scrolls IV: Oblivion
(エルダースクロールズ4 オブリビオン)


ジャンル:RPG
機種:PC
発売年:2006年
開発会社:Bethesda Softworks

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2008年11月 最終更新日2011年3月

紹介

『The Elder Scrolls IV: Oblivion(以下オブリビオン)』はBethesda Softworksが開発と販売をしているRPG。
日本にいるとなじみはあまりないのだが、海外では評判がとても良いRPGシリーズの4作目である。
4作目である『オブリビオン』はゲーム機への本格的なマルチ展開もされ、それもあってかシリーズで最も評価が高く、プレイした人口も多い。

ゲームに収録されている文章量が膨大なため日本語へローカライズすることは採算上厳しいとされていた。
しかし『オブリビオン』の海外における評判が高まったこともあってユーザーによる署名運動が行われた結果、スパイクによってPS3とXBOX360版の発売がされた。
どうもこのゲームは日本でも結構売れたみたいで、後にBethesda Softworksが直々日本法人を作っている。
現在はベセスダの日本法人が販売を行っている。

なおPC版は日本では正規代理店が存在しないので輸入された英語版を買うしかない。
有志によって作られたPC版を日本語化するMODはあるものの、その膨大な文章量のためゲームの文章すべてが翻訳されているわけではない。
とはいえ未翻訳部分はゲーム中に読める本などの部分に限られており、ゲームを進行する上では障害にならないだろう。
MODを適用した状態
『オブリビオン』(というか海外のRPGはおおむねこの傾向が見て取れる)は日本で作られているRPGとは別の方向性をもつRPGである。
日本のRPGは主に一方通行で奥深いストーリーや印象的なキャラクター、独自の練り込まれた戦闘システムを採用することでゲームがプレイヤーを引っ張ってくれる。
一方で『オブリビオン』は、様々な目的が与えられるもののどれからやっても良いという自由度の高さを特徴としていて、戦闘部分やストーリー、キャラクターが非常に淡泊である。
そのかわり自由度の高さを生かして自分の好き勝手に進めることを楽しめるので、プレイヤーがゲームの中で楽しみを見いだしていかなければならない。
最近は日本産RPGがずいぶん前から飽和状態でシステム的にも行き詰まっている感があり、新鮮味のある『オブリビオン』のようなゲームも、日本で評価されてきている。

『オブリビオン』はやることを把握するのが難しい。
大抵のレビューを読んでみれば、自由度の高さを面白いところとしてあげているだけでどのように面白さに繋がっているの書かれていない。
これではゲームをやる前から何を楽しむゲームなのかわかりにくい。
だから私の完全なる主観を織り交ぜて『オブリビオン』を一言で言い表してみる。
おそらく、『オブリビオン』は自分なりのルールをつくり、その上で遊ぶ「○○ごっこ」である。
ゲームプレイにおいてプレイヤーに示された選択肢が非常に多いので、多くの場合自分のルールに基づいて行動をすることができる。
つまりはゲーム内で操るキャラクターに性格やなにやらを自分で設定し、ロールプレイ(役割を演じる)するのである。
このように自分でルールをある程度決めておかないとオブリビオンは非常に淡泊で面白味が何もないゲームに感じてしまうだろう。
キャラクターの造形はかなり日本人の好まないタイプ
そのような自由度の高さを作り出すためのゲームシステムは結構複雑である。
したがってオブリビオンをやる前、やっている途中に、適宜説明書や攻略情報を読んでほしい。
ここで細かいところをアアダコウダ説明してもしょうがない。

そこで、ゲームの基本的な流れのみ紹介する。
まずプレイヤーはゲームを開始してまもなくゲームのメインとなるクエストをうける。
この他にも、街にいる人と会話することで他のクエストをもらうこともできる。
メインクエストは確かに『オブリビオン』で最も大規模なクエストではあるのだが、クエストを終わらせてもゲームは終わりにはならない。
位置づけとしては数多くあるクエストの一つといった感じであり、ゲーム自体に全クリという概念がない。
つまりメインとなるクエストも他のクエストは別に達成してもしなくてもいいのだ。
すべてはプレイヤーに任されている。

メインにならないクエストは例えば宝物探しといったRPGらしいものもあれば、家を買ったり行方不明者を捜すものもある。
他にもギルドに所属して数多くのクエストを消化することも出来る。
このようなクエストはどのようにクリアしても、任務を受ける受けないも自由なので、自分で決めたルールにしたがって遊べばいい。
人助けはしたくないのならば暗殺を楽しむギルドに所属するのもよし、一匹狼でありたいのならばギルドを無視するのもよし、それとも立派な家を買ってアイテムで埋め尽くすのもよろしい。
クエストは結構な数が用意されているせいでコンプリートした人にはつらいかもしれないが、逆に考えれば自分の好きなものだけをやれる利点もある。
暗殺ギルドへ入るのも自由
たくさん用意されたクエストだけが『オブリビオン』の世界を形作っているわけではない。
移動するだけで何十分もかかる広大なフィールド、いくつも用意された街、クエストに関係のない洞窟や遺跡の数の多さは『オブリビオン』の懐の深さを感じさせる。
フィールドはただ大きいだけでなく同じような場所が出来ないようにしっかりとモデリングされ、そして自然の状態を上手く描ききっている。
例えば雨、雪、日の出、日の入り、霧、そういう状況がしっかりと作られている。
街もそれぞれが特色のあるように作られている。

RPGの肝となる戦闘部分もプレイヤーが介入する余地が大きい。
打撃攻撃をするにしても剣、斧、メイスのどれかを装備するのか、それとも魔法や弓に頼るのかというのはプレイヤーの自由である。
戦闘難易度は好みで設定できるし、何かを選んだといって極端にバランスが悪くなることはないので、自分のスタイルにあった戦闘スタイルを選ぶことが出来る。

『オブリビオン』は広大なフィールドにプレイヤーが放り出されてその中で楽しみを見いだしていくゲームである。
そのためにクエストや街が数多く用意されていて、それに応じた選択肢は無限大と言ってもいいかもしれない。
広大な世界

レビュー

世界を作ってプレイヤーを放り込むRPG

『オブリビオン』はロールプレイをするゲーム

『オブリビオン』の作り込みは世にあるゲームの中でもトップクラスの作り混み具合だ。
主人公がいるシロディールという広大な世界を細部に至るまで作りこんでいる。
そこで生活する人々の生活感さえも感じさせるほどである。
クエストも数えきれないほど大量にあり、『オブリビオン』では自分の好きなようにゲームを進められる。

他のゲームでは、制作側から提示される限られたシステムの中でプレイヤーが最適な行動を取ることを目的としているものが多い。
これは制作側から用意された課題をどのようにしてクリアするか、または上手く切り抜けるかを面白さのよりどころしている。
しかし『オブリビオン』は「どのように遊ぶか」という選択がゲーム側から用意されてはいない。
用意されているものは世界だけである。
プレイヤーは用意された世界で、楽しみ方を自ら見つけ出していく。

『オブリビオン』のように自分で何でもできてしまうゲームをやっていると、旧来の押しつけがましいゲームは窮屈に感じる。
日本製RPGを見ると思わず「自由にやらせてくれ」と言いたくなってしまう。
旧来のRPGに慣れた人にとっては逆に、『オブリビオン』を見たときに縛られた世界から解き放たれたような思いを抱くかもしれない。

そして『オブリビオン』では、世界に投影した自分の分身を操る没入感が、私たちの慣れてきたRPGよりも優れている。
自由にカスタマイズできるキャラクター、自由に選べるクエスト、そして遊び方は型に縛られない。
こういう遊び方は、まさにロールプレイという言葉そのものではないだろうか。
闘技場のスターになってもいい

『オブリビオン』がウケる理由

『オブリビオン』は日本のRPGに多く見られる一本道のゲームとは全然違うゲームではある。
しかし、元はテーブルトークRPGから派生した兄弟みたいなモノだ。

かつては日本のゲームが世界的に競争力があり、日本式のRPGは比較的「そういうもの」として受け入れられてきた。
日本式のRPGは俗に言うコマンド式RPGだ。
とはいえコマンド式RPGはファミコン初期から根本的なものは変わっておらず、今では割と古くさいシステムとして受け入れられている。

そんなときに現れたものが『オブリビオン』である。
『オブリビオン』が提示したRPG像はコマンド式RPGと分かれたあとも脈々と受け継がれてきたが、素晴らしいグラフィック表現が可能になった2000年代以降になって コマンド式RPGに飽きたユーザーからの目移りもあってか、(特に日本で)ようやく日の目を見ることになった。
事実、海外でも日本でも数多くのユーザーからは「オブリビオンをやった後はもうコマンドRPGに戻れない」とか、コマンドRPG の新作が出るたびに「物足りない」と言った意見が見られる。
私はそのような考えは持っていないのだが、言いたいことは理解できる。

『オブリビオン』は自分で動かすということに主眼が置かれている。
戦闘はコマンドを入力してキャラクターが動くのを眺めているわけではなく、自分でリアルタイムに操作するアクション式である。
自分好みにキャラクターをカスタマイズできるし、自分のやりたいクエストだけをやってゲーム内のキャラクターを自分好みのキャラクターにすることができる。
グラフィックがよくなるにつれてコマンド式のゲームや一本道のゲームは滑稽に見えてしまう。
世界を救う戦いの様子・・だが、そんなことをしなくてもこのゲームは楽しめる

なんでもできるが、それだけとも言える

しかし自由度が高いと言うことはそれだけ欠点も兼ね備えている

一本道ゲームではプレイヤーに多くの情報を与えられる。
また、制作者が用意したものをストレートに体験させることができる。
例えば伏線が一つに繋がるストーリー展開、制作者が練りに練ったモノをプレイヤー側に確実に見せることは、一本道ゲームでなければ不可能だ。
一本道ゲームでボスキャラがいるとき、例えばRPGはプレイヤーの強さ(レベル)を考慮してゲームバランスを丁度よく調整する。

ところが、『オブリビオン』ではストーリー展開はかなり希薄で、ゲームバランスははっきり言って悪い。
無数にあるサブクエストは、そのほとんどが「○○をとってこい」「○○をしてくれ」というお遣いクエストばかりである。
サブクエストごとにあるストーリーは「○○は実は××であった」というものばかりでプレイヤーに感情を移入させるよりも突き放すものばかりで味気ない。
戦闘のバランス面に至っては敵の攻撃力や耐久力の上下を設定する難易度バーがプレイヤー側に用意されているので、ある種の調整放棄とも言える。
れらマイナスの面目含めてプレイヤーそれぞれに任されているのが『オブリビオン』の特徴である。
いろんな街がある

「飽きたら終わり」を逆に見るとどうなるか

自由度の高さとは違う点で『オブリビオン』の欠点とも言えるのが、達成感の欠如と淡々としたゲーム展開である。
例えば一般的なゲームならボスキャラと対峙すると戦いを告げる音楽が鳴りだし、他の雑魚キャラとは違う派手なエフェクトがかかる。
そしてボスを倒せば轟音と共に体が崩れ去っていくなどの演出がある。
『オブリビオン』にはそんなものは一切無い。
ゲーム全体を通して非常に淡々とした展開が続くのである。

一般的なゲームというのは何かしらを達成もしくは失敗することによって面白さが生まれるものであるが、このゲームは少し違う。
『オブリビオン』はゲーム内世界で自分の立ち位置というものを作り上げていくことに面白さがある。
それはサブクエストをこなして名声を得たり、あるいは人殺しをして悪名を高めるなどなんでもいい。
紹介のところでも述べたが、「自分はどういうプレイをしたいのか」を決めて、それに従ってプレイすることが面白さを産む。
これはMMORPG(というか『ウルティマオンライン』)の面白さと似ていると思う。
『オブリビオン』がMMORPGのオフライン版だと言っているのも強ち間違いではないかもしれない。
そういう意味では確かにロールプレイをするゲームではある。

とはいえ先に何があるのかを理解せずに漫然と遊ぶだけでは全く面白くない。
極端な話、『オブリビオン』は飽きたら終わりだ。
飽きるまで遊ばせてくれるというのは凄いことだが、「飽きたら終わり」というのは言い換えれば、終わりを設けないということでもある。
小説を読み、映画見た後には一種の読了感がある。
読了感や視聴後の印象にこそ、小説や映画の楽しさがある。
映画ならば、映画を見終わった後に、暗いシアターから明るい外へと飛び出すときの感触が映画の体験を形作る。
ビデオゲームでも、やりきった後の何とも言えない感触がある。
しかし飽きたら終わりの『オブリビオン』にはそんなものはない。

これは『オブリビオン』に重くのしかかる。
何でも出来る、だがそれ自体が面白さになるはずがない。
『オブリビオン』は面白さをユーザーに投げている面が大きい。
ユーザー自身で面白さを作り出せばこれ以上にない素晴らしいゲームになるのだろうが、私は『オブリビオン』を絶賛できない。
こういうバケモノを倒したって何もないんだぜ

レビュー

中世の西洋ファンタジーをそのまま再現したような世界での高い自由度を楽しめるかどうかが鍵となるゲーム。
様々なことができるが、明確な目標を持ってプレイしないとすぐに飽きてしまうだろう。
そして自分の立ち位置を形成していくことが面白さに繋がっていくが、それまでの課程が長いので長時間プレイしないと面白さがわかりにくい。
自由度の高さを求める人、コマンドRPGに飽き飽きしている人、海外製のゲームや世界設定が面白そうだと思っている人には非常におすすめ出来る。
反対にガチガチに固められた制限のあるゲームが好きな人や、短い時間に集中して楽しみたい人には向かない。

71点

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