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The Last Remnant (ラスト レムナント)


ジャンル:RPG
機種:PC
発売年:2009年
開発会社:スクウェアエニックス

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2009年5月 最終更新日2011年3月

紹介

『The Last Remnant (ラスト レムナント)』はスクウェアエニックスが開発販売を行ったRPGである。
「次世代」を担う新たなゲームとして世界同時展開、マルチプラットホーム展開を目指して開発された。
ゲームエンジンにはUnreal Engine 3を採用している。
本稿で紹介するPC版の他、XBOX360でも『ラストレムナント』は発売されているが、ゲーム内容に細かな差がある。
先に販売されたXBOX360版のゲームバランスを調整し、バグをとり、ゲームスピードをあげた物がPC版である。
PS3版も発売予定だが、諸々のインタビューを見る限り、立ち消えになっていそうな感じだ。

『ラストレムナント』PC版を遊ぶ場合、インターネットにつないで認証をする必要がある。
認証にはSteamを使用している。
購入方法は、パッケージで買ってもSteamで買ってもゲーム内容に差はないので好きな方を選ぶと良いだろう。
XBOX360版は未完成の部分や不具合が多いので、購入はお勧めしない。
戦闘の様子
大人数での戦闘が『ラストレムナント』の魅力だ
『ラストレムナント』はスクウェアエニックスが作ったRPGだけあって、非常にRPGっぽいRPGである。
年齢が十代の主人公、割と青臭い登場人物、世界を救うストーリー、細部まで描き込まれたグラフィック、豊かな音楽、エンカウント形式の戦闘。
まだまだあげていくとキリがないが、おおよそこういったことが当てはまる。
RPGと聞いただけで拒絶反応が出る人や、いま挙げたことが気にくわない人はやらない方が良い。

しかし、誤解されがちなRPG像と『ラストレムナント』は違うゲームであることを付け加える必要がある。
『ラストレムナント』はストーリー中心のゲームではなく、戦闘(バトル)中心のゲームなのだ。
従来のRPGではあまり見かけない戦闘システムや、無策で戦えば難しくなる難易度は典型的なRPG像とは違う。
この戦闘の面白さが『ラストレムナント』の評価を大きく左右している。
またメインストーリーは淡泊で短く、サブストーリーやサブクエストがかなりの量が用意されている。
サブストーリーはメインよりも難易度が高かったり、やり込みが要求されるものが多い。
したがってメインストーリーだけを追っていくのは非常に勿体ないゲームだ。
色々と回り道をしながら、戦闘の戦略を練っていくのが『ラストレムナント』の楽しみ方だろう。
サブクエスト ブラッディアリス
『ラストレムナント』をやるなら、サブクエストをやらなければもったいない
『ラストレムナント』の戦闘は他のゲームには見られないシステムではあるが、そう複雑ではない。
まず味方プレイヤーを何人かでひとまとめにし、ユニオンという単位をいくつか作る。
ユニオンは何人かのメンバーで構成されているが、戦闘中に個々の構成員へ指示を出すことは出来ず、ユニオンごとに「攻撃」や「回復」といった役割を指示する。
戦闘はターン制を採用している。
したがって一端ユニオンをくんでしまえば、戦闘はドラゴンクエストなどとあまり変わらない感じになる。

しかし、『ラストレムナント』においてドラクエなど他のゲームと明らかに違う点がある。
ユニオンへは「指示」しか出せないのである。
ドラクエで言うところの「めいれいさせろ」が選べなくて、大まかな作戦としての「みんながんばれ」や「ガンガンいこうぜ」しか選ぶことができない。
場面に応じて作戦を切り替えなければならないのだ。
自分の思い通りに作戦を実行してユニオンを動かすには、戦闘の前にユニオンを編成し、役割にあった行動を戦闘中も継続させる必要がある。
例えば味方の回復を専門にさせたいユニオンには、体力を回復させる能力を持たないユニットを組み込んでも何もすることが出来ない。
遠距離攻撃を得意とするユニットがユニオンにいれば、そのユニオンが攻撃する際に遠距離攻撃コマンドが表示されるが、それを実行すると遠距離攻撃が出来ないユニットは待機状態になってしまう。
これは非常に単純化した例なので、実際のゲームではもっと複雑な要素が絡み合っている。
戦闘は複雑ではないものの、事前の準備が複雑で奥深いのが『ラストレムナント』なのだ。
RPGというよりもSRPG(シミュレーションRPG)に近いと言えるかもしれない。
ダヴィッド、エクスマキナだ!
強力な技を放つには条件がある。『ラストレムナント』では条件を満たすように行動する。
『ラストレムナント』は戦闘を中心にして説明するとかなりスマートに説明できる。
音楽は戦闘曲だけでも10曲以上用意されている。
戦闘の状況が優勢か劣勢かによって、バトル中にも曲が切り替わるようになっている。
ゲームのほとんどが戦闘なので、飽きさせないようにこういったことにしているのだと思う。
他に『ラストレムナント』で特徴的なのは、フィールドマップがないことだろうか。
余計な移動の手間やストーリー性を省くことで戦闘に集中できるような作りになっている。
こちらも戦闘重視なのが分かるだろう。

ちなみにPC版を買う理由は主に三つある。
一つ目は、戦闘を倍速で進めるモードの追加。
二つ目は、リーダーユニット制限の解放。(使えるキャラが増えると思っていただければいい)
最後はXBOX360よりも高いスペックによって可能になったフレームレートの向上やロード時間の短縮化である。
XBOX360版は戦闘中のフレームレート低下やゲームスピード低下が著しく、一つの戦闘に一時間は余裕でかかったらしい。
PC版ならば倍速化と全体的なスピードアップ、操作レスポンスの向上などによって半分の時間で済む。
これらの項目はすべてが戦闘がらみである。
他のゲームでは時々見られるような、移植に際してのストーリー追加なんてものはない。
以上のことから、『ラストレムナント』は戦闘中心のゲームだと言うことが良く分かっていただけただろうか。
戦闘が好きか嫌いかが『ラストレムナント』の評価を真っ二つに分けると言っても良いだろう。
どういう戦闘なのかは次項のレビューで触れる。
目玉こええ
『ラストレムナント』は敵と接触することで戦闘になる

レビュー

荒削りだが未知の面白さがある

やればやるほど分かってくる面白さ

『ラストレムナント』の戦闘は不確実な要素が多い。
特にコマンドの選択肢(攻撃・防御とか)が場面場面で切り替わるため、自分の思い通りに戦闘を運ぶことが難しい。
しかしゲームの裏側では、きちんとした順序に基づいて選択肢が作られている。
だからゲームを始めて間もない頃はコマンドが振り回されてゲームの流れが理解しにくいが、やっていくうちにコマンドの出現パターンがだんだん読めてくるようになってくる。
そうなると、戦闘中において自分のやりたいことを実行するために、どのようなことをすればよいのかを考えるようになる。
『ラストレムナント』が他のゲームと違うことはここなのだ。
コンピューターと知恵比べをする、コンピューターを誘導させる、言い換えればコンピューターのパターンを読み、ハメるような行動を楽しむようなゲームが『ラストレムナント』なのだ。

おそらく他のRPGでは自分のキャラは自分で思い通りに動かすようが多い。
というかこれはRPGに限ったことではなく、「ゲームは自分で動かしてこそ」だという考えがある。
そのような考えを持っている人は『ラストレムナント』をやらない方が良いと思う。
金をドブに捨てたような物だと感じるだろう。
ウンデルバルト
スッキリしたグラフィックと描き込みは美しい

洞察力が要る戦闘、戦略が要る準備

どのようなRPGの戦闘にも、戦術を組み合わせて敵を撃破する楽しさと事前準備の面白さの二重性がある。
ゲームによってどちらに振れているか、またはどのような戦闘方法やシステムを用意するかに違いはある。
『ラストレムナント』の場合は非常に簡単な戦闘方法と、割と複雑なシステムが見事に調和している。

実のところ、今レビューを書いている時点でも『ラストレムナント』のユニオンシステムやコマンド選択肢の切り替わり方は解明されていないことが多い。
つまりシステムに関してプレイヤー側に与えられる情報が少ないのである
しかし与えられる情報は少ないものの、戦闘を繰り返しやり、システムを試行錯誤していくことで全容が少しずつ分かってくる。
経験的に分かってくると言えばいいだろうか。
複雑に絡み合った糸を手探りで少しずつほぐしていくのが『ラストレムナント』のシステムであり、『ラストレムナント』の面白さなのである。
したがって、複雑なシステムとは対照的に簡素な戦闘は、プレイヤーの重荷を軽減するという意味では非常に理にかなっている。
ヴェファーレ
必殺技が出るタイミングが分かってくると面白くなる
簡単な戦闘でプレイヤーに必要なのは洞察力だ。
『ラストレムナント』の戦闘は、自分の得意な場面に持っていけるように味方の行動を選択していかないと苦労するような場面が多い。
例えば、戦闘では一つのユニオンに対して複数のユニオンが攻撃を加えると、ダメージが何十パーセントも上がるようなシステムがある。
そう考えると、プレイヤー側としては一つだけの敵ユニオン(敵一体と同じようなもの)に集中攻撃をかけたくなるのが普通だ。
ところが、ラスレムは特定の敵に攻撃を加えているとき横から他の敵に攻撃を仕掛けられると、こちらがうけるダメージが大幅にアップするようにも作られている。
したがって味方が集中攻撃を受けてやられてしまうおそれが出てくる。
ダメージを少なくするには、効率は悪くなるが個別に攻撃を仕掛ける必要が出てくるので、どのように攻撃するかがさっさと戦闘を終わらせるために重要な鍵となる。

また、横から攻撃されると「モラル」というパラメーターが下がる。
『ラストレムナント』では「モラル」にとても重要な役割がある。
「モラル」は戦闘で有利な行動を取った側(味方・敵)に蓄積していき、モラルが高いほど与えるダメージが大きく、受けるダメージが小さく、強力な技を出せるようになる。
モラルが高いときと低いときのダメージ差は、最大で50パーセント近くの差がある。
戦闘を有利に進めるには、単に攻撃できるときに攻撃をするのではなく、様々な状況を鑑みて攻撃を選択する必要があるのだ。
モラル
モラルゲージというのは画像の上の方にある「青と赤のバー」のこと

不親切さはつきまとう

『ラストレムナント』の戦闘は奥が深く、非常に魅力的だ。
ところが良い箇所は悪い箇所にもなり得る。

戦闘システムを徐々に理解していく過程が『ラストレムナント』の面白さではあるが、あまりにもヒントが少なすぎる。
普通にプレイしていると知らない事柄があまりにも多すぎて、攻略情報を適宜参照しながらシステムについての知識を吸収していかなければならない。
いわば、『ラストレムナント』は「攻略本(攻略Wiki)が説明書」になってしまっているのである。
さすがにPS2の『アンリミテッドサガ』ほどではないが。

ランダムな要素をできる限り確実に起こせるようにユニオンを組み、戦闘で適切な行動を取るのが『ラストレムナント』の面白さであっても、それ以前の段階でプレイヤーを突き放してしまう。
しかも隠しパラメータなどの、普通にやってれば分かるはずもない隠し要素も豊富に用意されていて、ここまでくると理不尽さを感じるはずだ。
『ラストレムナント』は好意的に考えれば奥深いゲームとなるが、少し距離をおくと情報の少なさからくる理不尽さが重くのしかかるゲームなのである。
もっと上手く調整しさえすれば、非常に適度なバランスで隠された情報が足かせにならないゲームになった可能性はある。

調整不足に関しては、ラスレムは非常に突っ込みどころが多い。
あまりしつこく言っても面白くないので、未成熟部分が非常に多いゲームだと『ラストレムナント』について思っていただければ結構だ。
ユニオン編成
何も分かってないときのユニオン編成画面

ゲーマー向け

『ラストレムナント』のようなゲームは総じてマニア向けと一括りにできる。
RPGと言うとライトユーザー、カジュアルゲームと勘違いされがちだが、『ラストレムナント』の中身は完全にマニア向けのゲームである。
自分で試行錯誤し、情報を調べ、何十時間もやっていかないと面白さは分からない。
言い換えれば、そこまでやらないと面白くないほどの欠点があるゲームである。

ついでにいうとラスレムでは、プレイヤーがレベルアップすると敵もプレイヤーほどではないが強くなる。
むやみやたらにレベルを上げればクリアできるとは限らないのである。
また、普通にやってれば倒せないほど強い隠しボスや、気が狂うぐらいまでやらないとコンプリートするのが難しいほど多いアイテム・クエストもある。
こういったところからもゲーマー向けと言える。

もうちょっと細かく言えば、ユーザー不在・プレイヤー不在のゲームに近いような気もする。
どのような人がゲームを買うのか、誰がやるのかを考えずに作り上げてしまうとこんなゲームになってしまうのではないだろうか。
そういったゲームは、開発者たちと感性が合えば非常にすばらしいものとなる。
しかし感性が合わないとなると、どうしようもないクソゲーと化す。
フィールド
ちなみにフィールドはご覧の通り

諸々

最後は細々としたことを書いておく。
まず音楽。
戦闘中に状況に応じて切り替わる音楽は場面を非常に盛り上げてくれるし、曲の質も非常に高い。
ロック調の激しいサウンドながら、ただ単に音を並べただけの熱い音楽になっていない。
ハードでメロディアスな曲は、どこぞの音を並べただけの曲よりも遙かに戦闘の雰囲気にピッタリだ。
インパクトはないが、街や草原・砂漠の音楽も戦闘と同じぐらい秀逸。
私としては草原や砂漠など、フィールドの音楽が気に入っている。

グラフィックは地面や壁が結構チープでテクスチャは張り遅れも目立つなど、技術的な問題が垣間見える。
PCの性能でフルHD表示をしても、根本的な部分は海外製のゲームに劣っている。
ただ、キャラクターモデリングや街の造形はさすがにスクエニの面目躍如と言えるぐらいの良さがある。
ゴテゴテしていなくてスッキリした映像は海外製のゲームとは違うものがある。

ストーリーは完全に説明不足で主人公の魅力に乏しい。
面白いストーリーを期待して買うと絶対に期待はずれになる。
全体的に説明不足なので、想像で補う必要がある。
それにしてもダヴィッドはイケメンだね"
右:主人公 真ん中:イケメン 左:猫将軍

まとめ

不確実要素をどれだけ確実に起こすかを考えるRPG。
慣れるまでは自分の思い通りに動かせないことが多いので辛抱が必要だ。
ストーリーはたいしたものではなく、あくまでも戦闘がゲームの中心になっている。
システムが説明不足であったりと不親切な面も多く、最近の親切なゲームとはかなり毛色が違う。
魅力的な部分はたくさんあるが、まだまだこなれていない部分もかなり多く残されている。
『ラストレムナント』は購入数する前に、ある程度の覚悟がいるゲームだ。

73点

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