レビュー
試みは素晴らしいが、ゲームとしては後一歩
一人称視点アクションゲームとしての『ミラーズエッジ』
『ミラーズエッジ』は一人称視点のゲームを新たに作り替えようとして作られた。
一般的な一人称ゲームは画面右下に武器(銃)がにょきっと生えていて、移動しても画面は揺れずに水平移動をする・・・などある種突っ込みどころが多い。
そのような不自然さを取っ払って不快感が出ない程度に人間の感覚に近づけることで、よりリアリティがあるゲームが生まれると考えるのはもっともである。
リアリティを出すために『ミラーズエッジ』ではわざわざ動きが激しいもの(パルクール)を題材としている。
動きが激しくなったときに自分たちが普段動いているときのような感覚で視点や視野が変わっていくかどうかが、リアリティをはかる一種の定規になっている。
結論から言うと、『ミラーズエッジ』の試みは成功した。
こればっかりは実際に自分で動かさないとわからないだろうが、自分がボタン押してからの反応の感覚やアクションを起こすときの視点は確かにリアリティを感じさせる。
すばらしいグラフィックだけが「リアルだ」「まるで実写だ」と言われるものを目指しているのように思えるが、『ミラーズエッジ』のようにプレイヤーキャラクターの動作側をリアルにしようとする方向性もあっていいのだ。
そして動作の数をいたずら多くせず、必要最低限のボタン数である程度の数のキャラクター挙動を用意している。
言い換えると
複雑な操作が必要ではない。
人間の動作を再現するにはボタンが何十個何百個あっても足りないくらいなので、むしろ最低限まで切り詰めていくのは正しい方向性だと私は考えている。
少ないボタンであればゲームに慣れるまでの時間は少なくて済み、より多くの人に受け入れられやすくなる。
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バーを使う
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一人称視点ゲームの欠点
ところが『ミラーズエッジ』は一人称視点でのリアルさを持ち合わせている代わりに一人称視点ならではの問題も持ち合わせている。
まずは視点移動の激しさである。
走って移動するだけでも他のゲームと比べて揺れが大きく、さらにジャンプを駆使して上下に移動するゲームなので、人によってはものすごく酔うはずである。
酔わない人でも、ゲーム内で描かれる世界のどこにプレイヤーが位置しているのかが非常にわかりにくい。
ジャンプしたり高速に移動するせいで、ゲーム内での立体的な感覚が失われやすい。
こういうのは慣れで解決してしまうような問題ばかりだ。
しかし一人称視点ゲームに慣れていない人にはかなり酷なゲームになってしまう可能性がある。
もう一つは、タイミングの取りづらさである。
『ミラーズエッジ』はタイミングよくジャンプしたり壁走りなどの動作をしなければクリア出来ない仕様になっている。
しかし、一人称視点ではプレイヤーキャラクターの位置がわかりにくいので、タイミング取りが非常に難しい。
例えばビルの屋上ギリギリからジャンプしなければ行けない場所、高いところから落ちて着地する瞬間(この瞬間に特定のボタンを押すと着地してから早く動ける)、壁走りをするために壁に近づく瞬間、どれもこれも一人称視点だとタイミング取りが難しい。
仮に三人称視点ならかストレスなく出来るはずだが、三人称視点でやるならばそれこそ『プリンスオブペルシャ』や『トゥームレイダー』という先人がいる。
一人称であるからこそ『ミラーズエッジ』なのだが、それが逆に「わかりづらさ」という欠点を生み出している。
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どうやって上の通気口へ行くか?
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もどかしい難しさ
確かに操作や視点が斬新なゲームではあるが、『ミラーズエッジ』の中身は昔らしさのゲームそのものである。
昔らしさのあるゲームというのは、プレイヤーのミスがゲーム反映されやすいと解釈してもらって差し支えない。
ミスのリカバリーが効かないゲーム(一撃死が多いゲームとか)とも言い換えられるだろう。
高い場所を少ない足場を伝っていくことが多いゲームにであるために、『ミラーズエッジ』は一発死が非常に多い。
自由自在に思うままに動かすためには、プレイヤーがマップを熟知して何度か練習しなければならない。
つまり初回プレイは同じ場所を何度も何度もリトライする必要があるわけだ。
もちろんこのようなゲームの作りは古くささはあるもののバランス面で言えば悪いとも良いとも言い切れない。
『ミラーズエッジ』で問題なのは、一人称視点からくる操作のしにくさによってプレイヤーが不必要にミスをしてしまう一点にある。
操作にしにくさは既に述べたが、失敗した操作がすぐさま一発死につながってしまうため、プレイヤーの心にズシンとくるものがある。
一発死のあるゲームでは操作性を極限までよくしないと、わずかなストレスが実態以上に大きく感じられやすい。
ところが『ミラーズエッジ』は操作性はよくても、一人称視点由来の「分かりにくさ」がプレイヤーを苦しめてしまう。
慣れるまでは、歯がゆい思いを抱きながらやらなければならない。
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夕方もうつくしい
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あまり意味のない戦闘部分
また死亡しやすさという観点から見ると、敵の存在を無視することが出来ないだろう。
敵にはおおむね2パターンいて、プレイヤーの目の前に立ちふさがってくるので排除しなければならないタイプと執拗に追っかけてくるので逃げ回らなければならないタイプである。
排除しなければならない敵は時間をかけて戦闘をすれば倒せるが、場所によっては逃げた方がとても楽な場面もあり、戦略性が生まれると言えば聞こえは良い。
実際、二回目以降のプレイでは多くの場面で逃げ切れることが判明してびっくりする。
しかし初回はそうはいかない。
なぜかというと、逃げ切るには逃げ切るためのルートを自分で探す必要があり、そのルートがお世辞にもわかりにくいことが多いからである。
つまり「敵に攻撃されながら右往左往して死亡」を繰り返さなければ、最適なルートを見つけることが出来ない。
追っかけてくるタイプの敵も同様で、プレイヤーを焦らせて無駄なミスを誘っている。
もちろんこういうのが制作者の狙いでもあって、一旦ルートを見つければ蝶のように舞いながら敵を煙に巻けられる。
ただここで指摘しておきたいのが、戦闘部分はアクセントにはなったかもしれないけれども個人的には完全に蛇足としか感じられなかったこと。
戦闘行為をもっと減らすか、もしくは敵の攻撃力を下げれば余計なストレスなく遊べたかもしれない。
敵の数を増やしてシューティングゲームにしても良いと思う。
現状では、どっちにもなってなくて中途半端なのだ。
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戦闘
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繰り返しプレイをするゲーム
色々と述べてきたが、
これはすべて『ミラーズエッジ』が二週目以降を前提としたゲームだからと強引に結論づけられないだろうか。
初回プレイでは今まで述べてきたいくつかのストレス要素が邪魔をしてくる。
しかし見たことのない場所へ次々といける感覚や、始めていく場所でのルートどりを考えるパズルのような楽しさが確実にある。
二回目以降のプレイではこのような楽しみは無くなってしまうものの、より早くクリアするために挑戦する面白さがある。
ある意味不親切な一人称視点の仕様などは、逆に言えば上手い人とそうではい人との差をつけるのに必要だったと解釈出来るだろう。
自由自在に攻略できるようになると、今までの自分では何分もかかっていたことがものの数秒で出来るようになって大きな達成感を得られる。
そのとき、『ミラーズエッジ』は操作しているだけで面白いと感じさせるゲームに変貌する。
またタイムアタックモードの存在からもわかるとおり、これはアクションゲームと言うよりもレースゲームに近いものだと考えた方がスッキリする。
ストーリーモードは初回プレイでも確実に8時間以内に終わるくらいの短さだから、繰り返しプレイを前提としているのも明らかだ。
ついでに言っておくと、操作性はマウス&キーボードよりもゲームパッドに最適化されている。
キーボードを使うと左手で主に使う三つのボタンを操作しなくてはならなくなる。
一方でゲームパッドならば、左も右も二つずつの主要ボタンが割り振られる。
ボタンの反応も心なしかパッドの方がしっかりと反応してくれるようだ。
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こういう場所をのぼっていく
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Physxはなかなかすごい
ストーリーは監視社会をもとにしているだけあって期待していたのだが、まあこれはレースゲームだからしょうがないかというレベルの話になっている。
ただ「見せ場」があちこちに作られており(例えば敵を追い回すシーンとか)、ゲームらしさという面では上手くまとめている。
アクションゲームと綿密なストーリーテーリングは水と油に近いものがある。
ストーリーのチャプターごとにムービーが挿入されるのだが、一度見たら二度と見ることはないだろう。
二回目以降のゲームではより多くのゲームプレイを求めているのだから。
グラフィックは原色を多用したハイクオリティなグラフィックを見せてくれる。
PCゲームとしてはそれほど重くなく、軽さと美しさを兼ね備えたバランスはかなり良い。
ソースエンジンのような透明感があるので、何年後かに『ミラーズエッジ』を見ても十分に納得すると思う。
最近は色数を抑えることでグラフィックの見栄えをよくしたりマシンに掛ける負担を減らしているゲームが多いので、余計に『ミラーズエッジ』の原色を多用した派手さが際だって見える。
発売前から話題となった音楽はゲーム中では要所要所に流れる程度で良くも悪くもないといった印象。
PC版独自ののPhysxは画面がかなり賑やかになるので導入できる人は是非導入して欲しい。
窓を割ったときの飛び散り方や爆発があった後の塵の舞い方はかなる感動をする。
ただ、ゲームプレイに直接関わるわけではないのでRADEONユーザーがわざわざGeForceを買う必要は無いだろう。
『ミラーズエッジ』が示した方向性はよりよいものへと繋がっていきそうである。
同じような操作方法を活用してマルチプレイのデスマッチで撃ちまくりのゲームをつくれば、ほかのFPSでは実現できないシチュエーションが生まれやすいゲームになるかもしれない。
キャプチャーザフラッグのルールで入り組んだマップを作れば、様々なルート選択の面白さが生まれるかもしれない。
この動作を駆使したステルスゲームがあればすごいものが出来るかもしれない。
今作では思い切って昔ながらのレースゲームへと調整されたが、さて次回作はどうなるだろうか。
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白熱のシーン
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