トップページ >ゲームレビュー >FPS・TPSゲームレビュー >Farcry2(ファークライ2)

Farcry2(ファークライ2)


ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2008年
開発会社:UBI

公式ウェブサイト

レビュー脱稿日2008年11月 最終更新日2011年3月

紹介

開発も販売もUBIsoft。
『Farcry2』という名前から察するとおり『Farcry』の続編になっているものの、開発会社は違っていてゲーム内容に繋がりもない。
知名度のある名前を借りた別のゲームだと言える。
ただ、名作として名高い前作の名前を冠するだけあってUBIでも主力チームであるUbisoft Montrealが制作を行っている。

PC、PS3、XBOX360で展開するマルチタイトルだが、PC版のみ日本語版が存在しない。
登場人物の会話は結構早くて文章量も多いため、英語が苦手ならばPS3やXBOX360版を入手するのも一つの手だと思われる。
もちろんゲーム内容に差はない。
『Farcry2』の特徴は、超広大なフィールドをシームレスで移動できることと、それに応じた自由度の高いゲームシステムである。
雄大な夕焼けをのぞむ画像
舞台は「リアル」アフリカ
『Farcry2』は一般的なFPSとはゲームの進行の仕方が違うのでまずはそこから説明する。
主人公は二つの組織が内戦を繰り広げているアフリカの某国に潜入し、その組織に武器を提供している死の武器商人「ジャッカル」を殺すことになる。
プレイヤーの目的は、二つの組織からミッションを受けて信頼を得ながらジャッカルを追い詰めていくことである。
この二つの組織から受けるミッションはゲームをクリアするために不可欠なメインミッションである。
どちらの組織に肩入れするかはプレイヤーの自由だが、どのように行動しても最終的なゲームクリアにはたどり着く。(要は同じ結末になる)

このメインミッションの途中に「バディー」(Buddy、和訳すると「仲間」)という主人公と同じくジャッカルを暗殺するために某国へ潜り込んだ傭兵たちと行うミッションへ分岐することもできる。
バディーはメインミッションをスマートに達成する他の方法を教えてくれる。
また、バディーミッションをすることで仲間内の評価が上がり、プレイヤーが体力を失ったときに救い出してくれるようになる。
他にもセーフハウスというセーブの出来る小屋(マップのあちこちにある)に回復アイテムや弾薬がおかれるようになる。
バディーミッションをクリアしてもメインミッションを達成したのと同じに見なされる。
少し時間はかかるが、ゲームを楽に進めたいのならやって損はないと言える。
体力がなくなればたまに助けてくれる。ありがたいぜ。
バディーが助けてくれるシーン
この二つのミッションとも無関係でゲームクリアには必要のないミッションも存在する。
それは武器屋ミッションと電波塔ミッションである。
『Farcry2』では自分が使う武器は武器屋で購入する必要がある。(一度買えば何度でも使える)
一応敵から武器を奪うことも出来るのだが、性能が劣悪ですぐに装弾不良や暴発を起こすので実用的ではない。
武器屋でもらえるミッションを行えば、新しい武器(より強力な武器)を購入する権利を得ることができる。
電波塔ミッションというのはゲーム内通貨であるダイアモンドを少量得られるミッションである。
ダイアモンドや超広大なマップのあちこちに隠されているのを探し出すか、メインミッションまたは電波塔ミッションを行うことで手に入る。
これを使って武器屋で新たな武器なんかを買うことが出来る。
ついでに言うと、ミッションをうけないでそこら辺をブラブラしていても良い。
ジャムった武器はいちいち直さなければならないという画像
装弾不良の武器
一言でまとめると、「『Farcry2』というゲームは最終的な結末や途中のイベントは完全に決まっているが、それまでの道のりはどのようにやっても良い」というゲームである。
フィールドは超広大なので目的地一つへ行くにしても幾通りのルートが考えられ、ゲーム展開がプレイヤーごとに微妙に違ってくる。
メインミッションもどのようにクリアするかはプレイヤーの自由である。
例えば敵を壊滅させるのが目的ならば、どこからどのように攻めようともプレイヤーの自由である。
どの武器を持っていくのか、そしてどの場所から攻めるのかは完全にプレイヤーが主導権を握っている。

他に『Farcry2』の特徴と言える点をいくつか。
超広大なフィールドが細部に至るまできちんと作られており、いわゆる使い回しにはなっていない。
アフリカを舞台にしていることもあって砂漠あり、草原あり、沼地あり、湖ありのなんでもござれと言った具合。
フィールドでは時間が流れており、同じ場所でも昼間と夜、晴れの日と雨の日では様子が全く異なっている。
またこのゲームでは草原に炎を放てるのだが、その広がり方やグラフィックは並々ならないほど力が入っている。
アフリカ人のモデリングは極めて精緻に先入観無く作られている。
雰囲気を醸し出すグラフィックという面で見れば2008年では一線級だと思う。
転校変化を示す雨のシーンの画像
降りしきる雨

レビュー

高いポテンシャルを持っているが、結局やることは同じ

自由度の高さ

『Farcry2』は戦闘において高い自由度を持ったゲームである。
メインミッションは必ずこなさなければならないものの、他の要素は何をしようともプレイヤーの自由である。
クリアそっちのけでダイアモンドを探して強力な武器を入手し、武器屋の倉庫でニヤニヤしながら持ち出す武器を選んでいるだけでも楽しい。
敵一つとってもどのように倒すかはプレイヤーの自由である。
背後から近寄ってナイフで倒しても良いし、遠くから狙撃しても良い。
火炎放射器で炎をそこら中につけまくっていぶり殺しても良いのだ。
そんなの無視をして車で突っ切っても何ら問題がない。
このように自由度を持ったゲームは世の中にいくつかあるが、『Farcry2』はきちんとバランスを保りつつ少ないバグでこれだけの自由度を達成しているのだからすごい。

しかも時間によって天候や昼夜も変化する。
夜になれば同じ場所を攻略するにしても違う展開に持ち込める。
『Farcry2』では、プレイヤーに攻撃の主導権が完全に渡されている。
草に向かって火炎放射をしている画像。やたらリアルだ
火炎放射

驚異的な作り込み

FPSの基本である銃撃戦の感覚や移動感覚は良好である。
このゲームで登場する多くの実銃は本物を使って調べたのではないかと思うほどしっかりと作られていて、いわゆる安っぽさがない。
とりわけ私のような「UZI好き」にとっては、UZIの発射音が堪らない。

いちいち装弾不良になるときや、暴発するときの様子まできちんと作られているのだから驚きである。
広大なフィールドを移動するときの手段である乗り物の乗り心地や操作性も変な挙動がついておらず扱いやすい。
またダメージを受け続けると、自分の体に食い込んだ銃弾をえぐり取ったり脱臼した腕を無理やし直すことで体力を回復できるのだが、用意されたこのモーションの数は多い。
他にも敵キャラクターのモデリングが大量に用意されていることなど、驚異的なまでに作り込まれている。

『Farcry2』の名に恥じないような広大なオープンフィールドを描画するゲームエンジンも評価に値するだろう。
隅から隅まで歩くとなると膨大な時間がかかるほど、このゲームのマップは広い。
体力が一定量減るとできる動作の一つである、包帯を巻く最中の画像
包帯を巻く

検問所によるテンポの悪さ

しかし大きな問題点が『Farcry2』にはある。
それは表題にあるとおり「結局やることは同じ」で、さらに時間が不必要にかかるのである。
メインミッションだろうとバディーミッションだろうと武器屋ミッションだろうと、特定の人物や物体の暗殺や破壊が目的になっている。
これらのミッションを受けると、ミッションを受けた場所から目的地へ移動しなければならない。
なまじ広大なフィールド移動するための乗り物やバスはあるにしても、やはり移動に時間がかかりすぎると思う。

乗り物にも一種の問題がある。
道のあちらこちらに敵の検問所みたいなものが用意されているせいで、検問所ごとの戦闘が避けられないのである。
徒歩ならば茂みに身を隠しながらやり過ごすことも容易なのだが、車に乗っていれば音がするので敵はこちらに感づいて結局戦闘になりやすい。
無視して突っ切ることができない検問所は多い。

FPSは戦闘が主なゲームだから戦闘は避けられないものであるし、それに『Farcry2』のシューティング部分の出来はよいのだが、それらを抜きにしても検問所での戦闘がゲームのテンポを崩していると言える。
敵から攻撃を受けた車両は修理をすればまた走行可能になるにしても、しょっちゅう攻撃される『Farcry2』ではいつも修理をしているような気がする。
雄大な時間を使えるアフリカ的な時間の感覚までゲーム中で再現しなくても良い。
さながらカーチェイスの画像
突然敵が襲ってくることも多い

自由度が高ければ面白いのか

私は地図を見ながら敵が少ないルートや敵に見つかりにくいルートを自分なりに考え、戦闘をするにしてもショットガンを使ってみたり火炎放射器で暴れてみたりと変化をつけながら遊んでいたのであまり飽きはこなかった。
ただこれにも問題があって、新しい武器を手に入れるためには単調で長ったらしい武器屋ミッションをクリアしなければならないのである。
それに武器を購入するにはミッションをクリアしたり、マップを探索してダイアモンドを入手する必要がある。
武器屋にいたってはどこにでもあるわけではないので、意識的に利用しないと同じ武器を使い続けることになる。

また、使い勝手の良い武器はどうしても決まっている。
自分がなれた武器を使い続けてしまうと単調なプレイになってしまい勝ちだう。
そして自由度が高い戦闘と言っても、結局は狙撃作戦が一番有効になってしまうのはやはり問題点である。

やはり『Farcry2』での自由度の高さはゲーム自体の面白さに直結していないと言わざるを得ない。
色々なことはできるけれど、「実際だからどうなの?」という答えに上手く答えきっていない。
ゲーム展開が他人とは違う自分だけのものになっているからといって、面白いとは限らないのだ。
相手にナタを突きつけて文章を要求する
イベントシーンの一例

どのようなゲームか

『Farcry2』で描かれているアフリカは、内乱でメチャクチャになってしまった仮想国である。
その国がいつまでも内乱状態にある根本的な原因は、裏で大国が武器の供給や政治的思惑を働かせているからだ。
大国には一般民が苦しんでいるかどうかといった感情はまったくない。
やるかやられるかの世界は確かに、我々にとっては接点のないリアルなアフリカである。

では『Farcry2』は何を楽しむゲームなのだろうか。
これはすばらしいグラフィックの雰囲気を楽しみつつ、好きな武器や乗り物を乗り回し、変化をつけて敵を倒しながらのんびりと遊ぶゲームである。
こいつをやっていると、グラフィックに関してはその場における空気を上手く表現していると思う。
特に日に照らされた時のいかにも暑そうな感じと霧に覆われた湖の感じはゾクゾクするものがある。
そんな中、火炎放射器を片手に意気揚々と敵の陣地へ殴り込みをかけていき、思う存分暴れ回って敵と死闘を繰り広げよう。
敵のAIはスナイパーと迫撃砲を使う奴があまりにも正確な動きを見せることを除けば、戦っていて手応えのあるものに仕上がっている。
繰り返すが、FPSとしての基本部分の出来は良い。

暑さと言う空気感をかもし出すグラフィックス
このシーンを見たとき、ゲームをやっていて初めて暑さを感じた

まとめ

高い自由度があるが、自由なところが面白さにあまり直結していないのが残念。
そして自由度は主に戦闘や進行ルートの選択に振られており、ストーリーや展開の変化を引き起こすようなものではないことに注意して欲しい。
広大なフィールドにおかれたプレイヤーがあちこちにいる敵と好き勝手に戦うゲームと言えばわかりやすいだろう。
この自由度がFarcry2を購入したユーザーの正味20時間を超えるゲームプレイを満足させるものであったかというと、答えはNOである。
ウリの要素は自由度となっているが、敵との戦闘を重視する人にこそおすすめしたい。
敵との戦いは型にはまることがないのでいつも新鮮な気持ちでプレイできるだろう。

74点

ページトップへ

トップページ >ゲームレビュー >FPS・TPSゲームレビュー >Farcry2(ファークライ2)

design by. (C) WebDaisuki.com