レビュー
何をやりたいのかが定まらず、迷走している
体験版が一番面白い
まずは『FEAR2』の体験版について話さなければならない。
たいがいのゲームの体験版と言えば、ゲームの一部分(例えばマップ一つとか)を取り出して遊べるようにしたものになっている。
ところがFEAR2は「ゲーム本編のハイライト場面を再構成し、非常に面白く作り上げ」ている。
つまり本編の面白さが凝縮されているのが『FEAR2』の体験版なのだ。
だからこれからFEAR2を買う人は注意しておくべきだ。
私個人としては、このように体験版を作ることは決して悪いことだとは思っていない。
例えば映画のプロモーションを見て非常に面白そうだったものが、実際はクソ映画だったり、テレビ番組の予告編の方が本編より面白いと言ったことは大いにあり得る。
どのように消費者を引きつけるかは企業側にとっては大切な活動なのだから、あまり目くじらたててもキリがない。
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体験版にこういうシーンは多かったが、本編では・・・
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軽くてロード時間も短い『FEAR2』
『FEAR2』は、いろいろなことを詰め込んだけれども上手くかみ合っていないゲームだ。
さすがに10年以上もPCでFPSを作り続けているMonolithが制作しただけあって、技術的な部分の出来はすばらしいとは思う。
特に優秀なのは軽さとロード時間の短さだ。
PCゲームにおいてグラフィックの良さとゲーム自体の重さは重大な問題だ。
グラフィックがダメなのに無駄に重いゲームは、それだけで大幅に評価を失う。
スペックが高いPC向けに作られたゲームは、ひどいプログラムをしてもスペックの高さで何とかごまかせてしまうこともある。
そういう意味では、『FEAR2』のグラフィック水準の高さとゲーム自体の軽さ、ロード時間の短さはとてもすばらしい。
他には、いつでも難易度を変更できたり、こまめにチェックポイントがあってオートセーブされるというユーザーフレンドリーな面もしっかりしている。
ゲーム以外の部分でプレイヤーに無駄な労力をかけさせないような作りがされているのである。
しかしプレーしてみると、何がやりたかったのか分からないシステムや要素が多い。
『FEAR2』の問題はゲームとしてのコンセプトがチグハグしている点にある。
これでゲームバランスが神がかっていたなら問題はなかったのだが、バランスも非常にいびつだ。
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キャラクターやマップのの描きこみはすごい
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見づらすぎる視覚効果
『FEAR2』をやって最初に目に付く問題点は、とてつもなく見づらい画面だ。
本稿で紹介しているスクリーンショットを見てもらうと、表面がざらざらしていたりボヤけているのがよく分かると思う。
これは、フィルムグレイン(Film Grain)とHDR(ハイダイナミックレンジ)が原因である。
フィルムグレインが画面を映画のフィルムのようにざらつかせ、ハイダイナミックレンジは光の表現をぼやかす。
こういった画面効果は適切な場所で適度な範囲内で使えば、ゲームの演出としては有用な手段になりうる。
だが『FEAR2』は無駄に多用しているため、画面が異常に見づらくなってしまうのである。
しかも、ゲームがバイザー越しで行われるという設定のため、画面に設定が書き込まれていて視界の狭さを感じやすい。
もちろん、こういったバイザー越しの目線システム自体が悪いというわけではない。(メトロイドプライムが良い例)
相乗効果で最悪なものを生み出しているだけなのである。
いちおう画面上から切れるものの、最初からこんな効果は実装しないほうが良い。
それにゲーム機版は設定をいじれないのだから、PS3やXBOX360でプレイした人にとって『FEAR2』はみにくいったらありゃしないだろう。
最新技術だかなんだか知らないが、プレイヤーを邪魔になるような設定を導入する必要があるのだろうか。
敵に攻撃を当てたときのエフェクトも無闇に激しくて見づらくなるだけなのも気になるところだ。
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パワードアーマーに乗るとさらに見づらくなる
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ジャパニーズホラーの要素はなくなりました
前作『FEAR』といえばジャパニーズホラー表現と面白い戦闘が大きな二本柱だった。
『FEAR2』でも二つの柱は継承されているが、意味合いが異なっている。
私の意見としては、ホラー表現は前作以下で、しかもすべてのゲームを含めて評価できる水準になっていない。
戦闘に関しては、質は高いものの、いらない要素が多すぎるという欠点を抱えており、前作よりもかなり劣っていると思っている。
『FEAR2』のホラー表現は怖がらせるということをまったく意識していない。
主に使われている表現方法は、画面にブラーなどの効果がかかりアルマ(物語の元凶、女性)の幻影が目の前にちらっと現れるというものだ。
たまに飛び掛ってきたりするが、ほとんどが目の前に出てくるだけである。
これではプレイヤーに恐怖を感じさせてはおらず、ただ単にプレイヤーの目の前で何かが起きているとしか感じさせていない。
しかも注意深く見ないと何が起こっているのかすらわからないことが多い。
あってもなくても関係のない、「空気」とも表現できそうな演出が『FEAR2』のホラーなのである。
したがって、ゲームを進めていくとホラー表現について非常にうざったく感じるようになる。
『FEAR2』ではやけにスプラッター表現が多い。(血やグロテスクな表現)
確かにホラーとスプラッターは密接な関係があっても、ジャパニーズホラーではほとんど使われない表現だ。
なのに『FEAR2』では、ところどころ人間の内臓やら血がべっとりと使用されている。
敵を倒したときの強烈なゴア表現は、数あるFPSの中でもかなりグロテスクなくらいだ。
初代『FEAR』はジャパニーズホラー色を強めて他のゲームと差別化して評価されていたが、続編の『FEAR2』はアメリカ製のゲームにありきたりの表現を使っているのである。
Monolithは、「前作のホラーで何が評価されていたのか」をきちんと見直すべきだった。
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なんで海外のFPSってバカのひとつ覚えのようにやたらとグロいんだろうね
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明らかにコントローラー向けに改悪された戦闘。しかもコントローラーでやっても楽しくない
戦闘についてよく言われているのは敵AIの劣化である。
前作『FEAR』の敵はプレイヤーの後ろや側面に回り込むように動いてくるので、人間と戦っているような戦闘を楽しめたと言われている。
ところが『FEAR2』では回り込んでくることがほとんど無い。
というか、攻められるはずなのに攻めてこないように作られているような感じだ。
なぜなら『FEAR2』では、プレイヤーとの一定距離まで敵は攻めてくるのだが、ある程度の距離があると障害物を使って体の一部分だけ露出してこちらを攻撃するのである。
わざとこちらに攻め込まずに、一定の距離を保ちつつ障害物を使って体を隠しながら攻撃をしてくると言えばわかりやすいだろう。
プレイヤー側としては敵が攻めてこないので、自分のペースにあわせて戦闘できるため、ほとんどのプレイヤーは敵のAIは劣化したと考えてしまう。
とはいえ『FEAR2』は数多くある障害物を使ってしゃがみ、照準機を使って武器を覗き込み、じっくりと敵を倒していくゲームだ。
敵もプレイヤーと同じように、ある程度の距離を保って障害物に身を隠して攻撃を行ってくる。
敵が障害物を認識して体を隠そうとする様は前作とかわりがない。
俊敏に照準を動かせないコントローラーで操作をするゲーム機でマルチ展開するために、このような調整になったと推察できる
敵がガンガン攻めてくると、コントローラーでは反応が追いつかなくなってしまうからだ。
しかし、敵が攻めてこないゲームでは緊張感がなくなってしまう。
これではコントローラー操作でも面白く感じない。
ゲームプレイの変化はスローモー能力を封印することによってよく分かる。
前作にあったリーンの廃止のかわりに、しゃがみ動作の効果を大幅にアップさせている。
しかし、実のところ難易度を高くしてやらなければ分かったものではない問題がある。
『FEAR2』では強力なスローモー能力があるために、しゃがみを意識せずともガンガン攻め入れば簡単に敵を殲滅させることができてしまう。
これは前作『FEAR』でも、スローモー能力が強いためにゲームプレイが単調になりがちになってしまう問題として現れていた。
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腰を落ち着かせて、丁寧に
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難易度のいびつさ
『FEAR2』の戦闘はコールオブデューティーシリーズなどの他のゲームと差が無くなってしまった感じは残念だ。
しゃがんで、じっくりと狙って進む、なんてのはまさしくコールオブデューティーそのままだ。
敵が攻めてこないために近接攻撃をする機会が限られてしまい、キックやパンチの実用性はかなり乏しくなっている。
また『FEAR2』では障害物をひっくり返してカバーとすることも出来るのだが、これについてはそもそも使う場面がほとんど無い。
使い道のないとりあえず実装しただけの特殊動作なんてのは、初めからない方が良い。
それよりも『FEAR2』の戦闘における最大の難点は、難易度のいびつさにある。
『FEAR2』にはイージー、ノーマル、ハードの三つの難易度が用意されている。
この中でイージーが簡単なのは全く問題はないが、ノーマル難易度はスローモーを前提とするとかなり簡単になる。
かと言って
難易度ハードにすると敵のダメージ量がやたらと多くなってしまい、バランスが崩壊してしまう。
ちょっとだけ敵の攻撃を受けるとHPの半分以上が減るとか、ショットガンを食らうと一撃死になってしまい、ちょうど良い難しさとは遠くなる。
『FEAR2』を開発したMonolithの弱点はこういった難易度調整にあると私は思っている。
前作FEARのレビューでも、最後に難易度調整の失敗を指摘したが、『FEAR2』でも完全に失敗している。
私が非常に良質のゲームだと考えている『NOLF』や『NOLF2』(いずれも同じ会社が制作)は、雰囲気やアドベンチャーゲームっぽさが優れていたゲームだ。
ゲームバランスは決して良いとは言えなかったものの、他の部分の長所が際だっていた。
しかし『FEAR』は雰囲気よりも戦闘を重視したゲームだ。
それ自体は悪いことではないが、戦闘を重視するのならばゲームバランスを最優先にしてゲームを作るべきである。
開発に4年もかけた割には今一バランスがとれておらず、これでは凡作と評されても仕方がない気がする。
せっかく多種多様な戦闘シーンを用意したり、小学校や病院などの様々な場所を用意しても、肝心な部分がおろそかになってしまっている。
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グロい敵もいます
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『FEAR2』の憂鬱
私個人の意見としては、やはり『FEAR2』はPS3やXBOX360でマルチタイトル展開することを意識しすぎたのではないかと思っている。
ゲーム機のコントローラーとPCのマウス&キーボードは別物なので、同じゲームをもったく同じように遊ぶことは不可能である。
それゆえ、どちらかに適したゲーム作りをするべきなのだが、中途半端なものを作ってしまうのが最悪なパターンだ。
『FEAR2』はPC向けともゲーム機向けとも言えない奇妙なバランスでゲームが作られており、どちらのユーザーからも評判は悪くなっている。
特にマルチプレイ(対戦)の出来の悪さは最悪である。
そしてゲーム機を含めた幅広い層に求心力があるゲームを作るとなると、没個性的で尖ったところのないゲームになりがちである。
文句をしにくい仕様を積み重ねていくと、なぜかありきたりなものになってしまう。
どのような層を意識したのか漠然として分かりにくいものは、誰にも魅力的に映らずに終わってしまう。
『FEAR2』はまさしくこれだ。
尖ったところをなくしていくと何も残らなくなってしまう。
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マンネリとならないために、前作とは違うゲームに作り替えたはいいが、方向性がさだまっていない
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