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ジャンル:FPS
機種:PC
発売年:2003年
開発会社:Cauldron


レビュー脱稿日2010年10月 最終更新日2011年3月

紹介

『Chaser(チェイサー)』はスロバキアのCauldron開発、JoWooD Entertainment発売、日本代理店はメディアクエストが担当した一人称視点シューターである。
PC専売で日本語版がある。
ずいぶん前から開発されていたものの、発売は2003年にまでずれ込んでいる。
さすがに2004年に発売された大作と比べるとグラフィックは劣るが、それでも2003年のPCゲームでは美しい方だと言える。

『チェイサー』は21世紀後半を舞台とするサイエンスフィクションでもある。
ストーリーは宇宙船から始まり、地球、火星へと主人公の活躍の場は移り変わってゆく。
途中、マフィアに協力したり、裏切ったり、ロシア軍と戦ったりする。
そのようなぶっ飛んだ設定とは裏腹に、登場する武器は妙に現実的だ。
現代の延長上にあるかのような実弾を利用した武器や銃メーカーの名前が出てくる。
テニスコート
なかなかのグラフィックだと思わないかね?
ゲームエンジンの能力はかなり優秀な方であると思われる。
なぜなら超広大なマップをロードなしに描画することができ、しかもマップの切り替え時のロード時間も極めて短いのである。

しかしゲーム自体は昔ながらの一人称視点シューターとも言うべきものとなっている。
嫌らしい場所に敵が配置され、ある程度狭い空間での戦闘が多発する。
また一時的に時間経過をゆっくりさせる「バレットタイムモード(ゲームではアドレナリンモードと呼ばれる)」を上手く使っていかないと難しくなるようなバランスに調整されている。
クイックセーブ前提の難易度調整も指摘しておこう。
東欧製にありがちな難易度の高さは買う前に注意しておいた方が良い。
あとみなさんご想像の通り、完全なB級ゲームである。
銃撃
サブマシンガンで銃撃!

レビュー

良作一歩手前

でかすぎるマップ

『チェイサー』で際だっているのは、そのマップのでかさだ。
しかもただ単に大きいだけでなく、プレイヤーが進むべき道筋も類似のゲームと比べて異様に長い。
つまり二重の意味で大きいのだ。

まずプレイヤーが広さに圧倒されるのはゲームを開始してすぐの宇宙船マップだ。
無数にあるドアの一つ一つが開閉可能で、その先に小さな部屋があるという構造になっている。
ハッキリ言って細かすぎる。
そして中盤のホテルや地下基地みたいな建物も、気が狂っているかのように、とてつもなく細かく通路が造られている。

ロシアや火星マップについては、広大なフィールドに加えて上で述べたような細かい建物が配置されている。
すさまじく広いのに細かいところまで作られているのがいろんな意味で恐ろしい。
広い
無駄に広い、とは『チェイサー』のためにある言葉だ
しかしながら、『チェイサー』は単に広くて長くて細部が丁寧に作られているだけである。
というのもマップが広いゲームというのは、普通ならば攻略ルートを複数用意したり、オープンフィールドにしてプレイヤーに選択肢をもたせる。
そこにリプレイ性や自由度を見いだすことが出来るわけだ。
一方、『チェイサー』には自由に戦える場面、道筋がない。
言い換えると『チェイサー』は、分岐させるべき要素をつなげて一本道にしてしまったため、甚だしく長いゲームになってしまっている。

演出についても、殆どがマップの合間でムービーシーンとして上映されているだけだ。
昔のゲームだから仕方ないとはいえ、ゲームの中に演出を組み込んでいるわけではない。
そのかわり、広大なマップの隅々までトイレやら看板やらの小物が作られているのだが。
やくざ
TATAMIのUEでYAKUZAをTAOSU

理にかなった戦闘システム

そのような長い長いマップを楽しめるのかは、戦闘の面白さにかかっている。
結論から言うと戦闘は不思議なバランスで作られているため、面白いとも面白くないとも言えない。

普通リアルっぽい外見のFPSは「しゃがみ」を使うことで敵からの攻撃を避けられるようになっている。
『チェイサー』は立っていてもしゃがんでいても、敵から攻撃を受ける割合はほとんど変わらない。
ではどうやって敵からの攻撃を受け流すのか。
ダッシュ機能を使って左右に動くことで敵の銃弾をかいくぐるのである。
いわゆるスポーツ系FPSで使われているような回避方法だ。

ダッシュをしながら左右に動くと銃の照準が左右に動くため、敵に攻撃を当てづらくなってしまう。
そこで活躍するのが「アドレナリンモード」だ。
時間制限はあるものの、ゲームのスピードを一時的に遅くする。
こうすることで敵に攻撃を当てるのが容易になっている。
実に理にかなったシステムだと言えるだろう。
皆殺し
オレに逆らうとどうなるか思いしらせてやる

不完全な敵AIと、嫌らしい敵配置

戦闘では敵の攻撃力が高すぎる上に、配置が嫌らしすぎる傾向もある。
敵の攻撃力が高いせいで、迂闊に前へ出て戦うことが出来ない。
したがってプレイヤーは敵AIの穴を突くような行動を必然的に求められる。
敵をわざとおびき寄せて曲がり角で待ち伏せしたり、敵AIが反応しない程度に体を乗り出して狙撃するなど。

問題は、敵のAIがいつも同じように反応しないことにある。
よく敵が壁にめり込んで動かなくなったり、攻撃を食らうとノックバックして死角に潜り込んだりする。
好意的に見れば「ランダム性がある」となるのだろうが、『チェイサー』の場合は明らかに不自然である。
意図的な規則性がないので、クイックセーブを欠かせなくなってしまう。
賢いAIというのは人間のように「何らかの意図」を持たせて動くものである。
『チェイサー』は敵のAIが不完全すぎて、奇妙なランダム性を持たせてあるため、プレイヤーはどのように対処すればいいのか分かりにくい。
一つの部屋を掃討したと思ったら、隠れた場所に敵がいて攻撃されるという事態も頻発する。
これはランダムにすれば面白くなるわけではないことを意味している。

『チェイサー』の戦闘というのは、敵との撃ち合いをせずに対処するという形になりやすい。
つまり敵のいる場所を暗記して、プレイヤーが攻撃される前に先手を打って倒す。
曲がり角を介した戦闘が中心なので、アドレナリンモードを主に曲がり角から飛び出るときに使うと効果的だ。
火星
火星は常に靄がかっている

ラストが酷い。酷すぎる

ということで面白いのか面白くないのか、よくわからないゲームである。
あまりにも長いプレイ時間を楽しませるための要素が見あたらないのが評価を著しく落としている。
結局、曲がり角やドアの先に敵が待ち構えているだけという場面が大半なのだ。
だから銃は豊富でシチュエーションも多彩なのに、どことなく単調な雰囲気が漂う。
マップの大きさのような「力業」でゲームが面白くなることはない。

そして人の「息づかい」を感じさせないマップの構成も物足りない。
これだけ広大なゲームでありながら、敵でも味方でもないNPCがイベントシーン以外で滅多にいない。
星をまたぐ壮大なストーリーの説得力を感じさせないのだ。

またストーリーが「エンディングで敵によって謎が明らかにされる」という、2時間ドラマの最後だけの抽出になっているのもいただけない。
更に『チェイサー』の終わり方というのは、20時間以上遊んだ人の努力を無に帰するかのような突き放した終わり方をしている。
物語はそこで演じる登場人物の物語だけではなく、私たちプレイヤーも追随している。
したがって、遊んでくれた人をあざけることは絶対に慎むべきだ。

『チェイサー』は力業で作り上げたようなゲームだ。
でかいマップ、多くの武器、シチュエーションは素晴らしいものがある。
しかし長すぎる上に、クリアした人を突き放すような終わり方は遊ぶ人のことを考えていないと言える。
B級
やはりB級だ。同じ年に出たCODと比べると、あちらのすごさがよく分かるというものだ。

まとめ

謎だらけのストーリーと雰囲気で序盤は引き込まれる。
巨大なマップと豊富な武器で、ある程度はけっこう楽しめる。
しかし並外れて長いゲームプレイは単調さを呼び起こす。
酷い終わり方によってすべてを台無しにしているのが最も評価できない。

66点

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