Prey (プレイ) レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2010年10月
タイトル
Prey (プレイ)
機種:XBOX360
ジャンル:FPS
発売年:2006年

紹介
『Prey 』(プレイ)は「松崎しげる」みたいな肌の色をもつ主人公がヒロインを助けるために、謎の金属惑星で戦うゲームである。
PCとXBOX360向けに発売されている。
ジャンルは一人称視点シューター(FPS)。そんなわけでプレイヤー(preyerじゃなくてplayer)がしげるを見られるのは鏡が映るシーンだけだ。

開発と販売、そして開発までの道のりはややこしい。
大元のゲームはPC版で、開発はHuman Head Studios、発売は3D Realmsが行っている。
この3D RealmsはPreyの版権を持っていた会社である。
XBOX360版は開発がVenom Games、発売は2K Games、日本向けの翻訳・販売はスパイクが担当した。
上で述べたHuman Head Studios、3D Realms、Venom Gamesはその後、解散・倒産をしている。
現在、『Prey』自体の版権は現在ZeniMax Mediaが持っているようだ。
いつしか出る続編に期待できるかもしれない。
なぜかというと、『Prey』は「つづく」で終わっているからだ。
『Prey』自体の話は完結しているので、これから遊ぶ人が気にすることはない。

しげる
まつざきしげる色の主人公であります

元々90年代後半に発売が計画されていた。
ところが技術的な問題で制作は1999年に中止され、まったく新しいゲームとして2001年に再度開発が始まる。
これが現在私たちが目にする『Prey』である。
ゲームエンジンには当時最高クラスのグラフィックをid Tech 4を使用している。
このエンジンは影の表現がドギツイことでも知られている。
一方、『Prey』は影を利用したゲームではない。

『Prey』は様々な仕掛けが施された宇宙船を先へ先へ進んでいくゲームなのだ。
先へ進むため、プレイヤーはスピリットウォークという能力を使う。
これは簡単に言うと幽体離脱である。
幽体になれば生身では通り抜けられない場所を通ったり、隠された道を歩くことが出来る。
行き止まりのドアに行き当たった時は幽体離脱し、壁の先にあるスイッチなどを押して、生身が通れるようにドアを開けたりする。

重力
重力をひっくり返すための装置。銃で撃とう

主にマップ側で用意されている「カラクリ」には重力を操る装置や、空間をねじ曲げて違う場所へ飛んでいくポータルがある。
他にも数え切れないぐらいの奇妙珍妙なものがプレイヤーを待ち受ける。

『Prey』の戦闘では出てくる敵の数を絞っている。
敵の体力は高く設定されているので、昔ふうのアクションFPSに近いと言えるだろう。
とはいえゲーム全体に対する戦闘シーンの量はたかが知れており、戦闘を重視するような人にはあまりお勧めできない。
しかも『Prey』は、体力が無くなってもすぐに復活できるデスウォークというシステムがある。
死んでしまっても、ちょっとしたミニゲーム(デスウォーク)を遊べばいくらでも復活できてしまう。
「どうせクイックセーブされるんだからゲームにしてしまえ!」という英断である。
しかし、ゲームに緊張感を求める人には要らぬ要素だ。

それとこれは必ず言っておきたい。
グロいシーンが多い。
人が串刺しにされたり、ヌメヌメヌチョヌチョした有機体の壁で作られた空間が嫌な人は遊ばない方が良い。

以上で紹介は終わりである。

デスウォーク
これがデスウォークだ!



レビュー
●異質な空間を表現し尽くした良作ゲーム

『Prey』の面白さは、その型破りな世界にある。
グラフィックが独特で凄いというのも理由の1つだ。
しかし『Prey』には私たちが「リアルな」ゲームでは感じられないような、スピリットウォークを初めとする風狂な世界を体験するための装置が盛りだくさんなのだ。
言ってみればゲーム自体が一種の異次元体験装置として働く。

まず、『Prey』の世界への入り口としてグロテスクな表現がある。
遊び始めて間もないプレイヤーを襲うグロさは『Prey』が理屈の通じない世界であることを痛感させる。
これがありふれたゲームならばただグロいだけになりかねない。
繰り返しになるが、「グロさ」がその後のワケノワカラナイ世界への先導役となっている点で『Prey』のグロさには意味がある。

ポータル
例えばこう、ポータルがばいーんと開く

そして重力を操れるような仕掛けがマップにたくさん備えられている。
装置を使うと、自分だけ逆さまになったり、壁に張り付いたりできる。
部屋の重力を逆転させるものや、近づいたら強力な重力でプレイヤーを引っ張るミニ衛星みたいなものもある。
これらの設備は、上下左右が『Prey』の世界ではいとも簡単に逆転させてしまうことを意味している。
つまりプレイヤーは遊んでいくことで、重力のありかたがよく分からなくなってくる。

一段と世界の秩序をぶっ壊すのがポータルである。
これは空間をねじ曲げてつなげる「どこでもドア」みたいなものだ。
コンテナの一面がポータルとなっていたり、突如目の前に引き裂かれた空間が表れることもある。
主人公がゲームの中で「いったい何なんだよ!」(言葉は正確ではないが)と言っているのが、常識が通用しない空間を端的に表現していると言える。
プレイヤーも主人公も謎すぎる世界で遊ぶのだ。

変じゃない?
この画像変じゃない?いいえ、あってます

いっそうプレイヤーを混乱させるのが「希薄な死の概念」である。
紹介で書いたように『Prey』には死ぬという通念がない。

スピリットウォークという幽体離脱を使えば、普段見ることのできない主人公の姿を、外から眺められる。
まあ、スピリットウォーク中は画面が白くなるので、まつざきしげる色の健康な肌を確かめることはできないのだが。
それはさておき、『Prey』は常に一人称視点で進められるゲームだ。
決して三人称のカメラによるムービーシーンというものはない。
したがってスピリットウォークの奇怪さが増幅される。

もっと直接に死の恐怖を取り除いているのがデスウォークのシステムだ。
デスウォークとは、主人公の体力がゼロになった場合、強制的にやらされるミニゲームだ。
このミニゲームでは空中に浮かぶマンタ(エイ)を弓で撃つ。
打ち抜いた数に応じた体力を獲得し、主人公はその場で復活することになる。
すなわちデスウォークがある限り、死ぬことはないのである。
普通のビデオゲームでは考えられないシステムだ。
敵に「やられる」というのがゲームを成立させる要素の一つになっていない。

亡霊?
子どもの亡霊を相手に戦う

これらから導き出されるのは『Prey』が英雄の物語であると言うことだ。
恋人を助けることにしか頭になかった若者がチェロキー族の運命を受け入れ、ひとりの戦士へと変わっていく。
そしてエンディングで主人公は英雄として賞賛される。
(インディアンの)チェロキー族の誇りある戦士として、未来に語り継がれる存在となるのだ。
このような若者の英雄物語は限りなく非現実的なフィクションでも良い。
むしろ超自然的であればあるほど、主人公の強さは浮き彫りになり、面白くなる。

普通なら理解不能な世界は狂気だとされるかもしれない。
しかし『Prey』は完全にランダムな狂気などではなく、秩序を持った世界だ。
その秩序のあり方が常識とはかけ離れているため、奇抜に感じられるだけだ。
『Prey』は何かが少し違っているだけの、現実とは似て非なる物語である。

宇宙
宇宙は広い

と『Prey』のもつ世界の魅力を伝えてきた。
しかしゲームのシステムは好みが分かれやすい。

いわゆる「パズル」を利用したゲームにありがちな長所と短所がある。
「パズル」というのはちょっとした仕掛けを使ってバリアーやドアを解除して先に進んでいく仕掛けの総称である。
このパズルで面白いものに出会ったことは、たくさんゲームをやっている私でも数えるほどしかない。
『Prey』のパズルは独特の世界を見せるためものが中心である。
換言すると、頭を使わせるような知的なパズルは存在しない。

また、パズルにはヒントがわかりにくい場面が必ず出てきてしまう。
そしてどうしてもマンネリ化するのも避けられない問題だ。
『Prey』の場合はスピリットウォークを使った謎解きがかなり一本調子である。
生身では通過できないバリアを通り、その先にあるボタンを押してバリア解除というものが多い。

解除
結局スイッチ解除ばかりだなと思う

戦闘はそれ自体の分量が少ないことが、「好戦的なゲーマー」から不評となるような気がする。
それに戦闘だけを見ると取り立てて評価することもない凡庸なものである。
アクション性が強いので、最近はやりの見た目リアルなゲームに食傷しているならおすすめできるかも知れない。
しかし、やはりネックとなってくるのはデスウォークの存在だ。

デスウォーク自体はクイックセーブをゲームそのものに持ち込んだ画期的なシステムであっる。
ところがデスウォークがあるおかげで、体力を減らさないようするという意識が薄くなり、結果として戦闘に緊張感が無くなってくる。
これは保険とかで使われるモラール・ハザード(morale hazard)という問題によく似ている。
(例えばシートベルト・エアバッグがあるからと、乱暴に運転を行い、結果として事故を起こす危険性が高くなるなど)
つまりデスウォークは素晴らしくとも、そこに抜け道というか水漏れがあったのだ。
緊張した戦いを好むコアゲーマーにとっては好ましい状況ではない。

『Prey』は素晴らしい雰囲気をもつゲームである。
どれもが絡み合って『Prey』の世界を作り上げている。
しかしパズルや戦闘はやや張り詰めた雰囲気に欠け、後半はだれることになるかもしれない。

ぼす
ボスもいます。弱いけど楽しいです

まとめ
グラフィックや仕掛けが『Prey』の世界をひとつひとつ構成している。
どちらかというと緊迫した戦闘や頭がすり減るようなパズルを期待するのではなく、どっしりと構えて遊ぶべきである。
またかなりグロくて気持ち悪いシーンが多いので、買うときは注意がいる。


点数 75点
リンク

公式サイト 





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