まもるクンは呪われてしまった!  レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2010年5月
タイトル
まもるクンは呪われてしまった!
機種:XBOX360
ジャンル:シューティング
発売年:2009年

 
紹介
まもるクンは呪われてしまった!(以下まものろ)はグレフとガルチの共同開発によるシューティングゲームである。
2008年にアーケードで稼働した同名ゲームの移植作だ。
XBOX360版はグラフィックスの強化が行われているほか、XBOX360版専用モードやステージセレクト、攻略DVDと必要なものはそろっている。
ゲームバランスがある程度作り替えられているので完全移植とは言えないが、遊びやすくなっているようだ。

まものろは通称「任意スクロールシューティング」と呼ばれているタイプのゲームだ。
普通のシューティングゲームと違い、ステージの奥に自機を移動させていく必要がある。
ショットを上方向だけでなく左右に撃ち分けることも出来る。
大昔のゲームで言うと奇々怪界に近いが、まものろは画面上にひたすら進みつつ、スクロールした分は戻れないのが特徴である。(だから下にはショットを撃てない)
最近のシューティングゲームではかなり異質で、どちらかと言えば古典的な印象はある。

画面1
プロローグシーン

システムで特徴的なのが呪い弾システムだ。
呪い弾は通常のショットよりも強力な攻撃でうまく使えばスコア稼ぎになるのだが、敵の攻撃を激しくしてしまう欠点も併せ持っている。
自機の攻撃力を上げる呪い状態へと移行するためにも使われる。
そして、呪い弾を発射した瞬間に画面上の敵弾をすべて消す効果もある。
ただし呪い弾の弾消し効果を最大限に生かすためには、稼ぎや呪い状態を諦めなければならないようになっている。
つまり呪い弾は安全に進むためにも使えるし、稼ぎにも使えるシステムなのだ。
どのように使い分けていくのかを各人にゆだねられている。

でも
家庭用モードに使われているデモシーン

グレフもガルチも言ってみれば古いタイプのゲームを作る小規模メーカーである。
どちらの会社も2000年代にシューティングゲームのメーカーが減少してケイブ(弾幕ゲームを作っているメーカー)一強になっている現状を危惧している。
だから、まものろは画一化しつつあるゲーム作りに異を唱える形で制作されたのである。
開発者曰く、80年代ナムコの自由な発想のようなゲームをめざし、まものろはシューティングの定義に沿った作りにはなっていないという。
ゲーム世界の雰囲気を重視しているようだ。

ポップな感じのグラフィックスも見た目の取っつきやすさを目指している。
難易度はそれほど高くなく、攻略DVDもついているので比較的プレイしやすい方だと思う。

すてーじせれくと
ステージセレクトがゲームの一部になっているのは珍しい

レビュー
●雰囲気は良いがゲームは微妙

アーケードゲームは家庭用専売のゲームとは趣が異なる。
簡単に言うと時間をかけられない忙しいアーケードゲームと、いくらでも時間をかけられるようにも作ってある家庭用ゲームの違いだ。

まものろの欠点はアーケードゲームなのに家庭用ゲームのような時間をかける要素を混ぜ合わせているところにある。
自キャラを動かして画面をスクロールさせるゲームは、その場でずっと立ち止まって安全になるまで時間をかけて敵を倒していくという戦法が使いやすい。
アクションゲームとかで目の前の敵を排除してからアスレチックコースを攻略していくとでも考えたらよいだろう。
しかしまものろは元々アーケードゲームであったためお客にいつまでもプレイさせるわけにはいかない。
そこで一定時間たつと「破壊できない敵」がワラワラと出てきて難易度を上げ、お客の回転効率を上げるように作られていた。
時間をかけても死にやすくして客に再プレイさせようというわけだ。
確かに時間制限のシステムはオペレーター(ゲームセンター)が利益をあげるための仕組みなのだが、これがゲーム自体の違和感を作り上げている。

左上
左上のメーターが時間制限

まず、まものろは時間制限がかなりきつく作られており、時間配分をよく考えてゲームを進めなければならなくなっている。
これは数十回プレイして、ゲームなれてからは何とも感じにくい。
だがやり始めて間もないころは、常に時間に追い立てられるような感覚を背負いながらゲームをする。
こういった時間制限は効果的に使われてこそ緊張感を生む。
まものろは常時駆り立てられるのであまりにもせわしなく、緊張感と言うより義務感や圧迫感を生んでしまっている。

家庭版では時間制限をきることが出来る。
ただし、思う存分時間を使って楽しくゲームできるかと思いきやそうでもないのが困ったところだ。
元々時間制限の配分を考えながらスピーディに進むゲームだったため、ゆっくりと遊ぶのには不向きなのが原因だ。
シューティングゲームというのは、画面に現れる敵の排除が遅れて自分が死ぬゲームである。
例外のゲームは多いものの、一般に敵の位置を覚えて速攻で破壊していくことがおもしろさにつながる。
時間をかけて少しずつ敵を排除していくゲームではないのだ。
アクションゲームやFPSなら敵の攻撃を避けたり、狙いをつけたりする必要があるため、このような時間制限のないシステムとの親和性は高い。
ところが最近のシューティングゲームは弾を垂れ流しで敵を攻撃する意味が薄れている。
せっかくまものろでは攻撃の方向を変えられるのに、その要素を生かした敵配置を行っていない。
弾を避ける面白さを追求する弾幕ゲームでもない。
一応「呪い弾」を使い分ける面白さはあるものの、撃つ、避けるといったゲームの根幹に変化をつけることはすれど、劇的に変える要素とは言えないだろう。
つまりアーケードモードの欠点は形を変えて残ったままなのである。

呪い状態
呪い状態を上手く使おう

まものろは難易度をそこそこに押さえて「スコア稼ぎ」を楽しむように作られている。
手っ取り早いのが「数十体の敵が湧く」テレポーターの前で湧き続ける敵を駆除する湧き待ちだ。
時間に制限があるアーケード版では長く稼ぐと難易度が急上昇するため、ある程度の意味合いがあったが、制限が撤廃された今は稼ぎのおもしろさも消え失せている。
そして、自分が来た道を戻れない。
これは時間の制限があるアーケード版なら当然の仕様だが、時間を使い放題の家庭用版ではストレスを生むだけになっている。

まものろに普通のSTGのようなステージがいくつも用意されているのは不思議だ。
左右に撃ち分ける必要のないボスラッシュステージ、新エンディングに到達するためのやけにむずかしいボス戦は、まものろらしさがまったくないタダのSTGである。
面白い仕掛けや敵の攻撃は用意されていない。
しかしラスボスだけはゲームシステムをよく反映したゲームとなっている。
これについてはよく考えて作ったなと思わせる出来だ。
まものろらしさが垣間見えるのがそこだけであるのは残念である。

らすぼす
ラスボス前

また、家庭用版専用モードの出来もお粗末である。
ステージ間にデモを挿入してストーリー性を演出するような仕様はいまのゲームにそぐわない。
前の世代機(PS2世代)で行われ、おおかた捨てられた手法だ。
本来ならゲーム中にそれとなく演出を仕込むのが上手いやり方だ。
しかしアーケードゲーマーというのは何十回何百回と同じゲームをやり込むため、ほんのすこしの演出でも繰り返し見る羽目になり、嫌われる傾向がある。
演出が長ければ絶対的なプレイ時間も長くなり、ゲーセンも喜ばないだろう。
それゆえ、演出をゲーム内に入れることは困難が伴う。
念のため言っておくが、まものろはゲーム中にもストーリー性を感じさせる演出はある。
だが感じさせるだけだ。

家庭用モードを何度も反復させなければ家庭用オリジナルストーリーが進まない手法というのもやや疑問を持つ。
これは特定のキャラクターごとに特定のステージをクリアすると、本当のストーリーがアンロックされるという手法だ。
問題は「なぜ特定のキャラクターでステージをクリアする必要があるのか」という理由やヒントがストーリーでわかるわけではない。
ドルアーガの塔のような、脈絡もない謎解きが斬新だった時代とは違う。
思わせぶりで中身が何もない話ほど退屈なものはない。

大ボス
大ボスとの戦闘

まものろは以上述べてきたようにシステムに矛盾がある。
そのかわり、雰囲気や操作の感触と言った見た目やさわり心地はかなり良い。
キャラクターは細かいモーションまで作られているし、背景もいろいろな場面が用意されている。
敵の配置や攻撃を撃ってくるタイミング、画面の見やすさといった部分はさすがにシューティングゲーム作りになれているなと感じさせてくれる。
冥界を舞台にした独特の世界は確かに他のゲームにはない魅力がある。
ただし雰囲気の良さだけで突っ走ったゲームが面白いとは限らない。

開発者がインタビューでまもるクンは呪われてしまった! を「自由な発想」で「シューティングゲームの文法に囚われない」と豪語していたが何のことはない、ごく普通のシューティングゲームである。
目新しいのはちょっとした呪い弾システムと世界の設定ぐらいだ。
未だに稼ぎをするために敵が出尽くすのを待ったり、決まったようにボス戦が用意されていたり、キャラクターがいくつも用意されていて使い古されたお話をしている。
もちろん昔からの要素や他分野のゲームから長所を拝借するだけでも上手く組み合わせればすばらしいものになり得ることは出来る。
しかしまものろは、きれいにまとめ上げることが出来ていない。
私の思うに、まもるクンは呪われてしまった! はアーケードゲームやシューティングゲームという形式にこだわったメーカーと、保守的になったシューティングゲーマーという顧客が生み出したゲームなのである。
だから新しいように見えて中身が全然新しくない。
今まで培ってきたものを土台にして、自由な発想というものを上に添えているだけである。

見づらい
オトメディウスと比べたら見やすいとはいえども、やっぱり色調をどうにかしないと見づらいなぁ。


まとめ
グラフィックをパワーアップした移植、攻略DVD、練習要素と基本的な事柄はすべて揃っている。
独特の世界やレスポンスの良い操作はグレフとガルチの面目躍如といったところだ。
しかしゲーム自体がちぐはぐとしており、普通のシューティングゲームかそれ以下の存在になってしまった。

点数 41点
リンク

公式サイト


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