FATAL FRAME2 Crimson Butterfly(フェイタルフレーム 2 クリムゾンバタフライ) レビュー
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レビュー最終更新日 2009年2月

FATAL FRAME2 Crimson Butterfly(フェイタルフレーム 2 クリムゾンバタフライ)
機種:XBOX
ジャンル:アドベンチャー
発売年:2004年

 
紹介:
フェイタルフレーム2クリムゾンバタフライ(長いので「紅い蝶」とする)はテクモが開発販売をしたアドベンチャーゲームである。
2003年にPS2向けに発売された「零〜紅い蝶〜」に追加要素やグラフィックのパワーアップを加えた物がここで説明する紅い蝶である。
位置づけとしては、前作のフェイタルフレーム-零スペシャルエディション-と同じように、XBOX向けに題名を変えて移植したものだと考えてもらえばいい。
PS2版とXBOX版はゲーム内容は殆ど変わっていないので、略称はPS2版の名前に統一している。
XBOX版の紅い蝶はとんでもないプレミア価格がついているので、廉価版も発売されているPS2版を購入すればいいだろう。
現在でも潤沢に流通しているので入手は簡単だ。

XBOXに移植されるに当たっていくつかの要素が追加されている。
主な点はストーリーを主観視点で進めるFPSモード、ストーリーとは独立した敵を倒すことに専念するサバイバルモード、最高難易度と新エンディングの追加である。
どれも普通にストーリーをプレイするよりも難しいものばかりで、XBOX版は一度クリアした人向けのゲームだと言うことが出来る。

主人公と双子の姉

紅い蝶もとい零シリーズは、カメラを使った一人称視点で幽霊や亡霊などのお化けを倒していくのが特徴的なアドベンチャーゲームだ。
舞台やお化けは和風を徹底して貫いており、日本的なものが生み出す恐怖が他のゲームにはない独自の要素だと言える。
またストーリーが民間伝承を用いた幻想的なものであることも評価が高い。

紅い蝶のストーリーは、主人公とその双子の姉が「地図から消えた村」に迷い込んでしまい、そこで手にした特殊なカメラを使って脱出するというものである。
ゲームを進めていくうちになぜその村が地図から消えてしまったのかということや、そして村に古くから伝わる伝承や様々な人々の思いが交錯していた様子が次第に明らかになっていく。
特に儚さややりきれなさがヒシヒシと感じられるストーリーは零シリーズ最高とも言われている。

幽霊は健在だ

紅い蝶は初代のzeroよりも難易度を下げ、恐怖感が無くなっているが、その分ストーリーに力が入れられていると言える。
しかし、恐怖を演出する要素は相変わらず高い質でまとめられている。
不気味さを残した明るくも暗くもないグラフィック、細部まで再現された日本家屋の造り、怖さをより募らせる幽霊の造形は健在だ。
また紅い蝶ではキャラクターの声にエフェクトがかかっており、幽霊の笑い声などはゾクゾクするものがある。

戦闘システムは敵である幽霊をカメラで撮影してダメージを当てることは前作と変わらないが、敵モーションに応じて発動する「ZEROショット」や「フェイタルフレーム」でないと大きなダメージが入らないようになっている。
つまりカメラ越しに敵の動きのパターンを読んで、そしてタイミング良くシャッターを押すことが重要になっている。
敵の攻撃力や移動速度は押さえられているので、前作よりも幅広いプレーヤーにおすすめできる難易度になっていると言えるだろう。

全体的に暗い

レビュー
●完成度は高いが何かが足りていない

紅い蝶は確かに良くできたゲームなので、大抵のレビューではかなり高い評価を得ている。
前作で評価された点を劣化させずに上手く紅い蝶のゲームシステムに組み込んでいるので、順当な続編になっていると言えるだろう。
見方によっては、より深みを増したとも考えられる。

戦闘システムについては、前作はファインダー越しにひたすら敵を追いかけることが大切だったが、紅い蝶では敵を捕捉するだけでなくて敵のモーションの癖を掴む必要がある。
その理由は、敵が攻撃モーションをするかまたは特定のモーションをしたときにこちらの攻撃力が大幅に上がるシャッターチャンスが訪れるからだ。
ジジジジ・・・とノイズのような音が入り画面にシャッターチャンスのエフェクトが出るので、いつシャッターを押せばいいのかはわかりやすくなっている。
ただシャッターチャンスの時間が非常に短いために、反応してからシャッターを押すのでは遅すぎて空振りになってしまう。
だからこそ敵の行動パターンを読む楽しみがより増していると言える。
ストーリーでは何人も登場人物が出てきて、それぞれが複雑な思いを交差させながら村のしきたりを守っている。
そして一口に悲しいとは言い切れない複雑な感情が描かれている。
特にラストのやりきれなさは是非とも体験してほしいくらいだ。

不気味な雰囲気

ところが紅い蝶の欠点は結局のところ続編に陥りがちな前作とあまり変わりばえしないゲームプレイにある。
また上記のように深みを増した・・と言えば聞こえは良いのだが、むやみに複雑化して要らないものまで作りだしてしまった感じがある。
さらにストーリーも幻想的と言えば良さそうに思えるが、迷い込んだ村を脱出するという目的がゲームプレイにあっていない。
エンディングに近づけば近づくほど、何を目的に謎解きをしているのか分からなくなるのだ。
しかし紅い蝶最大の欠点は前作より明らかに怖くないことにある。
怖くないホラーゲームはただのアドベンチャーゲームかギャグである。
紅い蝶はアドベンチャーゲームのようなストーリーや謎解き探索要素に力を入れたために、ホラー要素の薄いアドベンチャーになってしまった。

子供がいる・・

前作が斬新だったのは、バイオハザードが続編乱発で食傷気味だったアクションアドベンチャーというジャンルに、カメラを使った操作と極限まで追い求めた恐怖感を追加したことにある。
カメラを使う攻撃方法は、それまでは直視しなかった怖い敵を直視することにより新たな恐怖を生み出した。
そして恐怖の演出を丁寧に吟味し作り上げていった結果、背中に冷たい水が流れ落ちるようなゾクゾク感を醸し出すゲームが完成した。
つまり怖さの表現こそが前作のzeroらしさを作っていたと言える。
紅い蝶は恐怖感が足りていないので物足りなさが残っているのだ。

ホラー要素を薄めているのは様々な要素が絡んでいるので、ちょっとずつ紐解いていこう。
まずは戦闘のテンポの悪さである。
幽霊との戦闘は戦闘のはじめこそ怖いが、長い間やっていると慣れが生じて全然怖くなくなってくる。
だから戦闘に掛ける時間は少ない方が良い。
ところが紅い蝶の場合は幽霊の動きがとてものそのそしている上にシャッターチャンスが少なく、敵の体力も高いために戦闘が長く感じてしまう。
つまり怨霊やら幽霊が怖くないのだ。

彼女はこわいけどね

次はアドベンチャーゲーム的な要素である探索要素やストーリー性についてである。
探索要素自体は決して悪いわけではないのだが、マップが広くなったり探す物が増えてくると幽霊以外のことに意識が飛んでしまって怖さを感じなくなる。
ストーリーに関しては、全体的に平坦で話の筋がわかりにくい。
おそらく話の全貌はエンディング内容を含めると一回クリアしただけでは何が何だかわからないだろう。
最初は村から逃げ出すことが目的だったのに、主人公の姉がふらふらとどこかへ行ってしまう物だからついでに村の人々だった幽霊の様子がうかがい知れてきたという話の筋は、非常に惰性感が大きい。
紅い蝶が面クリア型のアクションゲームならそれでも十分問題なかったのだろうが、ストーリーが重視されるタイプのゲームでは致命的である。

イベントシーンの見せ方は、前作よりも直接的な描写が増えたことにより衝撃度は高まったが、後へ残るような不気味さは消えてしまった。
実は衝撃的なシーンというのはその一瞬だけが衝撃的で後々まで残るような物ではない。
残るような物は確かにあるが、それは嫌悪感や衝撃だけであって決して零で見せたい恐怖そのものではない。
また開発者は狭いところに複数の敵を出せば怖いと思っているのだろう。
敵の配置の仕方が密なところは妙に密で、粗なところは妙に粗なので絶妙な「間」が出来ていない。

一度に出てきすぎ

とまあいくつか悪い点を述べてきたが、それは非常によい出来だった前作を評価の軸にしているからだと念を押しておきたい。
前作と比べなければ十分に質の高いホラーゲームとして楽しむことが出来るだろう。
しかし根本的なところが前作と代わり映えしないので、やりこんだプレイヤーであればあるほど肩すかしを食らう可能性は非常に高い。
私は短い期間に連続してやったので紅い蝶のダメな点が嫌と言うほど分かってしまった。

出来の良い作品の後継作というのは非常に立ち位置が難しい物である。
これはゲームでも映画でもなんでも共通するある種のジンクスと言える。
異なる物にして新たな評価を築くか、より発展させたものをつくるかは作り手の自由だが、どちらが良いのかはハッキリと言い切れない。
紅い蝶は単体で見ればとても良くできたゲームであるが、それは前作があってこそのものなのは間違いない。


やればやるほど類似点がわかるだろう

まとめ
一作目のマイナーチェンジバージョンが二作目である紅い蝶だと言えるだろう。
革新的な要素やプレイヤーを感心させるような変化は起こっていない。
ただ一作目は非常に出来が良かったので、それを元にした紅い蝶の出来は良い方なのは間違いない。
問題点は変わり映えのしないゲームプレイにある。
しかし、一作目をやっていない人は非常に斬新で怖いゲームだと感じるだろう。
ストーリーにつながりはあるものの非常に薄い繋がり程度なので、難易度が押さえられた紅い蝶からやり始めても良い。
点数72点

リンク
公式サイト



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