S.T.A.L.K.E.R. Shadow of Chernobyl(ストーカー シャドウ オブ チェルノブイリ)レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2008年11月

S.T.A.L.K.E.R. Shadow of Chernobyl(ストーカー シャドウ オブ チェルノブイリ)
機種:PC
ジャンル:FPS
発売年:2007年

紹介
ウクライナのGSC GAME WORLDが開発。
発表から何度も何度も延期されてようやく発売した。  
日本国内では英語版のみの販売だが、有志による日本語化MODが公開されている。

ストーリーが結構重視されているので手短に説明しておく
チェルノブイリ発電所の事故から20年、再び爆発が発生する。
発電所の周りは軍によって立ち入り禁止となり、その中では奇怪な生物が発生した。
その場所はゾーンと呼ばれた。
2012年、ここはストーカーと呼ばれる賞金稼ぎや奇怪な生物を研究する研究者が危険をおかして立ち入るようになった。
主人公は記憶を失ったストーカーで、「Kill Strelok」という唯一の手がかりを鍵にこの地域を探索する。

S.T.A.L.K.E.R. は広大なフィールドに主人公がポツンと置かれ、その中で様々なミッションをこなすというゲームである。
ミッションはストーリーに直接関係があるメインクエストと、関係のないサブミッションで構成されている。 
つまりはメインクエストだけこなしてもいいし、サブクエスト(寄り道)をしてもよいというワケである。

メインのストーリーのほかに様々なサブイベントが用意されている。

このFPSの特徴は、やはりサバイバル重視のシステムにある。
必要となる武器や食料などは、敵から奪ったり他の人と交換して手に入れなければならない。 
そして持ち物にはそれぞれ重量が決められており、持ち運べる総重量が決められている。 
したがって武器をあれやこれや持ち運ぶことは出来ず、常に最低限のものを携帯する必要が出てくる。

また武器や自分を保護してくれるアーマーには耐久力が設定されていて、耐久力が減ると性能が落ちるようになっている。
例えば銃器なら、弾がまっすぐ飛ばなくなったり装弾不良がおきやすくなる。

戦闘もまたリアリティがあって、銃の性能は悪くて敵になかなか当たらない上に自分の耐久力は低い。
したがって遠距離だと弾切れ、近距離だと撃ち負けを覚悟しなければならなくなり、こちらが死なないためにはヘッドショットを常に狙う必要が出てくる。

難易度を一番低くしてもこれらの点はまったく変わらなく、総じてシビアなバランスだと言える。

敵との交戦。

レビュー
●実に感心するほど作られたコアなゲーム
 
ストーカーは実によく練りこまれたゲームである。
製作に5年もかけていたから当然といえば当然なのかもしれないが、発売までこぎつけたのを素直に評価したい。
もともと作っていたものが時間・予算・能力で完成できないとき、どこで区切りをつけるかは大事だからである。

このゲームで最も優れているのは、ゾーンと呼ばれる空間に自分がいるかのように感じる感覚である。
マップの細部までが驚くほど丁寧に描きこまれており、グラフィックは非常に写実的である。
ゾーン内では常に時間が変わっていて昼夜や天候の概念もある。
サバイバルが強要されている中で自分はゾーンという不気味な空間に生きているという感覚を存分に味わうことが出来る。
戦闘バランスはかなりシビアということは上で述べたが、シビアであるながらも理不尽ではないところも評価できる。
敵のAIはなかなか賢く、敵はこちらを回り込むように動きつつ遮蔽物に身を隠しながら攻撃をしてくる。
つまり単に敵に突っ込むだけでは負けてしまうので、有利な地点に陣取ったり敵を背後から奇襲する必要が出てくる。
ストーカーで戦闘をしていて面白いと感じるのはこの駆け引きにあると思う。

AIの良さと言うのは何も戦闘だけではなく、一部のNPCは意思を持って活動している。
NPCが自分のテリトリーに入ってきた敵を攻撃したり、ロードするたびに行動をいくつか変えるという点である。
確かに面白さを生む要素とは言いにくいが、このような動きはゾーンの現実感を高めてくれる。
 
そこで死体から物を剥ぎ取る

またFPSにしてはストーリーラインがしっかりと作られていて、ゾーンを探索する楽しみを広がらせてくれる。
ストーリーを進めることで未知の領域を探索出来るようになり、さらにストーリーが進展していくというゲームの流れをしっかりと作っている。
ラストの展開には誰もがアッと驚くことだろう。

しかしこの面白さが分かってくるのはゲーム中盤以降というのが実にもったいない。 
ゲームスタート時、プレイヤーを導いてくれるチュートリアルのようなものはない。 
右も左も分からないうちに、いきなり本編と同じことを強要されるのである。 
要するにプレイヤーに対してどのようなゲームなのか、どのように楽しむのかをまったく伝えていない。 
もちろんこれには反対意見も上がると思われる。 
ゾーンを探索する未知への興味、ゾーンの中での生活感のどちらもストーカーを面白くする要素だが、これはしばらくプレイしないと分からないという意見である。 
しかしこの面白さに導いてやることこそ、ゲームを作るうえで非常に大切なことだと私は考えている。 
人によっては序盤で積みゲーとしてしてしまうだろう。 
せっかく作り上げたゲームを遊んでもらわなかったら、実に悲しいことだと思う。

さてその序盤をすぎたころ、プレイヤーは既にストーカーのとりことなっているに違いない。 
敵に対してどう対処すればいいのか、そしてどのようにゲームを進めればいいのか分かってしまえば、あとは探索を楽しむだけである。 
写実的で不気味な空間を一人で、自分の力を頼りに進む感覚はこのゲームが最も上質だろう。 
進めば進むほど面白くなってくるゲームの典型である。
ゾーンの中にいる異形の怪物。

しかし、ストーカーの売りの一つであったサブクエストがまったく面白くないのは皮肉だった。
メインストーリーとは別に請け負うサブクエストは、言ってしまえばストーカーとしての仕事で没入感を生む要素である。
ところがこのサブクエストはどれもこれもが似通っている上に、それ自体が面白くない。
「○○を倒せ、一掃しろ」「○○を探せ」というのはただのお使い要素である。 
ついでにもらえる報酬はわずかである。クエスト中に手に入る銃とかを売っぱらったほうが儲けが大きい。
しかもこのサブクエストは、常にバグの危険をはらんでいる。
メインクエストとの兼ね合いからか、やる順番によってはバグが発生してしまうのである。
まあ普通にやる分には問題ないが。

ここからはかなり主観が入るが、ストーカーは全体的に洗練されていないゲームという印象を持った。
まずインターフェイスが使いにくい。
キーコンフィグの設定やグラフィック設定がやりにくく、細かく設定できない。
PDAによって自分が請け負っているクエストや現在位置を知ることが出来るのだが、これがまた非常にわかりにくく使いにくい。
有名なゲームならばこのようなところはしっかりと作られているはずである。

そして驚異的な作りこみがされているものの、思ったよりもマップが狭かったりと、明らかに人数や予算が足りてないんじゃないかと思わせる点。
クリアしたときの達成感とは裏腹に奇妙なボリューム不足を感じたのは自分だけではないと思う。
それはやはり、隔絶された状況とはいえ現実感を追い求めた代償なのだろう。
もっともっと未知なる場所を探検してみたいと考えるのが自然である。
自由度がウリとなっているが、実際にいける場所はごくごく限られていたのである。

あとは安定性が良くない。
ゲーム中に何度も強制終了に襲われた。ロード時間が異様に長いのも気になった。

ストーカーは、なんと言うか、B級ゲームのもつ独特の雰囲気や良さを極限まで追い求めたゲームという感じがする。
少人数で何年も意地になって製作したからこそ、ここまでの作りこみができたのだとおもわれる。
一方でテストプレイすれば明らかに欠点となることが改善されずに見逃されている。
最高のB級ゲームというのがストーカーに対しての自分なりの評価である。 

チェルノブイリ発電所で君は何を見るか?

まとめ
コアゲーマーと呼ばれている人にとっては最高のゲームとなるに違いない。
このゲームと同じような没入感覚を味わえるゲームはない。
しかし他のFPSをやっているからこそ、このゲームの面白さや素晴らしさは分かるというのは忘れてはならない。
PCゲームのしかもさらにコアな東欧メーカーのゲームは、このようなニッチなユーザーを相手にしても大丈夫なのである。
ゲーム経験が浅い人にとってはただのクソゲーとなってしまうだろう。

さらにストーカーは、飽きっぽいゲーマーを最初の数時間で振り落とす魔のゲームである。
つまり忍耐強くやり続ける必要がある。

そういう欠点を覚悟するのなら、どうぞ。
素晴らしい世界があなたを待っています。
我こそはゲーマーという人にお勧め。

点数73点
リンク

GSC GAME WORLD
まとめWiki(日本語化MODはここで入手できる)

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