Unreal Tournament 3(アンリアル トーナメント 3)レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2009年5月
タイトル
Unreal Tournament 3(アンリアル トーナメント 3)
機種:PC
ジャンル:FPS
発売年:2007年


紹介
Unreal Tournament 3(アンリアルトーナメント3 以下UT3と書く)はEpic Gamesが開発、Midwayが販売をしているゲームである。
アンリアルトーナメントの第三世代として、低迷が続くスポーツ系FPSの期待を背負って2007年に発売された。
スポーツ系FPSというのは、リアルと言われる要素を排除してでもスピード感やテクニックを優先させたFPSのことである。
様々な種類があるFPSをリアル系とスポーツ系との二つに分けることはとうてい出来ないのでこの表現の仕方は適切ではないかもしれない。
ただ、一般的にスポーツ系FPSと言えば実銃のようなミリタリー要素が薄いものが多いことぐらいは知っておいて良いだろう。

PC版以外にもPS3とXBOX360で発売されているが、ゲームバランスが大きく違うので注意が必要だ。
私がここで紹介・レビューをするUT3はPC版である。
入手方法は、輸入版、日本語マニュアル版、Steam販売の三つもあるので、UT3を買いたいと思えばすぐに買えるはずだ。

リンクガン勝負
武器も世界も全てがSFチック

スポーツ系FPSはかつてマルチプレイFPSの標準的なゲームスタイルであったのだが、いまでは廃れてしまったタイプのゲームでもある。
人気が無くなってしまった理由はプレイヤースキルの差が出やすいゲームシステムにあった。
一方でこのような技術力の差が"スポーツ"とも形容されるゲームの面白さを作っていたのも事実だ。
しかし現在の廃れ方を見る限り、多くの人に受け売れられるゲームシステムではなかったと言えるだろう。
もちろんUT3でもスポーツ系ならではの、技術力習得の難しさとそれを克服する楽しさは受け継がれている。
したがってUT3を楽しめるかどうかは、相手にやられても我慢してやり続けることが出来るか否かにかかっている。
我慢強くやり続けてゲームのコツをつかんでくると、面白さが初めて分かってくる。
それまではゲームに慣れた古参プレイヤーから一方的にボコられてしまうので、あまり面白い気はしないだろう。

攻撃されている様子
攻撃されてイテテ

ゲームのルールは大まかに分けて三つある。
デスマッチ(DM)、キャプチャーザフラッグ(CTF)、ウォーフェア(Warfare)である。
デスマッチは自分以外が敵のルールだが、二つのチームに分かれてたたかうモードもある。
キャプチャーザフラッグは、二チームに分かれ、敵陣地にある旗を自軍陣地まで運ぶことを競う。
ウォーフェアはUT3独自のルールなので理解するにはちょっと時間がいるかもしれない。
このルールは、2チームに分かれて敵地まっただ中にあるコアを攻撃して破壊するというものだ。
ただし敵のコアを破壊するためには、自分のコアと敵のコアを連結するノードというものを連結させている必要がある。
つまりこのゲームモードでは、マップのあちこちにあるノードを巡って戦う。
またウォーウェアでは乗り物やマップごとの様々な仕掛けが用意されており、乗り物の運用方法や作戦が戦況を大きく左右する。
他のゲームルールはプレイヤーの能力差が顕著に表れるが、ウォーフェアでは立ち回りでなんとかなる面もある。
あまりゲームになれていない人はウォーフェアを好む傾向にあるようだ。

ウォーフェアモードで乗り物に乗る
ウォーフェアでの乗り物の様子

そしてマルチプレイFPSではあまり注目されない点ではあるが、UT3ではコンピューター制御のBOTを入れて遊ぶことも出来る。
人が集まるまでの時間つぶしや特定の武器の練習がインターネットに繋げなくとも可能だ。
またBOTのAIの良さ(賢さ、いかに人間っぽい動きをするか)はUT3のセールスポイントでもある。
BOTの賢さは今までやったゲームの中でナンバーワンだ。
乗り物を使用するモードではまだまだ足りないところは多いが、デスマッチだけを見てみるとかなりすばらしいレベルにある。

UT3はバランスを重視して作られているせいか、尖ったところがないゲームでもある。
例えば武器のバランスに関しては使いやすい武器は威力が低く、使いにくい武器は威力が高かったりして、特定の武器を使っていれば大丈夫なんてことにはならない。
逆に言うと絶対的な武器が無く決め手に欠ける、もしくはプレイヤーの能力が最終的な決め手になる。
マップに関しても大きな特徴があるとは言いにくい。
どのマップでも広い場所には強い武器やアイテムが置いてあったり、意図的に単純なマップを用意することでプレイヤーが迷いにくいようになっている。
こうしてUT3はバランスを最優先にしてゲームが作られているので、ゲームについて大きな不満はないと思われる。
しかし全体的に淡泊なぶん、好き嫌いはあるかもしれない。

ゴライアスとの戦闘!
さっきと違って乗り物を使っている様子
本稿のスクリーンショットは全てBOT対戦のものを使用しています


レビュー
●非常にバランスがいいクセのないゲームだが、決め手に欠ける

ゲームに限ったことではないが、欠点が無くて非常に出来がよいものと欠点はあるものの一部分に突出した部分があるものを考えて欲しい。
CDアルバムなら全曲がそこそこ聞けるものと、一曲だけのキラーチューンがウリのものを想像すると良いだろう。
このときあなたなら、二つの商品についてどのような評価を与えるだろうか。
人によっては全体的な完成度を選ぶかもしれないし、突出している部分を大いに評価するかもしれない。
もちろん、時と場合によるので一概に決めつけられないという意見も大いにあり得る。
どちらにしろ全体的に高い完成度があるからと言ってずば抜けた高評価になるとは限らないのである。
そしてたとえどこかに欠点があったとしても、欠点を打ち消すほどの良いところがあれば、高く評価されることもあるのだ。
この二つのタイプをゲームで当てはめてみると、昔から続くシリーズものは欠点が少ない優等生タイプのゲームが多く、新しいものとして華々しく売り出されるものは尖った物が多い。
おそらくシリーズものは前作までの路線を継承することが求められている一方で、新作は何もしがらみが無いからだろう。
UT3はシリーズの最新作の役目を果たすべく作られた。
何年もかけて作られたUT3の中身については大きな欠点のない、非常に良質のゲームであると言えるだろう。

えんふぉーさーの画像
両手持ちでがんがん攻めるぜ

とにかくUT3をやっていて驚くのは、綿密に作られたマップ構成と武器同士のバランスの良さである。
マップは結構な広さがあるもののほとんどのマップで迷うことがない。
その理由に関しては比較的狭めのマップが多いことも理由なのだが、迷う元になる要素を作らないようにマップ設計していることを一番大きな理由にしたい。
袋小路を作らない、マップを入り組ませない、隠れる場所を作らない、開けた場所を多く作りそこに極力な武器を配置する・・・等々、制作者の心遣いにやればやるほど気づく。
こういう点は公式マップだけをやっていては中々気づきにくい。
公式マップよりもバランスの悪いMODマップをやってみると鮮明に分かるようなほど些細な、けれども重要な箇所なのである。

さらに武器ごとのバランス調整についてはマップの作り以上に入念な調整をかけている。
強い武器やアイテムは見通しの良い場所に置いてあることが多い。
なぜならFPSのマルチプレイ(対戦)をするに当たって、特定の行動があまりにも有利になるようなゲームデザインは面白さを非常にそいでしまうからだ。
特に顕著なのが、あまりにも強い武器と弱い武器が存在している場合である。
使い勝手が良くてダメージも大きい武器があるとすれば、ゲームは使い勝手の良い武器の取り合いになってしまう。
こうして特定の武器だけが使用されてまったく使われない武器があるとき、ゲームの多様性や戦略性は死んでしまう。
つまり単調なゲームになってしまう恐れがある。
しかしどの武器にも使い道があるときは、武器の使い分けが大きな戦略性を生む。
いつどのような場面で適切な武器を使うかを臨機応変に考えることは、スポーツ系FPSならではの面白さだ。

バイオライフル
例えば画像の武器は一定タメ撃ちをしないと敵を倒せないので、直接戦闘はきつい

意外なことかもしれないが、ゲームバランスが良ければ良いほど上手い下手が顕著に表れる。(上手い下手の区別がないようなものもゲームバランスが良いと言えるかもしれない。だが今はそのような話をしない)
ゲームバランスが良いと一言で言っても様々な場合が考えられる。
UT3ではプレイヤーごとに用意された条件がほとんど同じという点がゲームバランスの良さを作っている。
ほぼ対等な条件でゲームをやることになるので、実力差がそのまま成績に表れるのだ。

こんなことを書いているとUT3は初心者に厳しいゲームに感じるかもしれない。
だが私はUT3こそ初心者に向いているFPSであると思う。
なぜなら、UT3はスポーツ系ならではのわかりやすさと他のゲームの良さが入り交じっていると私は考えているからだ。
スポーツ系FPSの銃の扱いについては、他のFPSと考えてみるとクセがないのが特徴だ。
ピョンピョンとジャンプしがら銃を発射しても照準通りのところに飛ぶし、銃は見た目も性能も明らかに差別化されているので、武器の選択に迷うことはない。
他のゲームであるような、立ち止まって単発撃ちをしないと弾がまっすぐ飛ばないなどのゲーム独自のルールが裏で働いていることがないので、見たままの戦いを行うことが出来る。
またUT3はスポーツ系によくある、独特のテクニックがほとんどない。(例えばストレイフジャンプとか。分からなければ無視して良い)
実のところ、UT3は非常に単純でカジュアルなゲームなのだ。
特にデスマッチモードでは上手い人との実力差が出にくい。
ついでに言うと初心者は、自分の実力にあったBOTを入れて練習することも出来る。
そしてUT3をスポーツ系たらしめているのは、カジュアルさとは別の箇所にある。
状況にあった武器選択の選択肢を含め、ゲームスピードが速く敵に攻撃を与えることが難しい点である。
つまるところUT3のテクニックは、スピード感を克服できるかどうかに行き着く。

ロケットランチャーの画像
動きが早いので、相手の動きを予測する力が必要だ

少し話を変えるが、私以外のウェブサイトでUT3のレビューを読んだことがあるだろうか。
いくつかレビューを読んだことのある人は、どこのレビューを見ても同じことしか書いていないと感じたかもしれない。
読んだことのない人は、同じような内容のレビューが多いと言うことを頭に入れておいて欲しい。
どうして同じ内容のレビューが多いのかと言えば、そう書かざるを得ないからである。
単純なゲームのレビューってのはすごく難しいのだ。
シンプルなゲームは、他のゲームにもあるような「当たり前のこと」を独自の視点で研ぎ澄ませた物が多い。
レビューを書く側としては当たり前のことをクドクド説明しても面白くないから、当たり障りのないことを書いて済ませてしまう。
だから私のレビューでも触れているような「UT3はバランスが良い」「スピード感が面白い」といった、ぼんやりしたものしか書かれていない。

UT3の欠点は、この淡泊さというか一見すると感じられる底の浅さである。
「底が深いゲーム」というほめ言葉は、裏を返せばテクニック偏重だったりプレイヤーに与えられた情報が少なすぎることを隠すために使われることが多い。
だから競技性を求める人にとってUT3はニーズから外れている。
しかもなまじスポーツ系FPSの伝統に沿ったゲーム作りをしているので、気軽なゲームを求めるユーザー層からのウケも良くない。
スポーツ系ならではの難易度の高さや戦略の妙は底が深いものの、大多数の消費者はそういうものを求めていないのだ。
ここで使っている「底の深さ」という言葉の意味は、UT3自体の底が深いのではなく、ゲームによって生まれるゲームプレイとも言うべき物の底が深いことを示している。
そういうわけで、UT3を求めるのは「シビアだけれどもシビアになりすぎていないカジュアルさがあるゲームを好む人」に限定されてしまう。
したがってUT3をやっている人数は世界全体で見ても少ない。
気軽なゲームは弊害として底が浅くなり、反対に重くて底が深いゲームは楽しめるようになるまでが苦しいものだ。
UT3はどちらの良いとこ取りをしようとしたのだが、少しカジュアルよりになりすぎてしまったので非常に味気なくなってしまったような気がする。
ゲームルールがシンプルなことも味気なさを増大させている。

グリード
敵や味方が死ぬと落とすドクロを集めるルールもあるけど人気はない

UT3はやってもやっても非常に単純で淡泊で味気ないゲームなのだが、同時にカジュアルさとシビアさ(気軽さと真剣さ)の共存の難しさも教えてくれる。
ここ数年でスポーツ系FPSがドンドン人気を落としていく中、人気のあるゲームはバトルフィールドやコールオブデューティーのような気軽に出来るゲームに集中していった。
そんな状況をUT3の開発会社は苦々しく見ていたに違いない。
だからUT3は万人向けと玄人向けを両立させるべく作られた。
実際に他のゲームからUT3をやってみると、まったく違和感なく移行できるのには驚きだ。
それほどゲーム自体に大きなクセがないような堅実な作りになっていると言えるだろう。
私はいろんなFPSをやってきたが、完成度という点ではUT3が一番高いと思っている。
UT3ほど誰にでもお勧めできるような気軽さと、スピード感溢れる上級プレイヤー向けプレイの両立をしているゲームはない。
ところが、とてつもなく完成度が高いからと言って抜群に面白くないのが不思議なところだ。
レビューの最初の方でのべたCDアルバムの例をもう一度取りあげれば、UT3に似たアルバムは「統一感のあり完成度が高い」と言われるアルバムだ。
このアルバムは良い曲がこれでもかと詰め込まれており、曲全体に統一感のあって完成度の高いアルバムだ。
しかし売れ線の曲が多く、聞けば聞くほど似たような調子の曲が多いことに気づく。
その理由は、アルバムで表現しようとしたことが革新性に乏しく、表現しようとしたこと自体に限界があったのである。
UT3に話を戻すと、UT3最大の欠点はスポーツ系FPSが持っている限界に行き着いてしまったところにあると言えるかもしれない。
おそらくUT3のゲームプレイに関してもっともな理由の付いた批判をする人はほとんどいない。
(だいたいケチをつけている人を見れば、それまでのシリーズの方が面白かったと言っている人ばかりだ。)
前作からあまり代わり映えをしないゲームについて文句を言ったり、前作の方が良かったと言ったりするだけで、ゲーム自体に不満はないのだ。
大きな欠点もないのにUT3の評価がある程度の高い位置で定まっている理由は、ゲームの指し示す方向自体に限界があったからなのだ。(あとは発売当初最悪だった設定項目やバグとか)

ASMDショックライフル
UTといえばこれ。ショックライフル。

まとめ
特に変なところがないシンプルなFPS。
技巧的な能力よりも、瞬時の判断力や純粋な能力(敵に照準を合わせるとか)が要求される。
非常に細かいところまで気を遣って作られているが、なんだか決め手に欠ける。
大きな欠点がない一方で、特に目立ったところもないのが欠点かもしれない。
BOTを入れて練習したりできるので初心者でも楽しめる。
人はいないようで結構いるので対戦には困らない。

点数72点

リンク

公式ウェブサイト


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