Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン) レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2010年6月
タイトル
Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)
機種:PC
ジャンル:FPS
発売年:2001年


紹介
Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン 長すぎるので頭文字を取ってRtCWと略すことが多い)は2001年にPC向けに発売されたFPSだ。
XBOXにはミッションを追加して後年発売されている。
PC版・XBOX版ともに日本で発売されたが、ゲーム本編の日本語化はされていない。
Steamで販売されていることもあり、今でも入手はかなり楽な部類に入る。
開発はGray Matter Interactive。
親会社の意向で後にTreyarchへ吸収された。
現在、TreyarchはCall of Dutyシリーズを開発して名前が知られるディベロッパーだ。
なおid softwareは制作に深く関わっていない。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)1
背後から忍び寄り、背中を刺す!

RtCWは発売された2001年当時からシングルプレイヤー・マルチプレイヤーともに高い評価を得た。
そしてマルチプレイは、バージョンアップの拡張パックとして開発されていたWolfenstein: Enemy Territoryが2003年から無料公開され、こちらもFPS界隈でブームとなった(らしい)。
今ではRtCWに収録されているマルチプレイに人はいなくなっているので、紹介とレビューはシングルプレイだけとさせてもらう。

ゲームエンジンにはQuake3エンジンを採用している。
またWolfenstein 3D(1992年)とは初のFPSとして半ば伝説化されているゲームでもある。
RtCWは一種のリメイクだ。
2009年にはRtCWの続編となるWolfensteinがRaven softwareによって開発され、Activisionが発売をしている。
1とか2みたいなナンバリングがされていないので分かりにくいかもしれない。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)2
ヒトラーだ

RtCWのストーリーは第二次世界大戦のナチスが極秘裏に進める計画をアメリカの特殊工作員が阻止するというもの。
ゾンビやバケモノのような不気味なオカルト要素がふんだんに取り入られており、人間兵士との戦闘だけになりがちな第二次世界大戦モノFPSとはおもむきが違う。
銃の命中率がしゃがみ動作をしなければ低くなるように作られているので、敵との戦闘ではしゃがみが要求されることも多い。
ステージによっては完全なステルスが要求されることもある。
一方でストレイフジャンプやスプリントを利用して高速でステージを飛び回ることもでき、2000年前後のゲームらしいスピード感を併存させた作りになっている。

ゲーム内にはシークレットが用意されている。
これは普通に進んでいると見つからない場所に回復アイテムや金塊が山のようにおかれているボーナスゾーンだ。
シークレットが用意された理由は、初期のFPSにみられたシステムの復活だと言われている。
FPSの始祖をリメイクするにあたってシークレットゾーンを儲けることがリスペクトへとなるのだ。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)3
へっへっへ


レビュー
●怪しい雰囲気とステルス性のあるプレイが独特の面白さを生み出している

FPSは一本調子になりがちだ。
敵を倒して先に進むだけでクリアできてしまうため、ゲーム側でプレイヤーを飽きさせないような起伏を組み込んであることは多い。
RtCWは敵に見つからないように潜入するシーンや室内での白熱した銃撃戦、屋外での長距離戦、さらにモンスター相手に大量の弾を撃ち込む場面もある。
変化の多い展開はプレイヤーを飽きさせない。
序盤から終盤まで、新武器が良いタイミングで続々出現するのも目新しさを生んでいる。
ひときわ目立つのはステルスだ。
銃の命中率が低めに設定され、しゃがみながら進むことの多いRtCWでは敵に見つからないように進むことが多い。
バリバリ撃って避けるゲームではないのでステルスとは親和性が高いのだ。
これが一人で敵地に潜入するというストーリーと合致して、臨場感も高めてくれる。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)4
武器をうまくつかって先へ進もう

出来の悪いステルスゲームは、敵に見つかったか見つからないかが分かりにくい。
またいったん敵に見つかってしまうとリカバリーが効かなくなる。
RtCWはこのような観点に照らしてみると、リカバリーのきつさが災いして、結論としては平凡な出来にとどまっている。
いったん見つかると敵が一定数出てくるとか、見つからないように進まなければならないミッションの存在が具体例だ。

それでもRtCWのステルスには意味があると私は考える。
なぜなら戦闘がやけに難しいのと比べるとかなり簡単にステルス要素は作られているからだ。
シビアな判定、さばききれないほどに大量の敵が出現するシーンはない。
RtCWはオカルト兵器を開発するナチスドイツを相手に単独で挑むゲームである。
敵の組織に挑む主人公を描くには超人的に主人公を強くするなどの方法が考えられるが、RtCWはステルス性を加えて表現している。
わざわざこちら側に背中を見せているような敵やアベコベの方向を向いた敵が用意されてもいるのだ。
したがって、プレイヤーは自分がナチス相手と死力を尽くして戦っているという印象を持ちやすい。
数ではかなわない敵に立ち向かっていく様子をステルスで作り出しているのだ。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)5
このバケモノめ!

手強い敵の存在は雰囲気作りにおいてはナチス相手に戦っている感触を得る点で優れている。
しかし、銃の命中率がとりわけ低くて、こちらがしゃがんでいても敵の攻撃がバンバン当たるバランスになっているため、だらけた戦闘になりがちである。
当たるか当たらないかが結構分かりにくく、無駄に銃を撃っていると感じやすいのだ。
確かに単発撃ちをすれば高い命中率を得られるが、ゲームでは接近戦が多いため、落ちついて敵を攻撃するのは至難だ。
結果として対人戦では命中率がとても高い武器を使うのが楽になってしまっている。

一方、モンスターやゾンビを相手に戦闘する場合は勝手が違ってくる。
こいつらはとにかく耐久力と攻撃力がとてつもなく高い。
それゆえ強力な武器を使ってさっさと始末しないとこちらがやられてしまうのだ。
ゾンビ相手なら、うまく立ち回ればナイフやキックを使うと楽に倒せる。
火炎放射器のようなモンスター専用武器も用意されている。
ナチス兵とは違う動きや攻撃をしてくるモンスターどもと戦うことで、ゲームに変化が生まれている。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)6
人間には強力な銃

しかし、こいつらが堅すぎる。
確かにナチスと差別化するためにモンスターを強くするのは大事だと思うが、耐久力を上げすぎである。
もとから命中率の低い武器を連射する必要もあるため戦闘は長期戦になる。
さらにモンスターは攻撃力が異常に高いので、一時も気が抜けない。
つまり無駄に長くなりがちなモンスター戦はかなり面倒だ。
もうすこし耐久力が低い方がよかった。

モンスターの存在はゲームプレイの変化に加えて、造形の不気味さはゲームの雰囲気向上に役立っている。
ナチスが人骨を利用した怪しげなオブジェなどを置いてあるのを見つつ、プレイヤーはモンスターと対峙することになる。
やはりというべきかモンスターやゾンビは人の形をしているので気味が悪い。
中ボスやラスボスもゾンビだ。
ここでは広い場所でスポーツ系さながらの戦いが楽しめる。
それはそれでいいのだが、普段は必要ないものの裏技的に用意されたストライフジャンプを駆使すると戦いやすいというのはどうなのか。
あとボスが堅すぎ。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)
広い場所でストレイフを使うと楽になるが…

シークレット(隠し要素)が各ステージにいくつか用意されているのもRtCWの特徴だ。
これはFPS黎明期のゲームに多く見られた要素であり、リメイク作品なので取り入れられたのだと思われる。
しかし、RtCWでは成功していると言えない。
昔なら意味ないシークレットを長時間かけて探すことは意味があり得たかもしない。
今となっては何かしら意味づけをしないと、こうした隠し要素は無駄なモノと思われてしまう。
そこでRtCWはシークレットゾーンに回復アイテムや弾薬を置くことにした。
隠しを探せばゲームが楽に進められるようになるのである。
ところが、ふつうはゲームにおいてシークレット前提でバランスを作るわけにはいかない。
分かりにくい仕掛けを施しているからシークレットなのであって、プレイヤーに探してもらわなければならないからだ。
だから普通にやっていたら隠しアイテムを発見できる機会はない。
それなのに、ステージクリア前にシークレットを発見した個数と、そのステージに用意された最大数が表示され、もう一度探索へ戻るかどうか選択することになっている。
つまりゲーム側でシークレットを見つけさせるための切迫感を生み出す仕掛けを用意しているのだ。

RtCWではなぜかシークレットを前提にしているようなバランスでゲームが作られている。
回復アイテムや強力な武器の弾薬はほとんどがシークレットに用意されているので、隠し要素無しにクリアするのは難しめである。
したがって、ナカナカ見つけにくいシークレットを探すくらいなら、クイックセーブを利用して強引に敵を突破してしまった方が手っ取り早い。
このようなクイックセーブ連打はハードディスクドライブを標準搭載するPCゲームならではの問題である。
メーカーはともすればクイックセーブを前提としてゲームを作り上げてしまうのである。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)8
何度もクイックロードを繰り返すのがFPSなのかと

RtCWは雰囲気がすばらしいゲームだ。
薄暗くて奇怪な舞台におどろおどろしいバケモノとオカルトを研究するナチスの組み合わせも独特である。
手強い敵とステルスが合わさったゲームプレイは敵地へ潜入する特殊工作員のストーリーともぴったりだ。
設定が浮くことなく絡み合ったRtCWは今でも十分に通用する面白さがある。

しかし、ゲームバランスについてRtCWは優れているとは言えないかもしれない。
クイックセーブを前提としたような敵の強さやシークレットの存在がいびつだ。
そもそもシークレットを楽しく探すことが出来るようにも作られていない。
隠し要素をなくしてゲームをつくりかえたほうが良いとさえ思わせる。
モンスター戦を除くとよくできた戦争物としての印象しか残せていないし、モンスターとの戦いもそれほど楽しくはない。

RtCWは雰囲気を味わうゲームではなかろうか。

Return to Castle Wolfenstein(リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン)9
モンスター用の兵器を使わないと死ぬ


まとめ
ステルス性やモンスターの存在が良い味をだしているFPS。
戦闘はそれほど面白くないのが欠点だ。
ゲーム自体もやや短くて盛り上がりに欠ける。

点数 69点
リンク

公式ウェブサイト



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